http://www.asyura2.com/14/hasan92/msg/211.html
Tweet |
アベノミクスは経済を動かしていない 景気への影響は小さく「燃費の悪い」経済政策
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141210-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 12月10日(水)6時1分配信
4日に衆議院総選挙(14日投開票)が公示され、アベノミクスへの評価がかまびすしい。だが、ビジネスの現場の感覚からすると、政治家たちがテレビで口角泡を飛ばしている議論は、どこか前提と軸がずれているように感じる。そうした論点をいくつか挙げてみたい。
(1)アベノミクスの影響力の評価
現在の経済状況の良い点も悪い点もすべてがアベノミクスにより起こったわけではない。端的にいえば、賛否両方がいうほどアベノミクスは日本経済を動かしていない。それ以外の要因が、今の経済状況に影響しているのだ。
・5%から8%への消費増税(4月)の是非を、アベノミクスと一緒に議論すべき
自民党も民主党も、消費税を8%に上げたことの是非については議論から除外している。両党合意だったからだろうが、現在の経済状況に大きな影響を与えた政策なのだから、よく検証・議論して今後の経済政策に生かさなければならない。安倍政権の経済政策の総括をいえば、アクセル(アベノミクス)とブレーキ(消費税増税)を同時に踏んだので、燃費の悪い施策になってしまった。大きなリスクを張った割には景気にも財政にも効果が少なかった。
・アベノミクスは開始直前に出始めていた経済回復傾向を後押ししたにすぎない
アベノミクス開始直前、米国経済の復調を受けて景気が少し上向き始め、経常収支の黒字が減り、そのために円安の傾向が出て、株価にも上昇傾向がみえていた。アベノミクスは、大きく方向転換をしたというよりも、民間の自然な力で回復軌道に乗り出した頃に「車の後押し」をしてその方向で前へ進ませたというのが実態に近い。
・非民主党政権のプラス効果
民主党政権の政策は、一言でいうと企業と官僚をいじめることを国の経済成長よりも優先していた。政治からの不意のいじめが来るのに備え、企業は内部留保を厚くして備えた。その民主党政権が終わり、経済環境にプラスの予測可能性が出てきたので経済活動が活性化した。自民党への政権交代後、経済に最も大きなプラス効果をもたらせたのは、アベノミクスでも自民党政権でもなく、単にビジネスを敵視する民主党政権でなくなったからだろう。強いていえば、自民党政権のほうが民間の経済活動の邪魔をする程度が少なかったからだといえよう。
(2)アベノミクスの結果の評価
安倍晋三首相は就任以来、円安、株価上昇、雇用の拡大という結果を、自らの経済政策の成果と主張してきた。前述したとおりアベノミクスが及ぼした影響は限定的だが、理由と原因はともかく、円安、株価上場、雇用の拡大という結果が出たのは事実である。では、これらの結果は果たしてプラスの結果といえるのか。
・円安は、たいしてプラスではない
現在の円安局面になる前、政府やマスメディアが円安のプラス効果を訴えていた頃から一部で指摘されていたことだが、今の日本経済にとって円安は必ずしもプラスではない。日本のGDPの7割をサービス業が占め、製造業の比率は低い。加えて輸出依存度は他の先進国に比べても低い。従って、円安になって恩恵を受ける輸出型製造業の比率は低いので、円安の恩恵を実感する国民が少ないのだ。
そもそも、歴史的にも自国通貨安で崩壊した国は数あれど、自国通貨高で崩壊した国はない。言い方を換えれば、むしろ幸いにも十分な基礎体力があったので3割の通貨安を許容できた。だから強力な金融緩和策を実施できたと見るべきだろう。
・株高は、それだけで成果ではない
株価が上がったからといって、必ずしも経済が良くなっているわけでもないし、国民の生活が豊かになるものでもない。例えていえば、塾から受験生への宿題が増えたからといって、生徒の成績が上がったのではないのと等しい。増えた宿題をちゃんと消化したら成績が上がる可能性が高くなる、という程度でしかない。
