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キリン、なぜ凋落? 現実味帯びるサントリーとの経営統合、海外事業失敗が深刻化
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150103-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 1月3日(土)6時0分配信
キリンホールディングス(HD)は2015年3月末の株主総会と取締役会を経て、中間持ち株会社キリンと中核事業会社キリンビールで社長を務める磯崎功典氏が社長に昇格する。現社長の三宅占二は代表権のない会長に退く。キリンビールの新社長には15年1月1日付けでキリンビールマーケティング社長の布施孝之氏が就任した。磯崎氏は「キリングループは重要な局面を迎えている。キリンが復活できるかは、今後数年の取り組みにかかっている。最優先に取り組む課題は2つ。第一に1日も早い国内ビール事業の復活。次に海外、特にブラジル事業の立て直しだ」と語った。
トップ交代の会見は昨年12月22日に行われた。悲壮感漂う会見になったのは、「ビール業界の盟主」の座を完全に失ってしまったからだ。キリンHDの14年12月期連結決算(日本基準)見通しの売上高は前年同期比2%減の2兆2100億円、当期純利益は59%減の350億円。減収減益決算になったのは、ビール、清涼飲料、海外飲料、医薬・バイオケミカルの主要4事業がそろって不振だったためだ。
対するアサヒグループHDの同期連結決算見通しの売上高は4%増の1兆7830億円、当期純利益は11%増の690億円と増収増益。14年2月に本格投入したプレミアムビール「ドライプレミアム」のヒットで、過去最高益の数字を塗り変えた。
サントリーHDの同期連結決算見通しの売上高は19%増の2兆4400億円、当期純利益は81%減の370億円。14年5月に買収した米ウィスキー大手ビーム社の売り上げが上乗せされたが、買収費用の負担増から増収減益の決算となる。
以上の結果、キリンHDは売上高首位の座をサントリーHDに明け渡し、当期純利益はアサヒグループHD、サントリーHDの後塵を拝し3位に転落した。
●復活の活路、海外進出で誤算
かつてキリンHDは「ガリバー」と謳われた時代があった。ビールのシェアが1966年に50%を超え、独占禁止法による会社分割を気にしなければならないほどの圧倒的な存在だった。だが、01年に「スーパードライ」で空前の大ヒットを飛ばしたアサヒグループHDに業界首位の座を奪われた。
06年3月、キリンHDの前身であるキリンビールの社長に就いた加藤壹康氏が復活のキーワードにしたのが海外事業。国内事業だけでは成長に限界があるとして、海外市場の開拓を首位奪還の突破口とした。07年7月に持ち株会社キリンHD体制に移行。加藤氏はキリンHDの初代社長に就き、M&A(合併・買収)を積極的に仕掛けていくことになる。豪乳業1位のナショナルフーズ社を2940億円、豪ビール2位のライオンネイサン社を2300億円投じて完全子会社化した。09年にはサントリーHDとの経営統合交渉が明らかになったが、キリンHDの母体である三菱グループの猛反発を買って挫折。加藤氏は10年3月に引責辞任した。
その加藤氏の後任としてキリンHD社長に就いたのが三宅氏だった。海外M&A路線を継承し、11年8月、ブラジル2位のビール会社スキンカリオール社を2000億円で買収すると発表した。スキン社の株式は創業家の孫がそれぞれ経営するアレアドリ社(持ち株比率50.45%)とジャダンジル社(同49.55%)の2社が保有していた。キリンHDはアレドリア社と買収で合意したが、もう一方の株主であるジャダンジル社は「事前に相談がなかったのは、株主間契約に違反する」と異をとなえて法廷闘争に持ち込んだ。
01年11月、キリンHDがジャダンジル社の保有株をすべて買い取ることで決着したが、結局買収金額は3000億円に跳ね上がっており、スキン社買収はキリンHD凋落の端緒となった。1年後の12年11月、社名をブラジルキリンに変更。キリングループであることを内外にアピールするためだった。
●深刻なブラジルキリンの赤字
ブラジルキリンが知名度を高める絶好の好機が訪れた。昨年6月12日から7月13日にかけてブラジルで開催されたサッカーFIFAワールドカップ(W杯)である。
