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「エビ消費大国」の落日
輸入量、20年で半減
日本のエビ輸入量の減少に歯止めがかからない。国内消費の大半をまかなう輸入物の今年の数量は、エビ不足が深刻になった昨年をさらに1割以上下回るペースだ。12月はエビの需要が1年で最も盛り上がる時期。かつては世界の取引量の半分を占めた「エビ消費大国」に何が起きているのか。
業務用食品卸大手のトーホーは今年の年末シーズン向けのエビの卸値を、価格が落ち着いていた2年前に比べ5割高に設定した。販売数量は同2割強減りそうだが、「仕入れ値の上昇が大きすぎ、経営努力ではとても吸収しきれない」と苦しい事情を説明する。
味の素子会社の味の素冷凍食品は2015年2月から、家庭用冷凍食品の出荷価格を約3〜10%引き上げる。対象は「プリプリのエビシューマイ」など弁当で重宝される商品。光熱費や物流費も上がっているが、最も響いたのはタイやインド、ベトナム、エクアドルでの産地価格上昇だ。
「餃子の王将」を運営する王将フードサービスは今年10月から「エビチリ」の価格を3%強値上げ。ロイヤルホールディングスの「天丼てんや」では、昨年販売を停止した上天丼の再開のめどがたっていない。
エビの指標品の東南アジア産地価格は現在1キロ17ドル前後。5年前に比べ約6割高い。大幅な円安が追い打ちをかけ、円建てでみた産地調達価格はこの2年でほぼ2倍になった。高値が響き14年の日本のエビ輸入量はピークだった1994年の32万トンのほぼ半分にとどまるとの見方が多い。
東南アジアで病害相次ぐ
エビが庶民の味として日本に定着したのはそれほど昔ではない。80年代に入り日本の商社などが主導して東南アジアに養殖場をつくり、日本で販売する開発輸入を本格化したのがきっかけだ。日本の輸入量は90年代にかけて年30万トン台に膨らみ、世界で取引されるエビの半分は日本向けになった。
ところが、この大量消費を支えた仕組みがきしみ始めている。東南アジアの産地が相次いでエビの病害に見舞われ始めたためだ。昨年は大生産国であるタイの養殖池でエビの病気が発生し、生産量は通常の年間50万トンからほぼ半減し、その後の回復も鈍い。他の東南アジア諸国の病害の影響もあり市場への供給は絞られたままだ。
瀬戸内海でクルマエビの養殖を手掛けるスズキファーム(広島県大崎上島町)の鈴木隆社長は「エビのウイルス性の病気は過度なストレスがかかることで発症しやすい」と指摘し、狭い養殖池にエビを密集させるエビの養殖法が病気の発生を招いた一因とみる。
欧米で増え続ける需要
エビの貿易地図もかつての日本の「一手買い」から変化している。日本とは対照的に「世界における水産業は成長産業。今後もエビをはじめとする水産物の消費は拡大していく」(三井物産の北本晶英水産事業室長)見通しだ。所得の向上した中国のエビの消費量が10年で2倍以上になったのは肉や穀物などでもみられる現象だ。ただエビの場合、欧米の消費が健康志向を背景に伸び続けている特徴がある。足元の世界最大のエビ輸入国・地域は米国で日本は3位に後退した。
服部栄養専門学校の服部吉彦副理事長は、「エビは昔から結婚式などで欠かせない食材とされてきた」と話す。「縁起物とされたのは紅白の華やかな色合いだけでなく、エビのように腰が曲がるまで長生きできるようにという願いや威勢良く跳びはねる姿が景気よく元気なイメージを連想させた」という。
品薄による高値が続けば、エビがかつての「特別な日に食べるごちそう」だった時代に少しずつ戻っていく可能性もありそうだ。
(日経QUICKニュース=NQN)
[日経新聞12月21日朝刊P.10]
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