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© FUSOSHA Publishing Inc. 提供 プログラマーとして、若者向けの完全匿名性アプリ「cotonoha」も開発しているharu氏。インタビューには、主人格である「僕」が応じた
脳内にはつねに、10人の人格が同居。多重人格者が語る「日常」/HARBOR BUSINESS Online・msnニュース
ハーバービジネスオンライン
2019/09/08 15:32
http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e8%84%b3%e5%86%85%e3%81%ab%e3%81%af%e3%81%a4%e3%81%ad%e3%81%ab%e3%80%8110%e4%ba%ba%e3%81%ae%e4%ba%ba%e6%a0%bc%e3%81%8c%e5%90%8c%e5%b1%85%e3%80%82%e5%a4%9a%e9%87%8d%e4%ba%ba%e6%a0%bc%e8%80%85%e3%81%8c%e8%aa%9e%e3%82%8b%e3%80%8c%e6%97%a5%e5%b8%b8%e3%80%8d/ar-AAGYAI0?ocid=iehp
頭の中に「なんにんもいる」
ツイッターネーム「メンタルなんにんもいる人」、ことharu(@hr_3200)氏。
「なんにんもいる」は文字通り「何人もいる」。解離性同一性障害のharu氏は「国内で気軽に会える多重人格の人」を標榜し、主人格である「僕」の他、10人の人格を内在させている、俗にいう「多重人格」である。
その素顔は、SE、保育士、塾講師を掛け持ちながら社会福祉士を目指し、通信制大学に通う23歳の男性である。解離性同一性障害のほか、性同一性障害(GID)、発達障害(ADHD)の診断も受け、障害者手帳3級を保有している。
米国精神医学会が発行する精神疾患の診断マニュアル「DSM−5」において、解離性同一性障害は以下のように記載されている。
「意識、記憶、同一性、情動、知覚、身体表象、運動制御、行動の正常な統合における破綻およびまたは不連続である」
診断基準は、「二つまたそれ以上の、他とはっきり区別されるパーソナリティ状態によって特徴づけられた同一性の破綻」、「日々の出来事、重要な個人的情報、およびまたは心的外傷的な出来事の想起についての空白のくりかえしであり、それらは通常の物忘れでは説明がつかない」などの大きく5つが挙げられている。
また、発症には心的外傷(トラウマ)も深く関わっているとされる。haru氏の症状は、幼い頃からの「生きづらさ」とつねに隣り合わせにあった。
1996年、haru氏はエンジニアの両親のもとに女性として生まれた。両親は小2の時に離婚し、それ以降祖父母とともに母の実家で暮らすようになった。父親は、小6のときに亡くなった。
3歳くらいの頃から、すでに脳内に「自分ではない人の声」が聞こえていたという。
「20代くらいの男性の声で、『手遊びはやめる時間だよ』、『先生の話を聞く時間だよ』と大人にとっての聞き分けのいい子になるよう手取り足取り教えてくれていました。みんなそれぞれ、そういう『声』が聞こえていると思っていました」
性別違和も同時期に感じていたが、成長すれば心も女性になると信じた。
書いた覚えのない答案。不登校なのに成績が上がり始め……
haru氏の中にいる「誰か」が姿を現したのは中学に入ってからだった。
小学校まではトップだった成績が、中学に入ってすぐに下がりはじめた。子供に起こりやすいとされる、起立性調節障害を患ったのだ。ストレスが主な原因とされるが、性別違和の悩みのほか、学校生活になじめなかったことも影響していた。「勉強ができる」というアイデンティティが崩れ自分を責めるようになり、ほどなくして不登校に。
中2の頃にはうつ病と診断され、現実から逃れたい一心で処方薬をいっぺんに飲み、病院に運び込まれたこともあった。
「自分は存在してはいけない人間だとつねに思っていました」
それまで記憶がなくなることは何度かあったが、交代人格が顕著に現れはじめたのは、受験を控えた中3の頃。答案を返却されると、覚えのない答えが書いてある。テストを受けている時の記憶もない。こんなことが頻繁に起きた。
