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富裕層の「資産フライト」に網をかける「国税庁」〈週刊新潮〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150115-00010000-shincho-soci
「週刊新潮」2015年1月15日迎春増大号
課税逃れが主目的の「資産フライト」――わが国は100万円超の海外送金時に銀行から税務署に提出される法定調書や、海外資産の申告を義務付けた国外財産調書制度などで規制の網をかけている。
「数年前、キャピタルゲインに税金がかからないシンガポールに移住する人たちが話題になりました」
と語るのは投資研究家の玉川陽介氏。
「資産フライトの恩恵を享受できるのは、資産が数億円あり、株式やFX(外国為替証拠金取引)で儲けている人たちです。株式投資で年間1億円儲けたら、日本では2000万円の税金を納める必要があるが、非居住者という税務上のステータスを得ると、日本で税金を納める必要がない」
そこで税務当局は「出国税」を新設する方針だ。資産フライトの事情に詳しいジャーナリストの山田順氏はこう言う。
「富裕層には、すでに海外への資産移転を終えている人たちがいます。合法的に課税を回避できるスキームについて、つねに会計士や弁護士からアドバイスを受けている。例えば、ケイマン諸島や英領バージン諸島などのタックスヘイブン(租税回避地)に、ぺーパーカンパニーを設立し、資産を会社名義にしているといったようなことです」
各国の税法上の盲点を突き、税から逃れようとしているのは、何も富裕層ばかりではない。グーグルやアマゾンなどの国際的企業も使っている手法である。
■各国で税務情報を共有
国税庁は昨年7月、「超富裕層プロジェクトチーム」を立ち上げた。海外への資産移転や所得隠しを突き止めるのが狙いである。東京国税局に「超富裕層専担プロジェクトチーム」を設置したほか、大阪国税局と名古屋国税局にも、同様の部隊を置いた。
「国税局の査察部だけでなく、各税務署にも“横目”という実務があります」
と語るのは元国税調査官で税理士の松嶋洋氏。
「税務署の職員がある会社の口座を調べるため、銀行に行きます。銀行としては、税務署の調査に協力せざるを得ない。職員はその際に当該の会社の口座だけでなく、別の会社の口座や個人の口座を、銀行員に見つからないよう横目で見る。あらかじめ怪しい口座を把握しているのです」
例えばある口座で、100万円以下の海外送金が頻繁に繰り返されていれば、
「資産を隠すためにやっていると疑い、税務署内部で情報を共有します。そのほか、被相続人の口座を洗っていると、1000万円単位のお金が動くことがある。お金の動きを追っていくと、現金を家に置いていて、99万円ずつ海外に送金していることもある。海外に資産を移しておけば、税務署は気づかないと思うのかもしれませんが、すぐにバレてしまいます」(同)
というのも、日本は2013年10月、「税務行政執行共助条約」が発効し、世界の約60カ国と税務情報を交換。銀行口座の開示を頑なに拒んでいたスイスも条約に署名したほか、多くのタックスヘイブンも条約締結で合意した。今年の年末までに、加盟各国の税務情報をオンラインで結び共有化する作業が進んでいる。
「日本の税務当局は、海外の金融機関にある日本人の口座をのぞき見できるようになるでしょう。株の配当や売買益などの情報が筒抜けになってしまいます。それでも日本は税金が高いので、脱税のリスクを冒してでも、資産フライトを試みる富裕層は絶えないと思いますが……」(山田氏)
香港やシンガポールはまだ条約に署名していないが、口座の開示に応じる姿勢を見せている。資産フライトに対する網は確実に狭まっているのだ。
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