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[私見卓見]人間の本性と向き合う道徳教育を 神田外語大学特任教授・三菱商事顧問・横浜市教育委員 宮内孝久
小中学校で道徳教育が本格的に復活する。いじめ問題に真摯に取り組む契機となることを期待するが、「清く、正しく、美しく」といったスローガンでは駄目だ。ヒトはそんなに立派な動物ではない。世の中は意地悪であり理不尽なもの。善悪の判断基準は個々人や文化・歴史によって異なる。まして善悪二元論で割り切るなどは言語道断だ。
「いじめは人間の本性である」という前提をおいた方が正直な教育姿勢になり、撲滅運動として効果があると思う。心に宿る嫉妬心、差別意識、暴力的自己防衛要素、隠蔽本能、性行動を含む生物学的本能を自覚させる。そしてこれらを克服するという課題に、児童生徒の心身の成長に合わせて取り組むことだ。
愛憎、尊敬と軽蔑、征服欲などは人間の本性であると認識しながら、他者と調和を取り、たくましく生きるように導くのが道徳教育だ。
ヒトは異質に対して寛容な面と拒絶・否定・敵対する面を持つようだ。特に日本人は異質なものへの反応が陰湿な気がする。弱い者いじめがけがらわしい行為とたたき込むには、誰でも加害者になる可能性がある事例を示し、児童生徒のネガティブな内面を自覚させることが効果的だ。
ヒトはきれい事ばかりを押し付けられると嫌になる。本音を吐露すると留飲が下がるが、その後、自省し、人格が改善することがあれば良い。
米大統領選でのトランプ氏の発言は、あえて肯定的にとらえると、生身の感情をつくろい、ポリティカリーコレクト(政治的な正しさ)を過度に意識する風潮に対する挑戦であろう。過去に先住民を迫害し、人種差別を行ってきた国の人々が人権を高らかに標榜することに恥じらいを覚えたのかもしれない。
ヒトは嘘をつくから嘘をつくなと教え、ひきょうで弱い者いじめをする要素があるからそれを戒める。「善き人になれ」とうるさく言うと、反発はしなくても偽善的行為に逃げてしまう。幸いなことにヒトは「善き人」として生きる方が気分が良いのだ。
多くの教師が「道徳教育の方法を学んでこなかった」と悩んでいると聞くが、心配はいらない。マニュアルは不要。書物、映画、宗教と議論の切り口は無限にあり、何よりも日常生活そのものがテーマだ。教師と生徒児童が生身の人間をさらし出し、自分達の課題を議論し、悩み、一緒に考えればそれで良い。これはヒトの一生の課題だ。
[日経新聞12月15日朝刊P.29]
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