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ロシアのプーチン大統領は年次記者会見でルーブル急落に言及した(写真:AP/アフロ)
ルーブル暴落ショック、「ロシア売り」止まず 原油価格下落が引き起こす、ロシアの窮地
http://toyokeizai.net/articles/-/56466
2014年12月22日 大崎 明子:ニュース編集部長 東洋経済
FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長も、ロシア通貨・ルーブルの下落には打つ手なしだった。市場の予測どおりに「相当の期間」(considerable time)、低金利を維持するとの文言を声明文から削除しつつ、利上げには「忍耐強く」(be patient)と慎重な姿勢を強調したのみ。原油安については米国にはプラスのほうが大きいとし、ロシアについては影響が限定的、と素っ気なかった。米国がもはや世界のリーダー役を担う時代ではないことが実感される。
まさにつるべ落とし──。
2014年12月1〜15日に、原油価格(北海ブレント)は13%下落し、ルーブルは23%も急落した。ロシア中央銀行は14年に政策金利引き上げを5回行ったが、6回目に当たる12月16日には一気に6.5ポイント引き上げ、年17%に。が、効果なく、1ドル=70ルーブル台に一時続落。翌17日には、ロシア財務省が通貨介入を行っていると発表。束の間戻したが、再び下落に転じた。通貨防衛はことごとく失敗している。
ロシアはサウジアラビアに次ぐ世界第2位の産油国。GDP(国内総生産)の75%を石油と天然ガスに依存する。ウクライナ問題に伴う米欧からの経済制裁も、ロシア経済を締め上げている。14年夏以降、原油価格が下降線を描くとともに、比例してルーブルも下落を続けてきた。
11月28日、OPEC(石油輸出国機構)が減産を見送り、原油価格の下落には歯止めがかからないとの見方が市場に広がるや、投機筋による原油先物売り、ルーブル売りに拍車がかかった。
■原油安はどこまで
ウクライナ情勢がこう着状態のままなら、カギを握るのは原油価格の動向だ。原油価格はどこまで下がるのか。
住友商事グローバルリサーチの高井裕之社長は「1日当たり100万〜150万バレルが供給過剰なので、需給が調整されるまで市場は不安定。年明けにニューヨークWTI価格で1バレル=50ドルを切るリスクは見ておく必要がある」と占う。ただ「現状は明らかに投機によるオーバーシュート。2015年後半に供給調整と需要増加により、WTIで60ドル、北海ブレントで70ドル前後に落ち着く」との見方だ。
では、それまでロシア経済は持ちこたえるのか。
第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストはこう指摘する。「高いエネルギー価格を背景にした“強い経済”に対する国民の信頼、石油利権で潤っている取り巻きの支持が、プーチン大統領の強みだった。それだけに求心力が低下するおそれもある」。
経済への影響という点から懸念されるのは、ロシア通貨危機が世界金融危機に発展した、1997〜98年の再来がありうるかということだ。もっとも、市場関係者は今のところ、その可能性は低いと見ている。
第一の理由はロシアがその後、外貨準備高を積み上げ、約3700億ドルあること。これはロシアの月平均輸入額の15カ月分に相当する。民間債務は2000億ドル程度で余裕がある。ただし、相次ぐ通貨介入でその減少は避けられず、原油安がどこまで長引くかに懸かる。
第二にロシアに対する海外銀行の与信の規模が小さいこと。特にロシアと関係が深く景気が低迷している欧州は不安視されるところだが、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「14年66末のBIS(国際決済銀行)統計によれば、欧州系銀行の与信の55%は欧州域内向けであり、ロシア向けは1%未満にすぎない」と説明する。
第三に米国が利上げに慎重で、日本や欧州も金融緩和拡大方向にあり、新興諸国からの資金の急激な巻き戻しは起こりにくいと考えられること。米国が金融緩和からの脱却を示唆してから1年半、ウクライナ危機からも1年近くが経過しており、すでにリスク削減も一定程度進んでいるとみられる。
■根本には世界的な需要低迷
度重なる金融危機を経て、中央銀行によるドルの相互供給、銀行の資本規制強化など、リスク伝播を遮断する仕組みが整備されたのも、1990年代との違いだ。ただ、それでも新興国への影響は懸念される。一時はフラジャイル5(脆弱な5カ国)と呼ばれた、南アフリカ共和国、トルコ、ブラジル、インドネシア、インドなどもある。こうした国の制度整備は未だ道半ばだ。
第一生命経済研究所の西濱徹主任エコノミストは、「足元では国ごとに努力して、経常赤字の圧縮が進んでいる国もあるが、そうでない国もある。ロシアをめぐる状況が一段と悪化した場合は、これらが標的にされるリスクもある」と警告する。98年に破綻した米LTCMのように、規制の枠から外れたところで、ロシアや新興国向けの与信を過度に抱えるヘッジファンドが存在しないかどうかも、気になるところだ。
原油安の根元には、世界的な需要低迷がある。米国経済の回復以外に好材料がなく、欧州経済は停滞が続き、新興国も中国を中心に成長が鈍化している。世界の実体経済が弱い中で、あふれるマネーが市場を不安定化させる。ロシア危機が終わりの始まりとならなければよいのだが。
(「週刊東洋経済」12月27日‐1月3日号(12月22日発売)核心リポート01を転載)
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