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「2014年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況」-「性別賃金の対前年増減率の推移」(「厚生労働省 HP」より)
実質賃金、20年前と変わらず 一億総“お金使わない”現象を生んだ日本の特殊性と原因
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150106-00010005-bjournal-bus_all
Business Journal 1月6日(火)6時0分配信
ここ数年、若者のアルコール離れが叫ばれていますが、その実態は「若者の」ではなく「働き盛りの」のようです。
「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、飲酒習慣率(週3日以上、1日1合以上飲酒する人の割合)を2003年と12年で比較すると、男性全体では37.4%だったのが34.0%と下がっています(各年代別データは以下のとおり)。
・20代:20.2%→14.2%
・30代:35.6%→30.8%
・40代:48.5%→37.3%
・50代:50.0%→45.3%
・60代:41.0%→44.2%
・70代:24.0%→25.0%
上記で注目されるのは、60〜70代で数値が上がっている点で、「長く働いてきたんだから、酒くらい自由に飲ませてよ」といった声が聞こえてきそうです。ちなみに、女性は20代と30代でやはり下がっているものの、40〜70代では上がっています。女性が元気になってきた証左なのでしょうか。
前回連載記事『なぜ日本人は“異常に”お金を使わない?ひたすら貯蓄するワケ データと感情面より考察』では、金融資産の多くを保有している高齢者は、いざという時のために備えておきたいという思いが強いがゆえにお金の循環が生まれないのではないか、と推測しました。それでも過去の日本では、あまり先のことを心配せずに多くの国民がお金を使った時代もありました。
ある程度の大人になったら性格が変わらないのと同様に、成熟市場でもある日本の国民性が変わることは当面ありえないでしょう。ただ、そうした国民性でも、バブル景気という歴史の存在が示すように、一定の条件が整えば皆お金を使います。資産や給与が上がり続けていくと誰もが信じられれば、財布の紐も緩むのでしょう。今はその逆で、日経平均株価が上がろうとも、資産や収入が上がっていくどころか年金のみでは生活できない、貯金も足りないと思っている人のほうが多い状態です。
日本証券業協会が12年に行った調査では、国内株式を保有している人の割合は11.2%となっていました。そのうち57.8%は金融資産の合計額が300万円未満です。300万円未満であろうとも、ある程度お金に余裕がある層ともいえるでしょう。その層の人にしてみても、日経平均株価が12年時点の9000円前後から現在の1万6000〜7000円になる過程で金融資産を倍増させたとしても、増額分は300万円未満です。将来の不安を取り除いて消費が上向くインパクトはありません。ただ、一朝一夕で貯蓄が増えることはありませんが、老後の収入の期待値が高まれば(生活コストを上回ることが実感できれば)、将来不安が今よりは軽減されることでしょう。
それではその老後の収入の柱となる年金制度に対して、国民はどのように捉えているのでしょうか。いくつかのデータを追っていきます。
●年金制度が信頼されない日本
「国民年金被保険者実態調査」(厚生労働省/11年)によると、年金(国民年金第1号被保険者)の滞納者は年々増えています。さかのぼると1996年の10.9%から一貫して上がり続け、11年には26.2%にもなっています。滞納の理由の答えとして、トップは「保険料が高く・経済的に支払うのが困難」が74.3%、「年金制度の将来が不安・信用できない」が10.1%となっています。この「信用できない」という回答は、08年の調査では4.1%にすぎませんでした。
さらに、年収1000万円以上の人に限定すると、「信用できない」という理由が17.7%に上ります。同じく08年では9.7%でしたが、ここからは意図的に払わないという層がいることが見えてきます。年収200万円以下においても08年から11年においては、4.1%から9.2%と倍増しています。
驚くべきは、年金の滞納者においても民間保険会社に対して生命保険には月額平均1.2万円、個人年金型保険に同1.4万円払っていることです。収入が低いことなどを理由に年金保険料の支払いを免除されている全額免除者においても、それぞれ1.1万円、1.2万円を払っています。国民年金の保険料は月額1.5万円程度です。
詳細な説明は省きますが、国民年金は負担金の一部は国が払っており、個人を支援するような仕組みになっています。一方で、民間の生命保険商品には税額控除が少しある程度で、個人から見た直接的な支援はありません。また生命保険会社が莫大な利益を上げているという事実は、加入者が得をしそびれているという穿った見方もできます。
つまり理論上は国民年金のほうが圧倒的に「割の良い」保険です。健康保険と病気に対する生命保険の比較においても然りです。それでも公的保険商品への支払いは優先されていません。国民にそう思われる国とはなんだろうかと、やや肌寒いデータともいえます。
●実質賃金が20年前と同水準に
