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三笠宮さまの意見書全文:昭和21年新憲法公布記念日「新憲法と皇室典範改正法案要綱(案)」
http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/432.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 11 月 05 日 04:57:50: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


三笠宮さまの意見書全文 [日経新聞]
2016/11/3 22:24


新憲法と皇室典範改正法案要綱(案)
    昭和二十一年十一月三日
    新憲法公布記念日

                   三笠宮
 
 
 新憲法と皇室典範改正法案要綱(案)

一、 はしがき

昭和二十一年十一月三日(日)新日本憲法は公布された。国体の変化は別としてもとにかく重大な変化である。今迄(まで)皇室典範改正案に就いては度々話も聞いたし、私の意見を述べたこともあり、まだ腹の中で考へて居ただけのこともあり、又どうしたらよいのかふらふらと迷つて居たこともあった。所が今日いよいよ新憲法が確定されて公布されたとなるとどうしても又新しい気持と一段の緊張とを以て皇室典範の改正を考へずには居られない。さうすると今迄の考への中で益々確信のついて来たものもあり、或(あるい)は考へ直した点もあり、或は全然新しく浮んだ考へも出て来て一応取纒(とりまと)めてみる必要を感じた。終戦以来今迄世間での皇室に関する議論を見聞するのに之を富士山の議論にたとへて言へば皆遠くから富士山を眺め時としては頭だけ見て或は雲のかゝつた所を見ての議論が多く、せいぜい近くても御殿場あたりから見た程度で中腹なり頂上から見た富士山論が殆(ほと)んどない。唯私の記憶に残つてゐるものでは民衆新聞社長の小野氏の「天皇は籠の鳥で窮屈でお気の毒だから天皇制を止めた方がよい」といふ議論である。之は私には非常にピンと響いた。何故ならば私は約三十年間此の籠について考へ続けて居るのだから。と言つて私が此の議論に賛成といふのでは絶対にない。全国民の為否世界全人類の為にほんとうに役立つならどんな狭い籠の中でも我慢をせねばならぬのだ。私は本年二月廿七日の枢密院本会議で次の様に発言して政府の反省を促した。

「前略…従来事皇室に関することを批評研討することは宛も不敬に亘る如く考へ一般に「あたらずさはらず主義」でありました。しかし現状勢では夫(それ)は許されません。又一面から見ればその「あたらずさはらず」の敬遠主義が今日の如き悲惨なる事態を惹起した一因とも見られる節があります。従つて私は政府に於かれても皇室制度並皇族社会の実情に大胆卒直なメスを加へて之を機微なる国際情勢及国内情勢と照らし合はせ大局的な見地に立つて深刻な研討を加へ確固たる信念と対策とを確立され…中略…若(も)し従来の如き皮相の観念論から或は眼前の局部的利益の点から其場凌(しの)ぎの対策を講じられるならば極めて危険な結果を生来する虞(おそれ)なしとしないと考へるのであります…後略」

