03. 2014年12月16日 15:40:17
: nJF6kGWndY
>>02 円高は悪い面だけ無いもちろん自然に円高になるのが最も望ましいし、ドル120円台は、円安への乖離がかなり大きいレベルだろう。 自動車や精密機器など高付加価値産業が空洞化し、倒産と失業が増え、平均賃金が下落するような投機的な円高が続けば、
税収不足と社会保障負担の増加によって、持続不可能になる 逆に、過剰な円安が続いても、内需産業の倒産や、実質賃金の下落で、国内は貧困化する
つまり、為替に関しても、インフレ率同様、雇用や財政に関して最適な水準になるのが望ましいが、政府と日銀では、価値観が異なる
結果として、いろいろな矛盾も生じるということだ http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0JT1AN20141216 コラム:円安戦略転換こそ原油安の天佑を生かす道=河野龍太郎氏 2014年 12月 16日 12:35 JST 河野龍太郎 BNPパリバ証券 経済調査本部長
[東京 16日] - 安倍首相は、やはり幸運だ。自公が大勝した衆院選の話ではない。昨年末から機能不全に陥っていたアベノミクスの延命が、原油価格下落のおかげで可能になったかもしれない、ということだ。 現在の原油安は国内総生産(GDP)比で1.0ポイントの減税と同程度の効果を日本にもたらす。ただし、それはインフレ率の低下で景気回復がもたらされることを意味し、アベノミクスが目指してきたデフレ脱却による景気回復とは経路が大きく異なる。「景気回復、この道しかない」とは言えない気もするが、理由はともあれ、政治の世界では結果が大切だ。 振り返れば、安倍政権はスタート時も相当な幸運に恵まれていた。まず首相就任直前の2012年11月は循環的な景気の谷だった。リフレ政策を掲げる安倍首相の誕生が確実になったから、将来打ち出される政策を人々が予想し、景気回復が始まったと考える人がいるかもしれないが、2012年5―11月の景気後退は欧州債務危機や中国経済の減速による世界同時減速であり、それが反転したのを安倍首相のおかげというのは、さすがに言い過ぎである。 政権樹立前後に急激に進んだ円高修正についても、安倍首相の円安誘導発言や、アグレッシブな金融緩和への期待だけが原因とは言えない。そもそも欧州債務危機の収束によるユーロ安修正が大きく影響していた。危機の際、ユーロ売り・円買いが進んでいたが、2012年秋からポジションの巻き戻しが始まった。 さらに、実需面でも、原発停止に伴う化石燃料の輸入増、電気機械セクターの不採算部門からの撤退に伴う輸出減と輸入増の影響などで、経常収支黒字が激減し、円安が進む素地が広がっていた。アグレッシブな金融緩和への期待も確かに影響したのだろうが、それだけでなく、実体経済から見ても、円安は起こるべくして起こったと言える。 もちろん、「運も実力のうち」であり、運の良さは政治家の成功にとって極めて重要なファクターである。そしてまた、国民にとっても幸運なリーダーを戴くことは幸運である。 <原油安のプラス効果を減じる円安> しかし、アベノミクスの第1の矢と第2の矢は、昨年末に日本経済が完全雇用の領域に入ったことで、国内総生産(GDP)を増やすという点では、限界に達した。消費増税後の2014年第2四半期、第3四半期の2四半期連続のマイナス成長ばかりが注目されているが、過去1年間でプラス成長だったのは、実は消費増税前の駆け込み需要で嵩(かさ)上げされた2014年第1四半期だけで、日本経済は2013年第4四半期から全く成長していない。 消費増税の影響で成長が止まったのではなく、2012年度補正予算による大規模財政で、日本経済のスラック(弛み)がほぼ解消され、昨年末からゼロ近傍の潜在成長率を大きく上回る成長の継続が不可能になっていた、というのが実態である。 理論上、経済が完全雇用の領域に入れば、財政、金融政策の有効性は失われ、弊害の方が大きくなる。現実に2013年度補正で追加財政を策定しても、人手不足によって執行が遅れ、さらには、労働集約的産業の採用難を助長したり、民間の建設投資を阻害するだけとなっている。