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アベノミクスは経済を動かしていない 景気への影響は小さく「燃費の悪い」経済政策(Business Journal)
http://www.asyura2.com/14/hasan92/msg/211.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 12 月 10 日 08:17:05: igsppGRN/E9PQ
 

アベノミクスは経済を動かしていない 景気への影響は小さく「燃費の悪い」経済政策
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141210-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 12月10日(水)6時1分配信


 4日に衆議院総選挙(14日投開票)が公示され、アベノミクスへの評価がかまびすしい。だが、ビジネスの現場の感覚からすると、政治家たちがテレビで口角泡を飛ばしている議論は、どこか前提と軸がずれているように感じる。そうした論点をいくつか挙げてみたい。

(1)アベノミクスの影響力の評価

現在の経済状況の良い点も悪い点もすべてがアベノミクスにより起こったわけではない。端的にいえば、賛否両方がいうほどアベノミクスは日本経済を動かしていない。それ以外の要因が、今の経済状況に影響しているのだ。

・5%から8%への消費増税(4月)の是非を、アベノミクスと一緒に議論すべき

自民党も民主党も、消費税を8%に上げたことの是非については議論から除外している。両党合意だったからだろうが、現在の経済状況に大きな影響を与えた政策なのだから、よく検証・議論して今後の経済政策に生かさなければならない。安倍政権の経済政策の総括をいえば、アクセル(アベノミクス)とブレーキ(消費税増税)を同時に踏んだので、燃費の悪い施策になってしまった。大きなリスクを張った割には景気にも財政にも効果が少なかった。

・アベノミクスは開始直前に出始めていた経済回復傾向を後押ししたにすぎない

アベノミクス開始直前、米国経済の復調を受けて景気が少し上向き始め、経常収支の黒字が減り、そのために円安の傾向が出て、株価にも上昇傾向がみえていた。アベノミクスは、大きく方向転換をしたというよりも、民間の自然な力で回復軌道に乗り出した頃に「車の後押し」をしてその方向で前へ進ませたというのが実態に近い。

・非民主党政権のプラス効果

民主党政権の政策は、一言でいうと企業と官僚をいじめることを国の経済成長よりも優先していた。政治からの不意のいじめが来るのに備え、企業は内部留保を厚くして備えた。その民主党政権が終わり、経済環境にプラスの予測可能性が出てきたので経済活動が活性化した。自民党への政権交代後、経済に最も大きなプラス効果をもたらせたのは、アベノミクスでも自民党政権でもなく、単にビジネスを敵視する民主党政権でなくなったからだろう。強いていえば、自民党政権のほうが民間の経済活動の邪魔をする程度が少なかったからだといえよう。

(2)アベノミクスの結果の評価

安倍晋三首相は就任以来、円安、株価上昇、雇用の拡大という結果を、自らの経済政策の成果と主張してきた。前述したとおりアベノミクスが及ぼした影響は限定的だが、理由と原因はともかく、円安、株価上場、雇用の拡大という結果が出たのは事実である。では、これらの結果は果たしてプラスの結果といえるのか。

・円安は、たいしてプラスではない

  現在の円安局面になる前、政府やマスメディアが円安のプラス効果を訴えていた頃から一部で指摘されていたことだが、今の日本経済にとって円安は必ずしもプラスではない。日本のGDPの7割をサービス業が占め、製造業の比率は低い。加えて輸出依存度は他の先進国に比べても低い。従って、円安になって恩恵を受ける輸出型製造業の比率は低いので、円安の恩恵を実感する国民が少ないのだ。

そもそも、歴史的にも自国通貨安で崩壊した国は数あれど、自国通貨高で崩壊した国はない。言い方を換えれば、むしろ幸いにも十分な基礎体力があったので3割の通貨安を許容できた。だから強力な金融緩和策を実施できたと見るべきだろう。
 
・株高は、それだけで成果ではない

  株価が上がったからといって、必ずしも経済が良くなっているわけでもないし、国民の生活が豊かになるものでもない。例えていえば、塾から受験生への宿題が増えたからといって、生徒の成績が上がったのではないのと等しい。増えた宿題をちゃんと消化したら成績が上がる可能性が高くなる、という程度でしかない。

 受験生がよく勉強して実力を伸ばすには、宿題の量を増やすことよりも、じっくりと勉強する習慣をつけることのほうが大事だろう。株価も上がったり下がったり変動性が高いと、少しくらいその平均値が上がっても、企業経営に支障をきたすものである。公的資金を市場に投入して短期的に株価を上げたりすれば、却って経済にはマイナスなのだ。

・雇用増は成果
 
雇用増は、明らかに今の日本経済にプラスだ。労働力の投入を増やせば経済はその分成長する。日本には、女性や元気な高齢者など働く能力を持つ潜在労働力がたくさんある。今は「就業の意図なし」として失業者としてカウントされていないこの層が労働参加すると、経済成長に直結する。失業率より雇用率が大事だ。従って、安倍首相が「平均賃金が下がっても総雇用者所得が増えたことは良い」と主張するのは正しい。

また、たとえ非正規雇用者の増加が主力だとしても、総雇用者数が増えるのはいいことだ。職のない人が非正規でも雇用されれば、格差の縮小にもつながる。前述のように雇用増をもたらしたのがアベノミクスなのかは怪しいが、従来円安や株高を主張していた安倍首相が、選挙での市民の反応をみながら雇用増が大事な論点なのだと気づきだしたのは良いことである。与野党ともに雇用増につながる政策に焦点を絞って建設的議論をすることが望まれる。

(3)アベノミクスの三本の矢の評価

以上を踏まえて、アベノミクスの三本の矢の一言評価をしてみよう。

・金融政策:円安・株高には効果があった。ただし、前述のように、その結果がプラスの成果なのかどうかは、怪しい。
・財政政策:出したお金だけの効果はあったが、従来の財政政策同様波及効果・乗数効果はなかった。
・成長戦略:何もできていないし、できたことの効果も出ていない。

以上を総じていうと、次のようになる。

・アベノミクスは、大きな成果はなかった、少し成果があった。
・安倍政権下の経済政策は、ブレーキとアクセルを同時に踏んだので効率が悪かった
・それでも、民主党政権の経済政策よりよほどましだった。

