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金利高騰で国債残高が雪ダルマ式に膨張し、日本経済が破綻へ向かう理由
http://diamond.jp/articles/-/64720
2015年1月8日 ダイヤモンド・オンライン
財政再建に関する議論は、通常は基礎的財政収支(プライマリーバランス)に関して行なわれている。これは、国債に関連する収支を除外した収支だ。政府の試算によれば、2020年度までの黒字化目標の達成は困難なものの、さして深刻な問題が発生することにはならない。
しかし、財政に関する本当の問題は、基礎的財政収支の外で発生する。すなわち、国債の利払い費が増大し、それを国債増発で賄うことによって、財政赤字が雪だるま式に増大する可能性があるのだ。
以下では、政府の試算で公債残高の対GDP比が徐々に低下するのは、金利とGDPに関して都合のよい仮定が置かれているためであること、また、真の問題は試算が示す時期(2023年度)以後に生じることを指摘する。
■問題は基礎的財政収支の外で発生する
本連載ですでに述べたように、基礎的財政収支に関する限り、2020年度頃までの政府試算(「中長期の経済財政に関する試算」平成26年1月20日、以下「試算」http://urx2.nu/fZeG)に示されている結果は、さほど無理のあるものではない。すなわち、そこで想定された名目GDPの成長を前提にする限り、税収伸びの想定は妥当だし、歳出伸びの想定も妥当と考えられる。もちろん、想定した成長率が達成できなければ、税収は減る。他方で歳出は伸び続けるだろう。また、年金のマクロ経済スライドも発動できない可能性もある。こうしたことになれば、基礎的財政収支は悪化するだろう。
ただし、それより重要な問題は、基礎的財政収支の外で発生するのである。
すなわち、国債残高がすでに巨額であるため、金利が高騰すると国債の利払い費が急増するのだ。それを賄うために国債を発行すると、雪だるま式に国債残高が膨れ上がり、財政が破たんする危険がある(注1)。
金利上昇により国債費が増加し、そのため財政赤字が拡大する状況は、「試算」でも示されている。
「経済再生ケース」で国の一般会計について見ると、14年度から20年度の期間では、基礎的財政収支対象経費が11.4兆円増加するのに対して、国債費は17.6兆円増加する。20年度から23年度の期間では、基礎的財政収支対象経費は6.2兆円しか増加しないが、国債費はわずか3年間で13.1兆円も増加する。このように、国債費の増加は著しく、他のあらゆる経費の増加を上回る。
この結果、歳出と税収等との差額は、14年度から20年度の間に約10兆円増える。そして20年度から23年度には、さらに約10兆円増える。わずか3年で10兆円も増えてしまうのだ。これを賄うには、基本的には国債発行によらざるをえないだろう。
こうした状況に国債市場が対応できるのか、あるいは日銀による国債購入をこの時点になっても続けざるをえないのか、まったく見当がつかない。
国債費が、20年度以後に急激に増加するのは、18年度までは名目長期名目金利が低く想定されているからである(図表1参照)。名目長期金利は、14年1.0%から20年には3.9%に上昇し、さらに4%を超えて上昇するとしている。これは、不自然な仮定だ。
最近の数年間では、異次元金融緩和で巨額の国債が購入されているため金利がきわめて低い水準に抑えられているが、これは異常な状況である。18年度までの期間において名目金利が名目GDP伸び率より低いのは、図表2に示された過去の趨勢からしても、正当化しがたい。
19年度以降は、マクロ変数を正常な形にせざるをえないために、金利は4%を超えるとされているのだろう。ただし、それが国債費増に影響する期間は、計算の対象となっていない(この点は後で検討する)。
(注1)金利が上昇しても、国債利払い費はすぐには増加しない。新金利になるのは、残高全体ではなく、新規に発行される分だけだからだ。ただし、新金利への移行はかなり早く進行する。
国の普通国債残高は2014年度末で780兆円であり、14年度国債発行総額が181兆円なので、2年後には46.4%が新金利に入れ替わり、4年後には92.8%が入れ替わる。
なお、2014年度国債発行計画は以下のとおり(億円)。
国債発行総額 1,815,388
借換え債 1,221,495
財投債 160,000
一般会計分 412,500
また、2014年度予算での国債費は、以下のとおり(億円)。
国債費 232,702
債務償還費 131,383
利払い費等 101,319
■公債残高の対GDP比は、金利と経済成長率の仮定による
「試算」では、国債費が増加するにもかかわらず、公債残高の対GDP比が「経済再生ケース」で徐々に下がるとしている(注2)。
しかし、こうなるのは、金利と経済成長率の仮定による。過去の実際の値は、図表2に示すとおりだ。名目GDP伸び率は1%以下であり、10年国債利回りは、2005〜08年頃まで1.5%程度である。これに比べると、18年度頃まで名目GDP成長率が名目金利より高く想定されているのは不自然であり、そのことが公債残高の対GDP比低下の原因となっている。
そこで、金利と経済成長率の仮定を変えた場合に結果がどうなるかを計算してみよう。ここで対象とするのは、試算における「国・地方の財政」である。また、「試算」のうち、「経済再生ケース」を参照することとする。
図表3においては、試算の結果の他につぎの場合を示した。
第1は、金利としては試算の結果を用い、GDPの成長率は金利に等しいとした場合である。第2は、GDP成長率が1%の場合である(注3)。
結果を見ると、試算の場合は、公債残高の対GDP比は13年度がピークであり、それ以降23年度まで低下を続ける。23年度の値は12年度より低くなる。
