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数年前、帰宅途中立ち寄った、とある道の駅で、
雨の中に佇むヒッチハイカーに声を掛けた事がある。
彼の手に持たれたスケッチブックには、「(隣県)」とだけ書かれてあった。
慌てて彼に声を掛け、本降りになる寸前に車へと、彼を中に誘導した。
一言二言交わしてすぐに車を走らせると、スコールのように土砂降りとなった。
助手席の足下に大きなバックを押し込め礼を言う彼。
ワイパーの先は帰宅ラッシュの渋滞である。
よく見れば、彼はまだ十代に見える、非常に美しい白人の青年だった。
私が天使に姿形を与えるなら、まさにこの姿態だろうというような。
独学らしいが、彼は割と丁寧な日本語を獲得して居り、
都内で数ヶ月間路上生活者となって居た事について話をし、私を驚かせた。
私はすぐにあれこれ話を始めた。
彼は日本縦断の旅のまっただ中だった。
取りあえず私の少ない持ち金を彼に渡し、電車での越境を提案した。
彼は一言目には申し訳無いと断ったが、私の頭では、それが正解だった。
そして、それが私のしたい事だと諭し、駅へと向かった。
一時間ほどで駅に着いた。
私を追って彼が人ごみの中駅舎の中に入ろうと明るみに行くと、
そこではじめて気付いてぎょっとした。
彼は裸足で歩いていた。
訊くと普段の生活からずっとそうであるらしい。
そしてどうやらこの地を抜けるには、時刻的にも料金的にも、
鉄道路線を諦めざるを得なかった。
今、彼の足にならなければならないドライバーが必要だと知ると、
とりあえず、つなぎ役を引き受けざるを得なかった。
彼をただ雨の降りしきる中に足止めさせることは出来なかった。
ヒッチハイクしやすい場所と、最低限、一泊できる雨宿り場所が必要だった。
予定には無かったが、そうなると考えても仕方が無いので、
更に家とは逆の方向へと車を走らせる事にした。
そこで、この、そこら辺にありふれていない彼の話を訊こうと考えた。
先ずは食事が必要だろうと思って軽食をとる事を進めると、
申し訳無いそぶりであったが拒まなかったので、
途中、コンビニで菓子パンか何かを買って手渡した。
私の頭は彼の裸足への疑問だった。
訊けば、彼は意図的にそうしているらしく、国はアメリカだと言っていた。
彼はアーミッシュかなんかなのだろうと思い、詮索の必要はなかった。
彼と私は考えが似通っているらしく、理想に互いに共鳴するものを持っていた。
時折、しきりに私の言う事に反応して、
「自分もそう思っている」、「すごい、すごい」と関心していた。
私と言えば、海外で、一人で、この歳で、
ヒッチハイクだけで日本を横断しようとしている彼に感心しきりだった。
更に裸足で。
トラッカーの停車場である道の駅に着くと、
予想通りそこは深夜でも室内に暖を取れるようでひとまず安心した。
それ以上何も応援してやれなかったが、彼のその後に興味が尽きることはない。
今、彼は自分の理想に向き合っていく先で、どんなものを身につけただろうか。
彼はこの国に来て何を見て、何を経験して行ったのだろうか。
しかし、彼ならば、どこに行っても、自身の理想の揺らぐ事は無いだろうと確信する。
何故なら彼は、彼の理想とするところと、その本質が常に一致しているからである。
彼は自分を見下げ果てない。
故に他者をも見下げ果てず、そしてその国や社会、
そこに属す人々をも見下げ果てる事は無いのである。
彼はすべてを受け止める。痛みも、そして喜びも。
そこに感じる感情のすべてに素晴らしさを見出す。
故に彼は間違わない。
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