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いわさき・ひでとし●22年間の日本興業銀行勤務の後、JPモルガン、メリルリンチ、リーマンブラザーズの各投資銀行を経て現職。日経CNBCテレビでコメンテーターも務める(撮影:今井康一)
「残酷な20年後」を見据えて投資するということ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150113-00010000-shikiho-biz
会社四季報オンライン 1月13日(火)13時40分配信
今後20年間で世界の人口は15億人も増加する。それは中国一国が新たにこの地球上に出現するに等しい。一方で、日本を襲うのは恐怖の人口減少。それは現在の東京都が全部消滅してしまうに等しいものであるーー(『残酷な20年後の世界を見据えて働くということ』岩崎日出俊著・ソフトバンククリエイティブ刊)
これから先の世界を見通し、その変化に対応していかに働くべきかについてまとめた『残酷な20年後の世界を見据えて働くということ』。米国の研究者キャシー・デビッドソンが「20数年後には、65%の人が今は存在していない仕事に就く時代が来る」と指摘しているように、これからの20年で大変革が起きる。日本では、若者世代が払う社会保険料や税金が高齢層の年金や医療費に消え、勤労世代がいくら働いても余裕を感じることのできない「残酷な」社会の到来も予想される。そうした中で個人投資家はどのような行動を取るべきなのか。著者である投資・経営コンサルティング会社インフィニティの岩崎日出俊代表に、中長期の変化を見据えた投資の心得を聞いた。
ーー20年後の大きな変化として、人口動態のインパクトを指摘されています。具体的に日本企業にどのような影響が出てくると考えていますか?
20年後には日本の人口が大きく減少すると予想される。そのため、国内市場だけに特化している企業や業界は難しくなっていくだろう。たとえば予備校や私立学校など教育関係がそうだし、住宅関係も空き家が増えていくことにどう対処していくか求められる。もちろん、予備校でも早くから校舎撤退を着々と進めた代々木ゼミナールのように、いち早くこの問題に向き合っている企業もある。業界全体が縮小していく中で、一部の企業が残存者利益を享受するということもあるかもしれない。
一方で、世界銀行が発表している人口予測によると、世界の人口は72億人から87億人になるとみられている。世界規模で15億人も人口が増えることになれば、海外売上比率の高い企業や業界には追い風だ。トヨタ自動車など自動車業界はそうだろう。もちろん、世界市場での厳しい競争に勝ち抜いていくことが必要だ。
自動車であればフォルクスワーゲンやGMとの競争があるし、20年後にはグーグルが最大の競争相手になっているかもしれない。変化にきちんと対応して自らの強みを発揮していけば、より成長していける企業は日本にもたくさんある。いずれにせよ、多くの企業が日本のマーケットだけに立脚した会社ではなくなっていくことには変わりはないだろう。
ーー自動車以外にも中期的に有望な業界はありますか。
エレクトロニクス業界も海外売上高比率が高いという点では同じだ。しかし、最近では海外勢との競争で押されている面もある。電子部品などは存在感がいまだ大きいとはいえ、利益の多くは最終製品を販売するアップルのような企業が握っているような状況だ。アップルに取って代わるような企業が日本から出てくることが大切だろう。また、半導体などもかつては日本が強みを持っていた業界だが、韓国、台湾、中国などアジア勢の台頭で厳しくなっている。
すでに株価に表れているが、個別に見ていけばいい方向に変化している企業もある。それは経営者によるところが大きい。日立製作所は、会長兼CEOを務める中西宏明氏が社長に就任してから業績が改善傾向にある。その意味では、きちんとした経営者が出てくるような選考プロセスも重要になってくるだろう。
■今後20年の重要テーマとは
ーー著書の中では、「21世紀前半は遺伝学、ナノテクノロジー、ロボット工学の三つの革命が同時に起きた時代といずれ語られる」という、未来学者で現在グーグルにいるレイ・カーツワイルの言葉を引用されています。ご自身では、今後20年間でどのようなテーマが重要性を増してくるとお考えですか?
