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日本人のフグ離れ深刻化 実はこんなに安くてうまい?「フグの大衆化」の裏側
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141223-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 12月23日(火)6時0分配信
冬といえばフグなべ、てっちりの季節――日本人は世界一のフグ好きとして知られる。なんと縄文時代から食用され、あまりに武士の“犠牲者”が続出したため、豊臣秀吉が禁止令を出したこともあった。俳聖・松尾芭蕉もフグの句を詠んでいる。
だが近年、フグの人気が低下しているのだという。かつて「若者のクルマ離れ」が話題となったが、今度は「日本人のフグ離れ」というわけだ。
クーポンマガジン「HOT PEPPER」(リクルートライフスタイル)は毎年11月号で『みんなの食べたい鍋ランキング』を発表している。調査は全国20〜30代の男女約1000人が対象。今年の結果は1位・すき焼き(179票)、2位・しゃぶしゃぶ(123票)、3位・キムチ鍋(122票)という順位だった。すき焼きはV3。2、3位も昨年と同じ鍋となったものの、ベスト10に「ふぐちり・てっちり」は入っていない。
同ランキングには「おごってもらいたい鍋」の部門もあり、こちらでふぐちりは133票で3位に選ばれた。ちなみに1位はすき焼き、2位はしゃぶしゃぶで、この2つは両部門ワン・ツーフィニッシュを達成している。
●西高東低のフグ文化
フグちりは2012年、「おごってもらいたい」部門で1位に輝いたが、翌13年には2位、今年は3位とランクを落とし続けている。実はフグの場合、生産も消費も基本的に「西高東低」とされ、それが弱点になっているようなのだ。
例えば漁獲量は養殖も含むと1位・長崎、2位・熊本、3位・愛媛、4位・石川、5位・香川――の順位となり、圧倒的に西日本が多い。消費も一般に「大阪6割、東京3割」といわれ、地域差の少ない牛肉とは対照的だ。「HOT PEPPER」編集部は次のように解説する。
「今回の調査で、ふぐちりを選んだ回答割合を大阪と東京で比較すると、それぞれ概数で『8人に1人』と『11人に1人』でした。さらに近畿地方と関東地方も比べてみましたが、同じように『6人に1人』に対して『10人に1人』となっています。いずれも東日本ではフグの人気が低いことがわかります。背景として考えられるのは、実際に食べた経験の有無ではないでしょうか。大阪に比べると東京はフグになじみのない方が増えつつあり、その分、順位が落ちてきているのかもしれません」
中央水産研究所・経営経済研究センターの宮田勉博士(水産経済学)は、この東西の違いを次のように指摘する。
「大阪でフグは刺身がスーパーでも売られていますが、東京では高級店が中心です。それも相当に重要な接待やお祝い事などでしか使われません。この違いが消費量に大きな影響を与えているのでしょう。たとえ身近な食材ではなくともテレビなどで取り上げられれば『食べてみたい』という欲求を感じますが、最近はメディアに露出することも減っています」
●東京でも普及するか
実は東京でも「フグの大衆化」は始まっている。12年10月、東京都はフグの取り扱いに関する規制緩和を行った。これまで都の規制は全国で最も厳しいとされ、少数の店舗が高級路線を取るという東京のフグ文化の一因となっていた。しかし現在は一定の条件を満たせば専門の調理師がいなくとも、有毒部位を除いたフグを料理して提供することが可能だ。この規制緩和を「東京フグ界のビッグバン」として期待する声は強かったが、顕著な売り上げ増には結びついていないようだ。
フグの養殖を行っている若男水産の前田若男社長は次のように語る。
「かつて、『フグの売れ行きは株価に連動する』と言われていたのですが、08年のリーマンショック以降は全国的に景気と関係なく売れ行きが伸びません。アベノミクスもフグの人気を復活させてはくれません」
近畿大学の有路昌彦准教授(水産経済学)は「とにかくフグを食べたことのない人が増えているのが最大の原因」と指摘する。
「特に東京ではフグを食べたことのない人が『高額だ』という先入観を持っていることが学術調査でも明らかになっています。例えば、トラフグのフルコースで1人当たり3万円以上するというイメージが広がっていますが、これは事実に反します。養殖のトラフグならコースで4500円という店もあります。しかも近年、トラフグの養殖技術は著しい進歩を遂げています。最高級の天然ものには負けても、それ以外であれば互角か、凌駕するほどの品質です」
となれば、とにかく東京の消費者にフグを食べてもらうしかない――現在、フグ業界はさまざまな取り組みを行っている。11月29日を「いいフグの日」と設定したり、回転寿司のチェーングループと協力して「フグフェア」を実施したり、ネット通販に注力するなど、露出度を高めようと懸命なのだ。
そうした活動の一環として、11月18日には都内で養殖トラフグの試食会が開かれた。昨年に引き続き2回目の開催となり、関係者約30人が出席。皮の刺身、フグ刺し、フグ焼き、唐揚げ、白子、そしててっちりに雑炊と「王道」のコース料理を全員が堪能した。フグ料理に舌鼓を打った20代の主婦は「本当においしかったです」と笑顔を浮かべつつ、「フグしか出てこないのですが、飽きないどころか調理法でまったく味が変わります。やっぱり夫婦で訪れるのは高価だと思いますが、両親の誕生日などで使いたい」と語り、フグの魅力を堪能したようだ。
フグの未来を左右するのは「高価格帯と低価格帯両方での改革」と指摘するのは前出の宮田博士だ。
「フグの価格はバブル期に頂点を迎え、それ以降は下がり続けています。ズワイガニやアワビ、クロマグロなどの高級魚介類に負け続けているともいえます。天然トラフグは非常に希少であるにもかかわらず、大間のマグロのような高級ブランドイメージを構築できていません。一方、養殖は比較的低価格で四季を通じて出荷可能ですから、さまざまな料理法で提供することによって『フグ=冬=高額=縁遠い』という生活者の先入観を覆すことができるでしょう」
フグ業界の奮闘を期待したいところだ。
編集部
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