(4)今後の経済政策

では、これから、何を軸に経済政策を論ずればいいのだろうか。そして次の政権は何をするべきなのだろうか。

・福祉予算を削減する財政政策
福祉予算を削減することにつきる。せめてその道筋をつけることである。消費税を数%上げたところで財政赤字の増加にとうてい追いつかない。ましてや公務員の給料を減らしても誤差の範囲でしかない。また、景気対策としての短期的な公共工事の増額はやめたほうがいい。不安定な雇用を増やし、資材や工事の市場が混乱するだけだ。それよりも橋や道路の持続可能な維持補修予算を安定的に確保するほうが大事だ。

・雇用を拡大する成長戦略

雇用の流動性の増加、保育園の拡充などあらゆる手段を使って雇用を拡大する。高齢者が働くと健康になって医療費・介護費の削減にもなる。一方で、特定分野をターゲットにして支援する産業政策は、変化の激しい現代では、有効ではない。株式市場への年金などの公的資金投入は変動性増すだけだ。また、最近やたら多い政府系の「●●基金」と称するファンドもやめたほうがいい。政治家、学者、官僚的人間が手を出すべき分野ではない。

・予見可能性の確保

恣意性の働く政策をやめ、経済政策の予見可能性を確保することが大事だ。政治が、ある日突然に特定企業を攻撃すると、それをみた他の企業も日本のカントリーリスクが高いと感じて海外活動の比重を強める。さらに企業が内部留保を高め、投資も従業員への給料への配分も控えるので経済停滞につながる。

選挙期間中に雇用の拡大が論点の中心に移ってきたのは、それだけでも今回の選挙の意義を増して良いことである。国民はしたくもない選挙をする事態になっているけれども、民主的選挙をしたくてもできない香港の人々のことを思えばはるかにましである。今回の選挙の意義を見いだし、投票所に行こうではないか。

小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者


 

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コメント
 
01. 2014年12月10日 10:04:09 : nJF6kGWndY

>アベノミクスは開始直前に出始めていた経済回復傾向を後押ししたにすぎない

循環効果もあったのは、今の景気後退が増税だけのせいでないのと同じことだが

過去の長期デフレでの景気循環(特に民主党政権時代)と比べれば「過ぎない」わけではない

FRBのQE同様、主に通貨安インフレ効果と実質金利低下により、

実質所得や債務負担を抑え、空洞化抑制と低賃金雇用を中心とした個用拡大、

そして財政改善に大きな効果があったことは明らか

http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/
(1) 就業者数,雇用者数
   就業者数は6390万人。前年同月に比べ24万人の増加。22か月連続の増加
   雇用者数は5629万人。前年同月に比べ33万人の増加
 (2) 完全失業者
   完全失業者数は233万人。前年同月に比べ30万人の減少。53か月連続の減少
 (3) 完全失業率
   完全失業率(季節調整値)は3.5%。前月に比べ0.1ポイント低下


02. 2014年12月10日 10:16:20 : nJF6kGWndY

改革に関しては、一番有効なのは、まず財源を中央から地方に移管し、自己責任で地域に決めて実行してもらうことが重要だろう

そうすれば、これまでのように、政府に文句だけ言って

無責任に反対するだけということはできなくなる


>福祉予算を削減する財政政策

単にカットするだけではまずい

既に貰い過ぎている高齢者世代への優遇を削減し、自己負担現役並み、高所得&高資産世帯の年金カットなどを実現し

その分を、片親を中心とした厳しい子育て世帯に回すことが重要だろう


03. 2014年12月10日 17:11:02 : RCbun4ZBTg

 愛の主張  10年まえから

 上から播けば 上は潤うが 下には 届かない
 下に播けば 下には届くが 上には 届かない

 ===

 つまり ベーシックインカムで 底辺にお金を渡す以外には 方策はない
 最終的には ベーシックインカムになるだろうが 後 10年位は

 バカ自民党と 無能の官僚が つじつまを合わせようと「もがく」

 ===

 ベーシックインカムなら 無駄が排除されて 円安なら
 日本に 工場が戻ってきて 日本は 豊かになれる
 

 


04. 佐助 2014年12月10日 18:20:20 : YZ1JBFFO77mpI : 439YTZK3Rc
アベノミクスは国民の生活を破壊させる妖怪です。どこまで落とすか見もの。

アップルのiPad 革命,メガネなし4K&8Kによる立体画像,燃料電池,太陽電子電池などの第二次産業革命がスタートした。この第二次産業革命が世界金融恐慌を救うことになる。10年前倒しすると世界恐慌は3年で収束する。日本の政権与党・政府はできないので古今未曽有のパニックを体験する。

リチウム電池を使用した電子機器は、出火事故が避けられない。原因はイオン化しやすいリチウムが振動共鳴して発火しやすいからです。そのために原子力発電・リチウム電池に拘り,エンジンレス化など技術革新に乗り遅れた企業の消失は避けられない。原発事故だけでなくB787も忘れた頃に爆破墜落事故は避けられない。

蒸気機関の発明が、汽車から船、そして自動車から飛行機と驚くべき産業革命を牽引したが、コンデンサー電子半導体電池は、電子機器から家庭と工業電力、そして、電車・船・自動車・飛行機・ロケットにも使われ普及するために、第二次産業革命の中心になる。

もう二十年もすれば家庭も工場も乗り物も、電子電池電源で動く時代になるので、都市も農業も漁業も本当にかわり、人類は第二次産業革命を謳歌することになる。従って政府は原発30年〜40年再稼動を叫んでいるが,第二次産業革命によって消え去る運命にある。だから早々に廃炉国際標準化を進めた方が無難。

銀行・証券・為替の一時閉鎖を体験すると,やっと世界恐慌に気づくために,多極化が進み,エンジンレスに成功した巨大な産業が自動車だけでなく出現します。この第二次産業革命の加速状態で,今後の経済の行方が決まる。


