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「アベノミクスのメカニズムを解明」(EJ第3950号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/411999485.html
2015年01月09日 Electronic Journal
アベノミクスの最初の6ヶ月について、リチャード・クー氏は
「ハネムーンと呼べるくらい多くの幸運が重なった結果」と述べ
ていますが、具体的にはどういうことでしょうか。
現象的には、日本経済の雰囲気が変わったことです。今まで重
苦しく空を覆っていた雲がなくなり、何となく明るい日ざしが見
えてきたというところでしょうか。これを否定する人はあまりい
ないと思います。民主党政権のときの経済政策があまりにもお粗
末だったからです。
このハネムーンについて、東京財団上席研究員の原田泰早稲田
大学政治経済学術院教授は次のように表現しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
円が下落し、企業の採算が好転し、株価が上昇している。生産
も増加している。雇用も拡大し、失業率は低下し、有効求人倍率
も上昇している。消費も民間企業設備投資も拡大している。消費
者物価上昇率も1%を超え、日本はデフレから脱却しつつある。
予想物価上昇率も上昇している。ただし、輸出数量は円安にもか
かわらず伸びていない。 ──原田泰著
『日本を救ったリフレ派経済学』/日本経済新聞出版社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
リチャード・クー氏によると、この円安/株高を演出したのは
日本の投資家ではなく、海外の投資家だったことです。数値とし
ては次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
◎2012年12月〜2013年10月の期間
・外国人投資家 ・・・ 12・2兆円の買い越し
・日本人投資家 ・・・ 5・3兆円の売り越し
・日本金融機関 ・・・ 6・5兆円の売り越し
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これは何を意味しているのでしょうか。
ここで海外の投資家というのはニューヨークのヘッジファンド
のことですが、安倍首相のアベノミクスの宣言を聞いて巨額の資
金を日本に持ち込み、円を売って日本株を購入したのです。円安
/株高になるのは当然です。
しかし、日本経済を熟知している国内の投資家や機関投資家の
大半はそれに乗らず、国内の債券市場にずっととどまっていたの
です。つまり、行動を変えなかったわけです。なぜ、行動を変え
なかったかといえば、彼らは日銀が金融緩和をいくらしてもイン
フレにはならないことを知っていたからです。
こうした国内投資家たちの行動は、外国投資家たちを利するこ
とになったのです。なぜなら、日本の機関投資家たちが債券市場
にとどまっていてくれたおかげで、長期金利が上がらなかったか
らです。だから、外国人投資家たちは安心して円を売り、日本株
を買うことができたのです。
しかし、少しずつ雰囲気が変わり始めます。それは国内の個人
投資家が参入してきたからです。そういう気持ちにさせたのは、
ワイドショーにおける経済評論家たちのあおりです。クー氏はこ
れについて次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
テレビのワイドショーでも、もしかしたらインフレになるぞと
いう声が出てきたのである。ウソも100回言えば人は信じると
言った人がいるが、あれだけマスコミがインフレになるかも知れ
ないと言い出すと、人々のマインドももしかしたらという発想に
なってくる。その意味で、アベノミクスのハネムーンで人々のマ
インドが変わるという効果は間違いなくあった。ワイドショー効
果と言うべきか、そういうものは確かにあったのである。これは
日本経済にとって顕著な変化であったと言えよう。
──リチャード・クー著
『バランスシート不況下の世界経済』/徳間書店
―――――――――――――――――――――――――――――
その当時10年国債の利回りは0・8%です。もし黒田日銀総
裁がいうようにインフレ率が2%になったら、いやなるかもしれ
ないと思ったら、利回りが0・8%しかない10年国債は暴落す
ることになります。2013年4月に黒田東彦氏が日銀総裁に就
任するまでの約3ヶ月の間に国内の機関投資家たちは「もしかす
ると、本当にインフレになるかも」と考えはじめたのです。
そこに飛び出したのが、黒田日銀総裁の異次元金融緩和発言で
す。このタイミングで国内の投資家たちも一挙に国債の大量売り
を仕掛けたのです。そのため、当時0・3%台まで低下していた
長期金利が一気に1%にまで跳ね上がったのです。
そうなると、外国人投資家たちも株と為替相場の調整を強いら
れるようになり、円を買って日本株を売る展開になったのです。
そのため、当時「1ドル=103円」まで進んでいた円安が90
円台の円高になり、株も20%程度下落したのです。これが5月
の日経平均の暴落です。
この5月の日経平均の暴落は、当時のバーナンキ米FRB議長
が2012年9月から導入した金融緩和(QE3)を縮小すると
発言したのが原因といわれていたのですが、それだけが原因では
なく、それまで動かなかった債券市場が反応しはじめたことの影
響が大きかったのです。
それでは、なぜ、当初日本の機関投資家たちがインフレにはな
らないと判断して債券市場にとどっていたかというと、日本では
日銀がいくら金融緩和して金融機関の日銀当座預金に資金を積み
上げても、企業からの資金需要がなく、マネーストック(マネー
サプライ)は増えないことを知っていたからです。つまり、マネ
タリーベースがいくら増えても、マネーストックは増加しないこ
とを熟知していたからです。
このことに関しては反論もあります。マネーストックは着実に
増えているという意見があることです。これに関する議論は、来
週のEJで論ずることにします。
─── [検証!アベノミクス/32]
≪画像および関連情報≫
●日本の機関投資家が動かなかった理由/リチャード・クー氏
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現時点で日本の民間が貯蓄しているGDP比8%の貯蓄のか
なりの部分が金融機関に入ってくるが、これを国内で運用し
ようとしても民間に借り手がいない。国内で唯一おカネを借
りているのが財政赤字を出している政府であり、そうなると
彼らも民間に借り手がいないなかで国債を買うことになる。
日本の投資家はこのような行動を20年間も強いられてきた
のである。彼らにしてみれば、日銀が量的緩和を再開して、
今度はスピードを速めて大胆にやると言ったところで、民間
に借り手がいなければ、この種の金融緩和はマネーサプライ
を増やすことができず、またマネーサプライを増やすことが
できなければ景気が良くなる理由もないことをよく知ってい
るのである。金融媛和が効くためには、マネーサプライが伸
びなければいけないが、マネーサプライが伸びるには、お力
ネを借りる人がいなければいけない。ところが、おカネを借
りる人がいない日本では、どんなに日銀が量的緩和で流動性
を供給しても、その資金は銀行から外へ出られず、そこで止
まってしまうことになる。このように貨幣乗数が限界的にゼ
ロかマイナスの状態ではマネーサプライは増えない。マネー
サプライが増えなければ、景気が良くなる理由はないしイン
フレが加速する理由もない。
──リチャード・クー著の前掲書より
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