01. 2014年12月17日 07:15:12
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老後のお金クライシス! 深田晶恵 【第7回】 2014年12月17日 深田晶恵 「家計の決算書」でわかる! お金が貯まらない人の5つの習慣 「老後破産」ブームの背景には…… この数ヵ月、複数のテレビ番組から「老後破産」をテーマとして番組を作りたいから協力してほしいと電話があった。私が求められる役割は何かを尋ねたところ、多かったのは「年金も貯金もほとんどなく破産した高齢者を紹介してほしい、または破産した人の実例をスタジオで解説してほしい」との返答だった。 同じような依頼が立て続けにあったのは、あるテレビ局が9月に放送した「老後破産の現実」という番組が反響を呼んでいることが背景にあるようで、同様の企画を立てる番組が増えている。 私としては受けられない種類の仕事なので、いずれもお断りした。相談業務は守秘義務があるし、相談者をマスコミに紹介することは一切しないことを会社のルールとしているからだ。 依頼は断ったけれど、番組の流れがどうなるのか知りたかったので「生活に困窮した高齢者の様子をVTRで紹介して、その後はどうなるのか。たとえば、スタジオで視聴者に向けて老後資金作りのポイントは解説するのか」と聞いてみた。するとある番組のスタッフは「いえ、特にしません。今回は破産した高齢者のケースを取り上げるだけです」と言う。 えっ、ソリューションなし? 見終わった後、何とも言えない気持ちになりそうな企画だ。これでは老後貧乏予備軍の40〜50代がテレビを観ていたとしても、他人事として終わってしまうだけだろう。 今の40代や50代が年金生活を迎えると、老後に破産するほどの深刻な状況にならなくても、老後の生活が貧乏になる人は確実に増加すると思われる。これまでもこのコラムで書いているように、今の40〜50代は消費が好きな世代であるし、親世代よりも多額の子どもの教育費や住宅ローンという重荷を背負っているからだ。 誰だって老後に貧乏な生活を送りたくない。大事なことは昨今の「老後破産」ブームを他人事で終わらせずに、少しずつでいいので今できる対策に取り組むことだ。今年も終わりに近づいてきたので、年末年始のお休みには第3回で提唱した「家計の年間決算書」作りに取り組んでもらいたい。今回はその決算書からわかる「お金が貯まらない人の傾向」を5つ紹介するので、それぞれの項目で「ドキッ」としたら、反面教師にして来年から改善に取り組んでもらいたい。 (1)「年間決算シート」の肝心な部分が空欄のままの人 相談の申し込みがあると、予約が成立した段階で「年間決算シート」(本連載第3回参照)を送り「個別事情に合わせたアドバイスをするために必要な資料となるので、しっかりまとめてきてください」と伝える。ほとんどの人は人生初の家計決算に取り組み、項目を埋めて相談に訪れる。 しかし、なかには「合計欄」がすべて空欄のままの持ってくるツワモノがいる。それぞれの項目の支出額は書いてあるのに、支出項目ごとの年間合計額、毎月支出の合計額、年数回支出の合計額、年間支出の総合計額を計算していない。その下の収入欄には手取り収入の記載はあるのだが、年間収支の欄はこれまた空欄。こういう人は、たいていお金が貯まっていない。貯め下手だ。 「決算書」作りは、1年間でいくら使ったのか、そして収支はプラスだったのか、マイナスだったのかを振り返りながら家計改善を図るのが目的だ。言いかえると、収入に対して毎年一定の貯蓄ができていれば、何に使ったとしてもいいのである。これから今年の決算に取り組む人は、合計欄と収支の欄はすべて埋めよう。そこが一番大事なところだから。 (2)妻が使う生活費が“インフレ状態”なことに気がついていない人 家計の財布のヒモを握っているのが男性という家庭の場合、妻が使う毎月の生活費は現金で渡すか、もしくは妻がキャッシュカードで引き出している。金額は家庭によって異なるが、たとえば月に20万円の生活費を現金で渡しているとしよう。夫は、妻が月20万円で生活をやりくりしていると思っているかもしれないが、家計全体から見ると実際の生活費は20万円にまったく収まっていなかったりする。 水道光熱費や通信費などは、別途銀行口座から引き落としされる。子どもが成長するにつれ水道光熱費は高くなるし、近年は電気代もガス代も値上げを繰り返している。結婚当初より負担は増えているはずだ。 通信費はもっとインフレ状態だ。ほんの十数年前なら、通信費は固定電話料金だけで月4000円、子どもが長電話して月1万円近くなるのが主婦の悩みだったのが、現在は、家族の携帯電話料金、インターネットのプロバイダー料金、有料のテレビ視聴料などが加わる。