04. 2014年12月26日 21:36:11
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「掉尾の一振」で高値更新、年明けは反動を警戒=来週の東京株式市場 2014年 12月 26日 17:04 JST [東京 26日 ロイター] - 来週の東京株式市場は、8日につけた年初来高値1万8030円更新が視野に入りそうだ。年内の営業日は残すところ2日間だけだが、昨年末同様、大納会に向けて株価が上昇する「掉尾の一振」への期待感が根強い。もっとも年明けには原油価格の動向や新興国経済に対する不安感は強まりかねず、年末高の反動を警戒する声も出ている。 日経平均の予想レンジは1万7500円─1万8100円。 12月20日(20日が休場の場合は前営業日)の終値から年末までの成績を算出すると、2004年以降の過去10年間では全勝。平均上昇率は2.44%と好パフォーマンスだ。今年の12月19日終値1万7621円40銭に平均上昇率を掛けると1万8051円となり、8日の年初来高値を更新する計算となる。 年末高を表す「掉尾の一振」は合理的な説明のつかないアノマリーとされるが、個人投資家の節税対策売り一巡に伴う需給改善や新年相場への期待感などが背景とされる。また「本格的ではないが、クリスマス休暇明けの海外勢が市場に戻り、先物中心に売買を活発化させる可能性がある」(国内証券)といい、先物主導で買いが強まれば3年連続の年末高値となりそうだ。 もっとも年明けは一転、弱含むとの見方が出ている。いちよしアセットマネジメント執行役員運用部長の秋野充成氏は「年明けで雰囲気がガラッと変わり、原油安やそれに伴うロシアなど新興国経済に対する不安感が再燃しかねない」と警戒感を示す。年末にかけた上昇の反動もあり、利益確定売りが優勢になりやすいとみられている。 また年内に行われる12月29日のギリシャ大統領選挙で、「大統領が選出される可能性が低く、解散・総選挙となればギリシャの政局不安が広がる」(SMBC日興証券ストラテジストの圷正嗣氏)という。世論調査などによれば、財政緊縮に反対する急進左派連合(SYRIZA)が現与党の新民主主義党(ND)を破って第一党になる可能性が高いとみられている。 ほか、年明けの米国では2日に12月米ISM製造業景気指数、7日に12月米ADP民間部門雇用者数、9日の10月米雇用統計など重要な経済指標が目白押し。市場では「米経済の好調ぶりを確認したい」(ネット系証券)との声が出ている。 国内では、年明けにコンビニ大手3社や良品計画(7453.T)、ABCマート(2670.T)など小売り各社の決算が発表される。1月9日はオプションSQ(特別清算指数)算出日となる。 (株式マーケットチーム) コラム:ドル独歩高シナリオに死角、来年125円の攻防へ=内田稔氏 2014年 12月 26日 17:57 JST 内田稔 三菱東京UFJ銀行 チーフアナリスト
[東京 26日] - 米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月の会合で、正常化(利上げ)開始まで、忍耐強くいることができるとの表現を新たに採用した。すぐにではないとの条件付きながら、利上げ開始に向けて大きく前進した。 10月に株価が大きく下落した際も、フローの量的緩和策を終えた。12月も、原油価格が急落するなど、市場が混乱したタイミングと重なったが、正常化を進める意向を明確に示した。よほどのことがない限り、FOMCはこのまま2015年半ばの利上げへと進んでいくのだろう。 他の先進国の中央銀行が、金融緩和の程度を強める中、正常化に向かう米国のドルが独歩高の様相を呈しているのは、自然な動きと言える。2015年もこうした相対的な金融政策の格差が継続する公算が大きく、ドル高相場がしばらくの間、続くとみる。 インターコンチネンタルエクスチェンジ(ICE)に上場されるドル指数は、すでに2005年以来10年ぶりの高値更新を目前に控えている。欧州中央銀行(ECB)が量的緩和に踏み切り、対ユーロでのドル高が進めば、このドル指数はさらに2003年来の水準へ一段高となる可能性も高まる。しかし、このドル高には死角もありそうだ。 <ドル高はシェール投資抑制の遠因か> まず、ドル高は米国の物価の伸びを抑制する効果を持つ。もちろん、米国がこれから進める利上げは、引き締めではなく正常化。金利の上げ下げによる金融政策を行うため、利下げを行う発射台を作ろうというものだ。物価の伸びが鈍くても、利上げには着手するだろう。 