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新安倍政権、本性が試される「1月の試練」 財政危機深刻化、国債市場枯渇の恐れ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141214-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 12月14日(日)20時20分配信
第47回衆議院議員総選挙の投票が先ほど締め切られ、メディアは一斉に自民党の優勢を報じており、公明党と合わせた与党では参議院で否決された法案を衆議院で再可決可能な3分の2を確保する見通しだとの報道もある。
消費再増税の延期(来年10月から2017年4月)が今回の選挙の争点であったが、政府は財政再建の観点から15年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB:年収に相当する税収から利払い費以外の政府支出を除いたもの)の赤字幅を半減、20年度までにPBの黒字化目標を掲げている。このため、安倍晋三首相は選挙期間中の党首討論会等で、「歳出もしっかり見直しながら、17年4月の消費増税を前提に20年度のPBの黒字化を目指す」旨の発言をしている。
この発言は重い。なぜなら現在、政府の借金である政府債務が対GDP比で200%を超えており、前回11月23日付記事『消費税、財政破綻回避には32%へ増税必要との試算 再増税延期で将来の税率上昇の懸念』で説明したように、30年頃が財政の限界の分岐点になると考えられるからだ。また、いかに現在の日本財政が危機的な状況であるかについては、12月に緊急出版した拙著『財政危機の深層 増税・年金・赤字国債を問う』(NHK出版新書)で説明しているが、政府債務の多くはいうまでもなく国債であり、これだけ大量の国債を発行すれば、国債価格が下落し長期金利が上昇しても不思議ではない。約1000兆円もの政府債務がある状況で長期金利が急上昇すれば、借金の利払いも急増し、財政が危機的な状態に陥るのは明らかである。
しかし現在、長期金利は1%を切る水準で低下している。この理由は、アベノミクスの第一の矢、つまり日本銀行が異次元緩和で大量の国債を市場から買い入れていることにある。市場に流通する国債が減るため、国債価格は上昇し、長期金利は低下するからだ。
さらに10月31日に日銀は年間のマネタリーベース(「日銀が供給する通貨」、具体的には「現金通貨+中央銀行預け金の合計」を指す)の増加額をこれまでより年間で約10〜20兆円多い、約80兆円まで拡大すると発表した。12年末に約130兆円(うち保有する長期国債は89兆円)だったマネタリーベースについて、14年末に275兆円(同200兆円)に増やすことになる。また、同時に日銀は、これまで年間約50兆円のペースで増やすとしていた長期国債の保有残高を同80兆円規模になるペースで増加するよう買い入れを行う予定である。そのためには日銀が保有する長期国債のうち償還分も買う必要があり、実質的な買い入れ総額(グロス)は110兆円程度になるはずだ。そして、長期国債の平均残存期間(満期になって償還されるまでの時間。デュレーションともいう)も現状の7年程度から7〜10年程度に延長する。
●国債市場が干上がる可能性
だが、この異次元緩和にも限界がある。なぜなら、このまま日銀が買い入れ額を増やしていけば、近い将来、市場で取引される国債は底を突くからだ。
理由は単純である。大雑把であるが、財政赤字(新規の国債発行額)が約30兆円としよう。日銀が異次元緩和で市場から毎年約80兆円の国債を買い入れると、金融機関が保有する国債のうち50兆円(80兆円−30兆円)を日銀が吸収してしまう。14年時点で国債発行残高は約800兆円であり、すでに日銀は約200兆円の長期国債を保有しているから、「(800−200)兆円÷50兆円」という単純計算の結果、約12年間で日銀はすべての国債を保有し、国債市場が干上がってしまうことになる。
もちろん今後の財政赤字の状況や、日銀以外の各保有者の動向によっても、結果は違ってくる。例えば生命保険会社等は、資産運用のために国債が必要だ。だから実際には12年も待たないうちに国債市場は枯渇することになる。
以上のとおり、金融政策は財政・社会保障改革を行うまでの時間を稼ぐことしかできない。増税を延期するのであれば、社会保障の抜本改革を早急に進める必要がある。
なお、今年7月に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」は、消費税率が15年10月に10%に引き上がり、14年度の実質GDP成長率が1.2%であることを前提にしているが、増税は延期され14年度の成長率はマイナスとなる可能性が高い中、これからの前提はすでに崩れている。成長率や税収の伸び等を操作することで一定の「粉飾」も可能だが、15年1月の改訂版(中長期試算)に示される財政やマクロ経済の将来像が、基礎的財政収支の目標を含めどのような姿になっているかで、財政・社会保障改革という宿題に対する新安倍政権の本気度や本性が示されることになるはずだ。
小黒一正/法政大学経済学部准教授
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