「ただ、記憶がなくなるだけで不利益があったわけではありませんでした。むしろ、自分の代わりに誰かがテストを受けてくれたおかげで、成績が上がり始めたのです」
中学卒業後は、親を納得させ、かつズボンも履ける学校を探した結果、高専への進学を決めていた。高専の受験には数学などが必須だが、不登校のharuさんには十分な勉強ができていない。だがharu氏ではない「誰か」が知らぬ間に理系科目の学力を上げ、試験を受け好成績を上げていたのだという。
「それ、君じゃないよね」……担任は別の「誰か」の存在に気づいていた
高専では当初成績も良く生活は順調だったが、思春期にさしかかり性別違和の苦痛が耐え難いものになっていた。
「何とか女子になろうと頑張っていたのですが、ある日教師が、私の成績が良いことについて『女子なのにすごいね』と言った。それで、いろんな意味で辛さの限界がきてしまったんです」
病院で性同一性障害の診断を受けたときは、安堵よりもむしろ、先行きへの不安が大きかったという。
「女性として生まれた者が男性として生きることの大変さは、調べてわかっていたので」
その後ホルモン治療を開始し、学校にも配慮をしてもらう中で生きづらさは少しずつなくなっていったが、その頃、交代人格がついにharu氏の生活に侵食してくるようになった。
親の転勤で東京の高専に転校した3年次から学業や学校行事が猛烈に忙しくなると同時に、再び日常の記憶が曖昧になることが相次ぎ、やがて「僕」以外の人格でいる時間のほうが長くなった。
授業開始時間に学校ではなく別の場所にいる、午後に学校を抜け出す、保健室や図書室に逃げ込むなどの自分自身の光景が断片的に脳裏に残る。学校を飛び出て、ひたすら歩いている場面がスライドのように見え「いや、どこだよ」と心の中でツッコミを入れることもあった。
テストは、自分よりも賢い「誰か」が受けているため成績に問題はなかったが、それ以外の時間は体が学校にいないため、出席日数が不足するようになっていた。
「明らかに、君の意図じゃないよね」
すでにharu氏の中に「誰か」がいることに気づいていた当時の担任は、そういってharu氏に診断を受けることを勧めた。障害者として診断が下りれば、出席日数不足に対処できるという。
生まれた頃からharu氏を助けていた、10人の人格
医師はharu氏に、まごうことなき解離性同一性障害であると告げた。長いこと自覚症状があったが、haru氏は診断を受けた時は戸惑った。
「自分自身もこの病気に偏見がありました。多重人格なんてフィクションの中の、犯罪者を通じて描かれるような現象。でも主治医が、『交代人格は主人格を守るためにいるんだよ』と言ってくれて、受け入れられた。交代人格は鬱がひどくなったり、『僕』が自死しそうになったときに助けてくれていた存在なんです」
現在、haru氏の中にいる10人の交代人格は次のとおり。(説明はそれぞれ、haru氏の見解)
洋祐:「僕」と同い年で、交代人格のまとめ役。
結衣:16歳。交代人格の中で唯一の女性。体の性別に沿わせようと頑張った時期、彼女を生み出すことで女性として生きようとしたのではと考えられる。
悠:男性でも女性でもない。鬱病で不登校になった時に形成されたと思われる。知らない間にリスカさせられた。
はると:6歳。詳細は不明。
悟:13歳。中学に入学し、一生けん命適応しようと思っていた頃の人格。
圭一:25歳。学生時代、テストを代わりに受けて成績を維持していた存在。賢い。
航介:17歳。高専でロボットを作っていた時期にいたのではと推測される。
付(つき):気がついたときにいた。深夜に家を飛び出したりしていた頃の人格。
圭吾:19歳。他の人格から聞くところによると、変な人に絡まれるなど危ない局面で、まとめ役の洋祐が意図的に出せる唯一の人格。彼以外の人格はあっけにとられているが、圭吾は逃げたり振り払うことができる。「僕」が19歳の頃と関係しているかも知れないが、その時何があったか思い出せない。
灯真:年齢がなく、いつからいたか不明。真剣な雰囲気が苦手な「僕」の代わりに、彼が全部肩代わりしている。
交代人格は明確には名乗らないが、声がはっきりと分かれているため識別できるという。
「僕」が「みんな」の代表でいる必要はない
haru氏(=僕)は、主人格でいることへのこだわりはない。
