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日米欧の金利が過去最低を更新した謎
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20150116-00042283/
2015年1月16日 10時10分 久保田博幸 | 金融アナリスト
日米欧の国債利回りが歴史上、最低利回りを更新し続けている。1月16日には日本の10年債利回りは0.225%をつけて、さらに記録を塗り替えている。すでに残存6年程度の国債利回りがゼロ%水準にある。
14日の米国債券市場では30年債利回りが2.395%に低下し過去最低を更新した。米10年債利回りも1.8%を割り込んだ。ちなみに米10年債の過去最低利回りは2012年7月につけた1.38%である。
14日には英国の30年債利回りも2.233%に低下して過去最低を更新した。10年債利回りも1.54%に低下したが、2012年には1.5%割れを記録しているのでここまでは低下していない。
ユーロ圏の国債も買い進まれており、ドイツの10年債利回りは0.424%とこちらは過去最低水準を更新し、フランス、オランダ、ベルギー、オーストリア、フィンランドの10年債利回りも過去最低を記録した。
この日米欧の国債利回りの低下の原因は何なのか。たとえば、ここにきての原油価格の下落も一因であることは確かである。それでなくても日米欧の物価は上がりづらい環境にあるなか、原油価格の下落でさらにディスインフレの傾向を強めさせている面もある。
日本や欧州の中央銀行の金融政策が影響しているとの見方もできる。FRBがテーパリングを終了させたが、その代わりに日銀は大胆な金融緩和を実施し、ECBは政策金利の下限をマイナスにし、今後は国債買入による量的緩和も視野に入れている。
たしかにECBの政策金利の一部がマイナスとなったことで、欧州の中短期債がマイナスとなり、日本でも日銀の大規模な国債買入が続き、それにより短期債がマイナスとなり、徐々に長めの金利も押しつぶされてきての現在の水準となったとも言える。
しかし、いくらCPIが低いといっても日本を含めて前年比ではプラスのところが多い。日本では日銀の物価目標達成は困難との見方は出ているが、それでもまだ前年比ではプラスにいる。
長期金利は物価や経済のひとつの物差しでもある。長期金利は経済成長率予想と将来のインフレ率、さらにリスクプレミアムによって構成されているとの見方が一般的な図式である。しかし、足下の景気や物価の動向を見る限り、かなり乖離している。つまり将来の景気の低迷や物価のかなりの下落を予想していない限り説明が難しい。
ここであらためて英国と米国、そしてドイツの10年債利回りの推移を確認してみた。それぞれ2013年4月あたりまで大きく低下傾向にあったが、これは米国のサブプライムローン問題からリーマン・ショックという大きな金融経済危機後に、今度は欧州での信用危機が発生し、その欧州の信用不安がピークアウトするまで、リスク回避により米独英の国債が買われたためである。その信用不安が後退し、それぞれの長期金利は2013年末にむけて上昇していた。このあたりまでは納得できる動きと言えた。
ところが2014年に入るとすぐに英米独の10年債利回りはそろって綺麗なダウントレンドを描いている。つまり低下し続けている。原油先物が下落し始めたのは、2014年の7月以降であり、2014年当初からの原油価格の動向が英米独の長期金利のダウントレンドに直接的な影響を与えたことは考えづらい。
さらに面白いことに2014年に入るとFRBはテーパリング、つまり買い入れる国債の量を徐々に削減していった。これは国債の需給にとっては当然ながらマイナス要因となり、金利の低下要因になることはないはずである。それにも関わらずなぜ2014年当初から英米独の10年債利回りは低下し続けたのか。
2014年の米国株式、たとえばダウ平均などのチャートをみると上昇トレンドとなっており過去最高値も更新してきている。これからみてもリスク回避の動きや景気悪化とかが意識された金利低下とも考えづらい。
いったい何が2014年当初から日本も含めて、欧米の長期金利を低下させたのか。余程の将来の景気悪化もしくはデフレの懸念でもなければ、説明できない水準に低下してきている。百年に一度といわれた危機が立て続けに起き、その間に日米欧の中央銀行は積極的な金融緩和を進めた。その余波が影響したとの見方もできるかもしれないし、日銀はさらに大胆な緩和を進めた結果であるかもしれない。
つまりまだ大きな資金がうごめいて行き場を失い、それが国債に向かっているとの見方が可能か。いわゆる過剰流動性と呼ばれる状態にある。しかし、すでにFRBは出口に向けた政策を進めている。スイス中銀同様に、日銀も身動きができなくなりつつある。ECBも大胆な政策は取りづらい。中央銀行の金融政策が今回の異常事態を招いたとすれば、その反動はいずれくる。もしこの金利低下の謎が解けたとき、日米欧の長期金利は新たな動きを見せている可能性がある。
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