ただ、引き締めではない以上、利上げに着手した後も、市場の反応をみながらゆっくりと利上げを進めるとみられる。前年比年率換算で5%という高い伸びをみせた第3四半期でさえ、物価の伸びは鈍いままだ。ドル安と原油価格の高騰によって、ガソリン価格が2倍へと跳ね上がり、17回連続しての利上げを行った2004年当時と状況は大きく異なっているということだ。利上げペースが、急ピッチで進むドル独歩高を正当化するほどのものではないという見方に市場が傾くとき、自ずとドル高のペースは和らいでいくだろう。 次に、ドル高が原油価格の下落をもたらしている可能性がある。ドル建てで表記される原油価格は、ドルとは逆相関の位置にあるためだ。ただでさえ、石油輸出国機構(OPEC)の減産合意の見送りや需要見通しの引き下げに加え、米国産シェールオイルの増産も続く見通しであり、原油価格の上昇は見込みにくい。原油価格が低位で推移すると、個人消費への追い風となる反面、採算の悪化を理由にシェール企業が新規の投資を抑制する。ここまで、個人消費と並んで、設備投資も好調であった点を忘れてはならない。 そもそも、今回の米国の景気回復は、2009年6月から始まり、2015年1月で68カ月目を迎える。これは、今回を含む戦後12回の景気回復局面の中でも、すでに5番目の息の長さだ。仮に、2015年6月に利上げが始まれば、その時点で73カ月目と戦後4番目の記録に並ぶ。この息の長い景気回復を支えてきたのが、量的緩和策とシェール革命である点に異論は少ないだろう。 量的緩和策は金利の低位安定を実現し、株式相場や住宅市況の改善を促した。これが、資産効果を通じて、好調な個人消費を支えてきたと考えられる。ただし、その量的緩和策は10月いっぱいで再投資を除き、資産買い入れ(フロー)は終了している。今後は、FRBがバランスシートを維持するといった残高(ストック)の量的緩和策のみとなる。 シェール革命も、先に述べた通り、2015年以降も革命であり続けるのか、疑問が残る。米国には当面、実質金利がマイナスといった追い風も残るが、そのマイナス幅も、正常化に向かう過程で徐々に縮小していこう。2015年の米経済はこれまでの景気の下支えが弱まるうえ、通貨高ものしかかってくる構図と言えよう。 もちろん、こうしたドル高による負の側面が顕在化したり、幅広く市場が材料視したりするまで時間を要する見込みだ。当面、米国が正常化に向かうとの期待から、年央にかけてドル高が進む時間帯が先行するだろう。時として、オーバーシュート気味にドル高の勢いが加速する場面もみられるかもしれない。ただ、ドル高が進むほど、ドル高への逆風も強まる点に留意が必要だ。 <1ドル=130円シナリオの壁> さて、一方の円を取り巻く環境は、そう大きく変わりそうもなく、依然として先安観は根強い。130円に達するとの見方も増えている通り、基本的にドル円は底堅く推移しよう。 ただし、10月31日の日銀によるサプライズ緩和や、消費税増税の引き上げ延期と衆院の解散・総選挙、さらには日本の格下げといった円安材料のオンパレードが一巡したのも事実だ。特に、重視すべき点は、ブレーク・イーブンインフレ率をみる限り、10月の追加緩和の直後に反発した日本の期待インフレ率が、足元では追加緩和の決定当時よりも著しく低下していることだ。サプライズ緩和が、期待実質金利の低下を通じて、株高と円安へと波及する経路は、実際のところもうあまり機能していない。 事実、12月はドル高の影に隠れ、みえづらいが、幅広い通貨に対する円相場の動きを確認すると、おおむね横ばいか小幅ながらも円高に推移した。また、国際収支の観点でも、2015年の貿易赤字は原油価格の下落により縮小しよう。第一次所得収支(旧・所得収支)の黒字増加も見込まれ、経常収支の悪化には歯止めがかかりそうだ。金融収支では、円建てでみた対外資産価格の上昇によって、対外直接投資も減少する可能性が高い。このため、注目を集める対外証券投資の活発化が予想されるものの、国際収支の全体をみると、必ずしも一段の円安を促すほど円の需給バランスが変化するわけでもなさそうだ。 こうしてみると、2015年のドル円相場は、意図的な円の押し下げとも映りかねない国内サイドのサプライズ緩和がない限り、上昇ペースは鈍化するのではないか。12月にもみられた通り、市場が不安定化する場面では時折、円の買い戻しも起きよう。 特に「取り戻す」がキーワードの安倍首相にとって第1次内閣が退陣した2007年高値の124円台に迫れば、少なくともドル円については取り戻し切ったことにもなる。円安をけん制するトーンをじわりと強めるかもしれない。2015年のドル円は125円程度に迫る場面では上値の重さも増すとみている。 *内田稔氏は、三菱東京UFJ銀行の市場企画部グローバルマーケットリサーチチーフアナリスト。1993年、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、国内外での外国為替のトレーディングやセールスを経て、2007年よりリサーチ。2013年J-money誌第23回東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では個人ランキング1位。 米雇用統計に向けドル上昇、新興国動向が波乱にも=来週の外為市場 2014年 12月 26日 17:15 JST [東京 26日 ロイター] - 来週から年明けにかけての外為市場では、米雇用統計への期待感からドルの強い地合いが続きそうだ。ただ、中国経済の失速懸念やギリシャ選挙の先行き、原油価格の動向などへの警戒感は依然くすぶっており、波乱要因になる可能性も残る。 予想レンジはドル/円が118.50─121.50円、ユーロ/ドルが1.2000─1.2300ドル。 クリスマス休暇で参加が細っていた海外勢が戻ってくるため、来週以降は再び投機的な動きも出始めると見られる。年明けにかけて焦点となるのは、12月前半に付けた新値121.86円を試すかどうかだ。クリスマス休暇前に市場では「短期筋を中心に、とにかく新値トライを実現したいとの空気が高まってきている」(国内金融機関)との指摘が出ており、目先の焦点となりそうだ。 年明けの9日には米雇用統計を控えており「当面の材料はアメリカの強さ。今までのトレンド継続となればドル買い」(あおぞら銀行のマーケットメイク課課長、諸我晃氏)との見方が出ている。強い結果が示されれば「いざ利上げ、というムードが高まりやすい。年明け早々にも122─123円を目指してもおかしくない」(外為どっとコム総合研究所の調査部長、神田卓也氏)との指摘もある。 年内には30日にコンファレンスボード消費者信頼感指数の発表があるほか、住宅関連指標の発表がある。市場では「指標をこなす中で、米経済の強さを確認していきたい」(邦銀)との声が出ている。年明け2日にはISM製造業景況指数、6日にISM非製造業景況指数の発表があるほか、7日には雇用統計の前哨戦となるADP全米雇用報告も関心を集めている。 ユーロの弱さが、ドルを下支えする側面も意識されそうだ。欧州中央銀行(ECB)が早期に追加緩和に踏み込むとの期待が高まっており、ユーロ/ドルは下方向を試しやすいと見る向きが多い。早ければ1月の理事会で追加緩和を決めるとの期待感も出ているが、ドイツなどは反対姿勢を崩していないことから曲折も予想され、流動的といえる。 上田ハーローの外貨保証金事業部長、山内俊哉氏は、1月の可能性はやや後退してきていると見る一方、原油価格の12月の下落が大きかった上、ECBが目標とするバランスシートの拡大が進んでいないとして「1月に(追加緩和を)打ち出してもおかしくない」とも指摘している。 <新興国の動向次第で波乱も> 一方、原油価格や新興国の政治・経済情勢には波乱要因になるリスクがくすぶっており、引き続き関心が寄せられそうだ。投機筋による円ショートポジションが依然、高水準にあることから「ポジション調整の口実に使われやすい」(国内金融機関)との指摘もある。 原油価格は下落傾向の一服感が強まっているものの依然、安値圏にある。外為どっとコム総研の神田氏は、足元の経済指標から米個人消費の強さがうかがえるとして「原油安が米景気にプラスとの見方は定着しつつある」と指摘する一方、急激に値が動けばロシアやノルウェーといった産油国の経済が圧迫されてリスクオフの動きが出て円が買われやすくなると見る。 成長減速が懸念される中国では、年明け後に製造業PMI、貿易収支、消費者物価指数の発表を控えている。市場では「メーンシナリオはソフトランディング」(国内金融機関)だとして、テーマとしてはやや後退気味との指摘があるが、ネガティブサプライズへの警戒感も根強い。 ギリシャ大統領選は23日、議会で第2回投票が行われ、与党擁立候補が当選に必要な票数を獲得できず、最終投票が29日に行われることになった。最終投票でも大統領を選出できなければ、解散・総選挙となる。総選挙の結果、財政緊縮に反対する急進左派連合(SYRIZA)が政権を奪取した場合には、市場が動揺する可能性もある。 (為替マーケットチーム) コラム:2014年のドル円相場を動かした人物トップ10=植野大作氏 2014年 12月 26日 13:42 JST 植野大作 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 26日] - 大晦日の着地を見るまで、まだ少し日数が残っているが、世の中的には「今年の10大ニュース」など、「振り返り企画」が相次ぐ時期だ。