次いで六月八日の憲法草案上提の枢密院本会議での発言中皇室典範関係事項は次の通りである。

「前略…現行皇室典範には改正増補は皇族会議の諮詢(しじゅん)を経ることになつて居ります。然るに今回新憲法が決まり之に基き皇室典範が法律として政府で立案され直ちに国会に提出されるとなると皇族は之に全く無関係の立場におかれるわけであります。現在皇室のことに関しては相当の智識階級の人でも特殊の人を除き殆んど無智識と言つてよい程で議員を軽視するわけではありませんが現状は皇室の事は矢張り皇族が一番よく知つて居ります…中略…従つて理論は別として現実の問題として皇族の典範改正参与について慎重の考慮をお願ひする次第であります…後略」さういふと或は宮内官が委員になつて参与すればそれで皇族の意見を代表出来ると思はれる人があらう。しかし私は「否」と答へる。一致することもあれば180°違ふこともある。といふのは之は主人と召使との立場の相違から起る自然の結果で決して悪意ではない。即ち召使としては主人を出来るだけ心地よい家に住はせ、立派な着物を着せ、美味しい御馳走を食べさせ少しでも楽をさせようと努力するのが人情である。所が主人側から見れば自分は少し窮屈な思ひをしても召使に少しでも多くの給料をやり美味しいものを食べさせようといふ気持が起り又外に対しては自分を犠牲にしても出来るだけ節約に努めて社会事業なり公益事業に出資しようと考へる場合があるのである。一つの例としては戦争中或る師団が敵軍を追撃した。当時非常にコレラが流行して居たが参謀長は追撃に方(あた)つては兵の疲労損耗等は顧みることなく一刻の休みもなく敵を追ひかけるのが戦術の原則だと言つて追撃続行を強く主張したが師団長は熟慮の末「一日休憩全員コレラの予防注射」といふ裁決をしたといふことがある。どちらも間違ひではなく正当な主張であるし結果から見てもどちらがよかつたかは知らないが指揮官と幕僚との立場によつてこんな違ひが生れてくることがある。此の例は後で出て来る「天皇と内閣との意見の相違」といふ場合の参考にもなるので特に引用したわけである。つまり私としては宮内官を決して批難したり信用しないわけではないが物を上から広く見るのと下から狭く見るのとの相違から必ずしも宮内官と皇族の思想が常に一致して居るとは考へられないといふことをはつきりさせる為少し横道に入つたわけである。此の会議の後で陛下から「皇室のことは一般国民に委せ切るつもりだ」といふ有難い御趣旨を伺つたので今更こんな事を書くのは或は陛下の思召に反するのかとも考へるが、先程述べた様に議会の議論を新聞紙上で散見しても又皇室典範改正案の審議状況を伝へ聞いても私の肺腑をつく様なピタリとした議論がない。私は生れた時から親兄弟と離れ唯一人で老人の間で育ち大きくなつても徒(いたずら)に儀礼ばかりの中で偶像扱ひされて個人的自由を持たなかつた為「ひがみ」といふのか何といふのか所謂(いわゆる)「あまのじやく」である。従つて同じ皇族の中でも異端者かも知れない。夫故ピリッと感じないのかも知れない。であるから私の思想が皇族全部の思想でないことは100%保証するが又同時に成年以上の男女皇族33人の中には仮令(たとい)一人でもこんな考への人が居るといふことも亦(また)事実であるから或は陛下なり宮内官なりからお叱りをうけるかも知れないが夫は覚悟の前で頭にあることだけは述べねば気がすまぬし又それが責任とも考へるから書くだけ書いて見るつもりである。しかしいづれにしても私は法律家ではないのでいづれも全くの常識論であるから法律的に見たら誤りも多いことと思ふが些(いささ)か自信の持てる点は空論では無く実際論であるといふことである。且つすべての条項が私自身の明日の運命をも左右するものであるから極めて真剣であることは保証する。

 二、皇室典範改正の基礎観念

皇室典範の改正は次の三項のどれを基礎として考へられたのであらうか?

a.天皇の名称は変らないが内容が完全に変化した新憲法の成立に伴つて現行皇室典範を一応御破算にして新憲法の精神に最も忠実に改正しようとしたものか?

b.政府の新憲法の最初の案が世界の世論の為落第して飛躍した新憲法となつた為政府の一部にはまだ最初の案に対する先入主か又は執着が残つてゐて意識するか否かは別としても皇室典範によつて憲法の飛躍を拘制する気分が入つてゐるのか?

c.単に事務的に現行皇室典範を基礎としてどうしても新憲法の精神に沿はぬ所だけを変更したものか?

