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急成長するオンデマンド経済:労働市場の未来
2015年01月05日(Mon) The Economist
(英エコノミスト誌 2015年1月2日号)
オンデマンド経済の隆盛は、労働者にも企業にも政治家にも、難しい問題を突きつける。
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スマートフォンの画面に表示された配車サービス「ウーバー(Uber)」のアプリ。スペイン・バルセロナにて〔AFPBB News〕
20世紀初頭、ヘンリー・フォードが流れ作業の組み立てラインと大量の労働力とを結びつけ、従来よりはるかに安価かつ迅速に自動車を製造できるようにした。その結果、自動車は金持ちのおもちゃから大衆の移動手段になった。
今日、サービス分野で同じことを実現しようと奮闘する起業家が増えている。コンピューターの力とフリーランス労働者を組み合わせて、かつては富裕層のみが享受できた贅沢なサービスを提供しようとしているのだ。
運転手に雇ってあげる――食材の買い出しもお願いね
米ウーバー(Uber)はお抱え運転手を提供する。米ハンディ(Handy)は清掃人を手配する。米スプーンロケット(SpoonRocket)はレストランの料理を家庭に届けてくれる。
米インスタカート(Instacart)は冷蔵庫に入れる食材を買い出してくれる。サンフランシスコではすでに、若いコンピュータープログラマーが王女様のような暮らしをすることができる。
そればかりではない。このオンデマンド経済は、時折贅沢を味わう以上の広がりを見せている。米メディキャスト(Medicast)のアプリをクリックすると、2時間以内に医者が自宅に往診してくれる。
弁護士やコンサルタントが必要なら、米アクシオム(Axiom)が前者を、英エデン・マッカラム(Eden McCallum)が後者を用意してくれる。研究開発上の問題を解決したり、広告アイデアを思いついたりしたフリーランス労働者に報奨を与える企業もある。
豪フリーランス・ドットコム(Freelancer.com)や米イーランス・オーデスク(Elance-oDesk)のように、ありとあらゆる種類のフリーランス労働者を斡旋する業者の数が増えている。後者は930万人の労働者を370万社に紹介している。
オンデマンド経済の規模はまだ小さいが、急速に成長している。2009年にサンフランシスコで創業したウーバーは、現在53カ国で事業を展開する。2014年には10億ドル以上の売上げを計上し、400億ドルの企業価値を有する。
流れ作業の組み立てラインのアイデアと同様に、企業とフリーランス労働者の橋渡しをして問題を解決するというアイデアは単純なものに思える。
しかし、大量生産と同様、このアイデアは労働の組織から、資本主義社会における社会契約の本質に至るまで、あらゆる物事にとって重要な意味を持つ。
オンデマンド経済を後押しする力の中には、数十年前から存在してきた要因もある。1970年代以降、ヘンリー・フォードが創出に一役買った、大企業と大労働組合を有する経済は衰退してきた。製造現場の仕事は自動化で消滅したり、海外にアウトソーシングされたりした。大企業は終身雇用を放棄してしまった。米国では約5300万人の労働者がすでにフリーランスとして働いている。
オンデマンド経済の発展を加速させる2つの作用
しかし、2つの強い力がフリーランス化のスピードを速め、さらに多くの経済分野への導入を推し進めている。その1つはテクノロジーだ。
コンピューターの力を安価で手に入れられるということは、米アップルのマックを持つ一匹狼の役者が、ハリウッドスタジオに匹敵する映像作品を作り出せることを意味する。コンピューターのプログラミングや法的文書の作成など複雑な作業は、今では構成要素に分割して、世界中の専門家に下請けに出すことができる。
オンデマンド経済のおかげで、社会は十分に使い切れていない資源を活用できる。ウーバーは人々に車を貸し出させ、米イノセンティブ(InnoCentive)は頭脳の余剰能力を貸し出させるわけだ。