年初来のドル円相場を改めて振り返ると、序盤は不気味な月足陰線の始動、中盤は異様なこう着、終盤は強烈な吹き上がりと、相場の景色が激変する難解な1年だった。 2015年の相場を展望する際の論点整理の意味合いも込め、今回は「2014年のドル円相場を動かした人物トップテン」を考えてみたい。以下、筆者の主観で選んだ人々とその選考理由を列記する。 ●第1位=黒田東彦日銀総裁 10月31日のサプライズ緩和によって、ローソク足実体部の最大高低差が3.11円に及ぶ2014年最大の日足陽線を出現させた。以来、日銀によるマネーの供給速度は年間80兆円まで増額され、市場の一部に根強かった「金融緩和限界説」を一蹴すると同時に、定例会見のたびに言い続けてきた「必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく金融政策を調節する」というコメントが単なる脅しではなかったことを証明した。 その後発生した強烈なドル高・円安の乱気流に市場を巻き込み、「日銀がそんなに物価目標2%の達成にこだわるのなら、その是非や成否はともかく、当面は執行部に喧嘩を売る円高推しのポジションは持たない方が賢明」との雰囲気を晩秋の為替市場に蔓延させた。 名目国内総生産が約480兆円しかない国の中央銀行が年80兆円ものマネー供給をいつまで続けられるのか、率直に言って良く分からない面もあるが、それゆえに、非常に強い円の先安観を市場に植え付けている。この先、日銀が物価目標2%の「達成」「修正」あるいは「放棄」のいずれかを宣言するまでの間は、黒田日銀総裁の顔色を無視した円高投機は仕掛けにくい雰囲気が続くとみられる。 ●第2位=ジャネット・イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長 市場の虚をつく金融緩和で狂乱の円安祭りを演出した黒田日銀総裁ほどのインパクトには欠けるが、バーナンキ前議長から引き継いだ量的緩和の縮小(テーパリング)計画を「連邦公開市場委員会(FOMC)のたびごとに月間100億ドル削減」という一定のペースで粛々と継続、10月29日の会合で月間資産購入金額を最後に150億ドル削って量的緩和を打ち切った。 以来、市場関係者の目線は、「2015年中のどこか」をXデーに見据えたゼロ金利解除のタイミングやその後の利上げペースに一段とシフトし始めている。米国で発生している金利政策の正常化観測は、ドル円相場のみならず、他通貨市場においてもドル高圧力を発生させており、日銀の異次元緩和によって強まった円安圧力との「合わせ技一本」で秋口以降のドル高・円安の急激な加速をもたらした。 相場にタラやレバは無いが、もしもイエレン議長が米金融政策運営の正常化プロセスを進めていなかったら、これほどまでに強烈なドル円相場の吹き上がりは実現していなかっただろう。 ●第3位=塩崎恭久厚生労働相 9月上旬に発足した第2次安倍改造内閣で「厚生労働大臣に内定」との観測報道が流れただけで、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用改革期待を高め、市場の株高・円安観測を強めた。 その後、10月31日に日銀が異次元緩和の拡充を発表した数時間後という絶妙のタイミングで新しい運用配分を発表。事前の観測報道で流れていた以上の幅で国内債券の運用比率を60%から35%まで一気に削り込む一方、国内株と外国株をそれぞれ12%から25%に倍増して国内公的年金マネーの株式シフトと外貨シフトの双方を同時に実現する基本方針を示し、日銀のサプライズ緩和で惹起された株高・円安の動きを増幅させた。 その後公表された9月末時点での運用実績をみる限り、新しい目標比率は外国債、外国株とも未達の状態にあり、常識的に考えて「年内一気の大人買い」が可能な金額ではなさそうだ。国内の公的年金基金が、新たに設定した目標配分を達成して長期比率維持モードに入るまでは、ドル円クロス円の下ヒゲ・カッターとして意識されやすい状態が続きそうだ。 ●第4位=安倍晋三首相 年前半から夏頃までは「特定秘密保護法案」の成立、「集団的自衛権の行使」を可能にする憲法解釈の変更に関わる閣議決定など「経済最優先」という看板政策から逸れる政治課題に注力していたため、為替市場での存在感は薄かった。しかし、第2次安倍改造内閣で塩崎氏を厚労相に任命した頃から、アベノミクスの要諦である株高・円安推進への期待を再び高める政治・政策判断を連発した。 