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[スクランブル]原油安にリスクの芽
楽観相場、ファンドが保険
株式市場に広がる楽観ムードの陰で、海外ファンドが株式相場の下げに備えている。デリバティブ(金融派生商品)の日経平均オプションを用いて、相場が下がるともうかる保険をかけ始めた。彼らの視線は原油の急落を引き金にしたリスクの広がり。先進国にとって原油安はプラスとみられがちだが、資源国や新興国を厳しい局面に追い込み、世界の金融市場を揺らす火種になる可能性を意識しているようだ。
8営業日ぶりに日経平均株価が反落した9日。ただ、市場関係者の口から悲観の声はほとんどもれてこない。出てくる言葉は「やっぱり日銀が買ってくる」。この日も日銀は上場投資信託(ETF)を374億円買った。買い手の存在が安心感を支える。ブリヂストンなど主力の輸出株は相次ぎ年初来高値をつけた。
しかし、デリバティブに目を向けると風景は異なる。リスクの芽を感じ取る取引が増えているのだ。相場が下がると利益が出る「売る権利」を海外ファンドなどが買い進めている。オプション価格をみると、株価変動が将来大きくなる可能性を織り込みつつある。
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オプションには上がればもうかる「買う権利」もある。それ以上に売る権利の建玉の方が直近で膨らんできたのが、ここ2年のアベノミクス相場でなかった大きな変化だ。「投資家は日本株の下げに備えつつある」(ゴールドマン・サックス証券の宇根尚秀氏)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏は「ファンド勢は原油急落が資源・新興国のリスクを高める引き金になりうるとみている」と読む。逆オイルショックの可能性だ。
産油国で苦境が際立つのがベネズエラだ。財政を石油収入に頼る同国は、国営ベネズエラ石油の信用保証料率(CDS)が急上昇、8日は33%まで上がった。CDSはデフォルト(債務不履行)リスクの大きさを示すもの。2010年に経済危機となったギリシャでも10%台だっただけに、その深刻ぶりがうかがえる。
原油安はまだ止まらないとの指摘も聞こえてくる。米モルガン・スタンレーは5日、石油輸出国機構(OPEC)の生産削減がなければ、北海ブレントの価格が現在の1バレル60ドル台半ばから43ドルに下がる可能性があるとリポートした。
ファンドの運用にも原油安が影を落とし始めた。欧州最大のヘッジファンド、ブレバン・ハワードが運用する商品ファンドの清算を決めるなど、ファンドの閉鎖が増え始めている。相場にテコをかけ投資するヘッジファンドの資金収縮は相場の下値不安も増幅する。
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1997年のアジア通貨危機との類似性を指摘する声もある。東南アジア経済に蓄積された不均衡がタイ通貨バーツ安を発端にほころび始め、ロシア危機から大型ヘッジファンドの破綻へと広がり、先進国の株式市場に波及していった。
「危機は連鎖するまで表面化しないが、小さいほころびから始まる」とビスタマックス・ファンド・アドバイザーズの藤原正邦代表は指摘する。「相場は楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」。米国の相場格言に耳を傾ける時かもしれない。
(藤原隆人)
[日経新聞12月10日朝刊P.18]
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