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「家計の決算書」でわかる! お金が貯まらない人の5つの習慣(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/14/hasan92/msg/309.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 12 月 17 日 09:56:15: igsppGRN/E9PQ
 

「家計の決算書」でわかる!お金が貯まらない人の5つの習慣
http://diamond.jp/articles/-/63675
2014年12月17日 深田晶恵 ダイヤモンド・オンライン


■「老後破産」ブームの背景には……

 この数ヵ月、複数のテレビ番組から「老後破産」をテーマとして番組を作りたいから協力してほしいと電話があった。私が求められる役割は何かを尋ねたところ、多かったのは「年金も貯金もほとんどなく破産した高齢者を紹介してほしい、または破産した人の実例をスタジオで解説してほしい」との返答だった。

 同じような依頼が立て続けにあったのは、あるテレビ局が9月に放送した「老後破産の現実」という番組が反響を呼んでいることが背景にあるようで、同様の企画を立てる番組が増えている。

 私としては受けられない種類の仕事なので、いずれもお断りした。相談業務は守秘義務があるし、相談者をマスコミに紹介することは一切しないことを会社のルールとしているからだ。

 依頼は断ったけれど、番組の流れがどうなるのか知りたかったので「生活に困窮した高齢者の様子をVTRで紹介して、その後はどうなるのか。たとえば、スタジオで視聴者に向けて老後資金作りのポイントは解説するのか」と聞いてみた。するとある番組のスタッフは「いえ、特にしません。今回は破産した高齢者のケースを取り上げるだけです」と言う。

 えっ、ソリューションなし? 見終わった後、何とも言えない気持ちになりそうな企画だ。これでは老後貧乏予備軍の40〜50代がテレビを観ていたとしても、他人事として終わってしまうだけだろう。

 今の40代や50代が年金生活を迎えると、老後に破産するほどの深刻な状況にならなくても、老後の生活が貧乏になる人は確実に増加すると思われる。これまでもこのコラムで書いているように、今の40〜50代は消費が好きな世代であるし、親世代よりも多額の子どもの教育費や住宅ローンという重荷を背負っているからだ。

 誰だって老後に貧乏な生活を送りたくない。大事なことは昨今の「老後破産」ブームを他人事で終わらせずに、少しずつでいいので今できる対策に取り組むことだ。今年も終わりに近づいてきたので、年末年始のお休みには第3回で提唱した「家計の年間決算書」作りに取り組んでもらいたい。今回はその決算書からわかる「お金が貯まらない人の傾向」を5つ紹介するので、それぞれの項目で「ドキッ」としたら、反面教師にして来年から改善に取り組んでもらいたい。

■(1)「年間決算シート」の肝心な部分が空欄のままの人

 相談の申し込みがあると、予約が成立した段階で「年間決算シート」(本連載第3回参照)を送り「個別事情に合わせたアドバイスをするために必要な資料となるので、しっかりまとめてきてください」と伝える。ほとんどの人は人生初の家計決算に取り組み、項目を埋めて相談に訪れる。

 しかし、なかには「合計欄」がすべて空欄のままの持ってくるツワモノがいる。それぞれの項目の支出額は書いてあるのに、支出項目ごとの年間合計額、毎月支出の合計額、年数回支出の合計額、年間支出の総合計額を計算していない。その下の収入欄には手取り収入の記載はあるのだが、年間収支の欄はこれまた空欄。こういう人は、たいていお金が貯まっていない。貯め下手だ。

「決算書」作りは、1年間でいくら使ったのか、そして収支はプラスだったのか、マイナスだったのかを振り返りながら家計改善を図るのが目的だ。言いかえると、収入に対して毎年一定の貯蓄ができていれば、何に使ったとしてもいいのである。これから今年の決算に取り組む人は、合計欄と収支の欄はすべて埋めよう。そこが一番大事なところだから。

■(2)妻が使う生活費が“インフレ状態”なことに気がついていない人

 家計の財布のヒモを握っているのが男性という家庭の場合、妻が使う毎月の生活費は現金で渡すか、もしくは妻がキャッシュカードで引き出している。金額は家庭によって異なるが、たとえば月に20万円の生活費を現金で渡しているとしよう。夫は、妻が月20万円で生活をやりくりしていると思っているかもしれないが、家計全体から見ると実際の生活費は20万円にまったく収まっていなかったりする。

