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2014年12月23日
ご承知のように、急激に原油価格が下落している。国家予算の収入の半分が原油や天然ガスに頼るロシアの通貨ルーブルは、対ドルで45%近く低下している。このままだと、本当にロシア経済が危機的状況になるのではないかと云う不安さえ生まれている。西側メディアのプロパガンダ報道だけを見聞きしている人々から“ざまあ見ろ”と云う感想が聞こえてきそうだが、実際はどういうメカニズムで起きているのか、そして、ロシア等々の経済危機が、世界に及ぼす影響などを、ざっくり考えてみた。直近、表に出ている情報は、まず以下の二つのロイター報道である。
≪ ロシアは「本格的な危機」、クドリン前財務相が指摘
[モスクワ 22日 ロイター] - 前ロシア財務相のアレクセイ・クドリン氏は22日、ロシア政府が金融の問題に迅速に取り組んでいないために、「本格的な経済危機」に陥った、または陥りつつあると指摘した。今後、国内企業のデフォルトが相次ぎ、ソブリン格付けがジャンク級(投機的)に下げられると予想した。
クドリン氏は、国防費の増額に反対し2011年に財務相を辞任。以降、ウクライナ問題をめぐる米欧などの制裁に対するプーチン大統領の対応を批判している。 ロシア経済は、原油価格の急落や資本流出、通貨ルーブルの急落などで「最悪の事態(perfect storm)」(ウリュカエフ経済発展相)に陥っている。
クドリン氏は記者会見で、ルーブル急落について、原油安は理由の一つに過ぎないと指摘。 今後、大企業や中規模企業の債務不履行が相次ぐと予想し、ロシアの格付けは今のところ、ジャンク(投機的等級)の手前に踏みとどまっているものの、「ジャンク級に格下げされるだろう」と述べた。
ルーブルの対ドル相場は年初来で約45%下落している。クドリン氏は、そのうち25─35%の下落は制裁の影響で、残りはドル上昇や、投資家のロシア不信との見方を示した。 来年第1・四半期にはルーブルは落ち着くだろうが、来年のインフレ率は12─15%に達する公算を示した。
また、原油相場が80ドルに上昇しても、来年の国内総生産(GDP)は2%以上の減少、60ドルなら4%かそれ以上の減少と予想した。 ≫(ロイター)
*筆者注:アレクセイ・クドリン氏はプーチン政権でも財務相に一時籍を置いたが、アナトリー・ボリソヴィチ・チュバイス氏直系の人物であり、エリツィン時代の産物・新興財閥(オリガルヒ)系統の人物である。
筆者の当初の見立てでは、オバマのプーチンへの嫉妬が“病膏肓に入る”だなと理解していた。ロシアへの経済制裁だけでは飽き足らず、即効的にプーチン政権を排除出来る裏の制裁手段に出たのだろうと理解していた。そして、ロシアに、親米なエリツィン元大統領のような新興財閥(オリガルヒ)系統の人物の選出まで結びつけようとしていると見た。その為に、嫌がる産油国サウジアラビアを説得し、サウジの天敵イランを封じ込めるためにも、協力せよと厳命に渋々乗ったのだろうと想像していた。無論、米ロの世界戦略が真っ向ぶつかり合う中で生まれた想像だ。しかし、ここにきてOPECにおける、サウジの考え方は、米ロの世界戦略対立に便乗する形で、異なる狙いが見え隠れしている。以下のロイターの記事である。
≪ 減産は利益にならず、価格20ドルでも=サウジ石油相
[ロンドン 22日 ロイター] - サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は、原油価格がどれだけ下落しようとも、減産は石油輸出国機構(OPEC)の利益にはならないと加盟各国を納得させたと述べた。
中東経済専門誌、ミドル・イースト・エコノミック・サーベイ(MEES)とのインタビューで同相は、「OPECの政策として、加盟国、そして今やバドリ事務局長も納得させた。価格がいくらであろうと加盟国が減産することは利益にならない。20、40、50、60ドルに下落してもだ」と述べた。 同相はまた価格がバレルあたり100ドルに戻ることは「おそらくないだろう」との見方を示した。 ≫(ロイター)
原油価格が20ドルになっても、OPECは減産しないぞ!と言ったわけだ。常識的には、OPEC等々の産油国が減産することで、原油価格の暴落を防ぐ筈なのだが、それはしないと明言した。この決定には、幾つか理由があるだろう。一つは中東の古くなって原油の採掘コストが上がり始め、油田水圧破砕と云う、噴き出させたら最後、尽きるまで産油せざるを得ない強制的採掘方式を取り入れたため、事実上減産と云うコントロールが出来ない状態なのではないかと云うもの。それを見越した、金融勢力ファンドが、原油市場で売り浴びせをしている事で、原油相場の暴落が起きていると云う見方だ。
二つ目は、中東の産油国全体にとって、アメリカのシェール・ガス、オイル革命は、原油の市場メカニズムの破壊に繋がるので、看過しがたく、産出コストが40ドル前後とみられるシェール・オイル、ガスの採掘を採算割れに追い込むため、という説もある。原油価格の暴落によって出た損失は、潤沢なオイルマネーを駆使して、金融市場で穴埋めすれば良いではないかと云う戦略である。