05. 2014年12月11日 02:40:09 : 6KvOEZsNuv

JIROの独断的日記ココログ版

2014.12.08
http://jiro-dokudan.cocolog-nifty.com/jiro/2014/12/post-659f.html

【衆議院選挙】消費税なんか極端な話、どうでもいいんですよ。


◆また、みなさん、安倍やマスコミに乗せられますか。

「また」というのは、稀代のペテン師、小泉純一郎が2005年9月の「郵政民営化選挙」の前に甘言を弄し、

有権者がすっかり欺されたことを指しています。

小泉は、


この選挙は、郵政民営化の是非「だけ」を問う選挙なんです。

と100万回も繰り返しましたが、過去何度も書いたので、省きますが、実は、自民党のウェブサイトには、

自民党から国民への120の約束として、2年後に「税制の抜本的見直しを行う」って増税に決まってるじゃないですか。

それとか、後期高齢者医療制度、障害者支援の減額など、格差社会を創る「公約」のてんこ盛りでした。誰も読まなかった。


今回とて、同じです。安倍晋三は

アベノミクスの是非を問う選挙だ。

といってますが、そうじゃないでしょう。GDP成長率が予想よりも低いので、消費再増税を延期する、と。

発表してから「民意を問う」って、そんなの反対する人間がいるわけがない。出来レースです。


しかもこの消費増税の延期は、とんでもなくて、次回は「景気条項なし」つまり、どんなに景気が悪くても増税する、

と言っているわけですが、次回の増税の時期までに何があるか、誰にも分かりません。

リーマン・ショックが起きたのは2008年9月15日で、その後、当時の白川日銀総裁の言葉を引用するなら、

あたかも、崖から岩が転がり落ちるようなスピードで、

景気の後退が起きました。リーマン・ショックなど、その前日まで当事者たち以外は、世界の誰も予想していなかった。

歴史的事実として、そういうことがあったのですから、また、似たようなことが起きないとは限らない。

それなのに、「この次は、絶対増税する」にみなさんが納得してるのは、何も考えていないから、です。

◆経済なんて、極端に言えば、今はどうでもいい。

今回の選挙の争点はアベノミクスだ、と選挙される側、選ばれる側が言うこと自体、間違っています。

何が争点か、は、有権者が決めることです。マスコミもそう言って安倍を批判しなければいけないのに、

政治権力にゴマをすって「アベノミクス選挙」みたいな論調をしばしば見受けます。


違います。

今回私は公約点検、二項目しかしてません。それだけで十分だと思うからです。

また、安倍を勝たせて、その後で毎週金曜日に国会前で「原発反対デモ」を行うつもりでしょうか。

同じ失敗を2年で二度もするのは、本当のバカですよ?

政治も経済も社会福祉も教育も、全ての前提は、「国民が安全に居住出来る国土が存続すること」であり、

原発に付帯する原子炉は、たとえ稼働していなくても、真下が震源で大地震が起きて壊れたら、

核燃料が、環境に露出して福島第一と同じように手の付けようがない状況のものができるのです。

これを存続させ、「安全が確認出来た原子炉から再稼働する」と言っている自民党に投票するんですか?


もう一点、安倍は集団的自衛権の行使は、解釈の変更で可能、しかも閣議での決定で十分といっていますが、

冗談ではありません。

今までのどんなに過激な総理でも、1983年、角田礼次郎内閣法制局長官の衆議院予算委員会に於ける答弁、


集団的自衛権の行使は憲法改正でなければできない。

を政府の公式見解として維持しました。安倍晋三氏の父、安倍晋太郎氏(当時外相)も、

(角田)長官が述べたとおりだ。

と発言しています。

それを、閣議決定による解釈改憲で可能だ、ということは、どういうことか。

行政権は内閣に属し、内閣を構成する閣僚は内閣総理大臣が任命するのです。

したがって、閣議で、解釈改憲に反対の人物がいたら、反対しない人間に安倍晋三が取り換えたら、

絶対、決定できる。即ち安倍晋三個人の思惑で、日本国の最高法規、しかも戦争をするかしないか、

というこの憲法の最も重要な部分に関わる、集団的自衛権の行使を可能にできてしまう。

それが、問題だ、という認識を持てない、安倍晋三と、それをもう一度勝たせようとしている日本人。

手の施しようがないほどの、バカです。


06. 2014年12月11日 07:19:06 : jXbiWWJBCA


【第4回】 2014年12月11日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
アベノミクスの失敗を明確に示すGDP改定値 金融緩和政策を根本から見直し、円安を抑制せよ
12月8日に公表されたGDP(国内総生産)第2次速報によれば、2014年7〜9月期の実質GDPの対前期比年率換算値はマイナス1.9%となり、第1次速報値のマイナス1.6%より悪化した。これは、安倍晋三内閣の経済政策の失敗を明確に示すものだ。 
以下では、(1)円安による実質雇用者報酬の減少の影響は、消費税増税の影響より大きいこと、(2)したがって、現時点でもっとも重要な経済政策は円安の抑制であることを示す。 
実質GDP値は、
安倍内閣発足時に戻る
法人企業統計による7〜9月期の設備投資額は、季節調整済前期比増加率で見て、全産業で3.1%、製造業は9.3%という高い伸び率だった。このことから、GDP第2次速報値は上方改定され、対前期比がプラスになるのではないかと期待されていた。しかし、その期待は裏切られた。 
GDP統計の実質民間企業設備(設備投資)の対前期比年率換算値は、第1次速報のマイナス0.2%より悪化して、マイナス0.4%となった。公的資本形成(公共事業)も1.4%と、1次速報の2.2%から下方改定された。 
7〜9月期の実質GDPは、523.8兆円だ。これは安倍内閣発足直後の、2013年1〜3月期の523.9兆円より若干少ない (図表1参照)。つまり、一時的な需要の伸びによって13年のGDPが増えたものの、7〜9月期には元の水準に戻ってしまったわけだ。

ただし、GDPの対前期比にそれほど大きな意味があるとは思えない。なぜなら、7〜9月期の実質GDPの対前期比をマイナスにしている大きな要因は、実質在庫投資が前期比で約2兆円も落ち込んでいることだからだ。これだけで、実質GDPの落ち込み約2.5兆円の過半を占める。短期的な需要動向の予測で大きく変化する在庫調整の額自体に、それほど重要な意味はない。 
重要なのは、個々の需要項目の動きである。なかでも重要なのは、実質消費だ。以下では、実質消費がなぜ落ち込んでいるのかを検討しよう。 
消費を落ち込ませる
3つの要因
消費支出は、GDPの約6割を占める。したがって、その動向は、GDPに大きな影響を与える。実質消費が落ち込んでいる原因として、原理的にはつぎの3つのものが考えられる。 
(1)消費税増税前の駆け込み需要の剥落と反動(需要前倒しの調整)
(2)消費税増税による落ち込み
(3)円安による消費者物価上昇の影響
実質家計最終消費支出を耐久財、半耐久財、非耐久財、サービスに分けて推移を見ると、 図表2のとおりだ。
自動車、家電製品などの耐久消費財は、リーマンショック後から増加しているが、2012年10〜12月期頃から駆け込みで需要が増加している様子が見られる。そして、14年1〜3月期に大きく増えた後、4〜6月期に減少している。半耐久財についても、駆け込みの影響が若干見られる。 
サービスについては、需要の前倒しは原理的に難しい。実際の推移を見ると、11年頃まではほぼ一定だったが、11年後半から増加している。これは、後述のように、実質雇用者報酬が増加したためと考えられる。 