 水道光熱費や通信費などは、別途銀行口座から引き落としされる。子どもが成長するにつれ水道光熱費は高くなるし、近年は電気代もガス代も値上げを繰り返している。結婚当初より負担は増えているはずだ。

 通信費はもっとインフレ状態だ。ほんの十数年前なら、通信費は固定電話料金だけで月4000円、子どもが長電話して月1万円近くなるのが主婦の悩みだったのが、現在は、家族の携帯電話料金、インターネットのプロバイダー料金、有料のテレビ視聴料などが加わる。子どもが2人いて家族全員スマートフォンを持っていると、通信費は少なくとも月3万5000円前後にもなる。

 生活費の死角は「クレジットカード払いの食費」だ。結婚当初、妻はスーパーでの買い物は現金で支払っていたのが、今はどこの店もポイントが貯まるクレジットカードを発行しているので、食材などの支払いがどんどんクレジットカードにシフトしているのだ。

 食費の支払いが現金からクレジットカードにシフトしても、夫からもらう現金の生活費の金額はそのまま。「先月は食費のうち、クレジットカードで5万円払ったから、その分は返すわ」という妻は、まずいない。クレジットカードの請求明細をよく見ていない夫は、生活費がインフレ状態になっていることに気がついていないのだ。

 決算シートを見ながら私が「毎月30万円の生活費は収入に対してちょっと多いですね」と言うと「いいえ、うちは妻に生活費を20万円渡しているので、生活費は20万円のはずですが…」と、きょとんとする男性は少なくない。

 生活費は、「現金」「銀行口座引き落とし」「クレジットカード払い」と出口が3つあるので要注意。生活費は収入の増加とともに年々拡大していく傾向にあるので、3つの出口を集計して振り返ってみるのが肝心だ。

■(3)仕事の経費の精算口座と家計の口座が同じ人

 家計管理に手間をかけずにお金を貯めるコツは、お金の流れをシンプルにして、カテゴリーごとの支出額をイメージできるようにしておくことだ。口座引き落とし分は月に4万円、現金の生活費は15万円、子どもの学校や習い事にかかる費用は月3万円…などといった具合にお金の出口ごとの大まかな予算をイメージしておくと、クレジットカードで支払える金額の上限もわかるようになる。

 ところが、仕事の立て替え経費を精算する口座と給与振込口座が同じだと、お金の出入りの煩雑さが増し、理想的な家計管理方法と真逆になる。立て替えるために出張前には多めにお金を下ろし、残ったとしても口座に戻すわけではない。クレジットカードで支払った分も個人のカードで支払うと、さらにお金の流れは複雑になる。

 経費の立て替えが多い人は、経費精算口座を別途設けよう。給与振込口座と別に経費精算口座を指定できる企業は少なくない。そして、仕事用にクレジットカードを1枚作り、利用代金は経費精算口座から引き落とされるようにする。個人と仕事のお金の流れを別々にすると、家計の口座管理もラクになり、お金が貯まりやすくなる環境ができる。経費精算口座には最初に5万〜10万円程度の軍資金を入れておくのがコツだ。仕事のお金はその口座のなかで回していくといい。

■(4)「収入の○%以内」といった目安がないと安心できない人

 マネーセミナーで「お金の使い方は100人いたら100通り。わが家の譲れない・削れない支出は大事にしながら、ムダな支出は見直しましょう」と話したあとに、「支出項目ごとに使っていい割合を出してほしい」と質問する男性がたまにいる。

 収入に対する割合を知りたい気持ちはわからないでもないが、家族構成や子どもの年齢によって生活費や教育費にかかる金額は異なるし、その家族が大事にしている支出もそれぞれだ。だから「割合はあまり意味がありませんよ」と時間を割いて解説しているのだが…。頭で考える前に手を動かして現状把握をし、「わが家の場合」を知ることから始めよう。

■(5)夫婦でお金の情報開示をしたがらない人

 お金の話を夫婦でしたくない人は40〜50代に多い。家計管理を妻任せにしている男性は、「したくない」というより、何から話をしたらいいのか「わからない」ようだ。そういう場合は、休日の半日を使って「一緒に年間決算をしてみよう」と誘ってみるといい。「協力してもらわないと自分だけではできない」と素直に言うと、ケンカしなくてすむ。会社で発揮しているコミュニケーション力を家庭でも活用しよう。

