01. 2014年12月11日 06:42:30
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円安の影響は14兆5000億円!?(西岡純子) 物価上昇の重要な前提条件「需給ギャップ」 消費増税の影響を除いたコアCPI、つまりインフレ率の推移を見ると、直近10月の全国消費者物価指数によると0.9%と、1%を下回ってしまっています。ここから先、数ヶ月の間に0.8%程度までさらに低下する可能性が高いですが、そこがボトムではないかと思われ、その後少しずつ回復が見込まれています。 このところのインフレ率の落ち込みの理由としては、「前年の裏」であることがあげられます。日本の消費者物価は前年比で測る慣習があるため、前年に力強く上がった分、どうしても反動が出てしまうのです。それに加え原油価格の下落もあり、インフレ率は低下しているのです。今後は順調に回復すると思っていますが、当初の予想よりもはるかに回復ペースが遅くなってしまいました。現時点では16年度末に2%に限りなく接近するだろうと見ています。 ある条件を組み合わせたときに考えられるインフレ率の理論値を表で示しましたが、これは過去のデータを使って、経済の需給バランスと為替の組み合わせで、もっともらしいインフレ率はどこかを計算したものです。現在の需給ギャップは、振れをならすと-2%程度です。それに対し、足元で為替が直近1ドル=120円まで上がってきています。この実態から考えると、インフレ率の理論値は0.8%で、今はほぼ理論値に近いところにあると言えます。 今後需給ギャップが順調に回復し、2016年には±0まで戻るとします。その時に為替が120円の水準であれば、理論値ではインフレ率は1.6%まで上がるということになります。ただ、それでもまだ2%には少し足りず、2%にするためには、需給キャップが+1は必要になってくることがわかります。
今回、GDPがマイナスとなってしまったことで、需給ギャップ+1はかなり先と予想され、展望するのは難しい状況です。ただ、赤字国債の発行がしにくいので補正予算の規模はどうしても小さくなってしまいますが、リフレ政策を取る政府が、来年以降例えば10兆円規模の経済対策を講じたとすれば、もしかしたら需給ギャップは+1に近づくかもしれません。その場合にはインフレ率2%の達成は目の前にあると言えます。2%の目標達成は無理なことではなく、政府がその気になれば達成し得るものだと考えています。世の中ではまだ2%は絶対に無理だと主張する人が多いわけですが、状況によって達成はあり得ると思っています。 物価の上昇について考える際、必ず需給ギャップが重要な前提条件となります。日銀も内閣府も、物価を考える際にはこの需給ギャップをまず決定要素の一つとして重視します。ただ、需給ギャップと一口に言っても、日銀が考える需給ギャップと内閣府が考える需給ギャップは集計方法が全く違います。 潜在成長率とは、経済に存在する労働や生産設備といった経済資本が平均的に稼働したときに、経済がどれだけ成長するのかを供給面で捕らえたものですが、その潜在GDPと実際のGDPの乖離がどうなっているのかを評価するのが内閣府の計測方法です。一方、日本銀行はより単純に、失業率や設備稼働率、実際の資本がどれだけ平均的に稼働しているのかから直接推計しています。概念は同じでも微妙に推計の方法が違っているのです。 2つの数値をグラフで比べてみると、往々にして日本銀行の数字の方が強気です。直近でも日本銀行の推計によると今年前半の需給バランスはもはや±0まで行っていますが、一方、内閣府のやり方で見ると-2.9%と、まだ低い水準です。先ほどのインフレ率の理論値の表でも、需給ギャップがマイナスの世界と±0%の世界ではインフレ率が大きく異なっています。もともとの前提条件である需給ギャップが全然違う値なので、日銀はやはり物価に対して強気で、内閣府の数字は弱気となるのです。 内閣府のやり方は万国共通でオーソドックス、国際基準に近い計算方法なので、民間エコノミストも内閣府の計測方法に準じて各自で推計、評価します。それに対し日本銀行は強く出やすい推計方法を使っており、あたかも強気の物価見通しを維持するために、意図的にそうした推計方法を用いているかにも見えます。
このように推計方法が違うとなると、両者の議論は一向に交わりません。前提条件が違う以上、エコノミストの物価見通しはどうしても低めで、日本銀行の見通しはどうしても強くなってしまうのです。 円安の影響は14兆5000億円!? そして、もう一つポイントとなるのが円安です。円安が経済にとってプラスかマイナスか考えると、2%の物価目標を達成するという非常に表面的な目標達成のためには、円安は相当効果的です。 また、円安は企業収益にとっても好影響をもたらすと言えるのです。為替の水準によるシナリオ別に、企業収益に及ぼす影響を見てみると、昨年度のドル円平均値(100円程度)に対し、来年度末に為替が110円になった場合、国内事業の収益は悪化します。輸出は増えるもののコストの増加で国内販売が減り、国内事業の収益は13年度と比較して1兆8000億円悪化するという計算結果が得られました。しかしその一方で、海外販売はそもそも海外の成長率が高い上に、円に置き直すときの収益効果があるので、9兆8000億円のプラスとなり、全体の収益では8兆円増えるという計算になります。 さらに来年度末に120円と想定した場合、国内事業の収益悪化幅はさらに広がってしまいます。円安になればなるほどコストが増加するので、国内事業の収益は落ちてしまうのです。しかし一方で海外販売は逆行して増えるので、全体では14兆5000億円の収益拡大となるのです。いろいろな要素があるものの、全体としてみると、円安は経済にとってはプラスと考えられるのです。
