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「ワタミの介護」でも事故が起きた(写真は創業者の渡辺美樹氏)/(C)日刊ゲンダイ
“競争の原理”で拡大続けるブラック的施設 安倍政権が招く「介護崩壊」の現場/中村淳彦
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/156019
2014年12月26日 日刊ゲンダイ
“過酷、汚い、薄給”の代名詞になっている介護現場ですが、安倍政権はさらに介護報酬の減額を決定しました。かつて介護施設を運営し、現場を知っている者からすると、この先、介護の現場がどうなるのか恐ろしい。
介護現場が悲惨になったのは、00年に介護保険制度が導入された後、介護が“ビジネス”になってしまったことが大きいでしょう。法人や経営者への条件が一切ないため、異業種から次々に参入し、2万5000だった高齢者施設は、この10年間で8万に増えました。それでも、現時点で特別養護老人ホームに入所できない高齢者が52万人もいます。施設はまだ足りないのですが、介護に“競争原理”が持ち込まれ、利益を最優先する営利団体が現れたことでおかしくなりました。
安倍政権は特養の高い収益率と、1施設当たり約3億円の内部留保があることを指して「介護報酬が高過ぎる」と主張しています。
しかし、9割以上の介護施設の経営状態は常にギリギリです。なのに、ボロ儲けしているような印象を持たれるのは、ごく一部の施設がブラック的手法で職員の報酬を不当に安くしたり、詐欺的手法で入居者を集めているからです。
なかでも悪い評判を聞くのは介護フランチャイズ大手のAです。“介護業界の風雲児”と呼ばれる若い経営者は「介護の産業化」を掲げ、メディアにも頻繁に取り上げられます。しかし、トラブルが急増している。半年前には定員超過が常態化し、その事実を隠蔽するために介護日誌を改ざんしていたことが明るみに出ました。しかも、介護保険を不正請求していたことまで発覚して、指定取り消し処分を食らっています。Aのズサンな介護現場の実態を元社員が語ってくれました。
「私が働いていた事業所は暴力沙汰が日常茶飯事でした。直営店のほとんどが赤字なのに“月100万円の利益”という資料を作って加盟店を募集していました」
“過酷、汚い、薄給”の介護業界は、正直、いい人材が集まらない。質の悪い経営者も多い。でも、働いている人も、職を転々としているような方も多く、経営者に文句を言えないケースもあるのです。
また、有料老人ホーム「レストヴィラ」を運営するワタミの介護も、死亡事故が相次ぎ、問題があることで有名です。何度か見学に行った、というケアマネジャーはこう言います。
「最大の問題は、介護の素人である渡辺美樹氏が自分をアピールするために“4大ゼロ”という無理難題を現場に押しつけていることです。オムツゼロ、車椅子ゼロ、経管食ゼロ、特殊浴ゼロ……と、たしかに理想ですが、現実を無視している。結局、職員の手が回らず、床ずれが悪化したあと死亡したり、誤嚥を起こして亡くなる事故が起きています」
本来、介護は国が関わるべき公的部門なのに、安倍政権は国費を削り、民間に任せようとしているところがあります。その結果、悪徳業者がはびこる余地を生んでしまっています。
▽なかむら・あつひこ 1972年、東京生まれ。専修大学卒。ノンフィクションライター。著書に「ワタミ・渡邉美樹 日本崩壊させるブラックモンスター」(コア新書)、「崩壊する介護現場」(ベスト新書)。近著「日本の風俗嬢」(新潮新書)も話題。
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