 共働き夫婦の妻は、可能な限り情報開示したくないと考える人が少なくない。自由にお金を使いたいから、自分の支出状況を夫に見せるのはイヤ、だから相手にも情報開示を求めない。よほどの高収入夫婦で、どちらもしっかりお金を貯めているならそれでもいいが、「自由にお金を使いたい人」は貯まっていないことが多い。夫婦が同時に死亡する確率は低いのだから、家計状況や貯蓄額は夫婦で共有しておきたい。

 どうしても支出状況をオープンにしたくないなら、せめて「現在の貯蓄額」と「1年間の目標貯蓄額」だけでも共有しよう。年間貯蓄額の目標が達成できたかどうかを年末に確認し合うだけでも、「脱・貯まらない人」の効果がある。

―― 今週のミッション!――

◆年末年始の休みに今年の家計を決算しよう!

◆貯まらない人の5つの傾向に当てはまったら、来年からは改善を試みよう!


 

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コメント
 
01. 2014年12月17日 17:16:10 : Oq2npkdBYw
確実に嫁はんに嫌われることになろう。
会社のやり方でマニュアルをつくりそれを強要していれば離婚になるおそれもある。少なくとも生理的に嫌悪されることは間違いない。家の中までマニュアルでは気が休まらない。

まあ頑張って下さい。


02. 2014年12月18日 07:30:02 : jXbiWWJBCA

「ハーバードのリーダーシップの授業」
日本人の特性が経済停滞を招いたわけではない

イーサン・バーンスタイン助教授に聞く(2)

2014年12月18日(木)  佐藤 智恵


「リーダーシップと組織行動」の最終講義にて(2013年12月)(c)Maly Bernstein

(c)Evgenia Eliseeva
イーサン・バーンスタイン
ハーバードビジネススクール助教授。専門はリーダーシップと組織行動。MBAプログラムにて1年目の必修科目である「リーダーシップと組織行動」、PhDプログラムにて「フィールド調査の技術」を教えている。組織におけるリーダーシップ、コラボレーション、チームワーク、デザイン・シンキング、組織学習を専門に研究。1996年米アーモスト大学在学時、交換留学生として同志社大学に留学。2004年、ボストンコンサルティンググループ東京オフィスに赴任し、プロジェクトリーダーを務める。最新の寄稿論文に“The Transparency Trap”(Harvard Business Review, October 2014) がある。
  ハーバードビジネススクールの教授陣の中でも指折りの知日派である。同志社大学で学び、ボストンコンサルティンググループ東京オフィスで働いたイーサン・バーンスタイン教授は、組織行動の観点から数多くの日本企業を研究してきた。2014年3月には、他の教授陣とともに来日。日本のベンチャー企業から大企業まで訪問し、現在、その調査結果をもとに教材も執筆中だ。
 今、ハーバードビジネススクールの助教授として、日本企業をどう見ているのか。そしてリーダーシップとは何か。同じ元BCGコンサルタントとして、忌憚ない意見を伺った。
(2014年6月27日 ハーバードビジネススクールにてインタビュー)
日本企業は官僚組織から脱却せよ

佐藤:ハーバードに日本に縁の深い教授がいてくれるのはうれしいことです。


佐藤智恵(聞き手)1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、退局。2000年1月米コロンビア大学経営大学院留学、翌年5月MBA(経営学修士)取得。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年より作家/コンサルタントとして独立。2004年よりコロンビア大学経営大学院の入学面接官。ウェブサイトはこちら
バーンスタイン:日本は世界有数の経済大国ですよね。過去50年を振り返ってみても、日本は様々な分野で世界の先頭を走ってきました。今、日本は世界からもと学ぶべきだという議論があるのは知っていますが、日本は世界に教える立場にあるということも忘れてはなりません。私は大学教授になる道を選んだのでハーバードにいますが、ビジネスの世界にいたら、今も日本で働いていたと思いますね。今後も、日本企業や日本の経営者について研究をすすめていきたいと思っています。

佐藤:日本企業をどういう視点から研究しようと思っていますか?

