03. 2014年12月15日 06:17:04
: jXbiWWJBCA
【第541回】 2014年12月15日 ダイヤモンド・オンライン編集部 どうなる総選挙後の株と円 自公圧勝で日経平均2万円も見えてきた!? 前評判通り、自民党と公明党合わせて3分の2にあたる317議席を超えて、衆院選が幕を閉じた。消費税率引き上げ延期や、大幅な追加金融緩和など、経済政策=脱デフレ重視を鮮明に打ち出し始めたアベノミクスに国民の信任が与えられた格好の今回の選挙結果、市場はどんな思いで受け止めているのだろうか?(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)10月から2割上げた日経平均 自民大勝はすでに織り込み済みか 「アベノミクス解散」――。安倍晋三首相がこう銘打った解散総選挙は前評判通り、自民党プラス公明党の連立与党圧勝の結果となった。経済成長を前面に押し出す安倍首相を、多くの市場関係者が好感していることは言うまでもないが、自民大勝で株式市場が大きくハネるかといえば、そうでもない。というのも、大方の予想通りなので、すでに株価は織り込み済みなのだ。
10月末の、日銀による「ハロウィーン緩和」を受けて以降、日経平均株価は急騰した。11月17日に7〜9月のGDP速報値が予想以上に悪かったことを受けて急落したものの、持ち直して12月8日には年初来最高値の1万8030円をマークした。その後、欧州市場の下落を受けて再び下落したものの、10月17日の終値1万4532円と比べると、2割近い上昇を遂げている。 大幅な金融緩和、そして消費増税延期――。つまり、これまでデフレ脱却と財政再建という“二兎”を追っていたアベノミクスは、ここにきてデフレ脱却を優先させるという明確な意思表示をした。それが市場に支持された格好だ。 すでに株式は大きく買われてきたため、選挙後はむしろ、利益を確定させたい投資家の売りが出て、しばらく調整に入る可能性もあるが、アベノミクスが国民から“信任”されたことで、一時的な調整があったとしても市場は堅調に推移するだろう。 円安と原油安で 企業業績に期待 遡ることちょうど2年前、民主党から政権奪取を果たし、第2次安倍内閣を発足させた首相は、「三本の矢」(大胆な金融政策、公共投資などの機動的な財政政策、そして成長戦略)を掲げてアベノミクスを始動させた。 順調と思われていたアベノミクスに陰りが見えるきっかけとなったのが、4月の消費増税だ。以降、GDPの2四半期連続マイナス成長、消費減退を受けて、「アベノミクスの賞味期限切れ」がささやかれることとなったが、それを吹き飛ばしたのが10月末のハロウィーン緩和、そして次の消費増税を17年4月に延期するとの決断だった。 「来年は脱デフレが確実なものとなるかどうかの正念場の年」。メガバンクに籍を置くある市場関係者は、こう話す。企業業績は好調だ。特に円安と原油安が、多くの企業を潤している。これから来年にかけて世界経済が回復し、伸び悩んでいる輸出が増え、貿易収支が改善されれば、まだ市場はあまりこれを織り込んでいないため、株価にはプラスに働くだろう。 特に円安下の原油安は日本にとっていわばボーナスのようなもの。エネルギー価格や石油由来の原材料価格が抑えられれるからだ。海外の市場関係者の間でも「アベは運がいい」と言われているという。 もっとも、地方の景況感は相変わらず悪いままで、業績回復は大企業中心だから、日本経済全体が強さを取り戻しているとは言えない。しかし、日経225を構成する大企業が伸びさえすれば、市場関係者はハッピーだ。プロもアマも、短期売買が中心となった昨今の株式市場では、中長期的な日本経済の回復への関心は二の次。今回のアベノミクスの軌道修正によって、「少なくとも向こう1年半は、脱デフレに全力を挙げるはず」(市場関係者)という期待感がある。
来年は日経平均2万円超えの予想も 「株は政府が買い支えてくれる」 安倍政権継続がすぐさま、大幅な株高につながることはなさそうだが、来年には日経平均2万円超えが見られるのではないか。多くの市場関係者が、こう期待をする。 日銀が金融緩和を発表した同日、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用ポートフォリオの見直しを発表。国内株式の割合を12%から25%にまで引き上げることとした。日銀もまた、上場投資信託(ETF)を年3兆円購入することを決めている。これらの施策は「株は国が買い支えます」と宣言していることと同じ。投資家からすれば、アベノミクスの継続による安心感はこの辺りにもある。 一方、為替はどうか。貿易収支の改善はドル円でみれば円高要因となるが、米国はこの10月にQE(量的緩和)を終了しており、来年のどこかで金利を引き上げるだろう。金利の引き上げはドルをサポートする要因になる。加えて、先進国では米国経済が最も経済成長率が高い。このため、緩やかな円安というシナリオに大きな影響はないと見られる。「年明け1月後半から2月前半のタイミングから再びドル高・円安相場が加速するとみている。目先の節目は125円か130円」と、ニューヨークの日系投資銀行関係者は予想する。 ただし、勤労者の実質所得(インフレ率を勘案した所得)はいまだに減少しており、予断は許さない。来年の春闘ではインフレ率を上回る賃上げが実現するのか。それがアベノミクス想定するようにトリクルダウン(富が富裕層から下へ滴り落ちる効果)していくのか。GDPの6割を占める個人消費が回復し、企業の設備投資が増加していかなければ、自律的な景気回復の足取りはおぼつかない。 さらに、多くの市場関係者が課題として挙げる労働市場改革も道半ばで、再増税をしても日本経済に対する信認が揺るがないほどに、成長力(潜在成長率)を上げることができるかどうか。ここにつなげることができなければ、アベノミクスは単なる超金融緩和がもたらした一過性のバブルに終わり、いずれ市場はまた冷え込むことになるだろう。 http://diamond.jp/articles/-/63673 |