円安で実質報酬が
頭打ちから減少に
問題は、(2)と(3)の識別である。いずれも物価上昇の影響であるが、仮に(2)の影響が大きいとすれば、消費税税率の今後の引き上げはすべきでないということになるだろう。それに対して(3)の影響が大きいとすれば、消費者物価上昇を引き起している円安をコントロールすることが重要ということになる。このように、(2)と(3)のいずれが主要な原因かの識別は、政策判断に大きな影響を与える。 
 図表3は、実質雇用者報酬(四半期・季節調整系列)の推移を示したものである。リーマンショックで落ち込んだ後、2013年1〜3月期までは順調に増加してきた。
ところが、そこでピークに達した後、頭打ちになり、徐々に低下している。つまり、14年4月の消費税率引き上げ以前から減少しているのである。これは、円安によって消費者物価が上昇したためだ。 
4月に減少したのは消費税増税のためだが、それがなくとも、減少過程に入っていたことに注意が必要である。 

本連載の 第2回では家計調査を分析したが、GDP統計の分析からも同じ結論が導かれるわけだ。
実質家計最終消費支出の推移は、 図表4に示すとおりだ。つぎの2点を除けば、リーマンショックで落ち込んで以降、両者は強く相関している。
第1は、東日本大震災の影響で消費が落ち込んだことだ。 
第2は、13年後半以降だ。実質雇用者報酬は減少したのだが、耐久消費財が駆け込み需要で増えたので、実質消費は頭打ちになっただけだ。 

消費税の消費削減効果は
0.9%未満
以上で述べたのは、「消費税増税前から実質消費が頭打ちになっていた」ということであって、消費税増税による消費削減効果を否定するものではない。4月以降の消費の減少に消費税増税の影響があることは否定できない。 
では、その大きさはどの程度だろうか? 
実質家計最終消費支出は、2014年1〜3月期から4〜6月期の間に5.22%下落している。しかし、ここには、駆け込み需要の影響で1〜3月期の値が通常より増大していることと、4〜6月期以降にその反動効果が生じていることの影響がある。こうした効果がない場合の消費削減率はどの程度だろうか? 
それを見るには、実質家計最終消費支出のうち「サービス」を見るのがよい。なぜなら、これについては、駆け込み需要やその反動がないと考えられるからである。したがって、14年1〜3月期から4〜6月期への「サービス」の変化は、消費税増税の影響のみであると考えられる。その大きさは、0.89%だ。 
もちろん、消費税率引き上げが実質消費に与える影響は、消費項目の価格弾力性によって異なる。生活必需品は価格弾力性が低く、消費税率が引き上げられても、実質消費はあまり削減されない。それに対してレジャー支出などの裁量的支出は、価格弾力性が高く、消費税率が引き上げられれば、実質消費は大きく削減される。 
したがって、サービスの場合の結果を消費一般に拡大することはできない。しかし、データの制約から、ここでは、この値を消費税の消費削減効果と考えることとする。 
重要なのは、0.89%という値が、一般に考えられている消費税の消費削減効果よりかなり小さいということだ。 
上で見たように、14年1〜3月期から4〜6月期にかけての家計最終消費支出の減少はこれよりずっと大きいが、それは、前記の(1)、つまり、消費税増税前の駆け込み需要の剥落と反動の影響だと考えられるのである。 
このことは、消費税率の2%引き上げの是非に関して重要な意味を持つ。これまでの駆け込み需要には、2%の引き上げに対応する部分も含まれていたはずである。したがって、これから2%引き上げるとしても、新たな駆け込み需要が発生することはないと考えられる。したがって、税率引き上げによる消費削減効果は、前記の(2)、つまり、消費税増税による落ち込みだけであろう。その大きさは、0.6%(=0.89×2÷3)程度であろうと考えられる。 
アベノミクスは
経済成長を阻害した
他方で、仮に消費者物価を安定化することができれば、実質所得が増加し、実質消費も増加する。その効果は、どの程度であろうか? 
現実のデータを見ると、実質雇用者報酬は、2011年1〜3月期から13年1〜3月期までの間に、約2%増加した。他方、駆け込み需要の影響を受けないと考えられる「サービス」は、同期間に3.75%増加した。 
つまり、13年1〜3月期までの趨勢が続けば、実質消費は年間2%強の伸びを示すはずなのである。これは、上で見た消費税による実質消費削減効果よりずっと大きい。 
実際には、アベノミクスが、リーマンショック以降続いてきた雇用者報酬の増加を止め、実質消費の増加を止め、それを通じてGDPの成長を止めた。アベノミクスによって経済成長が促進されているのではなく、逆に阻止されているのだ。 
したがって、現時点で最も重要なのは、円安を抑制して、この過程を止めることである。 
今後は為替レートと
原油価格の動向いかん
現在の政策が続いた場合に経済成長率がどうなるかは、実質消費の動向に大きく影響される。そして、実質消費がどうなるかは、消費デフレーターの動きによる。7〜9月期のGDPには、その後進展したつぎの2つの要素の影響が現われていない。 
第1は、円安の進展だ。為替レートは9月以降顕著に円安になった。これは、消費者物価を引き上げ、実質消費を減らすだろう。 
第2は、原油価格の下落だ。このため、円安の影響が緩和されている。消費デフレーターは、この2つの要因のどちらが強く働くかで決まる。 
原油価格下落が続いて消費者物価上昇が緩和されれば、政府日銀の掲げる物価上昇目標の達成は絶望的になる。しかし、実質消費の減少には歯止めがかかるだろう。 
他方、円安がさらに進めば、物価上昇目標には近づくだろうが、実質消費がさらに抑制され、経済成長も抑制されるだろう。 
この状況は誠に皮肉なものだ。 
政府の目標が達成できれば経済成長率が下がる。経済成長率が高まるのは、政府の目標が達成できない場合だ。このようなおかしな結果となるのは、2%の物価目標自体が誤っているからである。この目標は直ちに取り下げるべきだ。 
また、金融緩和政策を根本から見直し、円安を抑制すべきだ。 
アベノミクスの中核は金融緩和政策である。それによって金利低下と円安が加速されている。しかし、ここには、つぎの2つの問題がある。 
第1は、金利低下をもたらしているメカニズムだ。金融政策に本来期待されるメカニズムは、「マネタリーベースの増大がマネーストックを増大させ、マネーに対する需給を緩和することにより金利が低下する」というものだ。 
しかし、このメカニズムによる金利低下は、現在の日本では実現していない。マネタリーベースは顕著に増加しているが、マネーストックはほとんど増加していないのである。金利の低下は、日本銀行が国債を買い支えていることによって直接的に生じている。それによって国債の市場が大きく歪んでいる。 
第2は、円安がもたらす経済効果だ。本来であれば、金融緩和政策は設備投資と輸出を増大させ、GDPを増大させるはずだ。しかし、そうしたプロセスが生じていない。 
円安によって輸出企業の利益が増大し、株価が上昇しているのは事実だ。だが実体経済に与えている影響は、ここで分析したようなものである。つまり、消費者物価を引き上げ、雇用者報酬の実質値を下落させることによって実質消費を抑制している。それによって実質経済成長率が低下しているのである。 

