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「円安株高はアベノミクスと無関係」(EJ第3948号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/411867997.html
2015年01月06日 Electronic Journal
アベノミクスについて書いた本はたくさんあります。このテー
マを書くとき、どの本を選ぶか迷ったのです。そこで、ジュンク
堂池袋店に行き、椅子に座って時間をかけて本を選択した結果、
次の3冊を中心にして書くことにしたのです。
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1.片岡剛士著/『日本経済はなぜ浮上しないのか/アベノミ
クス第2ステージへの論点』/幻冬舎刊
2.伊東光晴著/『アベノミクス批判/四本の矢を折る』
/岩波書店刊
3.服部茂幸著/『アベノミクスの終焉』/岩波新書1495
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アベノミクスに関する書籍は、アベノミクスを肯定的に受け止
めるものと批判的にとらえるものに分けられます。タイトルを見
てもわかるように、「2」と「3」は後者です。それも「2」は
アベノミクスというよりも安倍政権を明確に批判しているのに対
し、「3」はアベノミクスを「日銀と政府の物語」としてとらえ
それに騙されてはいけないと説いています。つまり、批判本です
が、感情的に批判しているわけではないのです。
アベノミクスを肯定的にとらえる本はたくさんあります。その
なかにあって「1」は、あくまで豊富な実証データに基づいてア
ベノミクスを客観的に検証している点が好感が持てます。そして
その方向性の正しいことは認めています。ここまでのEJの記述
は、主として「1」に準拠しています。
これら3冊の本には「消費税増税」について際立った違いがあ
ります。それは、「1」と「2」が消費税増税についてはほとん
ど言及していないのに対し、「3」は2つの章を設けてその悪影
響について述べています。つまり、「3」は、アベノミクスの方
向性については是とするものの、消費税増税は余計であり、延期
すべきであると説いています。
偶然ですが、「1」と「2」の著者──伊東氏と服部氏はいず
れも京都大学の出身であり、「3」の片岡氏は慶応義塾大学商学
部の出身です。年齢的には伊東氏は88歳、京都大学名誉教授で
あり、雑誌『世界』の論客の一人です。服部氏は50歳台であり
現在福井県立大学経済学部教授です。これに対し、片岡氏は40
歳台で、三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策
部主任研究員です。
これら3氏の所論を参考にしながら、アベノミクスを検証して
いくことにします。第1次安倍政権が発足したときからアベノミ
クスがスタートしたと考えると、アベノミクスは、丸2年が経過
したことになります。
しかし、2013年と2014年は、状況はまるで異なるので
す。2013年は、アベノミクスの成否がそのままあらわれた年
ですが、2014年は、4月に消費税増税が行われており、増税
のダメージがモロにあらわれた年であるからです。
消費税増税は、アベノミクスがはじまる前にその実施が決まっ
ており、常識的に経済政策としては、増税をアベノミクスに含め
て考えるべきではないのです。本来であれば、安倍首相は経済弾
力条項を使って3%の増税こそ延期すべきだったのです。
しかし、法律通りに3%の増税を決断したことによって、1〜
3月の駆け込み需要と、4〜6月の実質GDP成長率の大幅な落
ち込み、7〜9月期と10〜12月期のマイナス成長と、アベノ
ミクスは表面上は失敗に終わっています。しかし、円安と株高は
10月の追加緩和もあって、2014年も大きく伸びています。
したがって、アベノミクスを批判的にとらえる向きは、消費税
増税を含めてとらえますが、真にアベノミクスの成果を検証する
には、2013年の成果を中心に見るべきです。
伊東光晴氏は、2013年の円安と株高はアベノミクスには関
係がないと次のように断言しています。
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株価上昇も円安も安倍政権の経済政策がもたらしたものであろ
うか。財政出動一つをとって見てもよい。安倍政権の三本の失の
うちの一つ、人からコンクリート、つまり南海トラフ地震の被害
予想220兆円と、首都直下型地震の被害予想112兆円のため
の対策費、10年間で200兆円の公共投資、国土強靭化政策は
いまだ動いていない。私は株価の上昇も円安も別の要因に基づく
ものであると断言できる。 ──伊東光晴著
『アベノミクス批判/4本の矢を折る』/岩波書店
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伊東氏は、株価については、2012年11月13日から上昇
に転じ、2013年5月7日には1万4180円になり、リーマ
ンショック前の水準に達していますが、黒田東彦氏が日銀総裁に
就任したのは2013年3月20日のことであり、異次元金融緩
和を宣言した金融政策決定会合は4月4日のことなのです。つま
り、政策が決定するはるか以前から、株価の上昇は起こっている
と伊東氏は主張しています。
服部茂幸氏も伊東光晴氏とほぼ同主旨のことを次のように自著
で述べています。
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リフレ派の主張にしたがい、安倍晋三首相がデフレ脱却のため
に日銀による無制限の金融緩和を訴えたのは首相になる前の12
年11月のことだった。直ちに株価上昇と円安が進行した。13
年3月にはリフレ派の黒田東彦が日銀総裁、岩田規久男が日銀副
総裁に就任した。4月にはリフレ派の主張にそって、異次元緩和
が始まった。(中略)皮肉なことに、異次元緩和が始まると、日
本経済は失速した。きっかけは5月23日の株価大暴落である。
その後時期によって多少の違いはあるが、全体的には株価上昇も
円安もストップした。13年後半の経済成長率も低迷している。
──服部茂幸著/『アベノミクスの終焉』/岩波新書1495
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─── [検証!アベノミクス/30]
≪画像および関連情報≫
●高度成長期の幻想にとらわれる安倍首相/浜 矩子氏
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「安倍政権の経済政策はアベノミクスではなく、『アホノミ
クス』です」。浜氏は挑戦的な言葉でこう切り出したうえで
「問題点は大きく分け3つあります。それは、@『成長』に
とらわれすぎている点、A人間に対する関心が少ない点、B
金融政策がお粗末な点です」と指摘した。「成長」にとらわ
れすぎているとは、いったいどういうことだろうか。浜氏は
次のように表現する。
「アベノミクスは、高度成長期の幻想にとらわれすぎている
のです。今の日本経済の問題は、成長がないことではなく、
むしろ再分配がうまくいっていないこと。つまり、貧困・格
差こそが、一番の政治的課題なのです。日本の『相対的貧困
率』は16%(2009年)ですが、我々のような洗練され
た経済環境にある国家にとって、この数字は高すぎます。た
とえばデンマークは6%(2010年)程度です」。ここで
浜氏が指摘している「相対的貧困率」とは、国内の所得格差
に注目する指標で、国民の所得中央値の半分以下の所得しか
ない人の割合だ。OECDによると2010年のOECD平
均が11・1%、アメリカは17・4%、フランスは7・9
%となっている。 http://bit.ly/13S9Vx6
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