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結局、ANAの助けを借りるしかない? photo Getty Images
スカイマーク航空の経営危機はJAL救済が原因だ。国交省の不毛な介入は新たな破綻を必ず招く!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41521
2014年12月23日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
スカイマークの株価が乱高下している。直接の原因は、経営再建策を巡る新聞各紙の報道で、12月に入ってそれまで220円前後で推移していた株価が急騰。先週木曜日(12月18日)には、一時520円の高値をつけた株価が上下に130円(高値から25%に相当)の幅で乱高下する有り様だった。関係者の間からは、「あれでは、風説の流布か相場操縦だ」と金融商品取引法違反を疑う声もあがっている。
■新聞報道で株価は乱高下
焦点になっている経営再建策の柱は、日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)の協力を得て共同運航を行うという収入テコ入れ策と、内外の投資ファンド4社程度を対象に第3者割当増資を行って資本不足を解消する策の2つだ。それだけに、下値を切り上げた形の株価形成やスカイマークの情報管理体制に疑問の声が出るのも無理からぬところかもしれない。
もっと不可解なのは、頑なにJALの単独支援の前に立ちはだかり、JAL、ANAの2社に異例の「呉越同舟型」支援を強いようとしている国土交通省の姿勢だ。民間企業の経営に対する国家権力のあるまじき介入と言わざるを得ない。
同省は、過去にも、破たん処理すべきだったJALを救済した結果、航空市場の競争環境を歪めて、今日のスカイマークの経営危機を招く失政を犯している。過当介入をただちにやめないと、再び、市場を歪める恐れがあるのではないだろうか。
終値で前日比40円高を演じ、その後の急騰のきっかけになった、スカイマークの12月10日の株価形成はなかなか興味深い。
急騰のきっかけは、朝日、日本経済などの新聞が同日付朝刊で「国内航空3位のスカイマークが、同2位の日本航空と業務提携する方針から一転、首位のANAホールディングスとも提携に向けて交渉に入ることが9日わかった」などと報じたことだ。
当のスカイマークが同日午前中に「現時点で決定した事実はありません」としつつも、「支援要請の検討をしている」と事実上、報道を肯定する発表をしたため、株価が急騰することになった。
産経ニュースによると、スカイマークの西久保慎一社長はこの日、「バランスを整えるため、全日空とも話をする。普通なら2社に共同運航してくださいなんて、民間企業の論理ではありえない。説明のしようがない」と苦渋の表情を浮かべていたという。
だが、その後も、「スカイマーク、第三者割当増資を検討 来年1〜2月、最大60億円」(12月11日付日本経済新聞朝刊)のように、同社の支援策作りを巡る報道合戦は過熱する一方だった。それらの報道につられるように、株価も今月下旬に向けて上昇を続けた。
そして、極め付きが、冒頭で記した18日の乱高下だ。朝方からの急騰のきっかけは、読売新聞が同日付朝刊で「全日本空輸は17日、国内航空3位スカイマークから要請されている共同運航に同意する方針を固めた」と報じたこと。これにより、事業基盤の建て直しにメドがついたとの見方から買い物が先行したらしい。
しかし、肝心のANAが各メディアの取材に「先方の要請に基づいて現在、真摯に検討している状況」(広報部)と述べて、報道は先走り過ぎと説明したため、株価が乱高下する結果になったようだ。
今回の経営支援策作りは、支援を受けるスカイマークだけでなく、支援をするJALとANA,支援を強いる国土交通官僚や航空族議員など、多くの関係者がかかわっている。一般論で言えば、朝日、日経、読売といった大手紙が安易に先走り記事を掲載するとは考えにくい。関係者のだれかが報道を煽るようなリークをしている可能性は否定できないだろう。
しかも、株価の高騰は、再建策のもう一つの柱である第3者割当増資の割当価格を押し上げて、スカイマークの再建を有利に効果もある。問題がなかったかどうか、証券取引等監視委員会は、株価形成の過程をしっかりと監視、調査する必要がありそうだ。
西久保慎一社長(前列中央)は14年3月に「ミニスカ制服」を披露したばかりだった photo Getty Images
株価形成とは別に、首を傾げざるを得ない大きな問題もある。イチ民間企業の再建策作りに、なりふり構わず介入している国土交通省の航空行政のあり方だ。
話は、11月21日に遡る。この日、スカイマークの西久保社長が、メディア各社に対して、経営再建策の1つとして、JALと業務提携して、2015年2月から一部の便を日航と共同運航し、集客力を強化し、当面の増収(年間80億円)に役立てる考えを表明した。
すでに、この3週間前の10月31日、同社の経営危機の深刻さは、浮き彫りになっていた。2015年3月期の業績予想を下方修正し、前期に続き最終損益が2期連続の赤字になるうえに、その赤字額が136億円(前期は18億円)と大きく膨らむと発表したのである。