http://diamond.jp/articles/-/63559 



田中秀征 政権ウォッチ
【第261回】 2014年12月11日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]
「GDPマイナス1.9%」は選挙情勢を変えるか?

?12月8日に発表された7〜9月期のGDP改定値は、実質で前期比0.5%減、年率に換算して1.9%減。11月17日発表の速報値年率1.6%減からさらに下方修正された。

?速報値のときも民間エコノミストの予想を大きく裏切ったが、今回もまた専門家にとって想定外の事態となった。

?私がたまたま新幹線に乗っているとき、新聞社の法人企業統計の設備投資の数字が車内に流れた。

?それによると、7〜9月期の設備投資が前期比で3.1%増だという。私もそれに驚き、改定値では相当の上方修正を予想した。シンクタンクによっては、「プラス2%」と予想したところさえある。

?しかし、実際はさらなる下方修正。法人企業統計に表れない小規模企業などの設備投資意欲が想像以上に減退しているからだと言う。

?この“改定値”は、現在進行中の総選挙にかなりの影響を与えることになるだろう。設備投資の数値予想も、大企業の動向ばかり見ているアベノミクスの目線による間違いとも言える。

アベノミクスは失敗に終わった

?折から麻生太郎副総理は応援演説で失言した。

「株価が戻り、円安に振れた。企業は大量の利益を出している。出していないのは、よほど運が悪いか、経営者に能力がないかだ」

?しかし、運が悪いのでも能力がないのでもない。

?急激で大幅な円安は、消費者はもとより地方経済や中小企業に大きな打撃を与えている。通常の円安傾向ではなく、意図的な政策の強行による集中的打撃なのだ。運が良くても能力があってもこれに抗することはできない。

?円安によって頼みの輸出は伸びなかったが、その上、利益を得た輸出企業も現地生産の姿勢を変えていない。また、過去最高の300兆円を超える利益剰余金も、国内経済に還元される動きが乏しい。

?今後ともアベノミクスを続ければ、多数の円安倒産は避けられないし、生活がますます苦しくなることも必至の様相だ。

?現在の肌で感じる街角景気、そして今回の改定値で、景気が後退局面に入った印象が一段と高まった。アベノミクスは失敗に終わったのである。

?アベノミクス、とりわけ「異次元」でサプライズの金融政策については、「そんなうまい話があるのか」という疑いの目で見られてきた。10月の追加緩和では、政策決定会合で賛成5、反対4で決まったという。日銀の正副総裁を除いた6人では、わずかに2人が賛成したに過ぎない。無謀と言うべきだろう。

?今回のアベノミクスの金融政策は、金融専門家の金融専門家のための壮大な実験である。それ故に、失敗したときの被害は驚くほど大きい。今回の実験で私は、手に汗を握った例の小保方氏の実験を想起せざるを得ない。

