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債務危機がヤマを越えたころから伸びが鈍化
ユーロ圏の消費者物価、マイナス転落の裏側
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150114-00010001-shikiho-biz
会社四季報オンライン 1月14日(水)17時20分配信
EU(欧州連合)統計局が7日に発表した2014年12月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は前年同月比0.2%の下落となり、波紋が広がりました。マイナスとなったのは2009年10月以来5年2カ月ぶりです。当時はリーマンショック後の景気最悪期だったので、物価面からは、そのころに近い経済状態にまで落ち込んだとも言えます。
前月(2014年11月)の同0.3%上昇から一気に0.5ポイント落ち込んだのも驚きでした。先進国の消費者物価が1カ月でこれほど大幅に低下することはそうあることではなく、欧州景気の低迷を浮き彫りにしました。
ユーロ圏の消費者物価は09年に一時、マイナスに落ち込んだ後、2011〜2012年ごろには3%のプラスまで回復しましたが、その後は再び、伸びが急速に鈍化しました。13年2月には2%割れ、同年10月に1%割れとなり、14年もさらに低下が続いていました。
そして今回、ついにマイナスへ転落したわけです。このままでは物価下落が長期化する恐れがあります。ユーロ圏はまさにデフレの瀬戸際に立っているのです。
■景気低迷に原油価格下落が追い打ち
物価下落には3つの背景があります。第一に景気の低迷です。欧州債務危機は12年後半にヤマを越えましたが、皮肉なことに物価上昇率はそのころから鈍化傾向を強めていました。債務危機による実体経済への影響がじわじわと広がり、景気低迷が長期化したためです。
そもそも物価は、需給要因とコスト要因で変動します。需給要因とはその言葉通り、需要と供給の関係で動くものです。需要が増えて供給を上回れば物価は上昇し、逆に需要が減って供給のほうが多くなれば物価は下落します。
つまり、最近のユーロ圏の物価の伸びの鈍化や下落は景気低迷という需給要因によるところが大きいといえます。このように物価変動は景気の良し悪し、経済活動の活発化や停滞を反映します。物価上昇率が「経済の体温計」とも言われるゆえんです。デフレは経済の体温が下がり切った状態とも表現できるでしょう。
第二の背景は、原油価格の急落です。14年12月の消費者物価指数の中身をよく見ると、エネルギーの物価が前年同月比で6.3%も下落しており、これが全体のマイナス転落の“主犯”であることは明らかです。
これはコスト要因によるものです。現在のユーロ圏の物価下落は需給要因、コスト要因のダブルで起きているものであり、それだけ重大な事態と言えます。
しかも、このコスト要因と需給要因はお互いに影響し合う関係でもあります。今回について言えば、コスト要因である原油安が大産油国・ロシアの経済を悪化させ、同国と関係の深い欧州の景気にも悪影響を及ぼすという連鎖です。
原油安は本来なら家計負担軽減やコスト低下につながって景気にはプラス効果があるはずなのですが、現在のところは米国エネルギー産業への打撃や中東オイルマネーの先細りなどの懸念から世界的にも株価が不安定になっており、その中でも欧州はロシア経由のマイナスの懸念が強まっているのです。
■インフレ心配し後手に回ったECBの対応
第三の背景は、政策が後手に回っていたことです。ECB(欧州中央銀行)はこれまで段階的に利下げを実施してきましたが、小幅にとどまり、ペースも緩やかでした。このため、市場では以前から量的緩和を導入すべきとの声が上がっていました。
ECBのドラギ総裁も導入を示唆する発言は繰り返すものの、量的緩和の入り口の前で躊躇しているような印象で、ちょうどアベノミクス実施以前の日銀の姿勢を思い出させていました。
ECBは金融政策の目安として物価上昇率2%を事実上の目標にしています。正確に言うと「前年比2%を下回り、かつ2%に近い水準」としています。これを基準に見れば、実際の物価上昇率は2%をはるかに下回っているのだから、もっと早いペースで利下げを実施し、量的緩和にも踏み切っていい状況でしょう。
すでにギリシャなどの上昇率は大幅なマイナスに陥っているし、最も好調とされてきたドイツでも最近は0.5%まで上昇率が鈍化しています(2014年11月実績)。
従来、ECBにはインフレを心配して金融緩和をためらうような傾向がありましたが、今はそのような経済状況ではありません。インフレの心配よりデフレの心配のほうがはるかに大きく、市場では22日に開かれるECB定例理事会で量的緩和導入が決定されるとの見方が強まっています。
ECBが市場の予想通りに動くかが当面の最大の注目点で、その結果次第では世界の株価や為替相場に大きな影響を与えるとみられます。
このようにユーロ圏の消費者物価の注目度は従来にも増して高まっています。ただ、各国の消費者物価とは少しだけ違う点があります。消費者物価は通常、CPI(Consumer Price Index)という略称で表されますが、ユーロ圏の消費者物価はHICP(Harmonized Index of Consumer Prices)と表記されます。
つまり各国ごとの消費者物価指数を統一基準でまとめて作り直した指数です。14年12月分まではユーロ導入の18カ国のデータで、次回発表の2015年1月分からはリトアニアが加わって19カ国になります。
12月分の数字は「速報値」です。消費者物価の発表時期は米国が翌月の中旬、日本は下旬〜月末ですが、欧州は当月の下旬〜月末にいち早く速報値が発表されます(今回は年末年始を挟んでいたため、通常の月より速報値の発表が少し遅くなりました)。そのうえで約半月後の中旬(今回は16日予定)に改定値と各国ごとの詳しいデータが発表されます。このような点も頭に入れておくとよいでしょう。
岡田 晃
おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、コメンテーターも担当。現在は大阪経済大学客員教授。ストックボイスのメインキャスターも務める。わかりやすい解説に定評。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。
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