私の今迄受けた印象では(c)の点が最も強く之に若干(b)が入つてはゐないかといふ疑問がなきにしもあらずで(a)は最も薄く感ぜられる。然し純理論的に言へば当然(a)が最も強くなるべきである。事実私も夏頃迄は新憲法がG・H・Qに強制された憲法といつた感じを持つて居た所が今静かに考へて見ると此の憲法は世界各国の代表の集つてゐる極東委員会なり対日理事会なりを通過したものであり換言すれば世界全人類の多数決によつて決つたとも言ひ得る。之からの世界は各国の独立とか主権とか言つたことが相当制限を受けて世界の多数決で事が運ばれねば世界の平和は維持されない様になつた。嘗(かつ)て日本は国際連盟で13対1とか43対1とか多数決原理に真向から反対して名誉?の孤立を以て正義の如く考へ「自ら顧みて直くんば千万人と雖(いえど)も我行かん」といつた全く主観的な唯我独尊主義に心酔して今日の大破滅を招くに至つたことを反省すれば此の新憲法が細部の点については純日本人だけの観念からは或は少し位異存があつてもその根本精神は寛容に世界の多数決として之を受容れる雅量がなければならぬ。唯現在でも私の心配なのは大多数の日本人の個性が新憲法に応ずるだけ発育して居らないのではないかと言ふことである。若しさうならば我々は全力を挙げて教育によつて之に追随出来る様にして行かねばならない。そして我々は新憲法を最も忠実に履行出来るだけの大国民に一日も早くならねばならぬと思ふ。重ねて言へば即ち新憲法と現在国民の個性発展の程度との開きは法律で穴埋めするのではなし教育で隙を無くしなければならない。そこで再び皇室典範へ戻るが(a)も(b)も共に一つのイデオロギーを持つてはゐるが(c)に至つては面倒を省く点では最優良でも実際には最劣等の考へ方で、今は一時的に糊塗出来ても将来必ず問題が起る危険性を含んだ案と思ふ。そこで結論として私は(a)案が矢張りよいと考へるに至つた何故ならば対外的に見れば新憲法が世界の多数決であるし又国内的に見れば皇室典範事項は皇族以外の国民の日常生活に直接ひゞくことは少く之で新憲法の行過ぎを拘制することは稍(やや)見当違ひであるのと、も一つは甚だ自惚れかもしれぬが今の皇族の思想は大体に於て相当進歩して居り皇室典範が飛躍しても追随出来るものと私は考へてゐる。そこで憲法の大変化した点の中皇室典範に直接関係ある所は何かと言ふと

【A】国民に主権のあることが明確になつたこと

【B】天皇に国政に関する権能が無くなつたこと

【C】天皇の国事に関する行為にも内閣の助言と承認とを必要とすること

【D】すべて国民は法の下に平等であつて人種、信条、性別、社会的身分又は門地により政治的経済的又は社会的関係において差別されないこと

【E】華族その他の貴族の制度はこれを認めないこと

【F】婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有すること
配偶の選択…離婚、並婚姻…に関しては法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないこと

【G】すべて皇室財産は国に属する。すべて皇室の費用は予算に計上して国会の議決を経なければならないこと

その他にもあるであらうが、最重要なこととして以上のことが思ひ出される。(以上の項目については以下単に【A】とか【G】とか略記する)そして私が皇室典範改正法案中で取り上げたい研究問題の主なものは次の点である。

イ、女帝の問題
ロ、庶子の問題
ハ、譲位の問題
ニ、皇位継承及摂政就任承認の問題
ホ、立后(りっこう)及び皇族の婚姻認許の問題
ヘ、親王と王(内親王と王女)の区別の問題
ト、称号、宮号の定義の問題
チ、皇族の選挙権及び被選挙権の問題

 三、皇位継承

(1)女帝について

先(ま)づ問題になるのは女帝を認めないことと【D】との関係であらう。純粋に【D】を解釈すればどうしても女帝を認めねばならぬ。しかし之については私は現在としては政府案で結構と考へる。その理由として法律論でない実際論から一つだけ述べておく。今の女子皇族は自主独立的でなく男子皇族の後に唯追随する様にしつけられてゐる。之は決して御本人の罪ではなく周囲が悪いのであるが之では仮令象徴でも今急に全国民の矢表に立たれるのは不可能でもあり全くお気の毒でもある。其の上天皇を補佐すべき各大臣が皆男子である。従つて当分女帝は無理と思はれるが何と考へても【D】は全世界に共通の傾向であり今や婦人代議士も出るし将来女の大臣が出るのは必定であつて内閣総理大臣にも女子がたまにはなる様な時代になり、一方今後男女共学の教育を受けた女子皇族が母となつて教育された女子皇族の時代になれば女子皇族の個性も男子皇族とだんだん接近して来るであらうからその時代になれば今一応女帝の問題も再研討せられて然るべきかと考へられる。