「僕はもともと、生への執着が薄いんです。最初はそれぞれ時間の奪い合いだったんですが、倫理や法律を侵さない限りは『僕』が代表でいなければならない理由もないなって。そう考えるようになったらじょじょに日常に支障をきたさなくなりました。以前は、やらなければいけないことを交代人格がストップさせていたんで。きっと『僕』からのSOSを汲み取っていたんでしょう」
彼らの声は聴覚として感じるのではなく、「ラジオだったり、CMの曲が脳内にこびりついて離れないのと似ている」とharu氏は表現する。
「脳内で交代人格の会議が行われていて、『僕』は決定するだけの存在。今こうやって話していることも、会議で決められたことをしゃべってる感覚です」
交代人格には「僕」からアクセスすることはできず、「一度だけ、『今いるのは誰?』と問いかけると返事が返ってきたことがある」という。
主人格でいる時も、「彼ら」が後ろにいるのはわかっている。主人格以外が表に出ている時は、その光景をぼんやりと他人事のように俯瞰しているのだという。
「全ては脳が覚えているんだろうけど、『僕』にはアクセス権限がないので思い出せないことも多い。言うなれば洋祐や圭一がアドミンとして記憶を取りまとめていて、『僕』は一般ユーザーみたいなもの。雰囲気で『僕』を演じているわけです」
だが交代人格らは決して表に立とうとはせず、「僕」のサポートに徹するのだという。
脳内では最大で6人同時に会話していることがあり、そうなると話を追えなくなり、外部の音も聞こえなくなる。
それぞれが現れるトリガーは不明だが、食器が割れたり、怒鳴り声を聞くと13歳の悟が出てくる。テストの時や、頭を使う事柄の際は圭一。仕事の際は仕事できる人間が現れる。ただ、固定されているわけではなく、塾講師をやるときも必ず圭一が出てくるわけではない。主人格の 「僕」は一日に2〜3時間出ていれば良いほうで、まったく出てこないときもある。「その時は、誰かがうまいこと僕の演技をしている」という。
交代人格どうしが揉めることもある
また、交代人格どうしで、兄弟喧嘩のようなことも起きる。
「たとえば結衣が美容院を月一回のお楽しみとして取ってあるのに、圭一が1000円カットに行ってしまったことがあったんです。ヘッドスパとか、やりたい髪形があった結衣は激怒して、ダイソーで100円の帽子を買って被っていました。すると、灯真が他で1万円の帽子を買ってきた。結衣からすると、『なぜ私の美容室代5000円は許されないのに1万円の帽子が許されるのか』とさらに納得がいかない。金銭の管理は圭一がしていて、灯真は買い物の失敗はしないから信頼されているというのもありました。そこで喧々諤々の末、1万円の帽子を被り続けることで元を取ろうということになりました。3年くらい被らないといけない計算ですが」
服装も、バリエーションがあると収拾がつかないため白シャツとズボンを「制服」のようにしている。
「当初は深緑色のシャツだったようですが、脇汗が目立つということで結衣がそうしました。また、『男性陣』は日焼け止めに興味ないので、結衣が教育したらしいです」
持ち物や部屋はどうなのか?
「以前、結衣が買った嵐のDVDを圭一が売り、結衣が仕返しで圭一の漫画を売った。そういう攻防が絶えずあるので、僕の部屋はモノの増減が激しいんです。『僕』自身はモノに執着がないので、構わない。身分証や銀行カードがなくならなければいいんで」
結衣は圭一を「しょうもないオッサン」とみなしており、二人の意見がかみ合うことは基本的にはないというが、ただ、一度だけ合意したことがある。結衣は嵐の二宮和也が好きで、二宮になりたい、近づきたいとつねに考えている。それについて圭一が、「二宮と我々の染色体はほぼ一緒なはずなのに、どうしてもこうも違うのか」と言うと、結衣がそれに頷いたという。
全員がそれぞれ「haru」を少しずつ担当している感覚
現在はそうした実害のない小競り合いで済んでいるが、以前は生活に支障をきたすことが多かった。
「スマホの連絡先を消してしまったりして、いろんな人に迷惑をかけました。誰がやったのはわかりませんが、犯人捜しは特にしません。『僕』が他の人格を受け入れなかったことへの反発だったのかもしれません」
恋人と別れたことすら、後になって知ったこともある。
「別れたことは、別人格の様子から知りました。ただ、知ったからと言って再び傷つくことはなく、どこか他人事のように見つめている自分がいた。芸能人が別れたというニュースを知った時くらいの気持ちですね」
「僕」含め誰一人、当事者意識はない。「チームharu」として、細切れのシフト制で一人の人生を担当しているという意識だという。
