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金融政策で物価は動かせるのか
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20141224-00041760/
2014年12月24日 11時2分 久保田 博幸 | 金融アナリスト
マネーの量やインフレ期待によって物価を動かせるのか。黒田日銀の金融政策は物価はマネーサプライ(貨幣数量)で決まるとの考え方、いわゆるマネタリズムの考え方が土台になっている。
これまでの日銀の金融政策も政策金利がゼロとなってしまってからは、非伝統的手段を用いて、金利ではなく量を操作することを目標としてきた。これもマネタリズムの考え方が背景にあったとみられるが、これまでの日銀の量的緩和は手ぬるいとしてきたのが、リフレ派であり、それを大胆に行えばインフレ期待により自由に物価を動かすことができるとの考え方である。
これは見方によれば、寒いので気温を人為的に上げれば太陽の位置を変えることができるとの発想に近い。もちろん気温は太陽以外の要因によって影響されるが、太陽の影響力が大きいことは明らかである。その太陽の活動とそれによる自然界への影響等で気温が決定される。しかし、その気温が下がり続けているため、無理矢理気温を上げるようにすれば太陽の活動に変化をもたらすことができるのか。
物価も経済に影響を与える要因というよりも、結果である。むろん物価が低迷したり、大きく上昇してしまうと経済に影響を与えるが、その物価を決定するのはマネーの量というよりも、金融経済という実態による影響が大きい。その結果として物価や金利が決定されることで、いわば経済の体温計とも言えるものである。
日銀はここにきての物価の上昇が抑制された原因について、インフレ期待の後退やマネーの量が少ないためとはしておらず、19日の黒田日銀総裁の会見にもあったように原油価格の下落をその要因としている。しかも、原油価格の下落はいずれ日本経済にはプラスの影響を与え、賃金も上昇しその「結果」として物価もいずれ目標に向けて上昇するとしている。
ここには日銀の異次元緩和はどこにどう影響を与えて物価を上げる作用をしているのかとの説明は完全に抜け落ちている。マネタリズムの考え方からすれば原油価格や消費増税などに関係なく、マネーの量で物価は操作できるものではなかったのか。
壮大な実験といわれた日銀の異次元緩和だが、「壮大な」という言葉の裏には、本当にそんなことができるのかという疑問があった。さらにそのために行ったものが、国債の大量の買入という、財政ファイナンスに近い政策であり、当然そのリスクも大きい。
異次元緩和を柱としたアベノミクスは、金融市場に働きかけて円安株高をもたらせたが、結局、それだけであった。しかも、円安の要因は日銀の緩和策だけにあるものではなく、第一弾の異次元緩和は超円高の反動、第二弾は米国の金融政策との方向性の違いが市場で意識された。いわば円安をターゲットとした金融政策に他ならず、円安による物価への影響はあれど、その影響も原油安により相殺され、来年は消費増税による便乗値上げ分とともに今年の円安によるかさ上げ分もなくなると、その分が下押し要因となる。
だから追加緩和をすべきというのも、あまりに矛盾に満ちたものとなる。さらなる円安を求めてその分の物価上昇を狙う以外に意味はなく、ここから異次元緩和第三弾で円安になるという保証もない。国債を買い増せば国債需給をさらに逼迫させ、市場機能を失わせかねない。国債の市場規模は膨らんでも、市場参加者は次第に減少していくことも予想され、実際の市場は縮小していく。それは将来の価格変動のリスクを大きくさせかねない。
日銀はそろそろ異次元緩和からの出口を探ることが必要となる。少なくともこれ以上の国債買入は行わず、景気回復を促すための具体的な政策を考慮する必要がある。実態経済はそれほど悪くはない。これはアベノミクスによるものではなく、海外経済などの恩恵が大きい。その恩恵があるうちに、日本の成長率を上げる工夫を政府ととも行う必要がある。国債と紙幣を刷っての政策は誤りであったことをそろそろ認めるべきである。
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