私自身もカーツワイルに近い考えを持っている。たとえば人工知能の画期的な発達だ。トヨタ自動車もこの分野に力を入れてきており、関係者と話していると「競争相手はグーグルだ」と言っている。PCと人間とのインターフェースを少しの工夫で変えたiPhoneが大ヒットしたように、人工知能も何か一つテクノロジーのブレークスルーがあれば大きく世界が変わってくる可能性がある。
もう一つは、20年後には人間が死ににくくなっていること。医薬品や医療分野で、幹細胞を利用した再生医療や遺伝子治療などの技術革新がどんどん進んでいる。ただ、このような先端医療を受けるには高額な医療費が必要になるとすれば、金持ちでなければ長く生きられないという問題も起きるかもしれない。
また、ドローン(小型の無人飛行機)を利用した物流の改革もすぐそこまで来ている。ドローン自体はすでに数世代にわたって開発が進み、今ではある程度のスピードで安全に行き交うことができるという。アマゾンは2015年にも運用を開始できるだけのテクノロジーはあると発表しており、後は規制当局が認可するかの問題となっている。テクノロジーがあって安全性が保証されているのであれば、認可しないわけはいかないだろう。
ーーこのような中期的な大きな変化を見据えて、個人投資家はどのような投資戦略を立てればいいのでしょうか。
株式投資という点では、全体のポートフォリオを考えなくてはいけない。将来的な急成長を期待する銘柄への投資は、多くても全体の1〜2割程度にとどめることが大事だ。なぜなら、そのような企業はリスクを取って事業展開しているため、事業が軌道に乗る前にダメになる可能性もある。事業化に成功したとしても、2番手戦略を取る企業に負けてしまうかもしれない。
また、勝ちパターンを意識することも大事だ。たとえば1989年以降の日経平均株価と米国のダウ工業株30種平均を指数化して推移を比べると、約25年間で十数倍の差がついてしまっている。さらにこの先の20年間でどうなるかだが、わたしは、ダウ平均はこれから先も上昇基調を続ける可能性が高く、一方、日経平均はそれほど大きな上昇は期待ができないと考えている。なぜなら、日経平均を構成する225銘柄には金融や生命保険、建設・不動産、鉄道などの内需型企業が入っていて、そのマーケットは国内の人口減に伴って縮小していくと予想される。また、20年という期間でみれば、大きな地震が起きるリスクも考えなくてはいけないかもしれない。
対してダウ平均を構成する30銘柄は、人口増で市場が拡大する世界のマーケットを相手にしている企業が多い。もちろん、金融危機など不測の事態で一時的に下落する局面はあるかもしれないが、08年のリーマンショックがあってもダウ平均は14年末に過去最高株価を更新した。結果的には下落局面でも売らずに持ち続ければリターンが出ていることになる。
このように、成長する蓋然性が、ある程度高いものにポートフォリオの8割を投資し、残りの2割をリスクのある反面より高い成長性が見込める銘柄に投資するのが、中長期的な変化を見据えた一つの投資戦略となる。
ーー著書では、変化が大きいこれからの20年に向けて働き方がどう変わっていくかにフォーカスされています。
たとえば東京大学法学部の中でいちばん優秀な人材は、裁判官や財務官僚、大学教授といった道に進むことが多かったが、今は変化してきている。プロ野球やサッカー、テニスの世界ではさらに変化は速く、桑田真澄投手や清原和博選手など才能のあるかつての甲子園球児はとにかく巨人に行きたいというように国内の人気チームを希望していたが、いまや米国の大リーグでメジャーリーガーを目指すのが当たり前だ。テニスは国体で優勝するだけでもすごいことだったが、錦織圭選手のように早くからフロリダに渡る選手もいる。
ビジネスの世界でも、自分の能力を高めるにはどこがいちばん適しているかを考えて、海外に出て行く若い世代が増えている。
海外企業は優秀な人材を世界規模で探している。アップル本社ではインド人が多く働いており、現地には生徒の多くがアジア系の小学校もある。成田からサンノゼ空港に行く便に乗ってシリコンバレーに行くと、インド人がたくさん乗っている。インドから直接シリコンバレーに行くには遠すぎるため、そこに目をつけた全日空がインドから成田、成田からサンノゼというルートで運行しているのだ。
ーー投資という面ではなく、これからは働くという意味で、より世界を意識する必要があるということでしょうか。