金融緩和で円安が進んでも、家計の実質購買力を抑制するだけで、輸出や生産の回復にはほとんど寄与しなくなっている。完全雇用の下で生じるであろうと想定されていた現象が現実に観測されている。 ここから成長を高めるには、ゼロ近傍まで低下した潜在成長率そのものを高めなければならないが、成長戦略の効果が現れるには相当の時間を要する。また、劇的に潜在成長率を改善させる方法は存在しないのであり、地道に成長を高める努力を続けると共に、低い潜在成長率の下でも持続可能な社会保障制度や財政制度を再構築するというのが筆者の長年の主張である。アグレッシブな財政政策や金融政策を駆使して、将来の効果を大々的に先取りしようとしてきたアベノミクスは、明らかに手詰まり状態に陥っている。 もし、ここで消費増税と円安で実質購買力を失った家計部門を多少でも支援することができれば、それは、減税ということになるのだろうか。しかし、財政の制約から、減税は選択肢にはなり得ない。正しい選択肢は日銀による量的・質的金融緩和(QQE)の段階的縮小(テーパリング)開始であり、それが円高につながれば、消費増税の悪影響を円高による輸入物価の下落で多少は相殺することができたかもしれない。 しかし、現実には、円安を助長する量的・質的金融緩和第2弾(QQE2)が10月31日に発動され、輸出セクターが恩恵を受けると同時に、家計部門の苦境が増してしまった。アグレッシブな金融緩和が続いていることで財政規律が大きく弛緩しており、減税を主張する人が現れなかっただけでも、良しとすべきなのだろうか。 いや、安倍首相は運が良い。我々も運が良い。減税と同等の効果を持つ原油価格の大幅下落が始まったのである。原油価格は、年前半に1バレル=100ドル程度で推移していたが、4割程度下落し、足元では60ドルを割り込んだ。原油安は、返済の必要のない恒久減税と同等の効果を持つ。これまでの原油価格の下落を前提にすると、GDP比で1.5ポイント弱の減税に匹敵する。 これは2.8ポイントの消費税と同規模である。筆者からすれば、原油価格下落という助けもあるのだから、安倍首相は消費増税を予定通り実施すべきだと言いたい。ただ、同時にQQE2の影響によって円安が加速したこともあり、すでに0.4ポイントが円安で損なわれた。現段階では、GDP比で1.0ポイント程度の交易利得の改善となる。その分、2014年第4四半期から2015年第1四半期にかけて、名目GDPが改善する。 では、実質GDPにはどの程度の影響が現れるか。減税が行われても、増えた所得の全てが支出に向かうわけではない。原油安による実質購買力の増加に対する限界支出性向を70%程度と考えると、0.7ポイント程度(1.0×70%)の支出押し上げ効果が、理論上、徐々に現れてくる。ただ、日本経済が完全雇用の領域にあることを考えると、支出が増えても一部は海外へ漏出する。あるいは価格上昇につながる。このため、2015年度の成長率の押し上げ効果は0.7ポイントの5―6割の0.4ポイント程度というところだろう。円安の影響で効果が減じられているとは言え、原油安は現在の日本経済にとって、実質所得を改善させる数少ない要因である。 原油安のプラス効果はアベノミクスが掲げる「デフレ脱却による景気回復」とはメカニズムが大きく異なる。価格上昇ではなく、原油価格下落による輸入物価低下を通じ、家計の実質所得が改善する。もともと今夏の景気のもたつきも、消費増税に加えて、円安によって輸入物価が上昇したことで実質所得が損なわれ、個人消費が低迷したことが原因だった。 前述した通り、経済が完全雇用の領域に入った段階で、第1の矢、第2の矢は機能しなくなっていたのであり、アベノミクスの逆のメカニズムで家計部門がサポートされるのは何ら不思議ではない。安倍首相も、原油安に伴う輸入物価低下によるメリットを天佑と捉え、早晩、新アベノミクス効果として喧伝し始めるかもしれない。その効果を減ずる円安の副作用に早く気が付いてもらいたいものである。 <誤った診断から生まれた誤った政策> さて、原油安で苦しい立場に追い込まれているのが、2%のインフレ目標の早期達成を目指す黒田日銀総裁である。