しかし、GDP成長率=利子率と仮定すると、19年度まで比率は上昇を続け、23年度の値は12年度より高くなる。
GDP成長率=1%と仮定した場合には、比率は上昇を続け、23年度には2.40になる。
(注2)債務残高概念について
2014年度末において国の普通国債残高は780兆円である。これに、借入金、地方債などを加えると971兆円になる。この他に、いくつかの債務残高概念がある(『日本の財政関係資料』のP.6参照)。
他方、「試算」において14年度の「公債等残高」は958.9 兆円だ(この数字が14年度末か、14年度平均値か明らかでない)。
(注3)経済成長率の見通しが変われば、税収の見通しも変わり、したがって、基礎的財政収支の見通しも変わる。
しかし、この影響はあまり大きくない。その理由はつぎのとおりだ。
いま、GDP成長率が2%から3%に変わったとしよう。税収の弾性値を1とすれば、これによる税収の増加率は、1.03/1.02≒1.01。つまり1%増加するに過ぎない。ところが、利子率が2%から3%に変わったとすれば、利払い費は4年後には1.5倍になる。
したがって、金利と経済成長率が等しいとしても、それらが増大すれば金利支払いのほうが税収増加より大きく増加し、したがって財政赤字は拡大する。
■本当の問題は2023年度より後にある
「試算」は、2023年度までの結果しか示していない。しかし、本当の問題は23年度後に発生する。なぜなら、名目金利は20年度以降に急上昇するからである。
18年度までは名目GDP成長率のほうが名目金利より高いと想定されているが、20年以降はこの関係が逆転し、名目金利のほうが名目GDP成長率より高い値になる。したがって、ドーマーの定理により、公債残高の対GDP比は上昇するはずなのである(注4)。
これをシミュレーション分析で確かめた結果が、図表4だ。ここでは、14年度以後につき、つぎのように仮定した。
(1)名目金利は、13年度の4.8%から不変。
(2)GDP成長率は、13年度の3.7%から不変。
(3)金利の変化が国債利払いに与えるタイムラグを無視し、当該年度の金利に公債残高を乗じた額だけ公債残高が増加するとする。なお、(注2)で述べたように「試算」における「公債等残高」の数字は年度末か年度平均値かが明らかでないが、これを年度平均の数字と解釈し、当該年度の金利に当該年度の公債残高を乗じることとする。
そして、基礎的財政収支については、赤字ゼロの場合と基礎的財政収支の赤字が残る場合を計算した。後者では、14年度の赤字16.3兆円から、GDP成長率と同率で赤字が増加するとした。
結果を見ると、赤字ゼロの場合には、公債残高の対GDP比は、22年度の1.84までは低下するが、そこがボトムで、以後は継続的に上昇する。そして、50年度には2.45にまで上昇する。
毎年度の公債残高の増加額は、14年度には9.6兆円でしかないが、20年度には45.7兆円になり、30年度には84.3兆円に、40年度には134.8兆円になる。50年度には215.3兆円になる。
基礎的財政収支の赤字が残る場合には、公債残高の対GDP比は、19年度のボトム1.85から急速に上昇し、50年度には3.75になる。
毎年度の公債残高の増加額は、20年度には68.3兆円になり、30年度には134.1兆円、そして、40年度には229.8兆円、50年度には389.6兆円になる。
このように巨額の残高増をいかにして吸収しうるのか、まったく想像もつかない。
(注4)ドーマーの定理
金利と経済成長率が公債残高の対GDP比に与える影響は、つぎのとおりだ。
(t−1)年度末の公債残高をD(t−1)、t年度の基礎的財政収支赤字を冲、t年度の公債残高に係わる金利をi、公債償還額をqD(t−1)とすると、t年度の公債費はiD(t−1)+qD(t−1)。
t年度末の公債残高をD(t)は、D(t−1)−qD(t−1)+iD(t−1)+qD(t−1)+冲=D(t-1)+iD(t−1)+冲。
図表4のシミュレーションモデルでは、この式によって公債残高の推移を計算した。
ここでH、冲=0の場合を考えよう。この場合には、D(t)=(1+i)D(t−1)。したがって、D(t)=(1+i)^t D(0)。
他方で、t年度のGDPをY(t)、成長率をgとすれば、Y(t)=(1+g)^t Y(0)。したがって、公債残高の対GDP比は、D(t)/Y(t)=[(1+i)/(1+g)]^t D(0)/Y(0)。
tの増加に伴い、この値は、i<g ならゼロに収束、i=g なら一定、i>g なら発散する。
■金利が高騰すれば、さまざまな面で大きな問題が発生する
以上の検討から分かるように、日本財政の将来を握るのは、金利の動向である。金利が高騰すれば、国債の利払い費が急増する。公債残高の対GDP比は、GDP成長率と金利がどのように推移するかによって、大きく変わる。
「試算」において2020年度頃までに公債残高の対GDP比が低下するのは、それまでの時点で名目金利が低く想定されており、また名目GDP成長率が名目金利より高く想定されているからだ。この想定が満たされなければ、結果は大きく異なる。
現時点では日銀による大量の国債購入によって、金利が不自然なほど低い水準に抑えられている。しかし、こうした状態はいつまでも続けられるものではない。
「試算」で想定されているように長期金利が4%を越える水準まで上昇すれば、財政収支以外でも、さまざまな面で大きな問題が発生する。
まず、金融機関が保有する国債には、膨大な評価損が発生するだろう。日本銀行は異次元金融緩和によって巨額の国債を購入し保有しているが、ここでも巨額の損失が発生する。それは、日銀納付金の減少を通じて、国民負担になる。
日本の財政と経済は、この点に関して大きな不確実性に包まれていると言わざるをえない。
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