優秀な人材であれば、自宅で働いていたとしても世界が相手になってくる。ゲームの世界では、iOSやアンドロイド用にゲームを開発すればユーザーは全世界にいる。スマートフォン向けゲームを開発するフィンランドのスーパーセル社は『クラッシュ・オブ・クラン』『ヘイデイ』という2本のゲームで世界を席巻し、大きな利益を稼いでいる。このようなゲームの開発には60人から80人くらいのチームが必要となるそうだが、一人のクリエイターなりエンジニアのリーダーシップで全世界に通用するゲームが作れてしまうということだ。
■優秀な人材が集まる組織作りが経営の根幹
ーーゲームの世界も競争の厳しいレッドオーシャンだと思いますが、そこで成長する企業を見極めるポイントはありますか。
レッドオーシャンから一つ飛び抜けていないと埋没してしまう。飛び抜けるだけのものを持てるかどうかが重要で、それは最終的に一人の優秀な人材の才能にかかってくると考えている。任天堂にはそういう人材がいたし、今でいえばレベルファイブで「妖怪ウォッチ」を生み出した人材がそうだろう。一人の優秀な人材が出てくることによるインパクトがとても大きくなっている。
ただ、投資という意味ではそれだけでみるのは難しい。その人材がいなくなってしまうケースもあるからだ。今は優秀な人材が、働く企業を選ぶ時代であり、優秀な人材に選ばれる企業が強い。サッカーで言えば、優秀なプレイヤーであるメッシ選手がスペインのFCバルセロナというチームを選んでいるわけであり、いろいろなチームがメッシ選手を獲得しようと競っている。
未来学者のレイ・カーツワイルも、グーグルなら自分の知見を生かすチームが作れるということで、同社で人工知能プロジェクトに携わっている。グーグルの経営者は、そのような人材に選ばれるような企業を作り上げているのだ。アップルの場合は、スティーブ・ジョブズがデザインの天才といわれるような人材を集められたことが成功要因となった。このように、優秀な人材を集めることができる企業や組織を作れる経営者がいるかどうかが重要だろう。
ーー短期的な視点となりますが、2015年の相場についてはどうみていらっしゃいますか。
ここ2年間は外れのない相場だった。政府や日本銀行が株価を上げる政策を行ってきたからだ。しかし、これから1年間は難しい相場になってくるだろう。しばらくは株価が上昇する推進力はあるだろうが、それがなくなった後が勝負どころとなる。何も考えずに日経平均を買っていればリターンを得ることができた時期は終わり、個別銘柄についてきちんと精査していくという原点に帰る必要があるだろう。
これまでの2年間と2015年のいちばんの違いは、これ以上の追加の金融緩和の余地が少なくなっている点だ。国債やETFの購入にしても、これ以上購入枠を拡大するのは難しいだろう。13年4月に日銀が最初の金融緩和を決めた際に、黒田東彦総裁は「戦力の逐次投入はしない」と言っていたが、当時私は「もっとできる余地はある」とブログなどで指摘した。その見立てどおり昨年の10月31日には追加の金融緩和が決められた。しかし、これ以上の緩和となれば、それこそ異次元の内容にせざるをえないし、現実的ではないはずだ。
あとは企業の収益向上次第ということになる。米国の研究によるとPER(株価収益率)の平均値は歴史的に14倍程度で、一時的にこれ以上となってもやがてこの水準に戻っていくはずだ。株価が上昇するかどうかは、最終利益が伸びていくかどうかにかかっている。
ーー来16年以降では、17年4月の消費税再増税の影響が株価に織り込まれてくることも予想されます。
17年に消費税を再増税しても、まだ社会保障費の増加に追いつく水準には及ばない。社会保障費を減らす方向に変えていかなければ、増税の議論に終わりがなくなってしまう。若い人が働いて納めた税金が高齢者の年金や医療費など社会保障費に消えてしまう構造は変えなくてはいけない。しかし、実際には高齢者のほうが人口が多く、若い世代は投票に行かなくなっているので、社会保障費を削減する方向に変えていく政治がなかなか行われていない。
最近、著名投資家のジム・ロジャーズ氏が「自分が20歳以下の日本人だったら日本から出て行く」という主旨の発言をして注目を集めている。企業だけでなく、国家としても優秀な若い人材に選ばれるような国づくりをしなくてはいけない。
いわさき・ひでとし●22年間の日本興業銀行勤務の後、JPモルガン、メリルリンチ、リーマンブラザーズの各投資銀行を経て現職。日経CNBCテレビでコメンテーターも務める。
(聞き手:四季報オンライン編集部 島大輔)
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
島 大輔
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