11月には消費増税の延期を決断したことで「景気下支え効果を好感したリスクオンの株高・円安観測」を刺激すると同時に「日本の財政再建の遅滞懸念」を一部の市場参加者に意識させ、良い円安と悪い円安が混然一体となって加速する晩秋の円安祭りを盛り上げた。 消費増税延期とセットで決断した12月14日の「師走総選挙」では、戦後最低の投票率で半数近い有権者による無言の批判を甘受しつつも、連立与党で再び衆議院の3分の2を超える議席を獲得、アベノミクス推進に必要な政治基盤の延長に成功した。 ●第5位=国内輸入企業の人々 日本の貿易赤字転落に伴い、輸出企業のドル買いを大幅に凌駕する規模でほぼ毎日のようにドル買い注文を市場に持ち込んで為替需給の風景を一変させている。 年前半の円高局面でドル円相場が断続的に差し込む局面では輸入企業のドル買いがドル円の下ヒゲを短く刈り上げる一方、年後半のドル高局面では「どんなにドルの値段が上がっても、追いかけて買わざるを得ない」という立場を見透かされ、ドル高局面のボラを不本意ながら上げてしまう役割を果たした。 特に日本の古い商慣行のイメージから「ゴトウ日のドル買い観測」などが市場で強く意識されるような局面では、何の変哲もない東京市場の材料砂漠の時間帯に、真贋不明の需給トークに照準を合わせた短期筋などのドル買い仕掛けの口実に利用されて、バリア・オプションの上方突破に知らぬ間に寄与してしまうなど、結果的に自らが望まない方角へのドル円相場の値動きを助長するケースが目立った。 ●第6位=日系海外進出企業の人々 日本企業による空前の海外進出に伴い、直接投資の流出が目立つ状態が2014年も続いた。今年最大の海外企業買収は、1月に発表された「サントリーによる米ウイスキー大手ジムビームの買収(約160億ドル)」だったが、その後も6月の「第一生命による米中堅生保プロテクティブの買収(約57億ドル)」、9月の「楽天による米ネット通販大手イーベイツの買収(約10億ドル)」、12月の「大塚製薬による米バイオベンチャー企業アバニアファーマシューティカルズの買収(約35億ドル)」など、経済紙で大きく取り上げられる案件が相次いだ。 国際収支統計で見る限り、その他の案件も含めた日本企業全体の海外直接投資による資金流出は、近年ではバブル期のピークを凌ぐ規模に膨張している。一般に日本企業の海外企業買収に伴う為替フローは、一見すると「大手銀行などが持ち込む大規模なドル買い注文」にしか見えないため、輸入企業のドル買いと違ってステルス性が高いが、それゆえに需給トークの現場で疑心暗鬼を発生させやすい。 輸入企業が日々持ち込むドル買い注文ほど安定的ではないが、ドル円相場のプライス・アクションに対して、類似の影響力を及ぼしたと推測される。 ●第7位=国内の外国為替保証金(FX)取引参加者 2014年前半のこう着局面で「ドル円のロング」を2.5兆円以上に積み上げ、非常に上手な仕込みに成功した。結果的に、年前半の円高局面でドル円相場が伸ばす下ヒゲを短く刈り上げ、ほぼ同時期に海外投機筋が進めていた「アベ・キャリー取引」の巻き戻しによる円高圧力にカウンターを当てた。 この間、もしも日本のFX勢力がドル円ロングの蓄積に動いていなかったら、恐らく年前半のドル円相場は一時的には1ドル=100円を割り込む水準に差し込んでいた可能性が高い。その後のドル高局面で大量の利益確定売り注文を持ち込んでポジションを軽くし、10月以降は順張りでドルの買いを増やして晩秋の円安加速にも一部寄与した。 国内のFX取引参加者は一般的には超高速逆張り回転売買で、日中の為替変動のスタビライザーとなっているが、FX業界全体で見ると月末ポジションがドル円ショートの領域に落ち込むことはほとんどない。このため、総じて見ればドル円の上ヒゲをカットして円安を抑止する力よりも、下ヒゲを短く刈り込んで円高局面でのボラを抑える作用の方が強い傾向がある。2014年前半のドル円相場のこう着局面では、その力をいかんなく発揮した。 ●第8位=エボラ熱対策に従事している世界の医療関係者 自らの生命の危険を顧みずに「目に見えない人類の敵」と戦って、エボラ熱のパンデミック化を防いだことは、2014年のドル円相場に対して重要な影響を与えたと推測される。 10月初旬に一時110.09円まで上伸したドル円相場が、その後数週間で105.23円まで急反落する一つのきっかけが、「米国内でのエボラ感染者の確認」だったことは記憶に新しい。