もう1つの大きな力は、社会習慣の変化だ。カール・マルクスは、世界は生産手段を持つ人々――有閑階級――と、そうした人々のために働く労働者とに二分されるだろうと言った。現実には、世界はますます、資金はあるが時間がない人々と、時間はあるが資金がない人々とに二分されつつある。オンデマンド経済は、この両者が互いに取引する手段を提供している。
この手段の後押しを受け、サービス事業者も製造業者の後に続き、自社のコアコンピテンシーに集中するようになるだろう。
外部業者を使って問題を処理する(そうした機能を社内で維持しないということ)「トランザクションコスト」は低下している。オンデマンド企業は、決まった人材を管理するのではなく、中間業者として様々な労働者と事業者を結びつける手配をし、品質を監督する。
こうした企業はフルタイムの弁護士や会計士を雇って給与や手当を保証しているわけではない。ウーバーの運転手には、働いた分だけ報酬が支払われ、年金や医療保険は自己責任となる。
企業が担ってきたリスクが、再び個人に転嫁されようとしている。このあり方は、すべての人に影響を及ぼす。
オバマケアと個人のブランド化
ロンドン・パリ大混乱、タクシー運転手が配車アプリに抗議
2014年6月、英ロンドン中心部で行われた「Uber(ウーバー)」への抗議デモで、道路を埋め尽くしたタクシーと、その間を自転車で移動する男性〔AFPBB News〕
オンデマンド経済はすでに政治的議論を巻き起こしている。なかでもウーバーを巡ってはかなりの議論になっている。
多くの市や州、国が、この運転手共有事業を、安全性や規制を理由に禁止してきた。タクシー運転手はウーバーに対する抗議運動を展開した。ウーバーの運転手は待遇の改善を求めてストライキを行った。
テクノロジー楽観主義者は、これらをすべて産みの苦しみにすぎないと片付け、オンデマンド経済は顧客の選択肢を広げる一方で、働き手は好きな時に働けるようにしてくれると主張する。
使われていなかった資源を活用するのだから、社会にとってはいいことだ。さもなければ、ウーバーの車のほとんどはガレージにしまい込まれたままになっているだろう、と。
実は、これはもっと微妙な問題をはらんでいる。消費者が恩恵を被ることは明らかだ。仕事と子育てを両立させたい女性など、安定より柔軟性を重視する欧米の労働者にとっても利点がある。オンデマンド労働が公共サービスの提供効率を高めるのに役立つのなら、納税者も恩恵を受ける可能性がある。
しかし、柔軟性より安定を重視する労働者、例えば多くの中年の弁護士、医師、タクシー運転手などが脅威を感じるのはもっともなことだ。加えて、オンデマンド経済が不公平を生むのは間違いない。納税者が、年金を積み立ててこなかった多くの契約労働者を援助する羽目になるからだ。
政策立案にあたっては、こうした微妙な問題をわきまえておく必要がある。オンデマンド企業を禁止している政府は、他の経済分野に不利益をもたらしているにすぎない。しかし、だからといって、オンデマンドの隆盛を傍観していいわけではない。政府は雇用と賃金の調査方法を変える必要がある。
欧州の多くの国の税制度は、フリーランス労働者を十分な権利を持たない二級市民として扱っているし、米国諸州は「契約労働者」の規則がばらばらで、ここには改善の余地がある。
年金と医療保険をはじめとして、社会保障制度のあまりに多くの部分が雇用主を通じて提供されている。年金も医療保険も、個人と結びつけて管理し、会社が変わっても移動できるようにするべきだ。この点で、オバマケアは大きな前進だった。
しかし、政府が政策を、個人主義の進んだ時代に合わせて転換したとしても、オンデマンド経済が個人にこれまで以上に大きなリスクを課すことは間違いない。このような社会で生き残るためには、複数のスキルを身につけ、そのスキルを更新し続けなければならない。大手サービス企業で働く専門家は、自己教育により大きな責任を負わなければならない。
さらに、自分の売り込み方も学ばなければならない。個人的なコネクションやソーシャルメディアを使ってもいいが、本当に野心のある人なら、自分をブランド化するという方法がある。流動性の増した世界では、誰もが「あなた」という企業の経営法を学ぶ必要があるのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42586
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