http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/321.html
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ラジオで「飛行機リスクは思っているより低い」という話を聞いたが、
そりゃ嘘っぽいな、計算のどこかに誤謬があるんじゃないかと思って調べてみた。
リスクの計算には「輸送実績1億人キロあたりの死亡乗客数」が使われるという。
この単位がウソっぽい。言い換えると感覚に合わない。
例えば1000キロ移動するのに車では20時間。飛行機では1時間。
この時の事故数を同じ単位では比較しているから感覚に合わない。
乗車単位時間あたりの死亡乗客数で比較するのがいいんじゃないの。感覚に合っているよ。
「輸送実績1億人キロあたりの死亡乗客数」この数字で飛行機と車を比較する場合、
飛行機は時間的には1/20なので数字を20倍すればいい。
おっと、これでも自動車の方が危険になるな、あはは。
検索してみたらこんな記事が見つかった。
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http://archive.wiredvision.co.jp/blog/kojima/200709/200709111620.html
2007年9月11日
前回は、伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』[*1]からの引用によって、科学史とその受け取り方を紹介した。今回は、同著者『哲学思考トレーニング』[*2]のほうから、軽いネタを紹介しておこう。
もっとも、この本[*2]の第5章は、「みんなで考えあう技術-不確実性と合意のクリティカルシンキング」と題して、地球温暖化問題についての議論の整理をしてくれているので、このブログの愛読者諸氏は、是非とも目を通すことをお勧めしておく。
今回は、その温暖化のほうではなく、「飛行機が恐いのは不合理か」という興味深いことがこの本に書いてあったので、引用しておきたいと思う。
何を隠そうこのぼくは、正直いって、飛行機がめっちゃ恐い。未体験のときから恐くて、何度か乗った今も、ぜんぜん慣れることはできず、恐怖症はいまだ治らない。なぜ恐いのか、と問われても、自分でもイマイチよくわからない。もともと高所恐怖症なので、それが大きいとはいえるが、たぶんそれだけではない。恐い順でいうと、「飛行機」>「地面とつながっている密閉されていない高所」>「地面とつながっている密閉されている高所」のようになっているので、単に「高い」というだけでなく、「落ちる可能性」が絡んでいるように思う。つまり、飛行機は「地面とつながっていない」から「落ちるかもしれない」ので恐いに違いない。
昔、初めて飛行機に乗ることが避けられなくなり、せめてもの心の支えにと、『飛行機はなぜ飛ぶか』という本[*3]を買ってきて読んでみた。それによれば、飛行機に働く揚力(浮き上がる力) は、(空気の密度)×(速度の2乗)に比例する、と書いてあった。飛行機が飛ぶ上空の空気の密度は当然薄いから、速度が相当速くないと落ちてしまう、それで飛行機が速いのはアタリマエ、そうも書いてあった。これを読んで、ぼくの心の暗黒はかえって深まる結末になった。読まなきゃよかった、と後悔した。ぼくは初体験の飛行機の中で、意味もなく、「(空気の密度)×(速度の2乗)」という呪文を繰り返し唱えたのだった。
そんな個人的な話はともかく、その後、いくつかの本で、「飛行機は危険で恐いと思っている人が多いが、それは間違いである。実際は、飛行機は自動車より安全である」と書いてあるのを読んで、なんだそうか、そんなものなのか、と納得して気持ちを軽くしていた。つまり、ぼくの恐怖心は、飛行機事故の頻度の印象からではなく、単なる高所恐怖症の産物にすぎないのだな、と。
でも、そうともいえないよ、という余計なおせっかいが、『哲学思考トレーニング』に書いてあり、再び考えがくつがえされることになった。せっかくだから、ぼくと同病の恐がり諸氏にもおすそ分けしておきたいと思う。
この本によると、交通手段の安全性の測り方の標準的なものは、「延べ移動距離に対する死者の比率」なのだそうである。ここで「延べ移動距離」とは、10人の乗ったバスが5キロ移動したら、10人×5キロ=50人キロ、と計算する。この基準を自動車に当てはめると、2000年の国内の延べ移動距離は9512.5人キロ、事故死者(自動車に乗っていて事故死した人)は3954人だから[*4]、
自動車で移動する際の事故死亡率 3954÷9512.5=0.42 人/億キロ
となる。対して、飛行機のほうでは、
飛行機で移動する際の事故死亡率 9÷797=0.01 人/億キロ
である。この結果を見ると、確かに自動車のほうが飛行機より40倍ほど危険に見える。
これが、世の中に流布していて、ぼくもすっかり信じ込んでいた、「飛行機の相対的安全性」、の正体である。しかし、伊勢田はこの安全神話を崩す基準をも見せてくれるのである。伊勢田は、上の基準が、「福岡から名古屋まで車を使うか、飛行機を使うか」と悩むときには、妥当なものだとする。しかし、「この週末に旅行に出かけたいのだが、車で近場に行くか、飛行機で遠出するか」といった場合には、この基準は適切でない、というのだ。この場合計算してみるべきは、「移動距離あたりの危険性」ではなく、「この週末に事故にあう危険性」である。それを評価するには、輸送人数あたりの死者数とするのが適切だろう、というわけなのだ。
2000年には、自動車で移動した人は延べ628.4億人、対する死者数は3953人であるから、自動車で移動する人の中で事故死者になってしまう比率(確率)を計算すれば、
自動車で移動する際の事故死亡率=3953÷628.4=6.3 人/億回
飛行機についても同様の計算をすると、
飛行機で移動する際の事故死亡率=9÷0.9=10 人/億回
となる。こう比較すると、「飛行機のほうが危険」という結論が出てくるのだ。
ちぇ、読まなきゃよかった、と思ったのはきっとぼくだけではないだろう。(すまんな、余計なものを紹介して)。
とにかく、何かのリスクを何かの基準で評価してる文献に出会ったら、その前提をよく検討するのが無難だろう。もしかすると、あなたの「恐がり」には、それなりの根拠があるかもしれないのだ。
* * * * *
[*1] 伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会2003
[*2] 伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』ちくま新書2005
[*3] 近藤次郎『飛行機はなぜ飛ぶか−空気力学の眼より』講談社ブルーバックス1975
[*4] 伊勢田はここで、自動車にはねられて死ぬ人は勘定に入れていない。なぜなら、飛行機と比較したいわけだが、飛行機にはねられて死ぬ人、というのが想定できないからである。
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