もしもあの後エボラ熱が米国内で一層の広がりを見せ、世界中に伝染していた場合、各国の金融・財政政策で防ぎきれない景気悪化リスクが暴発し、ドル円、クロス円も巻き込んだ「リスクオフの円全面高」が大幅に進行していた可能性が濃厚だ。 「2014年の世界経済を恐ろしい病魔の侵攻から守った」という意味では、最大の賛辞を得るべき人々だと言えるかもしれない。 ●第9位=マリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁 ドル円相場を直撃する影響力を行使したわけではないが、2014年5月の定例会見で事実上の金融緩和予告を行ってユーロ高をストップさせた後、矢継ぎ早の金融緩和の告知策によって世界最大の流動性を誇るユーロドル市場でドル高を進行させた。 この間、ユーロドル相場は5月高値の1ユーロ=1.3993ドルから12月安値の1.2165ドルまで、最大1800ポイントを超えて軟化したが、当該期間中の為替市場では対ユーロでドル高が進行すると、その雰囲気がドル円市場にも伝染する場面が幾度も目撃された。 日米金融政策の違いなどを背景に、多くの市場参加者が「ドル円相場=右肩上がり」の大局観を保持している現下の局面では、ECBが周回遅れの金融緩和を推進すると、3大通貨圏における金融政策正常化レースで断トツの先頭に躍り出ているドルの優位性が意識されやすくなっているようだ。 ●第10位=石油輸出国機構(OPEC)総会の人々 年末に原油価格急落の最中にあっても、サウジアラビアなど一部の国々が価格安定に必要な減産に同意せず、想定以上の原油価格の暴落を黙認した。 米国産WTI先物が夏場の100ドル台超の水準から70ドルを切る頃までは、「原油価格の下落は世界経済にとってプラス」という株式市場に優しい解釈を呼んでリスクオンの株高・円安を助長したが、あまりにも一方的な下落が続いて60ドルを割り込んできた頃からは、ロシアを筆頭に産油国経済の混乱への懸念が喚起され、世界同時株安と円高の共鳴現象が引き起こされる場面も散見された。 この先のドル円相場への影響を判断する際には、世界経済に対するプラスとマイナスのいずれが大きいかの見極めが重要になるが、そもそも原油価格の予測自体が非常に難しいこともあり、2015年も外為市場の「ワイルドカード」になりそうだ。 以上、筆者が選んだ2014年の「ドル円相場を動かした人物ランキング」だ。ランキング3位以下の順位については、諸々異論も出そうだが、上位の2名については、おおむね衆目の一致するところなのではなかろうか。2015年のドル円相場展望に際しても、日米両国の金融政策運営にすう勢判断の軸足を置いた大局観の涵養(かんよう)を心掛けたい。 ちなみに、筆者が選ぶ2014年の流行語大賞は、日銀内で大ブームを巻き起こした(金融政策の枠組み転換を指す)「レジームチェンジ」だが、2015年の大賞は今年最後のFOMC声明でイエレン議長が復活させた「Patient(忍耐強く)」になりそうな気がしている。国内外の株式市場関係者のメンタルヘルスに配慮しながら進められる米金利政策正常化の成否が、2015年のドル円相場で最大の注目ポイントになるだろう。 *植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。 視点:「不機嫌な時代」の到来と正念場のアベノミクス=寺島実郎氏 2014年 12月 26日 13:42 JST 寺島実郎 一般財団法人日本総合研究所(JRI)理事長
[東京 26日] - 日米中のトライアングル関係において、日本はどのような立ち位置を模索すべきか。日本がアジアでリーダーシップを発揮するためには何が必要か。そして、アベノミクスは幻想なのか。日本総合研究所の寺島実郎理事長が、2015年の世界と日本を見通す。 同氏の発言は、以下の通り。 <不機嫌な時代> 世界は、冷戦後の米国による一国支配から「多極化」という時代を経て、もはや極という言葉では説明できない状況にまできている。つまり、「無極化」した全員参加型の秩序形成が問われ始めるのが2015年だと言えるだろう。 そのような全員参加型の秩序、つまり真にグローバル化する世界において、2015年はすべての当事者にとって「不機嫌な時代」が訪れる。例えば、ウクライナ問題で世界を手玉にとったかのように思われたロシアも、国際社会からの信頼が低下し、また足元の原油安で経済も悪化しており、2015年はマイナス成長に陥るとみられる。 一方、米国のオバマ政権はレームダック化し、議会が上下院ともに共和党に支配される中、ますます厳しい政権運営を強いられる。中国でも経済成長が減速するにつれ、国内で内部対立が噴出。中国政府のいら立ちは近隣諸国にも波及するだろう。 