バーンスタイン:私は組織行動と人間行動を中心に研究していますから、日本の「組織」に関心をもっています。私たちは組織という境界の中で働いていますよね。その組織が働いている人を生産的にすることもあれば、非生産的にすることもある。生産的な組織では、個人よりも組織のほうが大きな力を発揮できますが、非生産的な組織では、改善したり、イノベーションをおこしたり、学習したり、実践したいと思う気持ちを阻害します。

 それでは、どういう条件が整えば、組織は生産的になるのか。私は組織の効率性を3つの側面から見ています。生産性(期待される成果をあげているか)、個人の学習能力(仕事の能力が向上しているか)、そして、組織の学習能力(組織としての能力は向上しているか)。私の研究が日本企業の生産性を高めるのに貢献できればうれしいですね。

佐藤:ハーバードではインドや中国にくらべて日本の事例を取り上げる機会が減ってきたと聞いています。日本人留学生にインタビューすると、「日本のプレゼンスは低下している」と口をそろえていうのです。日本が再び世界の発展のためにリーダーシップをとるには、どの分野に注力すればいいと思いますか?

バーンスタイン:これは私が日本についてインタビューされるといつも強調していることなのですが、海外から日本を見ている人たちは、日本を過大評価するか、過小評価するか、どちらかに偏って発言する傾向にあります。そこにかなり誤解が生じていることは確かですね。

 過去20年間、日本経済はずっと停滞していると言われていますが、他の国と比べても、それほど悪い状況ではないと思います。そうはいうものの、政府の失策に加え、度重なる天災にもみまわれ、再生が必要であることは事実です。問題は日本企業が再生のために何ができるかという点ですね。

佐藤:国の支援も必要ですよね?

バーンスタイン:国の経済戦略が解決してくれるとは思いません。日本は戦後、国が特定のセクターに集中的に投資するという方法で、復興してきました。しかし、今、ロボティクスやエレクトロニクス部門に投資したところで、日本全体が再生するとは思えません。それよりも国は、グローバル市場で戦える企業を育成することに注力するべきだと思います。日本が今最も必要としている技術は、“新しい形態の組織をつくる技術”です。

佐藤:日本に必要な“新しい形態の組織”とはどういう組織でしょうか?

バーンスタイン:一言でいえば、革新的なアイデアを持つ人々が活躍の場を与えられる組織です。伝統的な日本企業の組織は、官僚組織を基本としていますね。その形態のままで戦後成長し、今も踏襲しています。1960年代から80年代ごろまで、日本企業は国から低利の融資を得ることに奔走し、融資をひっぱってきてくれる人が社内外に必要でした。国からの融資と融資の調整役。この2点セットで日本企業は市場規模を拡大させてきたのです。多くの調整役を必要とした組織は官僚的になりました。

時代の変化をつかむWhatsApp

 しかし、今はどのように世界で企業は市場を獲得しているか。例えば、世界最大のアプリ企業WhatsApp(ワッツアップ)。2009年、資本もない中で創業し、社員数は55人。その企業が5年で4億5000万人以上(2014年8月時点で6億人)ものユーザーを獲得し、2014年、フェイスブックに190億ドル(約2兆円)で買収されました。市場規模は、別の方法で達成されるのです。

佐藤:WhatsAppはLINEの競合と言われていますが、今も拡大を続けていますね。なぜこんなに短期間にこれだけのユーザーを獲得できたのでしょうか?

バーンスタイン:WhatsAppが成長できたのは、すでにプラットフォームビジネスの基礎ができていたことも大きかったですね。創業した2009年には、アップルのiOSやiTunesといったエコシステムがすでに確立されていました。自分で一からシステムをつくることもできたし既存のプラットフォームの上にビジネスを築くこともできたわけです。

 とにかく時代は変わってきているのですが、日本企業の方々にこういう話をしても、いまだピンとこない感じですね。官僚的というのは必ずしも悪いことではありません。しかし、日本の官僚的なビジネスや組織は、ビジネス全体が発展するのを阻害していて、革新的な人々が活躍の場を与えられません。ビジネスの成長を国に頼る時代は終わったのです。日本企業には、自ら組織改革に取り組んでほしいと思います。

成長を阻害しているのは組織構造

佐藤:日本企業は、クレイトン・クリステンセン教授が提唱した「イノベーションのジレンマ」を理解していないと思いますか? つまり、既存のビジネスモデルにがんじがらめになっていて、持続的イノベーションばかりに注力し、破壊的なイノベーションを軽視した結果、硬直してしまったのでしょうか?