子どもが2人いて家族全員スマートフォンを持っていると、通信費は少なくとも月3万5000円前後にもなる。 生活費の死角は「クレジットカード払いの食費」だ。結婚当初、妻はスーパーでの買い物は現金で支払っていたのが、今はどこの店もポイントが貯まるクレジットカードを発行しているので、食材などの支払いがどんどんクレジットカードにシフトしているのだ。 食費の支払いが現金からクレジットカードにシフトしても、夫からもらう現金の生活費の金額はそのまま。「先月は食費のうち、クレジットカードで5万円払ったから、その分は返すわ」という妻は、まずいない。クレジットカードの請求明細をよく見ていない夫は、生活費がインフレ状態になっていることに気がついていないのだ。 決算シートを見ながら私が「毎月30万円の生活費は収入に対してちょっと多いですね」と言うと「いいえ、うちは妻に生活費を20万円渡しているので、生活費は20万円のはずですが…」と、きょとんとする男性は少なくない。 生活費は、「現金」「銀行口座引き落とし」「クレジットカード払い」と出口が3つあるので要注意。生活費は収入の増加とともに年々拡大していく傾向にあるので、3つの出口を集計して振り返ってみるのが肝心だ。 (3)仕事の経費の精算口座と家計の口座が同じ人 家計管理に手間をかけずにお金を貯めるコツは、お金の流れをシンプルにして、カテゴリーごとの支出額をイメージできるようにしておくことだ。口座引き落とし分は月に4万円、現金の生活費は15万円、子どもの学校や習い事にかかる費用は月3万円…などといった具合にお金の出口ごとの大まかな予算をイメージしておくと、クレジットカードで支払える金額の上限もわかるようになる。 ところが、仕事の立て替え経費を精算する口座と給与振込口座が同じだと、お金の出入りの煩雑さが増し、理想的な家計管理方法と真逆になる。立て替えるために出張前には多めにお金を下ろし、残ったとしても口座に戻すわけではない。クレジットカードで支払った分も個人のカードで支払うと、さらにお金の流れは複雑になる。 経費の立て替えが多い人は、経費精算口座を別途設けよう。給与振込口座と別に経費精算口座を指定できる企業は少なくない。そして、仕事用にクレジットカードを1枚作り、利用代金は経費精算口座から引き落とされるようにする。個人と仕事のお金の流れを別々にすると、家計の口座管理もラクになり、お金が貯まりやすくなる環境ができる。経費精算口座には最初に5万〜10万円程度の軍資金を入れておくのがコツだ。仕事のお金はその口座のなかで回していくといい。 (4)「収入の○%以内」といった目安がないと安心できない人 マネーセミナーで「お金の使い方は100人いたら100通り。わが家の譲れない・削れない支出は大事にしながら、ムダな支出は見直しましょう」と話したあとに、「支出項目ごとに使っていい割合を出してほしい」と質問する男性がたまにいる。 収入に対する割合を知りたい気持ちはわからないでもないが、家族構成や子どもの年齢によって生活費や教育費にかかる金額は異なるし、その家族が大事にしている支出もそれぞれだ。だから「割合はあまり意味がありませんよ」と時間を割いて解説しているのだが…。頭で考える前に手を動かして現状把握をし、「わが家の場合」を知ることから始めよう。 (5)夫婦でお金の情報開示をしたがらない人 お金の話を夫婦でしたくない人は40〜50代に多い。家計管理を妻任せにしている男性は、「したくない」というより、何から話をしたらいいのか「わからない」ようだ。そういう場合は、休日の半日を使って「一緒に年間決算をしてみよう」と誘ってみるといい。「協力してもらわないと自分だけではできない」と素直に言うと、ケンカしなくてすむ。会社で発揮しているコミュニケーション力を家庭でも活用しよう。 共働き夫婦の妻は、可能な限り情報開示したくないと考える人が少なくない。自由にお金を使いたいから、自分の支出状況を夫に見せるのはイヤ、だから相手にも情報開示を求めない。よほどの高収入夫婦で、どちらもしっかりお金を貯めているならそれでもいいが、「自由にお金を使いたい人」は貯まっていないことが多い。夫婦が同時に死亡する確率は低いのだから、家計状況や貯蓄額は夫婦で共有しておきたい。 どうしても支出状況をオープンにしたくないなら、せめて「現在の貯蓄額」と「1年間の目標貯蓄額」だけでも共有しよう。年間貯蓄額の目標が達成できたかどうかを年末に確認し合うだけでも、「脱・貯まらない人」の効果がある。 ―― 今週のミッション!―― ◆年末年始の休みに今年の家計を決算しよう! ◆貯まらない人の5つの傾向に当てはまったら、来年からは改善を試みよう! http://diamond.jp/articles/-/63675
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