こうした世界状況において、日本は、特に米国と中国とのトライアングル関係の中で、どのように立ち振る舞うべきか。 もし日本政府にこう問いかけるならば、米国との連携を深め、中国の脅威に立ち向かいたいという答えが返ってくるだろう。しかし、そのようなパラダイムこそ考え直すべきだと私は思う。日米で連携して中国と戦おうというゲームは、極めて偏狭な思い入れであり、米国に対する日本の「片思い」にすぎない。 米国にとって最も大事なのは、アジアにおける影響力の最大化だ。日中両国に対して米国の影響力を最大化し、ぎりぎりまで双方の期待をつなぎとめながら、アジアにおける米国のプレゼンスを最大化するというのが米国のゲームである。 未来に向けた日米中関係において、日本は欧州における英国に近い役割を担うべきだと考える。英国は欧州から米国を孤立させない一方、米国に過大に依存する構造から抜け出している。日本もアジアで影響力を最大化しつつ、日本自身がアジアで孤立することも、米国が孤立することも避けるというストーリーを構築する局面にきている。 そのためには、日本はまず感情的な「プチ・ナショナリズム症候群」に陥っている現状から脱却し、一次元高いレベルから中国や韓国などの近隣諸国と向き合うことが大きなポイントとなる。これは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の人たちと話して痛感したことだ。 日本は領有権問題で連携するという発想でベトナムやフィリピンを見がちだが、実際にはこうした国々はそのような連携は期待しておらず、日本には高みから中国と向き合っていてもらいたいと考えている。彼らは、成熟した民主主義国家としての戦後日本の歴史を見つめている。戦前の日本のように、間違っても軍事的プレゼンスを高めてアジアの脅威となるような国を目指しているという誤解を与えてはならない。 では、日本がアジアでリーダーシップを発揮するには何が必要か。その鍵は経済力よりも、むしろ理念性にある。全員参加型秩序の世界で国益を貫きつつ発言力を高めていくために必要なのは、筋が通っていることだ。主張を貫く理念がなければ、このような時代でリーダーにはなれない。果たして日本がそれに耐えうるだけの理念をもっているかどうかが問題だ。 <つり天井の経済> 一方、経済・金融政策においては、相変わらず米国型モデルが世界の主流であり続けている。米国は量的金融緩和第3弾(QE3)を2014年10月末で終了し、2015年には利上げが開始される見通しだ。このように米金融緩和が出口戦略に向かう中、2015年はリフレ経済学に基づくアベノミクスの正当性が問われることとなるだろう。 20年来苦しんできたデフレからの脱却を目指し、安倍晋三政権が掲げるアベノミクスは、異次元緩和(第1の矢)と財政出動(第2の矢)に続き成長戦略(第3の矢)を実行することで日本経済の成長率を底上げするという再生シナリオを描いている。だが、税収の倍近い歳出を賄うために、借金を重ねる日本政府は、まるで自分の身の丈の2倍の生活を送る愚か者のようだ。 異次元緩和を実施して株高・円安にしたものの、「第3の矢」はいつ飛ぶのか。今の日本経済はいわば「つり天井の経済」で、株価がつり上げられ景気が良くなっていると錯覚を起こすが、実は実体経済の柱や土台がない。株価をつり上げているのは海外の投資家であり、世界経済の動向次第でこの天井はすぐにつぶれかねない。 「第3の矢」が急がれるゆえんだが、結局放たれないまま「第1の矢」と「第2の矢」に戻って追加金融緩和と追加財政出動を繰り返す恐れがある。実際、日銀は10月31日に追加緩和に乗り出した。こうした景気刺激的な政策への過度な依存は、傷口を広げ、次の世代に問題を先送りにするだけだ。 実体を伴わない株価先行の今の日本経済は、かつての米国経済をほうふつさせる。米国では、2001年に電力デリバティブなどを手掛けていたエネルギー大手エンロンが倒産してから7年後となる2008年、サブプライムローンが引き金となりリーマンショックが発生。そして2015年はそれからまた7年後に当たり、リーマンショック・パート2が起きる可能性がある。 その背景には、アルゴリズムを取り入れた株式の超高速取引などでマネーゲームが高度化したことや、複雑化した金融派生商品がある。英フィナンシャル・タイムズが2014年8月に指摘したところによれば、複雑に手の込んだ新種の金融派生商品が開発され、運用力のない金融機関に静かに浸透しており、再び金融危機の芽になりかねないという。 翻って日本に目を向けると、金融機関の間で資金運用力の差が極端に開いてきている。