(2)庶出の問題

之は憲法とは関係ないが所謂万世一系を厳密な意味で要求するなれば庶出を認めた方が純粋の直系に皇位が伝はると言ふ論が成立つ。しかし何と言つても一夫一婦の道徳が既に文明諸国に共通であり、日本人ですら「あの人には妾がある」といふことは既に唯の批評よりも悪評の中に入つて来てゐる現状であるから庶子を認めない方が世界の流れに乗つてゐるものであらう。しかし実際問題として一夫一婦を厳守出来るか否かは後で訳述する皇族の婚姻の際に与へられる自由の度に関して来ることは十分考慮して置かなければならない。

(3)皇位継承の原因

之を崩御に限ることについては純粋に世襲天皇制だけを考へ皇位継承を廻つての色々の紛争を避ける為には崩御だけとするのもよいが新憲法で基本的人権の高唱されてゐるに拘らず、【B】と【C】とで国事国政については自己の意志を強行することも出来ないばかりでなく、許否権すらもない天皇に更に「死」以外に譲位の道を開かないことは新憲法第十八条の「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」といふ精神に反しはしないか?一例を挙げれば若し将来国家の存亡に関する様な重大問題について天皇と内閣との間に意見が対立した時天皇はどうすればよいか?勿論内閣大臣の意見も亦正当であらうけれども何事によらずすべての事に人の意見は違ふのが通常であり、而(しか)も前に述べた師団長と参謀長の例もあり、それに大臣は時々かはるし又なつたばかりの大臣も多い。もつとも専門的事項については何と言つても天皇よりは造けいが深いと言へようがしかし一方天皇は生れつき大所高所から全国、全世界を眺める様な教育を受けて居られるし、同じ地位について長い間の経験を有せられるから大局的判断と言ふか綜合的判断といつたことでは十分の長所を持たれてゐる筈(はず)である。特に外国に対する問題では国の元首として全日本国を代表するといふ大自覚をもつて考へられるから時としては専門の外務大臣とも変つた結論に到達されることがないとは言へない。手近な所では大東亜戦争の開戦及び終戦の時がよい例である。よく世間では日本の天皇は何十年の間許否権を使はれなかつたと言つてゐるが私は憲法に許否権の明文がなく又之を使はれなかつたから大東亜戦争が起つて悲惨な結果が生じ終戦の時は軍部に対し許否権を断乎使用されたから平和が来たのだと考へる。そこで将来そんな場合―勿論百年に一度位かも知れないが―天皇に残された最後の手段は譲位か自殺である。天皇が聡明であり、良心的であり、責任観念が強ければ強い程此の際の天皇の立場は到底第三者では想像のつかぬ程苦しいものとならう。個人に自殺を要求する様な法律はあり得べからざることであるから天皇に譲位といふ最後の道だけは明けておく必要がある。但し単に窮屈だからとか、つまらぬ問題で内閣と意見が違つたからといつて譲位されたら困るから此の明け方には余程の注意が要るが一応私は「天皇は皇室会議に対し譲位を発議することが出来る」といつた程度では如何かと考へる。之に対し皇室会議が或る票数以上で否決したら天皇もあきらめられねばなるまい。しかし之だけのことでも国民には相当の影響を及ぼすことが出来ると思ふ。以上の自由をも認めないならば天皇は全く鉄鎖につながれた内閣の奴隷と化するであらう。

