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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NGEHLG6K50Y201.html
(ブルームバーグ):
東日本大震災も、1ドル=70円台の歴史的円高による顧客企業の海外流出の後も何とか生き残った。しかし、落ち込んだ売り上げは今も戻らない。宮城県に工場を置くプレス金型製造、ウチダの田中巧専務は「アベノミクスは全く感じていない」と話す。
顧客はトヨタ自動車やホンダ など、軒並み最高益を更新すると市場で予想される自動車メーカーなどだが、国内で売られる車体向けに金型を供給するウチダが直面するのは、輸入原材料高や国内自動車販売が減り続ける現実だ。赤字が3期連続見込みだが、車体軽量化など技術革新が進む業界では新規設備投資なしに生き残れないという。
安倍首相が現政権を担って約2年で28%下落した円安の恩恵を受け、トヨタやファーストリテイリングなど国内大企業は今期の合計純利益が過去最高になると市場で見られている。ただ国内の雇用では、ウチダのような中小企業が大企業の2倍の従業員を抱える。衆院選で勝利した安倍首相は、新政権で中小企業の業績改善・賃金アップに取り組み、国内景気の底上げを狙うが、中小の現実は切羽詰まっている。
「動きが遅過ぎる。遅きに失している」−。東京・大田区内の中小工業団体の会長を務める舟久保利明氏は話す。為替が円高だった当時に取引先は海外に移転したまま戻って来ておらず、舟久保氏は仕事量が円高前と比較して30%は減っているとみている。「いつかアベノミクスの恩恵が来るのだろうが、その前に弾が尽き我々が倒れてしまう」と、自身も金属などの加工工場を持つ舟久保氏は語る。
構造的問題
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは企業間の構造的問題を指摘する。「日本の輸出産業は円高だとコストカットを要求し、円安でも製品価格を上げない。中小から見れば、円高でコストダウンを強いられ、円安になると恩恵が輸出産業だけにいってしまう機能不全状態」という。
円安による倒産がすでに中小企業で広がる。帝国データバンクの調べによると、円安の影響での倒産は11月に42件となり、1月からの累計では301件。前年同期の2.7倍に上った。同社は発表資料で「円安の恩恵が行き届きにくい地方企業や中小・零細企業」を中心として、円安による倒産は「じわり増加基調をたどる可能性が高い」と分析している。
ドル・円相場は22日午前11時40分時点での取引で、1ドル=119円36銭。ブルームバーグの集計データによると、市場予想の中央値は2015年1−3月に120円、10−12月と16年には125円となっている。
短観
業況判断は大企業と中小の差が広がる。日本銀行が15日に発表した企業短期経済観測調査 (短観)によると、大企業(全産業) の業況判断はプラス14(前回はプラス13)だったが、中小企業(全産業) では0(前回から横ばい)だった。先行きも差が広がっている。DIは景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた数値。
アベノミクスの狙いは、企業の生産性・競争力を高めることで収益を改善させ、雇用の拡大・賃金の上昇につなげ、消費拡大、景気回復を実現することだ。この循環を回す中でデフレから脱却し、経済を成長させると、安倍首相は1日の党首討論会で説明した。
アベノミクスの効果は一般にも浸透していない。実質賃金は16カ月連続で下落が続き、暮らし向きが1年前に比べてに「ゆとりがなくなってきた」という家計は全体の約半数に高まっている。
中小企業白書によると、大企業の従業員数は1397万人に対し、中小企業では3217万人。直面する構造的変化として人口減少・高齢化や国際化、就業構造の変化、情報化などを挙げている。
中小企業対策
首相自身も道半ばであることを認めている。党首討論会で、アベノミクスの効果を「まだ実感していない方がたくさんいることは承知している。ですから、中小・小規模事業者、地域にしっかりと拡大していくようにこの政策を進め、さまざまな支援をしたい」と述べた。
自民党は政権公約に中小企業対策を盛り込んだ。それによると地域資源の持続的な発展・再生産の仕組みづくりや販路開拓の推進、補助金による支援や人材紹介を推進するなどとしている。
ウチダの田中専務は、工場の新たな機械設備に2億円を投じる検討を進めている。年間売り上げ14億円の企業で、赤字が続く中での投資。リスクは承知しているという。「画期的な技術を持っていなければ必要とされず、倒産するのを待つだけだ」と田中氏は話す。アベノミクスの効果が訪れるかどうか、気をもむ毎日だという。
安倍首相は16日に官邸で開かれた政労使会議で、円安メリットを受けている企業での賃上げなどの配慮を求めた。合意文書では「取引企業の仕入れ価格の上昇などを踏まえた価格転嫁や支援・協力について総合的に取り組むものとする」との文言も盛り込まれた。
「水ぶくれ収益」
日本自動車工業会の池史彦会長(ホンダ会長)は18日の会見で、自動車業界がアベノミクスの経済成長を「けん引する役割」と認識していると話し、「超円高から、ものすごい勢いで円安になり、為替による水ぶくれ収益があるのをきちっと還元していく」と述べた。
政府はアベノミクスによる経済の好循環を加速させるため、法人実効税率の2.5ポイント程度の引き下げを検討している。甘利明経済再生相は19日夜、ブルームバーグが都内で主催したセミナーで15年度の引き下げ幅について「報道で2.4%とか2.5%という数字が出ているが、当たらずとも遠からずというところだ」と述べた。
現行の法人実効税率は東京都で35.64%。政府は「骨太の方針2014」で、来年度から数年で20%台にまで引き下げると記している。甘利氏は実質賃金については、来年は「プラスにしていくことが目標になる」と述べた。
「製造業は人口減少により内需が小さくなる中、国内に投資しない傾向にある」とSMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは話す。安倍首相が取り組む人口減少対策を利用し「中長期的に内需を拡大できるかが、中小企業も健全な経営ができるポイント」と述べた。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 萩原ゆき yhagiwara1@bloomberg.net;東京 宮沢祐介 ymiyazawa3@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Young-Sam Cho ycho2@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 宮沢祐介, 中川寛之
更新日時: 2014/12/22 11:42 JST
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