三つめは、筆者が当初から見立てていた、米国による、ロシア、イラン、ベネズエラ、メキシコ、(イスラム国)等々の産油国を経済的に追い込み、政権の崩壊を誘うと云う、CIA経済戦略の一環と云う見立てだ。この点は、ロシアルーブルがかなり手痛いダメージを蒙っているので、西側メディアレベルでは、窮地に立っているだけのようにも見える。
しかし、現実には対ドル為替相場こそダメージなのだが、貿易通貨をロシアルーブルで賄える交易も盛んになっているので、以前のロシアの状態を想定している点では、戦略に齟齬が生まれている。特に中国とのパイプライン締結は大きくドル不要をアピールしている。トルコパイプラインの決定も、かなり効果的だろう。また、BRICSと呼ばれるブラジル・ロシア・インド・中国・南アの5カ国が今年7月、新たな開発銀行の設立を発表した。世界の人口の4割、GDPの25%を占める巨大グループが、先進国にたよらない自前の開発銀行を創設したのだから、世界の力学は徐々に変容している。ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・ユ−ジン・スティグリッツ氏も、この新興国向け開発銀行の設立を高く評価している。
スティグリッツ氏によると、≪(1)途上国を中心に世界の資金需要は急速に拡大しており、世界銀行やIMF(国際通貨基金)のような従来の国際金融機関の資金力では、そうした需要の数パーセントしか満たせない。(2)グローバル経済のパワーバランスが大きく転換し、いまや新興経済が優位に立ちつつあるのに、世銀やIMFのような機関はい まだに米国が牛耳っている。(3)世界経済の変化により新たなニーズが浮上しており、途上国の実情に合わせた多様で柔軟な融資が求められている。≫(デモクラシーNOW)
四つ目が奇妙な話題だが、根本的に、世界的に石油需要が減速していると云うマーケットの実質的動きである。以下の記事は、単に日本におけるマーケットの問題なのだが、国内問題だけで、このような現象は起きないわけで、世界的に石油の需給バランスが、サウジの油田水圧破砕と云う強制的採掘方式とかに関係なく、需要が低下している可能性がある。中国経済の減速もその一つだが、金融経済で、好況を装う日米の張子の虎な好況経済が、殆ど見せかけかもしれないことを証明する傍証になるのではないかと、筆者などは疑っている。皆様は上述の様々なファクターを参考の上、いま、原油価格にまつわる問題が、世界情勢を、どのように表現しているのか、そして、これからの世界はどうなるのか、また、日本はどうなるのか、天皇誕生日に考えてみるのも悪くない。
≪ 縮む石油需要、再編の動き 出光、昭和シェルに買収交渉
ガソリンの需要が低迷する石油元売り業界で、再編の動きが本格化してきた。20日、国内2位の出光興産が、5位の昭和シェル石油の買収に向けて交渉に入ったことが表面化した。実現すれば、売上高で首位のJXホールディングスに次ぐ。「2強」に対抗するコスモ石油や東燃ゼネラル石油なども巻き込み、さらなる再編が加速しそうだ。
出光の首脳は20日、記者団に対し、昭和シェルの買収に向けた交渉をしていることを認めた。また、「ドアをオープンにして検討している」と話し、昭和シェル以外の他社と交渉していることを明らかにした。
昭和シェルの19日現在の時価総額は約3800億円で、買収額は数千億円規模になる。出光は、昭和シェルの過半数の株式を公開買い付け(TOB)で手に入れ、子会社化したい考えだ。昨年度の連結売上高の単純合計は約8兆円で、首位のJXの約12兆円に次ぐ規模になる。
昭和シェルの筆頭株主で株式の34・6%を保有する英・オランダ系のロイヤル・ダッチ・シェルは、TOBに応じて株式を売却するとみられる。
出光が規模の拡大をめざすのは、人口減少やエコカーの普及などで、ガソリンなど石油製品の需要が減り続け、コスト削減が急務だからだ。出光と昭和シェルは、国内に持つ互いの系列ガソリンスタンドについて重複するものを統廃合したり、設備過剰な製油所で生産する石油製品の種類をすみ分けたりすることで収益力を高めたい考えだ。まとめて原油を仕入れることで、仕 入れ価格や輸送費を安くする狙いもある。
2010年、新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営統合して生まれた最大手のJXは、北海道室蘭市の製油所を廃止するなど精製能力を3割程度減らした。統合後、目標だった3千億円の経常利益を毎年達成し、成長する東南アジアなどの海外の油田や天然ガスの開発事業に注力する。
今後の注目は、3位のコスモ石油と4位の東燃ゼネラルの動向だ。両社は来年1月、千葉県内の互いの製油所を一体運用する合同会社を設立する。踏み込んだ再編に踏み切ったり、2強と手を組んだりする可能性もある。 ≫(朝日新聞デジタル:古賀大己、大津智義)
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