そもそもフレキシブル・インフレーション・ターゲットの視点に立てば、2%インフレの達成を急ぐこと自体が誤りである。消費増税などによって、家計が実質購買力の低下で苦しんでいる最中に、追い討ちをかける円安を助長するQQE2は、フレキシブル・インフレーション・ターゲットからの逸脱であり、日銀法2条違反である。 問題は、黒田総裁が原油価格下落によるインフレ期待の低下リスクをQQE2発動の主たる理由に掲げていることだ。その結果、日銀は極めて困難な状況に陥った。政策決定後、原油価格はさらに3割近く下落し、このままの下落が続けば、来春に消費者物価指数(CPI)前年比は1%割れの定着どころか、0.5%を割り込む可能性もある。 10月31日に示したQQE2のロジックを撤回しなければ、日銀は再度、追加緩和に踏み切らざるを得なくなる。同時に、逐次投入はしないという当初からの原則を貫けば、次の長期国債購入額はいよいよ市中発行額の100%を超える(現在は90%程度)。政府が消費増税を先送りする中、借換債を含め市中発行額を超える国債購入を行えば、もはや黒田総裁であってもマネタイゼーションでないとは言えないだろう。 筆者自身は、黒田総裁が10月31日のQQE2のロジックを少なくとも棚上げし、原油価格下落でインフレ率の低下が続いても、簡単には追加緩和には踏み切らないと考えている。フィージビリティ(実行性)の問題もさることながら、消費増税先送りで政府・日銀間の明確なアコード違反も発生しており、ボードメンバーをもはや説得することは難しいからだ。また、マネタイゼーションに手を染めることを恐れ、ボードメンバーが簡単に賛成に回るとは思われない。 しかし、日銀が追加緩和に踏み切らなくても、金融市場では原油価格下落によってCPI上昇率の低下が続けば、日銀が追加緩和に踏み切るという観測が広がり、円安が一段と進む恐れがある。足元で1ドル=120円前後まで円安が進んだのは、そうした動きがすでに始まった現れかもしれない。円安が進めば、せっかくの原油価格下落のメリットが損なわれていく。 日銀の10月31日の誤った政策決定と誤ったメッセージの発信が、マーケットの期待形成を通じ、日本経済に悪影響を及ぼす。原油価格下落によるインフレ期待の低下を追加緩和の理由として説明した際、その意味するところを黒田総裁はどこまで検討したのだろうか。すでに原油価格下落の減税効果は円安で3割近くが失われていると述べた。今後、1ドル=132円程度まで円安が進むと、当初の効果の半分が失われる。167円で全てが失われる。 常々、論じていることだが、アベノミクスにおけるQQEや円安政策が導入された背景には、2000年代半ばに「デフレで実質賃金が増えず、貧しくなった」と考える人が増えたことがあった。しかし、当時、現実に起こっていたのは、デフレによる実質賃金の抑制ではなく、原油高による輸入物価の上昇で実質賃金が低下したことである。 2000年代半ばに、国内物価はほとんど下落しておらず、日本人が貧しくなった理由は、輸入物価の上昇である。さらに円安も輸入物価上昇を助長していた。QQEや円安政策が2000年代半ばのデフレへの反省から生まれたのだとすると、それは誤った診断から生まれた誤った政策である。 これが、アベノミクスがスタートした段階からの筆者の円安政策への懸念だったが、残念ながら、事態は懸念した通りに進んでいるように見える。2013年第4四半期から成長が止まったのは、スラックが解消されトレンドを大きく超える成長が難しくなったためだが、現象面としては、円安によって実質賃金が抑制され、消費が低迷し始めたためである。 完全雇用の領域に入れば、円安ではなく、円高の方が望ましいはずだが、金融緩和で円安を助長した。夏場に消費が低迷したのも、消費増税前から、円安で実質賃金が抑制されていたためである。揚げ句の果てに、せっかくの原油安メリットをQQE2がもたらした円安で打ち消している。本末転倒である。 *河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。 |