「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省/14年)によると、同年において一般労働者の平均賃金(42歳、勤続11.9年)は対前年で0.7%下がり295.7万円となっています。驚くべきことは、これが96年時と同水準ということです。96年から今までの動きとして、01年の305.8万円をピークに減少が続き、現在の水準になっています。
同省による昨年9月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動分を考慮した実質ベースで現金給与総額は前年比2.9%減となり、マイナスが15カ月続いています。消費増税や円安による物価上昇に、賃金の伸びが追いついていないことになります。97年に消費税は3%から5%に上がり、昨年になって8%になり、やがて10%になろうかどうかという状況です。つまり、一般労働者にとっては20年近くも実質的に賃金が上がっていないことになります。老後に備えてお金が欲しいと思っても、まず足元の生活に安心感が出にくい状況がうかがえます。
さらに、本来はセーフティネットになるはずの、そして実際にそうなっている年金制度も信頼できていないという人が多いのです。
筆者の周囲でも、30代前半以下は年金制度について極めて冷めた見方を示しており、会社員は存在すら意識していません。半面、フリーで活動している層は、制度全体というより「毎月いくら払うのか」「老後はいくら受給できるのか」など詳しい情報を把握していますが、それでも年金制度に何も期待していません。なるべく払わないという選択を探ってしまいます。未払いと支払い免除の違いも理解しないまま、「目先のお金がないから」と言ってなんとなく未払いになっている人もいました。若いうちから年金に期待して生きて行くのもどうかと思いますが、生活に直結する国の制度が期待されていないというのは望ましい状況ではないでしょう。
●お金がなくても楽しく生きる若者
では、日本国民は皆不幸な雰囲気を醸し出しているのかといえば、そうでもありません。自分の趣味嗜好や人生の目標に沿ったもの以外のことにはまったく価値を見いださず、財布の紐も固いというのが実像ではないでしょうか。アルコールへの出費など真っ先にカットです。20代によく見られるのは、「楽しく話すだけなら、誰かの部屋で缶ビール、学生食堂でコーヒーでも十分に楽しい」という極めて合理的な判断です。その「誰かの部屋」も単身で住んでいる人のマンションではなくシェアハウスなどでわいわいやっていたりして、とっても楽しそうです。価値観は人それぞれですので断言はできませんが、過剰に将来のことを心配するのではなく毎日を楽しむことは、生きる力なり人生を楽しむためのコツであるように思えます。
ただ、お金持ちの高齢者も若者も、自分の意思でお金を使わないような流れは存在します。併せて、最近は少し底を打ったのかもしれませんが、少子化・晩婚化のあおりで労働人口減少、そして人口全体の減少へとつながっていきます。大半の企業や人材が自由に海外進出できるわけはなく、市場全体の縮小や衰退を少なからず意味しています。そのような中で、高齢者になって自由に働けなくなった時にも最低限の生活は保障されていると思えるのか、思えないのかによって、自由に労働できる現役世代の取れる選択肢の幅や気分が違ってくるのではないでしょうか。老後も一定レベルの生活が保障されていると実感できれば、資産の世代間移転も進み、より多くの人がお金の問題から解放されることで、人生の選択肢は広がるのではないでしょうか。
そのために重要な要素となる公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は昨年、運用配分を国債から株式にシフトしていくと発表しました。現在の株価水準で大量に日本株式を買い将来株価が下落すると、年金制度への信頼下落のみならず運用資産喪失という実害が発生し、国民の生活水準の切り下げにもつながりかねません。もちろん株価が上昇すれば、その逆の結果となります。ただ、投資家に占める外国人比率が大きい中、株価は日本以外の要因に反応することが多々あります。海外の大規模な自然災害が日経平均株価を押し下げることも想定されます。そうしたコントロールできない要素が存在していることもあり、多くの国民は株価が上がり続けるという想像を描けないのではないでしょうか。
株価を押し上げる政策が重視され、しばしば「日経平均株価、●年ぶりの●円達成」などと報じられますが、本質的な年金制度の仕組みについては何も変わらず、じわじわと若年層・現役世代の負担増と将来的な受給減少が進み、中途半端な改革にとどまっています。
本来であれば「年金を集める側」と同時に「出て行く側」も併せて修正されていくべきであり、人口構成上「出て行く側」のインパクトは高まり続けていきます。しかし、「出て行く側」に痛みが伴う変更は、選挙で高齢者の票が離れてしまう恐れがあるため難しい。結局、若年層・現役世代は地道に情報を収集し選挙で投票したり、貯蓄の方法や収入を上げる方法などを研究しつつ、(語学やカルチャーにアレルギーがなければ)海外に移住することも含めて自己防衛していくしかありません。
そうして地合いが変化して、年金制度全体の抜本的な改革が実行に移った時に初めて、国民の最大公約数的な生活安定基盤が実現されていくのではないでしょうか。その兆候がこの10〜20年の間まったく見えないことが、景気回復感が湧いてこない底流にあります。
中沢光昭/経営コンサルタント
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