受験生がよく勉強して実力を伸ばすには、宿題の量を増やすことよりも、じっくりと勉強する習慣をつけることのほうが大事だろう。株価も上がったり下がったり変動性が高いと、少しくらいその平均値が上がっても、企業経営に支障をきたすものである。公的資金を市場に投入して短期的に株価を上げたりすれば、却って経済にはマイナスなのだ。
・雇用増は成果
雇用増は、明らかに今の日本経済にプラスだ。労働力の投入を増やせば経済はその分成長する。日本には、女性や元気な高齢者など働く能力を持つ潜在労働力がたくさんある。今は「就業の意図なし」として失業者としてカウントされていないこの層が労働参加すると、経済成長に直結する。失業率より雇用率が大事だ。従って、安倍首相が「平均賃金が下がっても総雇用者所得が増えたことは良い」と主張するのは正しい。
また、たとえ非正規雇用者の増加が主力だとしても、総雇用者数が増えるのはいいことだ。職のない人が非正規でも雇用されれば、格差の縮小にもつながる。前述のように雇用増をもたらしたのがアベノミクスなのかは怪しいが、従来円安や株高を主張していた安倍首相が、選挙での市民の反応をみながら雇用増が大事な論点なのだと気づきだしたのは良いことである。与野党ともに雇用増につながる政策に焦点を絞って建設的議論をすることが望まれる。
(3)アベノミクスの三本の矢の評価
以上を踏まえて、アベノミクスの三本の矢の一言評価をしてみよう。
・金融政策:円安・株高には効果があった。ただし、前述のように、その結果がプラスの成果なのかどうかは、怪しい。
・財政政策:出したお金だけの効果はあったが、従来の財政政策同様波及効果・乗数効果はなかった。
・成長戦略:何もできていないし、できたことの効果も出ていない。
以上を総じていうと、次のようになる。
・アベノミクスは、大きな成果はなかった、少し成果があった。
・安倍政権下の経済政策は、ブレーキとアクセルを同時に踏んだので効率が悪かった
・それでも、民主党政権の経済政策よりよほどましだった。
(4)今後の経済政策
では、これから、何を軸に経済政策を論ずればいいのだろうか。そして次の政権は何をするべきなのだろうか。
・福祉予算を削減する財政政策
福祉予算を削減することにつきる。せめてその道筋をつけることである。消費税を数%上げたところで財政赤字の増加にとうてい追いつかない。ましてや公務員の給料を減らしても誤差の範囲でしかない。また、景気対策としての短期的な公共工事の増額はやめたほうがいい。不安定な雇用を増やし、資材や工事の市場が混乱するだけだ。それよりも橋や道路の持続可能な維持補修予算を安定的に確保するほうが大事だ。
・雇用を拡大する成長戦略
雇用の流動性の増加、保育園の拡充などあらゆる手段を使って雇用を拡大する。高齢者が働くと健康になって医療費・介護費の削減にもなる。一方で、特定分野をターゲットにして支援する産業政策は、変化の激しい現代では、有効ではない。株式市場への年金などの公的資金投入は変動性増すだけだ。また、最近やたら多い政府系の「●●基金」と称するファンドもやめたほうがいい。政治家、学者、官僚的人間が手を出すべき分野ではない。
・予見可能性の確保
恣意性の働く政策をやめ、経済政策の予見可能性を確保することが大事だ。政治が、ある日突然に特定企業を攻撃すると、それをみた他の企業も日本のカントリーリスクが高いと感じて海外活動の比重を強める。さらに企業が内部留保を高め、投資も従業員への給料への配分も控えるので経済停滞につながる。
選挙期間中に雇用の拡大が論点の中心に移ってきたのは、それだけでも今回の選挙の意義を増して良いことである。国民はしたくもない選挙をする事態になっているけれども、民主的選挙をしたくてもできない香港の人々のことを思えばはるかにましである。今回の選挙の意義を見いだし、投票所に行こうではないか。
小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。