大きな懸念材料はもう一つあった。大型旅客機A380の購入をキャンセルしたことに伴い、欧エアバス社から700億円前後と言われる巨額の違約金の支払いを迫られるリスクを抱えていたのだ。このため、同社が8月14日に関東財務局に提出した2014年4〜6月期の四半期報告書には、東陽監査法人が「事業継続に重要な疑義がある」と明記していた。さらに、スカイマークがそれまで自社のバランスシートに資産として計上していた「エアバスへの前払い金(約250億円)」も回収できない恐れがあった。
スカイマークの自己資本は2014年3月期末の段階で446億円しかなく、違約金支払いや前払い金の没収が現実になれば、債務超過に転落し、経営破綻に瀕してもおかしくなかったのである。
しかも、当初、スカイマークが再建のパートナーとして熱い思いを寄せていたマレーシアの格安航空会社(LCC)エアアジアとの資本・業務提携交渉が11月初めには不調に終わっていた。
それだけに、スカイマークにとって、JALは最後の頼みの綱といってよい状況だったのである。
■国土交通省の異様な介入
ところが、国土交通省は、スカイマークのJALとの提携に激しい拒否反応を示した。太田昭宏国土交通大臣が11月25日の記者会見で、「まだ正式な申請がなく、交渉中の案件なのでコメントは差し控える」といいながら、「健全な競争環境の確保の観点から、(是非を)厳しく判断する」と発言したのだ。
スカイマークがJALとの共同運航を始めるには、国交省の認可が不可欠だ。国交省が、JALとの共同運航を取りやめてANAとの共同運航に切り替えるか、JAL、ANA両社と共同運航をするよう執拗に迫ったため、スカイマークは窮地に陥った。結局、前述のように、今月に入ってANAにも共同運航の申し入れざるを得なくなり、一連の不自然な株価急騰劇が起きたのだ。
そもそも、国交省にこれほど強くスカイマークを行政指導する権限があったのかどうかは疑わしい。というのは、先の会見の際に、太田国交相が根拠としてあげたのが、「8.11ペーパー」と呼ばれるものだったからである。
8.11ペーパーは、破たん・国有化後に再建を果たしたJALの再上場が約40日後に迫っていた2012年8月に、国交省航空局が“泥縄式”にまとめて公表したJALを縛る規制だ。この規制は、市場で淘汰されて破たん処理すべきだったJALが公的支援で再生されて存続した結果、競争環境が歪むことを阻止する狙いで設けられた。
しかし、欧州の先例をみても、本来的な意味でも、この種の規制は、公的資金が返済されるまでの期間(再建)中に限定すべきものだ。ところが、8.11ペーパーは、再建がほぼ完了した後に設置され、自立後はJALが自らの裁量で行うべき経営の手足を縛るものとなっている。これだけで、いかに“泥縄式”かがおわかりいただけるだろう。
8.11ペーパーが“泥縄式”に設けられた背景には、政権奪還を果たした自民党の航空族議員の間に、民主党政権時代に再建したJALへの反発が強かったことへの国交省の配慮があったとされる。
8.11ペーパーが規制する項目には、機材などへの新規投資や新規路線の開設、混雑空港の発着枠の配分などが含まれている。これにより、先の羽田空港の発着枠の配分で、JALが大幅に割を食う結果となった事実もある。
今回、スカイマークが求めた共同運航はあくまでも既存路線の話であり、8.11ペーパーが規制するJALの新規路線の開設にはあたらないはずだ。このため、スカイマークへの指導は、ルールを拡大解釈したものではないかとの疑義が残る。
■スカイマークの危機はJAL存続が原因
さらに大きな疑義は、破たんに瀕した航空会社の存続に国家が積極的に手を貸すことの影響だ。
スカイマークの経営危機は、国交省が積極的に参入の旗振りをしてきたLCCとの価格競争で守勢に回り、収益が悪化したことが原因としてクローズアップされがちだ。
12年9月のJAL再上場後、業績が悪化している
しかし、ここに掲載した表を見ていただけば明らかなように、スカイ―マークの経営の悪化は、JALの復活の煽りとみるべきだ。というのは、スカイマークは2012年3月期に営業利益、経常利益、最終利益でそろって過去最高の成績を挙げた後、翌2013年3月期から急速に業績が下降線を辿っているからだ。実は、この2013年3月期中の2012年9月19日に、JALは株式の再上場を果たし、本格的な反攻を開始している。
スカイマークはこの頃から、座席の間隔を広げ快適さを売り物にして、LCCとの料金競争を避けるJALの戦略を模倣した。しかし、スカイマークの体力ではそうした投資の負担は重過ぎた。その結果、採算が急速に悪化したのが真相と言える。機材費が売上高に占める比率が2014年3月期に18.80%と2年前(2012年3月期は10.98%)の2倍近くに跳ね上がっている事実をみれば、そうした実情は明らかと言ってよいはずだ。
筆者は、会社更生法の正式な適用申請の3年以上前に、JALが実質的に破たんしていた事実を見抜き、他に先駆けて『週刊現代』で報じた。加えて、2012年9月刊行の拙著『JAL再建の真実』(講談社現代新書)では、淘汰されるべきJALの存続が引き金になって、別の航空会社が破たんに追い込まれる懸念を指摘した。その懸念が現実化したのが、今回のスカイマークの経営危機劇と言ってよい。
今、指摘しておかなければならないのは、国交省が市場競争の結果を捻じ曲げてスカイマークの存続に手を貸せば、市場の需要・供給調整機能が損なわれて、何年か後に再び別の航空会社が破たんの危機に追い込まれる可能性が高いということだ。
国交省は、ただちに不毛な介入をやめるべきである。
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