以前は国債に逃げるという手があったが、大量発行にもかかわらず日銀の大規模購入によって金利が抑え込まれたことで現在10年物の利回りは0.3%近辺の低水準にある。実力のない金融機関にとって運用は悩みの種となっており、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないが、不可解な金融派生商品投資への甘い誘いに再び乗せられないとも限らないだろう。 一方、米経済が再浮上した2つの要因は、日本にとっても非常に示唆的だ。1つはシェールガス・オイル革命で、米国はすでに石油と天然ガスの合計生産量において、サウジアラビアとロシアを抜いて世界1位になっている。原油価格下落の主な要因でもあるが、これは米国の産業競争力にもつながり、経常・財政収支のいわゆる「双子の赤字」問題も改善するという好循環となっている。日本も天然ガスの一種であるメタンハイドレートの産出などエネルギー戦略強化に向け、今のうちに手を打っておくべきだ。 2つ目に次世代ICT(情報通信技術)革命、ビッグデータ時代の到来が挙げられる。例えば、米ゼネラル・エレクトリック(GE)は現在、ビッグデータを活用して産業の効率性を飛躍的に高めるプロジェクトを主導している。日本においても、国力の底上げにつながる類似のプロジェクトを先導する企業がもっと現れて然るべきだ。 これら米経済の「光と影」は、正念場を迎えることになる2015年のアベノミクスへの教訓として大いに生かされるべきだろう。 *寺島実郎氏は一般財団法人日本総合研究所理事長、多摩大学学長、三井物産戦略研究所会長。経済産業省・資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の委員として、国のエネルギー政策議論にも参加している。 *本稿は、寺島実郎氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。 視点:日本は2%成長堅持で「内向き化」回避を=ジョセフ・ナイ氏 2014年 12月 26日 14:18 JST ジョセフ・ナイ ハーバード大学教授/元米国防次官補
[東京 26日] - 米国の対アジア外交にいまだ強い影響力を持つといわれるジョセフ・ナイ元米国防次官補(現ハーバード大学教授)は、日本の課題として、2%経済成長の堅持と女性の活躍推進、そして2015年に迎える戦後70年の機会をとらえ中韓との関係改善を図ることの重要性を説く。 同氏の見解は以下の通り。 ●改革にTPPは有効、農業分野で譲歩必要 日本は2%以上の経済成長を堅持すべきだ。これは、経済にとって重要なだけでなく、心理面にも影響を与える。日本が内向きにならないようにするためにも大事なことだ。 そのためには、日銀による金融緩和策と一段の拡張的財政政策、そして構造改革を推進するアベノミクス「第3の矢」のすべてが必要となる。構造改革を進展させるには、環太平洋連携協定(TPP)締結のため、さらなる譲歩(特に農業分野)が必要となるだろう。 ●女性活躍推進プログラムの強化を 安倍晋三首相が打ち出した女性の活躍推進は、正しい政策だと言えよう。人口問題を抱えるなかでの、移民受け入れに対する消極性(規制緩和されるべきだが)を考えると、日本は現在のように有能な人材プールの半分を無駄にはできない。 首相は、2020年を目途に(女性が指導的地位に占める割合を30%程度にするなど)野心的な目標を設定した。だが(今のままでは)これらの目標を達成するのは難しいだろう。女性活躍推進プログラムをどう強化するのか検討する必要がある。 ●歴史問題で論争せず、中韓との関係改善を図る 日本は「歴史問題」に関する論争から離れるべきだ。歴史問題に関する新たな報道の真偽や、当時起きたことの詳細についての論争は、日本にとってマイナスでしかない。平和で民主的な現代日本の成功にではなく、もはや存在しない軍国主義時代の日本に人々の意識を向かわせるだけだ。 2015年は戦後70年という節目を迎える。過去にとらわれるよりも、この機会を利用して韓国と中国とともに未来に目を向けるべきだ。 *ジョセフ・ナイ氏は、米ハーバード大学教授。カーター政権で国務次官補、クリントン政権で国防次官補など米民主党政権下で要職を歴任。国の競争力について、ハードパワー(軍事力や資源)とソフトパワー(文化的・政治的影響力)を組み合わせた「スマートパワー」の重要性を提唱したことで有名。知日派としても知られる。 *本稿は、筆者の個人的見解に基づいています
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