キリンHDはW杯日本代表の公式スポンサーになり、サッカーとビール好きのブラジル国民に「KIRIN ICHIBAN」ブランドを広めることを狙った。しかしその目論見は外れ、ブラジルキリンの14年度第3四半期決算の売上高は1274億円、営業利益はのれん等償却前の段階で6億円の赤字(償却後は70億円の赤字)に沈んだ。
現在、ブラジルキリンのブラジル国内でのシェアは約15%。「バドワイザー」ブランドを持ち約65%と圧倒的なシェアを誇る世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ社に太刀打ちできず、ダンピング販売を余儀なくされる事態に陥った。
ブラジルキリンの赤字はキリンHD本体の財務に深刻な影響を及ぼしつつある。買収でブランドやのれんといった無形固定資産が膨らんだからだ。のれん代とは買収価格と被買収企業の純資産の差額をいうが、13年12月末時点でブラジルキリンのバランスシートに計上されているこれらの無形資産は1408億円。キリンHDはこれを20年で均等償却する方針で、毎期83億円前後の償却負担が生じる。ブラジルキリンは償却額を上回る100億円程度の営業利益を稼がなければ、キリンHD本体の決算に利益面で貢献することはできないが、現状では償却前の段階ですら営業赤字である。
海外企業のM&Aに潜む落とし穴にのれん代がある。大型案件の場合、のれん代の計上額とその償却負担は巨額に上り、買収した企業の業績の足を引っ張る。キリンHDはブラジルキリンだけでなく複数の海外企業を買収してきた。この結果、のれんやブランドの無形固定資産は14年9月末時点で8587億円に達している。これを毎期均等償却していくのだからかなりの重荷だ。営業減益の原因にもなる。
こののれん代の重石を脱するために、会計基準を日本基準から国際会計基準(IFRS)に切り替える企業が現れ始めた。日本基準ではのれん代は20年以内の償却が義務づけられているが、IFRSは償却の必要がないからだ。
しかし、キリンHDはIFRSに切り替えることができない事情がある。ブラジルキリンが赤字経営だからだ。IFRSを採用すればのれん代の償却負担は避けられるが、毎期厳格な減損テストを実施して資産の価値を算定しなければならず、マイナスになったら一気に減損(赤字計上)することになる。
キリンHDがIFRSに移行すれば赤字経営のブラジルキリンは間違いなく減損対象になる。巨額の減損を計上すれば、キリンHD本体の期間損益が吹き飛ぶ可能性がある。赤字転落の事態を避けるためには、日本の会計基準のままでのれん代を均等償却していくしか道がないのだ。新社長に就任する磯崎氏が「ブラジル事業の立て直し」を最優先の経営課題に掲げた裏には、こういった背景がある。
●現実味帯びるサントリーHDとの経営統合
キリンHDは14年に入り株式時価総額でアサヒグループHDに抜かれ、初めて業界首位の座から転落した。12月30日大納会の終値で計算した時価総額は、アサヒグループHD 1兆8117億円に対して、キリンHDは1兆4446億円。差は広がっている。それどころか、サントリーHDの上場子会社サントリー食品インターナショナルが1兆2895億円でキリンHDの背後に迫る。いまや時価総額2位の座さえ危うくなっているのだ。売り上げではサントリーHDに抜かれることがはっきりしている上に、株式時価総額でも苦戦が続いている。
キリンHDに復活の目はあるのだろうか。国内のビール市場では独り負けが続き、活路を求めた海外ではブラジル事業が大失敗に終わった。八方塞がりともいえる状況の中、磯崎氏は「キリンが復活できるかは、今後数年の取り組みにかかっている」と危機感を口にする。
もし磯崎新体制の反転攻勢が空振りに終わった時に現実味を帯びてくるのが、一度破談に終わったサントリーHDとの経営統合である。三菱グループ企業幹部は「両社の統合では、三菱商事出身でローソンの立て直しに成功しサントリーHD社長に就任した新浪剛史氏がキーマンになる」と語る。
「サントリーHDの佐治信忠会長兼最高経営責任者(CEO)は、キリンHDを手に入れることを諦めていない。この夢を実現するために新浪氏をサントリーHD社長に招聘した」(業界関係者)との声も聞こえる中、キリンHDにとっては厳しい環境が続く。
編集部
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