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雪山歌旅行(初編)
〜わが国神代人を見る
カンドンという山村に着く。山家に珍しき半西洋、半シッキム風の家屋ありて、家のあたり黄金の木に実林にうずもれたるも心にくし。見ればわが国の神社の如き草葺の屋根には、ゆかしき千木のあるさえ思い出の種になるに、ここに住む人々はまことに単純なる白き布を身にまといて、首には曲玉の飾りに似たるをかけて腰に一ふりの山刀ささげたるに、その容貌を見れば、色妙に鼻筋とおりて、わが国神代人の絵巻物の生きたる相貌を見る心地ぞせらる。
〜シャクンターラ姫
また下りて行くに道傍の草原を見れば、四、五の牛子牛の草くらいつ、その間にガンダルパの娘なるらんシッキム風の白衣の薄鼠色にかわれるを身にまとい、同じ色の白布を玉だすきにして、羽衣様にかけて風にちれるを見る。あまりのゆかしさに、よく見れば瓜実顔に色あくまで白く、装飾なけれども自らなる美貌は、そのかみのシャクターラ姫かとも思わる。元来雪山に住む人々は、何れもわが国の人々に似たる相なるに、わけてシッキム人中の原人モンバ族は、わが国の貴族の相貌あるもの多く、この娘もただの牛牧女とは見えず。ある貴族の姫君が戯れに神代の山姫の衣をつけて牛を追うかとも思わる。
もしわれにして、美貌に白骨を観ずる修行地の者にあらざりせば、彼のシャクターラ姫を娶りし如く、われもそのあとをおいて雪山におわりしならん。
〜雪山の佳人
ジクチ村は、シッキム風の建物なれども小さきもののみ。されども、ここにて驚かされたるは美しき女の紅き襦袢に白き上衣をつけて、胸には珊瑚の首飾りをかけたる、年は17、8のあでやかにつやつやしきが、われら一行を見て微笑みたるにぞありける。彼女がラーマの来ませりと思えるによるか、われはこの巧みに飾りて口紅さえさしたる美人を見て、昨日見し牛牧娘のけだかく美しきを思い出しぬ。わが神代風なるゆえにあらんか。
彼女の後より顔を出して珍しげにわれを見るは8,9歳の少女にて、彼女の妹にやあらん。その面影の愛らしくも似たる、さながらかむろが遊君に従える様ぞする。
【出所】河口慧海「第二回チベット旅行記」講談社文庫’93年
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