(4)皇位継承の承認

私は新に次の様な内容の規定を入れたらと思ふ。「皇嗣(こうし)が皇位を継承するときは皇室会議の議を経る」何故なれば新憲法の民主主義或は国民主権の原理を冷静に虚心たんかいに考へて居るとどうしても何等かの方法で国民が即位を承認することが必要になつてくる。世襲の原理を一度議会で承認したから後の特別な場合だけ国民に問はれればよいといふ論も立派に成り立つが又もう一息といふ感じがする。天皇は象徴であり、無答責だからといつて馬鹿でも狂人でもよいとは言へぬ。夫位なら日の丸の旗の方が余程ましである。殊に今迄の様に国民の前に全くヴエールをかけて現人神として九重の奥深く鎮まり給ふ天皇ならそれでもよいが、最近及将来に予想される天皇は性格、能力、健康、趣味、嗜好、習癖ありとあらゆるものを国民の前にさらけ出して批判の対象にならねばならぬから実際問題とすれば今迄以上に能力と健康とを必要とするわけである。そこで単に皇嗣に重患又は重大な事故があつて皇位継承の順序を変へる時だけ国民にはかられるのでなくて之と反対の意味で皇位継承者の適格性を保証し益々天皇の地位を強固にする為に皇位継承の場合にも一応国民にはかられてはどんなものか?唯どの機関にはかられるかは問題で将来は国会の承認といふ所迄行くかと考へられるが現段階では皇室会議が無難と考へる。

(5)改元

改元の規定を皇室典範より除くことは結構であり、更に一歩進んで全く新しき日本の再建の為、人心を新にする為、明年新憲法の施行の時機を以て改元せられたらよくはないか?

 四、立后

新に立后を皇室会議の議を経る様にしたが後で詳しく述べる皇族の婚姻と同様新憲法【F】の精神に逆行することであり削除したらどうだらう。

 五、摂政

未成年天皇のために置かれる摂政も一応皇室会議の議を経るのが民主的かと考へる。

 六、皇族

(1)皇族の範囲

之については相当問題があると思ふが私としては今申し述べ難い立場にある。

(2)親王と王(内親王と女王)との区別

従来は親王と王(内親王と女王以下同じ)との経済的差別があまりはつきりと感じられなかつたからよかつたが、今度の皇室経済法(案)によるとあまりに明瞭になつてゐる。将来皇族の数が少くなり而も経済的には益々困窮して来る時に経済的不平等は皇族の団結を妨げる原因となる虞がある。又先に述べた天皇の譲位発議の権利が典範でどうしても認められない場合には親王も王と同様請願により皇族の身分を離れることが出来ることとし此処に自殺しなくてもよい様な道を明けておいて頂きたい。今迄述べたのは親王と王との区別の廃止であるが、抑(そもそも)親王とか王とかいふ名称は何であるかが今だに私自身にさへよく分らない。現に私として「崇仁」と署名する場合と「崇仁親王」と書く時とある。どちらがほんとうなのか?言ひ換へれば崇仁が名前なのか崇仁親王で名前となるのか?親王が名前の中に含まれないものとすれば敬称か?卑称か?或は単に天皇との血縁関係の遠近を示す付属語に過ぎないのか?といふことである。英訳ではPrince Takahitoと書くさうすると親王をPrinceと訳したのか、さうでなくこのPrinceは殿下の意味だとすれば親王がどこかに消えてしまつたわけであるがそれでよいのか?此の際典範ではつきりと定義づけて貰ひたいものである。

(3)宮号

親王、王の称号と同様宮号もはつきり定義づける必要がある。特に未成年皇子の宮号と成年の際賜はる宮号との相違等は特に外人には分らない。英訳でもPrince Mikasaか?Prince Mikasano-miyaか?之から国際関係が特に密接になり唯我独尊では絶対にいけないから外国人にでもよく分る様に皇室典範に名記して貰ひたい。尚民法に於ける姓との関係も同じなのか違ふのか付記する必要がある。

