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パイオニア、オーディオ王者の没落 自ら成長の道閉ざし巨額負債、カーエレ注力も周回遅れ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141212-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 12月12日(金)6時0分配信
かつてオーディオファンから「スピーカーのパイオニア」と親しまれた電機メーカー、パイオニアが祖業のオーディオ事業から撤退し、カーエレクトロニクス機器専業メーカーへと生まれ変わる。
パイオニアは11月7日、家庭用AV、電話機事業とヘッドホン関連事業を音響機器メーカー、オンキヨーに売却すると発表した。これによりパイオニアは祖業のオーディオ事業から撤退することが決まった。同時に、収益性の高いDJ(ディスクジョッキー)機器事業も、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツへ590億円で売却することを発表した。
これらの事業売却により、約800億円あるパイオニアの有利子負債は、2015年3月期中に340億円程度まで減る見通し。負債圧縮で身軽になった同社は今後、経営資源を主力のカーエレ機器事業に集中して再成長を目指す。
●「開拓者」でありながら、競争優位を保てず
振り返ると、高度成長期以降のパイオニアの歩みは「新技術で浮沈を繰り返した半世紀」だったといえる。創業は1937年で、創業者の松本望が高音質スピーカー「ダイナミックスピーカー」の国産化に成功し、それを事業化するため翌年に「福音商会電機製作所」を設立したのが始まりだった。
その後、62年に発売した「世界初のセパレートステレオ」をきっかけに大飛躍を遂げる。時あたかも高度経済成長期で、オーディオブームが沸き起こり「アンプの山水電気」(今年7月に破産)、「チューナーのトリオ」(現JVCケンウッド)と並んで「オーディオ御三家」と呼ばれ、音質を徹底的に追求した製品はオーディオファンの必需品となり、不動の地位を確立した。
しかし、82年にCDが登場して音楽記録媒体が小型化するとともに、音源技術も音楽記録技術もアナログからデジタルに変わり、御三家の優位性は急速に薄れた。さらにソニーの携帯型音楽プレイヤー、ウォークマンや低価格のミニコンポに市場を奪われ、御三家の時代は終わった。
オーディオ業界関係者は「オーディオ機器メーカーとして成長の道を閉ざされたパイオニアは、再成長の活路をAV機器に求めたが、ここでチャンスを2度も逃した」と語る。
一つ目のチャンスとは、得意のオーディオ技術に映像技術を加えて82年に発売した、業務用LDカラオケシステムだ。当時はカラオケブームの全盛期で、高品質の伴奏音と映像を1枚のディスクで再現するLDカラオケは「絵の出るカラオケ」としてヒット商品となり、クラブやスナックで引っ張りだこになった。さらに80年代半ばからは新業態のカラオケボックスがLDカラオケの需要を押し上げた。しかし、その成功に安住している間に92年になると通信カラオケが登場、たちまちLDカラオケは市場から駆逐され、パイオニアは再成長の支柱を失った。
二つ目はLDカラオケの進化形として97年に発売した、世界初の家庭用50インチ型プラズマテレビだ。プラズマパネルの自社工場を建設するなど累計1000億円超をプラズマテレビ事業に投入、一時は薄型テレビ市場のシェアをほぼ独占する勢いを示した。ところが、こちらもその後の技術革新の方向を見誤り、大画面・低価格に成功した液晶テレビに市場を奪われた。09年にはプラズマテレビ事業からの撤退を余儀なくされ、巨額の負債だけが残った。
●自動車業界では周回遅れの状態
パイオニアは9月16日に新事業方針を発表、その中で再成長の道筋を示した。
小谷進社長は「パイオニアは『音響』から生まれた会社だが」と前置きした上で、祖業を継承した家庭用AV・DJ機器事業を今後も存続してゆくためには継続的な投資が必要だが、現在の体力でこれらの事業に投資を続けることはできないと語った。特にホームエレクトロニクス部門は、DJ機器が稼ぐ利益を家庭用AV機器の赤字補填に使っているのが実情だと明かし、「当社が再成長を図るためには断腸の思いでホームエレクトロニクス部門を切り離し、伸び代のあるカーエレクトロニクス部門に経営資源を集中するのが最善の選択と判断した」と、カーエレ機器専業を目指す理由を説明した。
さらに今後の方針としては、主力となるカーナビとカーオーディオに頼り切るのではなく、クラウド型情報サービスと各種カーエレ機器・周辺機器を組み合わせたさまざまな「コネクテッドカー機器」を開発、展開してゆくという。そのために不足している技術は先行メーカーとの提携や買収も含め、スピード感を上げて強化するし、今後の成長が見込まれる新興国市場対策としてブラジルやインドネシアに新拠点を設ける。こうした取り組みで、カーエレ機器市場で「総合インフォテインメント(情報と娯楽の融合サービス)のリーディングカンパニーを目指す」と強調した。
再成長の道筋として示した、一見大胆な戦略転換に、成算はあるのだろうか。
パイオニアが戦略商品と位置付けているコネクテッドカー機器については、13年にNTTドコモと資本提携し、ドコモの通信網を通じて走行情報を収集するなどの体制をすでに整備している。現在の個人を中心とした先進ユーザー向けに加え、今後はタクシー配車向けやトラック運行管理向けなど法人需要を開拓する考えだ。
また、iPhoneで操作できる米アップルの車載システム、CarPlay対応機も業界に先駆けて投入したほか、視線を前方に保ったままナビ情報を見られるヘッドアップディスプレイなど、カーエレ機器新領域の製品開発も進めている。
小谷社長は記者会見で「自動車のキーサプライヤーとして、なくてはならない存在になりたい」と抱負を述べたが、自動車業界担当の証券アナリストは「大手自動車メーカーがこれからのウリにしようとしている自動運転システムなどの先進運転技術開発競争では周回遅れの状態で、早く先頭集団に追いつかないと自動車業界の中核に食い込めない」と厳しい見方を示した。
大手投資銀行のアナリストも「パイオニアのカーエレ機器は市販向け商品が大半で、従来は自動車メーカーとの取引がほとんどなかった。今後、自動車のキーサプライヤーになるためには、自動車メーカーとの提携をいかにして確立するかが課題」と指摘する。
パイオニアの伝統は技術革新にある。一時の成功に溺れ、気がついた時には技術革新競争に敗れてきた過去の教訓を生かせるか。同社再成長のカギは、そこにありそうだ。
福井晋/フリーライター
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