?今回の金融政策がうまくいかなかったのは、財政当局への過度の配慮が隠されているからではないか。

?もしも、異次元の金融政策や財政政策に走らず、米国経済の復調に合わせて地道な財政・金融政策で対応していれば、景気はより順調に回復を続けた可能性もある。

「代案を示せ」と言うが、まずはアベノミクスの出口を模索するのが先決だろう。「アベノミクスを停止させる」だけでも立派な代案である。

?それにしてもアベノミクスには「想定外の事態」が多すぎる。“天候不順”など当然想定されるべきことも想定せず、あまりにも粗雑な構想ではないか。

?首相がどんなに弁明しても、景気は良くなっていないし、経済格差が拡大し続け、国民経済の二重構造化を進めてしまっている。

?与党は、選挙に勝っても負けても意地を張らずに軌道を大きく修正すべきである。
http://diamond.jp/articles/-/63535


07. 2014年12月11日 07:20:17 : jXbiWWJBCA


【第1087回】 2014年12月11日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
マスコミ、エコノミスト……選挙期間中に暴かれるウソ
選挙は政策選択の品評会であると筆者は思っている。政治家がいろいろなビジョンを有権者に語る機会が格段に増えるからだ。 
マスコミには統計の素養がない
と同時に、それを報じるマスコミの力量も試される。その観点から見ると、内閣府が8日発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)の2次速報について、「下方修正」という記事が各紙の一面にのっていたのは酷かった。 
そこまで言うか」に出演した。15時頃にニッポン放送のスタジオ入りして、番組担当者から進行スケジュールを聞き、材料を見る。 筆者はもう20年近く新聞を読んでいない。ただし、ときたま、テレビ、ラジオなどに出演することがあるが、その時にはその当日の新聞を番組で取り上げる材料として見ることもある。9日、ニッポン放送の16時から「ザ・ボイス 
各新聞一面で報じていた「7〜9月期の実質GDP改定値、年率1.9%減に下方修正 速報は1.6%減」という各紙の記事のコピーが用意されていた。 
これに対して筆者のコメントは「なぜこんなつまらない記事が一面なのですか」だ。いかに今の経済状況が悪いかの解説を期待していた番組スタッフはみんな怪訝そうな顔をした。 
続けて「実質GDPを実額で見ると、7〜9月期の二次速報は一次速報より少し上方修正された。ただし、4〜6月期も上方修正されたので、7〜9月期を4〜6月期の前期比でみれば、下がり幅が少し大きくなっただけ」、「データとして一次速報と対して変わらないので、ニュースの価値なし」と言った。 
マスコミでは、筆者のような説明はないという。実額で「上方修正」されたのに、前期比で「下方修正」というのはおかしい。前期比の「下方修正」が意味を持つのは、4〜6月期の実額が同じ場合であるが、4〜6月期の実額も「上方修正」されている。 
マスコミが基本的な統計の素養がないというだけの話だ。GDP統計について、 内閣府のサイトなど見たこともないのだろう。
その中から、11月17日公表の一次速報と12月8日公表の二次速報のそれぞれについて、実額実質GDPの実質・季節調整済のデータを取り出せば、表のとおりだ。 

これで、筆者の言ったことがわかるだろう。 
なお、同じ 時に、筆者は所属大学の学生に対し、消費増税の悪影響で実質GDPがどうなっているのか、内閣府のサイトからデータをダウンロードしグラフ作成を指導していた。大手マスコミより学生のほうが出来がよく、まともだった。
マスコミは、四半期GDP統計でも、名目か実質か、原系列か季節調整済かの統計属性があり、どれを選んだらいいのかさえも知らずに、GDP統計といって報道をしている。伸び率を見るときでも、前期比と前年同期比の2つを見なければいけないが、実額の数字を知らずに、マスコミは前期比だけがGDP統計だと思い込んでいる。 
筆者は、消費増税の影響をはっきり示すために、前期比ではなく前年同期比の数字を使った実質GDP伸び率の グラフを使った。この数字は、実額の実質GDPの数字から簡単に計算できる。
ところが、マスコミ出身の池田信夫氏は、グラフが捏造だといってきた。マスコミでそうしたグラフを見たことがなかったからだろう。ただし、そんなデタラメはネットの上ではすぐに見破られる。池田氏は自らのサイトの上で捏造だとする文章を削除した。ただし、捏造呼ばわりした筆者に対する謝罪はない。 
経済学者も評価にさらされる
次はマスコミ報道ではないが、アベノミクスの評価に関して、経済学者のかつての発言内容が取り上げられることもある。経済学の評価の場合、実験ができないので、過去における発言がその後の事実と合っているか、ずれているかが、発言の信憑性を大きく左右する。普段であれば言い放しのことも、政策検証の場にさらされる。 
増税を主張してきた経済学者やエコノミストは辛いだろう。なにしろ財務省のいいなりで、消費増税でも経済に対する影響は軽微であると言ってきたからだ。それは全くの誤りで、上述のとおり、経済は落ち込んでしまった。 
金融業界のエコノミストが、調子よくデタラメな予測をするとは従来から知られていたが、有名大学の経済学者が情けない存在であったことが、素人目にもわかってしまった。こうした情報はネットの上でもすぐに探せる。 
アベノミクスの検証なので、金融緩和しても効果が無いといっていた人も馬脚を現してしまった。次の文は、金融緩和が効かないという主張の人が、2年前に言っていたことである。 
「こういう議論の前提になっているのはですね、名目金利=実質金利+インフレ率という関係があるんです。フィッシャー方程式といいますが。インフレ率が上がった時に名目金利が一定だから実質金利が下がるという議論です。それは間違いです。インフレ期待が上がると実質金利が一定で名目金利が上がるんです。実質金利が下がるということは無いです」
こうした意見も、黒田日銀の異次元緩和の前であれば、議論としてありえないわけではなかった。ただし、今となっては明確に否定されている。というのは、 財務省のサイトを見ると、名目金利が上がらずに、実質金利が下がっていることがわかる。筆者から見れば、この事実はリーマンショック後の欧米でも見られて普遍的な事実であるので、欧米のデータを見ていれば、とても言えないと思う。
何はともあれ、選挙期間中にいろいろなウソが暴かれていくのはいいことだ。 
http://diamond.jp/articles/-/63533 

08. 2014年12月11日 08:01:00 : jXbiWWJBCA

日本とアベノミクス:審判の時
2014年12月11日(Thu) The Economist
(英エコノミスト誌 2014年12月6日号)
解散総選挙で予想される勝利によって、安倍晋三首相は構造改革でこれ以上後戻りする口実がなくなる。

11月18日、首相官邸で記者会見し、消費増税の延期と衆院解散の方針を表明する安倍晋三首相〔AFPBB News〕
 日本の安倍晋三首相が自らを歴史的使命を担う指導者と見なしていることはまず間違いない。
 安倍氏は本誌(英エコノミスト)とのインタビューで、1860年代に古い秩序を打ち破り、日本を工業大国に変えた地元・山口県の革命家たちを引き合いに出した。当時と同様に今も、日本は外の世界に追い付くために自国を徹底的に見直さなければならないと安倍氏は主張した。
 また、当時と同じように、国内の反対勢力は結託しているという。「日本には広範囲に及ぶ変化が必要だった。改革は必ずしも大多数の人たちから支持されなかったが、歴史の先達たちはそれを成し遂げるために命を懸けた」と安倍氏は語った。
 安倍氏の支持者たちは、同氏がその経済計画にごく少ない政治資本しか使ってこなかったことに驚いている。2012年12月に地滑り的勝利を収めた後、安倍氏は経済の3本の「矢」の話で日本を沸かせた。その矢とは、急進的な金融緩和、追加の公共支出、硬直化した日本経済の仕組みの大胆な改革だ。
 安倍氏は極めて活動的なスタイルで国を統治し、専用機で数十カ国を訪問して外交攻勢に出た。しかし、安倍氏が繰り返し約束してきた市場志向型の徹底した改革をやり遂げることには、はるかに少ない意欲しか示してこなかった。
 安倍氏は今、自身の政権がすでに圧倒的多数を持っているにもかかわらず、アベノミクスとして一般に知られる改革プログラムを実行するために、もう1度有権者から信任を得ることが必要だと主張する。安倍氏が衆議院を解散して12月14日に実施を決めた総選挙は、安倍政権を守勢に立たせた一連の悪いニュースに続くものだ。
苦戦が続く日本経済
 家計支出を委縮させた今年4月の5%から8%への消費税引き上げの後、経済はいまだに苦戦している。12月8日に発表される国内総生産(GDP)改定値が7〜9月期の景気縮小が速報値より小さく、ゼロに近い数字を示す可能性はあるとはいえ、直近2四半期連続のGDP減少は、日本がテクニカルな景気後退に陥ったことを意味している*1。
 10月は、コア・インフレ率(増税の影響を除く物価上昇率)が前年同月比0.9%に低下した。原油価格下落の影響もあって、コア・インフレ率は今後さらに低下するかもしれない。このことは、安倍氏の金融の矢が、10月末に発表された追加金融緩和の後でさえ、2015年度に2%を目指すインフレ目標から大きく外れていることを示している。

