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恒例の年初のご祝儀相場、今年は「微妙」と考える根拠。 (本田康博 証券アナリスト)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150102-00010000-scafe-bus_all
シェアーズカフェ・オンライン 1月2日(金)6時42分配信
あけましておめでとうございます。昨年の株式市場は、日経平均が約8%上昇し3年連続のプラス成長となりましたが、経済指標がマチマチだったことなどから、過去二年に比べるとやや期待外れ感の残る一年となりました。未年の今年はどんな年になるでしょうか。ちなみに直近2回の未年の株式市場は一勝一敗です。
■広く知られる年始の「アノマリー」
大晦日から休場している株式市場は、今年は5日月曜が市場開きです。株式市場では、年末の最終営業日を大納会、年始の市場開始日を大発会と言います。TVのニュース等でも毎年紹介されていますので、ご存知の方も多いかと思います。
その株式市場で広く知られるアノマリーに、「大納会から大発会にかけて株価が上昇する」現象があります。曜日や季節等によってパターン化された市場の偏りのうち、明確な理由づけが困難なものをアノマリーと言います。
この年初のアノマリーは、ご祝儀相場とも言われています。願掛けで買いから入る人が多くなるからということですが、「皆がそうするだろうから乗ってしまえ」という考えから買っている人も大勢いそうです。
図で見てみると、確かに横軸の上側に不自然に思える偏りを確認できます。図の青棒は年始の「始値」で見た場合、赤棒は「終値」で見た場合の、年末終値からの上昇率(または下落率)です。
過去30年を振り返ると、年末の終値から比べて年始の「始値」が上昇した年が25回、下落したのが5回と、上昇回数が下落回数を大きく上回っています。また、下落した年でもさほど大きな下落ではないことが確認できます。上昇率の平均は約1%です。
仮にアノマリー(偏り)がなく下落する確率が1/2だったとすると、下落が5回以下となるのはたった0.016%、6000回に1回程度の出現頻度となります。そんな確率の事象がここで発生しているとは考えにくいので、アノマリーが実際にあると考えるのが妥当でしょう。
一方、年末の終値に対して年始の「終値」がどうなったかを見ると、上昇が19回、下落が11回と、少々頼りない感じです。図では赤棒で示していますが、この30年で3回ほど大きく下落しています。上昇率の平均は0.3%です。
「終値」で売買した場合の「平均0.3%のリターンで、10回に1回は大きく負ける」というのは、あまり積極的に資金投入する気にはなれない数字です。単純に年始アノマリーだけに張るのであれば、年末に買って年始の寄り付き(取引開始時点)で売るのが合理的かもしれません。
■「大雑把な分析」で分かった傾向とは
上の図をもう一度よく見ると、大きく下落した年では、いずれも始値が前年末終値比マイナスであることが分かります。これは、アノマリーによる始値の上昇期待があったところが実際には下げてしまったので、市況を悲観する向きが大勢となった結果とも考えられます。何らかの期待があるところにそれに反する結果が提示されると、それがサプライズとなって短期的な方向性を決定づける場合があります。
また、当然ですが、前日までの市場動向もアノマリーの「効き目」に影響します。実験的に、先ほどの過去30年のデータを、大発会の前営業日の米国市場(S&P500指数)の日次上昇率と、大納会の日経平均日次上昇率のいずれか若しくは両方がマイナスだった場合と、どちらもプラスだった場合とに分けてみました。
結果は、前者は「始値」が上昇した割合が83%、平均上昇率0.7%、「終値」が上昇した割合が57%、平均上昇率0%と「効き目」が弱く、後者のどちらもプラスだった場合は「始値」上昇86%、平均上昇率1.7%、「終値」上昇86%、平均上昇率1.3%と、アノマリーの「効き目」が強く出ました。
ここから類推されるのは、直前の市場動向が日米ともに上向きな場合は年初のアノマリーが出やすく、市場動向がネガティブ或いはマチマチな場合にはアノマリーは出にくいという点です。
今年の場合は、昨年末の大納会で日経平均が結構下げていますので、おそらくアノマリーは出にくく「微妙」な感じになるのではないでしょうか。
■「大雑把な分析」の留意点
年一回のイベントに現れるアノマリーですので、サンプル数の少なさから、統計的に有意な結論を出すのは難しいのですが、こうした大雑把な分析でも意味のある結果を得られることは少なくありません。また、世間一般で言われていることを自分なりに噛み砕いて理解する上でも、大雑把な分析は有用です。
ですが、何でもかんでも大雑把にぶった切ってみれば良いというわけではありません。その大雑把な切り方には、必ず理論的な背景や論理的な洞察、合理的な意図がなくてはなりません。結果の見栄えを良くするためだけに切り方を変えるのは、意味がないだけでなく、結果から得られる学びをミスリーディングしてしまいます。
市場には他にも様々なアノマリーやバイアス等が存在します。統計やITのスキルを駆使してそれらを独自に分析することで、何か素晴らしい発見があるかもしれませんし、そうでなくても自分の投資スタイルについて深く考えるきっかけにもなるでしょう。きっと今よりもっと投資を楽しめるようになると思います。
■まとめ
・パターン化された市場の偏りのうち、明確な理由づけが困難なものをアノマリーと言います。
・株式市場には、年初に上げ相場になりやすいというアノマリーがあります。
・過去データで見ると、年初のアノマリーは始値には比較的出やすいですが、終値では大きく反対に動くこともあります。
・過去データで見ると、日米ともに前営業日のパフォーマンスが良いとアノマリーが出やすい傾向があります。
・2014年大納会が下げ相場だったため、過去データから、アノマリーが強く出にくいパターンと言えます。
・統計的に有意でない大雑把な分析も有用ですが、分析結果に恣意性が働かないよう留意すべきです。
・市場データ等を自分で処理して分析すると、投資が一層楽しく感じるようになります。
・投資にはリスクがあります。リスクとリターンを良く考えましょう。
本田康博 証券アナリスト・馬主・個人投資家
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