円安が企業所得に及ぼす影響として、いろいろな格差が出てくることも確かです。海外事業に特化できるような企業は恩恵を受けやすい一方、非製造業に多くある、国内事業を主にしている産業では、やはり企業の収益が落ちてしまうことになります。業種別、企業規模別に、円安によって差が広がってしまうのが実態だと言えるでしょう。 7-9月期GDP 年1.6%減(大前研一)
【日本】7-9月期GDP 年1.6%減 〜内閣府〜 内閣府が17日に発表した7-9月のGDPは、年率換算で1.6%減少しました。一方、安倍総理は18日、法人実効税率を数年間で20%台に引き下げる目標について、「来年度から開始する、財源をしっかり確保していく」と述べました。 実は日本経済の実態は非常に悪く、このことが結局二期連続のマイナスとして現れたのです。主にイギリスのメディアを中心に、日本はリセッションに入ったという言い方が聞かれます。安倍総理の話を聞いていると、アベノミクスでますます日本経済は良くなっていると表現していますが、実際はそうではなく、私が何度も言っているように、今年は一年締めてみたらマイナスだったという状況になってしまっているのです。 このGDPが-1.6%というパニックから今回の衆院解散に至るという、この論理の組み立てをよく頭に入れておく必要があります。そうしないと安倍総理の演説でごまかされてしまうからです。選挙ではアベノミクスを問うとしていますが、結果はすでに駄目だったとはっきりしているのです。安倍総理はある意味ペテン師かと思うほどです。
GDP-1.6%が発表されたその当日に解散を決意、つまり景気条項というものを発動し、増税を18ヶ月伸ばすと言ったわけですが、もしアベノミクスが成功していたら伸ばすわけはないのです。そもそも景気がうまくいっていないから増税を伸ばしたのです。安倍総理の頭の中では何かがずれているのだと思いますが、野党はその辺をうまく突いていません。 円ドル相場の推移を見ると過去に120円をつけていますが、今回も急激に円安が進んでいて、120円を目指す展開と言われています。実質GDP成長率の推移を見ても二期連続のマイナスで、年間でもマイナス、さらに住宅投資、消費支出ともにマイナスとなっています。 このような景気状況の中、あっという間に衆議院解散総選挙になってしまいました。衆議院は21日の本会議で解散され、与野党は選挙戦に突入しました。安倍総理は成長戦略を前に進めるべきか、国民の皆さんの判断を仰ぐと述べるとともに2015年10月に予定していた消費税率の引き上げを先送りする考えを表明しました。
解散総選挙となると皆が万歳と言いますが、小泉進次郎と野党の人たちは今回、万歳をしませんでした。普通は野党も自分たちもやるぞと万歳をするものですが、今回は珍しく民主党も万歳をしませんでした。今回はとんでもないロジックで、成長戦略を進めるべきかを仰ぐとしています。しかし実際はそうではなく、成長戦略を進めていた安倍総理が、2年たっても達成できず、さらにはマイナス成長となり、景気条項を発動して1.5年の先送りをしたわけです。 これはつまり、成長戦略をやっていたアベノミクスが失敗したということそのものなのです。安倍総理は自身のアベノミクスに対する信頼を問うとしていますが、頭の中のどこかで、小泉氏の郵政選挙のようなイメージがあるのだろうと思います。しかしそれも全く間違いであると言えます。 安倍総理はアベノミクスの評価として、自慢げにGDPが514兆円から522兆円に伸びたという数字を使っていますが、伸びたと言ってもわずか8兆円にすぎません。さらに円で割ってドル換算をしてみると、政権発足時には6兆ドルであったのが、直近では4.4兆ドルと、30%もシュリンクしているのです。つまり、海外から見ると日本経済は急激にシュリンクしていると見えるのです。世界GDPランキングを見ても、ユーロが強い分ドイツに迫られている状況で、実際はそういうみっともない状況にあるのです。 また、安倍総理は円安に振ったことを自慢していますが、自国通貨が弱くなって自慢する国など、韓国と日本しかないのです。所得の面で見ても、ドルに直せば激減しているのです。すなわち個人の購買力はものすごく減少したと言うことです。これは私たちにとっては相当な痛手です。ドルで見ると日本が惨憺たる状況であることがよくわかり、これでは世界の笑い者です。安倍総理になってから日本はGDPを3割も減らし、安倍総理は自慢げに数字を挙げて説明していますが、レトリックもいいところなのです。
そしてこのように実際はドルで見るという見方を、野党がもっと使うべきなのです。このようなイカサマな解散にも関わらず、新聞記者も腰が引けてまともな質問をしません。アベノミクスがもしそんなに成功しているならなぜ解散するのか、なぜ景気条項を使ったのかと、記者クラブでは誰も質問しないのです。 こうした中、お金は余っているのでどこに向かうかと言うと、不動産しかありません。14日の日経平均株価は三菱地所などの不動産株が大きく値上がりしました。REITの総合的な値動きを示す東証リート指数は約7年ぶりの高値を回復しています。 実は、この後予想されるハイパーインフレに対しては、いわゆるキャッシュフローを生む不動産は割に強いと言えます。また、コモディティーと言われているような必ず使うもの、ブルーチップの商品はハイパーインフレに強いので、そうしたところにお金が集まってきます。つまり日本のハイパーインフレはすでに織り込み済みという状況なのです。J-REIT市場全体の時価総額は急激に伸びています。ここから先どこまで伸びるかはわかりません。REITは商業用不動産であり、今後賃料を支払えない企業も増えてくるので無制限に伸びるとは考えられませんが、一応ハイパーインフレには強いということから、REITにお金が向かっているということなのです。 http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/20141210_105616.html
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