バーンスタイン:クリステンセン教授は博士論文の指導教官の1人で、私は彼の理論から多大なる影響を受けています。その立場から言わせていただくと、日本企業は、破壊的イノベーションを理解していないというよりは、日本のテクノロジーをもっと新しい方法で活用できることに気づいていないのです。

 日本は技術を核として成長を遂げてきた国です。日本には高い技術力と専門知識がありますが、ビジネスに応用するのが苦手ですね。一方、アメリカなどは、その技術を応用してビジネスにするのがとてもうまい。日本はせっかく技術を生み出しても、その強みを生かすことができず、高付加価値サービスや知識労働の分野で遅れをとってしまいました。それはとても残念なことです。

佐藤:日本の成長や変革を阻害しているのは、日本の企業文化だと思いますか、それとも、リーダーシップをとりたがらない日本人の特性でしょうか?

バーンスタイン:ナポレオンは生まれながらにしてリーダーだと言う人はいますが、私は生まれつきリーダーである人などいないと思いますよ。それと同じで、リーダーシップをとるのが得意な国というのもないのです。日本人がリーダーシップをとりたがらない国民だというのも違うと思いますよ。

佐藤:それはなぜでしょうか?

バーンスタイン:私は「リーダーシップは教えられるし学べるものだ」と信じているのですよ。そしてリーダーシップの定義は人によって違うものです。ハーバードの授業でも、「私はこの授業でリーダーシップの理論は教えませんよ。私が教えるのは、皆さんが独自のリーダーシップ論を開発するための方法です」と言っています。

 日本にも先進的なリーダーシップの考え方を持っている人はたくさんいると思います。しかし、日本ではその意志を表明して実行するのが難しいのではないでしょうか。アメリカなど起業しやすい環境なら、大企業でリーダーシップをとりたいのにとれないと思えば、最終的には退社して起業することもできますね。

佐藤:日本で起業するのは難しいですよね。

バーンスタイン:日本は起業家精神が育ちづらい土壌です。エドワード・ファイゲンバウムとデイビッド・ブルナーが2002年に『起業特区で日本経済の復活を!』(日本経済新聞社)という本を出版しましたが、そのときから日本の起業環境はほとんど変わっていません。この本にも書かれていましたが、日本経済の停滞は日本人の特性や文化が理由ではありません。国の伝統的な文化が起業家精神に影響を及ぼすような時代ではありません。そうではなく、日本の組織形態が日本経済を停滞させているのです。文化が招いた危機ではなく、官僚的な組織形態が招いた危機なのです。

 日本でも東京・渋谷のように起業家が集まる地域はあって、少しずつ状況は改善されていると思います。カヤックの柳澤さんのようなリーダーが異端ではなくなれば、日本はもっとよくなると思います。

再生への鍵は日本の中にある

佐藤:日本がさらに発展していくためにどうしたらいいでしょうか?

バーンスタイン:まず日本の皆さんにお伝えしたいのは、外国のビジネスやマネジメントの事例に解は見出せないということです。昔の日本は先進国に追いつけ追い越せと言って発展してきましたが、今はそういう時代ではないですね。そこで日本はまず、世界ではビジネスの基本が大きく変わったのだということを理解し、その上で、日本独自の成長方法を見つけるべきです。日本企業は、いわゆる“海外のベストプラクティス”を丸々コピーして発展してきたわけではないはずです。それを日本流に応用したことで成功してきたのです。

 私は、ハーバードでオムロンについての教材を共同執筆しましたが、オムロンなどは、伝統的な日本企業でありながら、世界的なビジネスの潮流に乗って、発展している会社だと思います。

 日本には多くの可能性が眠っています。パナソニックの松下幸之助やオムロンの立石一真など、偉大な起業家からもう一度学んでみてはいかがでしょうか。そこに未来へのヒントがあるはずです。

