05. 2014年12月12日 07:46:28
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海外で日本の農産物を売りまくる秘策 その農業改革案では甘すぎます(その24) 2014年12月12日(Fri) 有坪 民雄 「日本の農産物は高品質だから海外で高く売れる。もっと輸出しよう」という主張をよく聞きます。コメの場合、こうした主張にあまり根拠がないということは以前書きました(「外国の富裕層は日本の高いコメなんて買いません」)。では、他の農作物もそうかと言えば、違う様相を示します。これが農業政策立案の難しさです。 例えば、筆者が今年の兵庫県和牛共進会(兵庫県産和牛のコンテスト)に行ったところ、牛を買い付けるセリの参加業者にアジアやヨーロッパの会社が来ていて、何頭か競り落としていったのには驚きました。 すでに屠殺してある枝肉が並ぶ食肉市場で外国人バイヤーをちらほら見かけるのは、3年くらい前からありました。けれども、屠殺してみないと良いか悪いか分からない、買うのにノウハウが必要な生体の競り市まで参加してくるとは思わなかったので驚いたのです。JAも含む多くの食肉業者が外国にセールスをかけてきた成果が出てきていると見ていいでしょう。 しかし、こうした例はまだ少数です。農産物の場合、各国の防疫規制をクリアしないと輸出できないことが多いからです。 下手に外国産農作物を入れると、一緒に付いてきた害虫や病気によって自国農産物が危機にさらされるかもしれません。その危険性を嫌がらない国はありませんから、これは致し方ありません。しかし、輸出したい国から見ると、障壁になるのは間違いありません。 アメリカにお茶を輸出する個人農家 これに対し、加工品はまだチャンスがあります。加工済みなので、害虫も病気もあらかじめ取り除かれていることが多く、防疫的にも引っかからないからです。今、精力的に輸出されている日本酒がその典型例です。 今回は農産物の加工品としてお茶を挙げてみましょう。 いわゆる日本茶は明治の頃から海外に輸出されていました。静岡市のホームページによると、明治15年当時、生産量の82%も輸出に回されていたといいますから、生糸に並ぶとまでは言えないものの、日本の主要輸出品目の1つだったわけです。そもそも静岡が現在のような茶の大産地になったのも、輸出市場が大きく開けていたからでした(「日本茶輸出の歴史に学ぶ〜清水港茶輸出開始から100年〜」、静岡市)。 その後、静岡は海外市場主体から国内市場にシフトして現在に至りますが、近年は再び輸出に力を入れつつあります。 以前、静岡に講演に行ったときにお話を伺った静岡の茶農家の方は、個人農家レベルでアメリカに輸出をされていました。茶は軽くて高級品になると、たいした容積がなくても単価が高いので、送料が安くつく分有利ではあります。しかし農業法人レベルならまだしも、個人農家レベルで海外に売る人というのは聞いたことがありませんでした。一体、どうやって市場を開拓されたのでしょうか? その方に訊ねたところ、「最初はハワイです。まずハワイで実績を作ってアメリカに行きました」とのことでした。日系人の多いところからまず攻めるというオーソドックスなやり方で、当たり前すぎて驚いた記憶があります。 海外在住者を組織化して売ってもらえないか? 海外在住の日本人こそが日本の農産物加工品の良さを最初に認めてくれるのなら、こんなアイデアが浮かびます。 海外在住の日本人に、日本の農産物加工品を売ってもらえないだろうか? 日本という国は、山地が多く農業の適地はそれほど多くありません。しかし、南北に長い国で気候的に亜寒帯の北海道から亜熱帯の沖縄まで存在するため、作れる作物の種類は世界でもかなり多い方に属します。 反面、一番多く作られている米ですら年間1500万トン程度しか作れません(実際は減反がありますからもっと少ない)。そのため世界制覇するほどの量の生産も難しいわけです。そうなるとニッチなところを狙うしかありません。 よって高品質高単価の農作物で輸出市場を開けという話にもなるわけですが、海外に営業マンを持てるだけの“経営資源”を所有する農家や農業法人はほとんどありません。それなりに大手の加工業者だけが市場を開拓しているのが現実です。 ならば、個人農家や零細農業法人のために、アルバイトでいいから海外在住の日本人に営業マンをやってもらえないでしょうか? 言葉の問題も、現地で暮らしている日本人なら問題ありませんし、海外で暮らしていても日本の役に立ちたいと思う方も少なくないはずです。そう考えて、現地で結婚し、現地に骨を埋める気でいる何人かの海外在住の方に聞いてみました。「日本の農家のために、依頼があれば営業活動してくれる人はどれくらいいると思いますか?」 すると、答えはたいてい「100人に1人じゃないかな?」ということでした。根拠はありませんが「5人に1人くらいはいるんじゃないか」と想像していた私はがっかりしてしまいました。でも、考えてみれば海外在住の日本人は1万人や2万人じゃないのです。 平成25年の統計によれば、海外在留邦人は125万人。このうち日本に帰ってくる予定がない、現地に骨を埋める「永住者」は40万人程度います。さらに、何人くらいいるのか分かりませんが、日本国籍から離脱した「日系人」の方を独断と偏見で永住者と同数と想定すれば、合わせて80万人です。 そのうち100人に1人の協力を仰げるとすれば、8000人の営業人員を日本は持っていることになります。こうした人たちを組織化できれば、パートタイムだとしても、人数的には総合商社に匹敵するくらいになります。 農水省や外務省は、一度海外在住者と日本の農業を結びつけるSNSのようなネットーワークを作れないか、検討してみる価値はあるのではないでしょうか? 【あわせてお読みください】 ・「外国の富裕層は日本の高いコメなんて買いません」 ( 2013.12.06、有坪 民雄 ) ・「『外国に出て日本の野菜を 作ってみたらいいんじゃないでしょうか』」 ( 2014.01.24、有坪 民雄 ) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42400
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