(4)皇族の婚姻

私は皇族の婚姻を皇室会議にかける案には抗議を申込む。勅許も削除したい。新民法(案)では婚姻に親の同意さへ必要としなくなつた。当然皇族も同様に取扱はるべきである。皇族だけこの自由を認めないのは皇族の人格に対する侮辱である。抑、物事を会議にかけるといふことは常に可決を期待するのでなく否決あるを予期しての話である。愛といふものは絶対に第三者には理解出来ないし、又理論でも片付けられないものである。婚姻が不成立の場合でもその原因が当事者のどちらか一方の反対による時には仮令片方の愛が強くても「愛する相手の自由意志を尊重することこそ、即ち相手を最も愛することだ」といつたあきらめも出来るが、それが第三者の而も会議といふ甚だ冷い無情な方法で否決されたら決して承知出来るものではなく、寧(むし)ろ反抗心を燃え立たすばかりで、下手をすると其の本人の一生をあやまらせる原因となるかもしれない。さういふと「でも其の婚姻の相手が皇族たるにふさはしくない者だつたら困る」といふ人が出てくるであらうが私はそれはその皇族に対する小さい時からの性問題に関する教育なり指導なりが悪かつた最後の結果で、そこ迄に立至つてから結婚して悪いの何のと言ふのは既に手遅れであることを強調したい。従来の皇族に対する性教育はなつて居なかつた。さうしていざとなつてから宛も種馬か種牛を交配する様に本人同志の情愛には全く無関心で家柄とか成績とかが無難で関係者に批難の矢の向かない様な人を無理に押しつけたものである。之が為どんなに若い純情な皇族が人知れず血の涙を流し果は生死の境をさ迷ふたことであらうか?私は言ふ。皇室典範で「皇族の婚姻に判定を必要とする」と書くのはまるで「皇族が物品を取得する時は正当に買つたのか、盗んだのか裁判する」と書くのと同じであると。しかも之からの皇族は小さい時から男女共学となり、指導に依つては立派に自分自身で皇族の配偶者としてふさはしい立派な人を選び得るのであるから何卒若い皇族の純情を最後の関門でふみにじらない様に心からお願ひする。若しどうしても皇族に信用がない場合でも親たる皇族の同意に止めたいものである。

(5)皇族の身分を離れること

前述の親王と王との区分の廃止と関連するが「皇族は勅旨又は請願があつた場合は皇室会議の議を経て皇族の身分を離れることが出来」るとした方が融通性がある。悪ければ之こそ皇室会議で否決すればよい。

(6)皇族には被選挙権及選挙権を認めないこと

私は終戦後は皇族にも之等の権利が認められるのだとあつさりと考へて居たが最近になつて之等ははつきりと認めてはいけないといふ結論に達した。何故なれば天皇が政治的立場を離れて象徴といふ地位になられ、政治的には全く無色中立たることが(勿論昔からその通りには違ひないが)一層強く要求されたからである。皇族とは皇位継承資格者であり何時天皇なり摂政なりになるかも知れぬ人々である某政党に属してゐる皇族が演説でもした場合やゝもすると天皇と関連がある様に誤解される虞れがあるし又その皇族が天皇なり摂政なりになつた時は急に無色中立になり切れるものではない。選挙権の方は之よりは程度は少いがやはり選挙演説を聞いたり、投票したりしてゐる中にはひいきの政党が出来てやはり無地とはいへなくなる。之は皇族だけの立場から見た話であるが、政党の方から言ふと必ずや皇族を利用するに違ひない―従来の陸海軍が皇族を利用した様に―そしてかつてロボツト参謀総長やロボツト軍事参議官の様に今度はロボツト総裁やロボツト議員が出来上る虞がある。いくら偉くても皇族は生れてから社会の荒波にもまれて居ないお坊ちやん育ちである。断じて皇族を政治界に出してはならない。

(7)天皇の皇族監督

典範改正法案要綱には書いてないから批評の限りでないが、現行典範の此の項は再研討を要する。どうも民主的ではない。どうしても必要なら「どういふこと」と「どういふこと」とについて監督すると制限して示した方が穏当であらう。

 七、むすび

重ねて申すが私は法律家でない。だから或は私の議論は法律にはなつてゐないかも知れない。それで之を書くのは随分躊躇(ちゅうちょ)したのであるが、今黙つて居て決つてからぐづぐづ言ふのは男らしくない「皇族は黙つてゐろ」と言ふ文句が出るのは百も承知だが間違つてゐたら遠慮なく批判して頂き私の意見が間違つて居ることを自覚すれば私もあつさり訂正するのだからその方がよほどよいと信じたので勇気を出して纏めた次第である。御叱正を仰ぐ。

以上
 
 
(注・旧字体などは常用漢字に書き換え、一部漢字には読み仮名を付けています)


http://www.nikkei.com/article/DGXMZO09086380S6A101C1I00000/

 

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