01. 2015年1月16日 21:54:34
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焦点:財政目標に債務残高GDP比採用へ、成長重視の首相意向で 2015年 01月 16日 18:27 JST [東京 16日 ロイター] - 政府は、6月ごろに基本方針を策定する新財政再建目標に、債務残高のGDP比率を目標値として加える方向で議論を急ぐ。複数の政府筋が明らかにした。団塊世代高齢化に伴う社会保障費の膨張や、異次元緩和が出口に向かうケースでの金利上昇などで、2020年代には経済規模に対する国債費増大を管理する必要が高まるためだ。短期的な財政収支の赤字/黒字に過度に縛られず、成長重視に軸足を移したい安倍晋三首相の意向もある。 「毎年の財政の赤字/黒字にとらわれ過ぎると、経済が長期的に委縮してしまう」──。安倍首相が2014年11月に10%への消費増税の延期を決め、同時に2020年度の基礎的財政収支の黒字化を宣言した際、首相ブレーンの一人である経済学者は、こう助言し、首相は深くうなずいたという。 8%への消費増税により財政健全化を図ったものの、経済成長が止まり、安倍首相は財政重視に不信感を強めてしまった面があった。このため財政再建だけでなく成長も考慮した指標を加え「複眼的」視点が必要との考えに傾いた、と首相周辺の関係者は指摘する。 基礎的財政収支の目標は、毎年の財政赤字幅に注目が集まり、経済再生に向けた歳出拡大、特に復興や災害対策などインフラ投資が抑制されかねないと首相周辺の学者ブレーンは主張している。複数の関係筋によると、この意見に対し、首相も同調しているという。 成長重視の首相の意向もあり、14年末に開催された経済財政諮問会議では、安倍政権が初めて自ら手掛ける財政健全化計画として、15年夏までに明らかにするとしている中期試算に、どのような目標値を掲げることがふさわしいか課題を示した。 具体的には「成長と財政健全化の関係を明示的に取り扱う観点等から、フローの基礎的財政収支(PB)に加え、債務残高GDP比や資産・負債両面を含めたストック指標なども重視する」との文言が明記された。 毎年の赤字/黒字にとらわれない債務残高GDP比目標が重視されると、デフレ脱却に向かっていれば、名目GDPは大きくなり、税収も増えることが見込まれ、債務のGDP比率が低下することがはっきりと目に見える効果がある。 しかも公共投資に関してはインフラや「箱もの」など資産として計上される係数は債務の係数から差し引き、純債務がその分小さくなるような概念の検討も盛り込まれた。 こうした提案について、安倍首相は「PB黒字化目標にはGDPの伸びの関係が考慮されない」と発言し、成長に伴うGDP拡大効果がストレートに財政目標に反映する債務残高のGDP比目標の検討を重視する姿勢を示した。 さらに「投入された資源がストックに結実しているか」と指摘。国債発行で投資したインフラなどは資産としての価値を考慮することも検討する必要性があるとの考えを示した。 ある政府関係者は、公共投資こそ成長戦略の要だ主張する学者ブレーンの意見に、首相が耳を傾けていると指摘。別の経済官庁幹部も「公共投資が出れば、お金が回りまわって消費喚起など経済成長につながる面は無視できない」と語る。 一方で、内閣府では以前から財政再建目標として、基礎的財政収支の黒字化後の最終目標として「債務残高GDP比を安定的に低下させる努力が必要」と掲げている。この目標設定の意図は、公共投資のための借金を資産の見合いとする首相周辺が主張する考え方とは必ずしも一致しない。道路などインフラの資産価値の算定や「箱もの」の価値をどうとらえるのか、問題もあるためだ。 むしろ、内閣府の意図は諮問会議民間議員の考え方に近い。1)金利が上昇局面に移行すれば国債費の膨張が避けられない、2)団塊の世代が後期高齢者となる2020年代には、社会保障費の増大が見込まれる──などから、債務残高と経済規模との関係について、より注意を払う必要があるとの意見だ。 さらに、2020年度に基礎的財政収支が黒字化することを前提にすれば、その後は黒字幅のGDP比はあまり意味がないとの見解も出ている。 債務残高のGDP比採用という方針は、これらの意見も反映したかたちだ。 そろそろ議論が始まる経済財政諮問会議では、新財政再建計画の背骨となる主要な目標に関し、経済成長を阻害せず税収を上げていくことが、まず重要との基本方針で進むとみられている。 そのための目標として何が適当なのか、財政目標として資産と債務が両建てで計上されるインフラなどを債務から除くことが適当なのか、突っ込んだ検討が始まる。 今のところ様々な意見が存在しており、賛成と反対の意見が交錯する展開も予想される。このため債務残高GDP比が目標として採用されても、従来からのPB黒字化目標も併せて設定される可能性が高いとみられている。 政府は8月ごろに新たな財政再建計画の詳細を公表する予定だが、首相周辺はそれよりも前倒しし、6月取りまとめ予定の骨太方針の中に、新財政再建計画の骨格を盛り込み、安倍政権の基本方針を明らかにしたいと意気込んでいる。 (中川泉 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0KP0ST20150116 |