佐藤:解は日本企業の中にあるということですね。

バーンスタイン: 日本は女性を活用していない、労働市場が柔軟ではない、起業する環境が整っていない、と言われています。しかしイノベーションを妨げているのは、マネジメント手法でも経営哲学そのものではありません。日本が成功する基礎となった過去の経営哲学を、現在、そして未来に向けて、正しく応用できていないことです。ぜひ、過去の経営者から学び、新たな日本流の経営理論を再構築してほしいと思います。再生と成長の鍵は日本の中にあるのです。

私が学生をほめない理由

佐藤:先生は2014年からハーバードで「リーダーシップと組織行動」を教えているそうですが、授業はケースメソッドで教えていますよね。

バーンスタイン:ハーバードのケースメソッドの授業では、学生は議論の参加者で、私たち教員はファシリテーター。講義形式とは違うので、ケースメソッドは難しいという教授もいますが、私にとっては最高に楽しい教授法です。先学期に受け持ったクラスには93人の学生がいて、93通りの意見がありました。私の仕事は、彼らの意見を聞き、質問し、頭の中にあるアイデアを引き出すことです。

佐藤:学生が、先生はとても教える姿勢が謙虚で、議論の展開のしかたがうまいとほめていましたよ。

バーンスタイン:それは照れますね。教えるのは本当に楽しいです。私よりも学生のほうがずっとパワフルですよ。議論を自由自在に展開してくれるし、ともに学び合えるような学習環境をつくってくれます。

佐藤:先生の謙虚さはどこから来るのですか?

バーンスタイン:議論を盛り上げるためには学生同士、尊敬しあうことが大切ですね。それを教えるには、実際に行動で示すのが一番。私が彼らの意見を尊重して熱心に聞くのを見て、学生も同じように同級生の意見を尊重するようになります。

 私が尊敬するハーバードのフランシス・フレイ教授は、「学生から『先生もうこれ以上助けてもらわなくても結構』と言われるぐらい、学生を支援したい」とおっしゃっていました。私も同じような気持ちで授業に臨んでいます。

佐藤:学生の発言がすべて有意義だとは思いませんが、そういう場合はどうされるのですか?

バーンスタイン:私は彼らの意見を聞いて、その後、考えさせるような質問します。圧迫するという意味ではありません。質問に対して真剣に考えなくても、怒ったりしません。逆に、クラスで考えを発言しやすいように導くということです。

 いつも良い意見を発言できるとは限らないというのは百も承知です。だから私の授業では失敗してもらっても結構。失敗は学びにつながりますからね。そして「時には失敗して反省することも、人生には必要なのだ」ということを授業で学んでほしいのです。

佐藤:感情的になることはないのですか?

バーンスタイン:怒ったりはしないですね。

佐藤:でも良い発言が出れば、褒めたりしませんか?

バーンスタイン:学生同士で褒め合うように導きますね。

佐藤:先生ではなく、クラスメートが「それはいい発言ですね」と褒める?

バーンスタイン:そうです。時間を気にしながら、キーポイントを導き出すために議論のテーマをシフトさせたり、議論してもらいたい内容を問いかけたりすることはありますが、学生同士で議論を盛り上げるほうがずっと大切なのです。

 成績も他のクラスメートが学べる発言をしたかと基準でつけていますよ。自分の発言が良い発言だったかどうかは、他のクラスメートが発言を引用したり、ほめてくれたかどうかで分かります。

佐藤:授業で先生は議論の“リーダー”だと思いますか?それとも“ファシリテーター”だと思いますか?

バーンスタイン:初日はリーダーの役割でしょうね。学生は皆、入学したばかりでお互いのこともよく知りませんから。でも最終日までに、この関係が逆転していることが理想です。私はただ“ファシリテーター”として存在し、刺激的な質問をしながら議論をすすめていく。ここという議論のツボを押して、互いに学べるように導く。そういう関係が理想ですね。


つづく

このコラムについて
ハーバードのリーダーシップの授業

日本企業もグローバル企業も、採用基準の第一は「リーダーシップ力」だという。さて、改めてリーダーシップとは何だろう。世界最高峰の経営大学院「ハーバードビジネススクール」では、リーダーシップをどのように教えているのか。日本人留学生と教授への取材で明らかにしていく。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141121/274184/?ST=print


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