*1=12月8日に発表された7〜9月のGDP改訂値は、大方の予想に反して速報値から下方修正され、年率換算で1.9%減だった
 そして、12月1日には、現在GDPの240%を超える日本の債務の山を思い出させる有難くない知らせがもたらされた。来年に予定されていた8%から10%への2度目の消費税引き上げを先送りすることにした先月の安倍氏の動きを受け、ムーディーズが日本の信用格付けを引き下げたのだ。
 失業率は3.5%という安心できる水準に低下している。だが、大都市以外に住む人々は、自分たちの生活水準が改善していない、もしくは低下していると不満を漏らしており、安倍氏の人気は低下している。賃金上昇はインフレのペースに追い付いておらず、円安は輸入品の価格を押し上げている。国全体で富が均等に分配されている状態にはほど遠い。
 だが、野党がひどい窮地に陥っていることから、安倍氏が率いる自民党は、強力な衆議院で現有294議席をほとんど失うことなく圧勝する可能性が高い。仏教団体が支持する連立パートナーの公明党と合わせると、自民党は現在、全480議席の3分の2を押さえ、多数を占めている。
 予想されている通り、安倍氏が失う議席が20〜25議席にとどまった場合、党内のライバルは向こう数年間、安倍氏に挑戦できなくなるかもしれない。
経済改革への本気度

 新たな信任を得て武装した安倍氏は、ついに改革に本腰を入れるだろうか? 
 安倍氏はこれまで幾度となく、厳しい対策を巡って闘うことを拒んできた。安倍氏に譲歩を迫るのに、国民の抗議活動や労働者のストは要らなかった。ただ官僚や既得権者と衝突する恐れがあるだけで十分だった。
 例えば、従業員に非生産的なほど長時間働くことを促す残業手当に関する規則の変更を巡って抵抗に遭った時は、政府は最も恵まれた労働者にだけ新法を適用することで対応した。
 多くの人は、安倍氏が後戻りしている理由は、1946年に米国に押し付けられた、戦争放棄を謳った日本国憲法を改正するという情熱(戦後に首相を務めた亡き祖父、岸信介から受け継いだかもしれない情熱)によって安倍氏の注意が散漫になっているからではないかと思っている。
 安倍氏は、憲法解釈を変更し、同盟国が攻撃された場合に日本が援護できるようにしたいと思っている。ところが、提案された解釈変更は非常に不人気であることが判明し、政府のエネルギーを消耗させている。アナリストの中には、輝かしい政治家一族の御曹司として、安倍氏には自民党の伝統主義勢力を抑え込むのに必要な狡猾さと腕力が欠けていると考える向きもある。
 自民党のある国会議員の言葉を借りれば、同党の伝統主義勢力は「第1の矢(金融緩和)を理解せず、第2の矢(政府支出)が大好きで、第3の矢(改革)が大嫌いだ」という。
 公平を期すために言えば、安倍氏はいくつかの分野では大胆だった。日本企業により機敏で説明責任のある経営慣行の採用を迫る安倍氏の取り組みは、すでに成果を上げている。
 職場での女性の地位向上を目指す安倍氏の意欲は、蔓延する性差別を変える兆しを見せている。大阪市は来秋にも、フィリピンその他の国からやって来る何千人もの労働者が日本の家庭で家事や育児の手助けをできるようにする予定だ。政府は、この物議を醸す外国人労働者プログラムを他の地域でも採用する計画だ。
 だから、安倍氏が本誌に請け合った通り、選挙後に本当に構造改革を推進するつもりでいると信じるだけの理由はいくつかある。
 安倍氏が本当の急進主義者のように思える時もある。実際、同氏は硬直的な労働市場で労働者の移動性を高め、医療の無駄を削り、電力市場を自由化し、農業協同組合の独占的な巨大ネットワークである全国農業協同組合中央会(JA全中)を大改革すると約束してきた。
何より重要な労働市場の改革、実現の可能性は?
 何にもまして重要な改革は、時代遅れの労働慣行を徹底的に見直すことだ。はるか昔の日本の高度成長時代には、不足する優秀な人材を巡って競争していた企業が、意図的に従業員の転職を阻んできた。組合は、いまだに従業員の厳格な保護に固執している。解雇は事実上禁止されている。解雇が「社会的相当性」を満たさないと見なされた場合には、裁判官が過去の判例を使い、雇用継続を主張することができる。
 多くの企業は規制をかいくぐるために、低賃金でほとんど職の保証がない「非正規」労働者の雇用をどんどん増やすようになっている。
 こうした仕事に就いている労働者の割合が高まり、現在就労者のほぼ40%を占めていることは、多くの連鎖反応を生み出している。非正規雇用から抜け出せない若い男性は、結婚して家庭を築く可能性がはるかに低く、低い出生率に寄与している。自らの運命に不満を抱く者の中には、右翼の一員になる者もおり、日本と近隣諸国との関係悪化に寄与している。
 安倍氏が労働市場を徹底的に改革する可能性はどれくらいあるのだろうか? 厚生労働省では、ある委員会が解雇の衝撃を和らげるために退職金を利用する可能性――ほとんどの先進国で一般的な慣行――について研究していると言われている。そのためには、失業給付制度を徹底的に見直す必要が出てくるだろう。
 現在は、解雇された労働者が受け取る給付金は他の先進国より少なく、受給期間も短い。労働市場が徹底的に見直されれば、企業に正規雇用のポジションを増やすよう促すことになるだろう。
 野党・民主党は、従業員がどんな契約を結んでいるかに関係なく、同一労働に同一賃金を保証することを約束している。こうした動きは、安倍氏を行動に駆り立てる可能性がある。
 安倍氏は、米国を含む自由貿易の包括的枠組み「環太平洋経済連携協定(TPP)」の早期合意によって、自らの改革者としての資質に弾みがつくとほのめかしている。
 安倍氏は、TPP交渉の「早期妥結を最も強力に推進する指導者」を自認しており、日本の交渉担当者に柔軟に対応するよう明確な指示を与えていると話している。自動車や農産物の貿易について日米間で立場の違いがあるにもかかわらず、近い将来、合意が成立する兆しが見える。
 そうなれば、日本経済に大きな弾みがつくだろう。高い輸入関税と国内産業の保護は、日本人が平均で家計予算の14%を食品に支出しなければならないことを意味している。これに対して、英国人ではこの割合が9%、米国人では6%だ。
JA改革と電力市場改革が試金石に
 JAの徹底した改革も助けになるだろう。JAは、農家、特に兼業農家のための支援ネットワークとして出発したが、今では、販売、種、金融をJAに頼る農家から利益を吸い上げる巨大な官僚組織に変貌している。
 安倍氏が強力な政治勢力であるJAの改革を検討しているだけでも立派だ。来年初めには、JA改革を始動させる法案が国会で審議される予定だ。同法案を通過させる安倍氏の意欲は、選挙後の安倍氏のやる気を測る試金石になるだろう。
 もう1つの試金石は、電力市場の改革を巡って近いうちに訪れる。電力市場改革は、高い電気料金を引き下げるために切に求められている。政治家は何十年もの間、電力市場についてもJAについても何もしてこなかったと安倍氏は言う。選挙に勝てば、自身の政権にこれら2つの問題に対処する強さが与えられるはずだという。
 安倍氏の計画には、発電と送電に対する別々の支配を求めることによって日本の強力なエネルギー地域独占を解体することが含まれている。安倍氏にとって、後退するのは難しい。1つの改革法案がすでに国会を通過しているからだ。
 安倍氏は、国民の支持が圧力団体の抵抗を抑え込む助けになってくれると期待している。どの程度の助けになるか判断するのは難しい。多くの日本人は、原則的には改革の必要性に同意している。だが、改革実施の具体的内容に対する関心ははるかに薄い。改革の直接的な影響が不明確なことが多いからだ。
 メディアは、薬局や医師、農家といった既得権者の見方を反映しがちだ。そして、歪んだ選挙制度のおかげで、変化に抵抗する傾向のある地方の高齢者が並外れて大きな影響力を持っている。
 地方の選挙区で人口が減少しているため、場所によっては、農家が投票で都市生活者の2倍の影響力を持っていることもある。最高裁は11月26日、一票の格差が衆院選挙区以上に大きい昨年の参院選挙が「違憲」状態で行われたとの判断を示した。だが、安倍氏はこの問題に対処するのが遅かった。
 政治家の中には、アベノミクスが苦境に陥っているように見え、経済に関する不満が首都以外でも高まっている時に解散総選挙を行うことにした判断に不安を感じている者もいる。「野原にはすでに石油が撒かれており、首相や閣僚が何か誤った発言をすれば、それに火を付ける可能性がある」とある自民党議員は言う。
 投票率は低くなる可能性が高い。だが、信任を得ようが得まいが、安倍氏は自らの使命を全うし、変革にすべてを懸ける時だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/42418