「この病気の人、すべてがそうではないと思いますが……僕らは当事者意識を手放して、根無し草として生きている感じ。そうしていれば、苦しまないから。同じ生きるのであれば笑って生きたいし、今の生き方ならそれができる。ただそれだけのことです」
そして今では、交代人格それぞれにも、やりたいことが出てきたと話す。
「それぞれのことを応援したいと思いますね。そして、他の人格が僕のためを思ってくれてるなら、僕が出る時間だけでも僕らしく生きようと思っています」
去年の春、三つ目の症状である、発達障害の診断が下りた。
性同一性障害、解離性障害の診断から随分と時間がかかったが、性別違和や解離とは別の生きづらさを感じていたharu氏は、「診断されてようやく人並みに生活できる気がしている」と話す。
「他人が普通にできることを、僕はできなかったから。随分と遠回りになりましたが、これで負のサイクルを抜けられると思いました。散らばった自分のピースを見つけた気持ちです。解離とは別に思考や感情がほどばしることがあって、医師によるとそれは解離ではなく、多動によるものだそうです」
現在は、月に一度の薬物療法をメインに行なっている。人格統合のための心理療法は行なっていない。薬物療法をしていき症状を落ち着かせ、今の生活を維持していけるよう、鬱などを軽減させることで解離の症状を減らす方向だ。
「僕は鬱がひどくなると解離が激しくなる(記憶欠如の頻度が高くなる)ので、薬物療法でだいぶ生活が楽になっています。それまでは朝起きると死にたくなっていたけど、『今日も楽しく生きれるかも』という状態に変わった」という。
流れに逆らうのは苦しい。可能な限り、「彼ら」と共存していきたい
ツイッターを通じた交流も楽しんでいる。ツイートしている時の人格は、「僕」であることも、他の誰かであることもある。
「アカウントを通じて、障害としてよりも『僕ら』のことを知ってほしいと思っています。他の『彼ら』が言うには、haru担当マネージャーのような気持ちで日常をツイートしているようです。それを共感してもらえたら、『彼ら』にとっても嬉しいことだと思います」
そんな中、「レンタルなんもしない人」との接触がharu氏を広く知らしめるきっかけになった。レンタルなんもしない人とは、交通費と飲食代等を負担すればアカウント本人の「なんもしない人」が「飲み食いと、ごく簡単な受け答え」をしに出張するという活動を行なう人物だ。
「たまたま、レンタルさんがキャンセル出たとツイートしてたので、フォローはしていなかったんですが、衝動的にDMを送ったんです。人生一回きりだから。送ったのは主人格だったんですが、『僕』以外の人格と話してくれるんじゃないかなと。まったく知らない人だし期待もしてなかったんですが、『1時間だけお会いしましょう』と返事が来て。会った時の記憶はありませんが、楽しくしゃべったようでした。それをレンタルさんがつぶやいてくれたのをきっかけに、フォロワーが増えたんです」
それを機に、haru氏も「メンタルなんにんもいる人」として活動を始めた。
ポリシーは「自分の半径3m以内を変える」こと。さまざまな生きづらさを抱えたフォロワーが、haru氏にコンタクトを取ってくる。
会っている途中で記憶が途切れるため、辻褄合わせに苦労することもあるが、haru氏は、現時点では無理に人格統合をしようとは考えていないという。
「劇的な革命を起こそうとは思いません。少しだけ、景色を変えられればと思います。生きることはただでさえ体力を使うのに、波に逆らうのは大変です。僕を見て、『こんな人もいるんだな』と、自分ももう少し生きていいんだと思ってくれればいい。僕自身は、心に傷を負い、復活していく通常の道のりを他の人格に任せてきた。それは普通じゃないかもしれませんが、それによって『僕』という存在が守られてきた。だから、僕だけでも彼らのことを認めてやってもいいじゃんと思うと、ずいぶんラクになりました。症状や治療過程は人それぞれなので僕が正しいわけではないですが、こういう状態でもとりあえず前を向いてふわっと生きていることを伝えたいですね」
堪え難い生きづらさに順応した結果が、解離だった。「僕」と「彼ら」の旅路の終着点はわからないが、治療を続けながら歩んでいきたいと話す。
<取材・文/安(HBO編集部)>
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