09. 2014年12月11日 08:01:30 : jXbiWWJBCA

日本でアベノミクス反対論が瓦解した理由
2014年12月11日(Thu) Financial Times
(2014年12月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

衆院が解散、12月14日総選挙へ
11月21日の衆院本会議で、解散詔書が読み上げられた後、石破茂地方創生担当相(中央)と握手する安倍晋三首相〔AFPBB News〕

 安倍晋三首相率いる自民党は「景気回復、この道しかない。」というスローガンを掲げて選挙運動を行っている。

 このスローガンは、安倍氏がそれ相応に楽観的に見える真っ赤なポスターと、(もしかしたら決死の覚悟で)最後の戦いに挑む武将のようなポーズを取る不気味なグレーのポスターに印刷されている。

 安倍氏はこのスローガンが好きなあまり、日曜日の総選挙に向けた選挙遊説で着る白いウインドブレーカーに縫い込ませたほどだ。

 日本のテンプル大学の客員研究員、マイケル・チュチェック氏が言うように、1つの信念をこれほど執拗に力説する理由は1つしかない。それは事実ではないのだ。

アベノミクスに代わる政策はいくらでもあるはずなのに・・・

 経済の新陳代謝を速めるために日銀の紙幣増刷に頼る積極的なリフレ政策であるアベノミクスには、明らかに、代替策がいくつもある。だが、今回の選挙について目を見張ることは、共産党を別にすると、誰も別の道筋を明確に示すことができないことだ。

 しかも、安倍氏の支持率が円相場とほぼ同じくらい急激に低下し、世論調査では安倍氏の経済計画を支持すると答える人より反対すると答える人の方が多いにもかかわらず、そうした状況になっている。表面上は、野党がなぜ、アベノミクスの褪せる輝きから政治的資本を獲得できないのか理解するのは難しい。

 大雑把に言って、安倍氏がこれほど弱い抵抗にしか遭っていない理由が2つある。まず、野党・民主党は内部崩壊したも同然だ。首相の政策を「アホノミクス」と呼ぶ同志社大学大学院のエコノミスト、浜矩子氏は、民主党は与党の術中にはまったと言う。

 浜氏によると、民主党は安倍氏のリフレのギャンブルの前提をすべて否定する代わりに、政策の論理を受け入れ、それを力なく批判しようとしてきた。それは相手の「土俵」で戦う力士に等しいと同氏は言う。

事実上崩壊した二大政党制

民主党、地滑り的圧勝で政権交代へ
2009年8月の総選挙での民主党の地滑り的勝利で、日本の政治の様相が一変するはずだったが・・・〔AFPBB News〕

 民主党の降伏は、日本の二大政党制とされるものが死んだか、少なくとも危篤状態であることを意味している。

 半世紀にわたる、ほぼ切れ目のない自民党支配に終止符を打った2009年の総選挙での民主党の勝利は、政治の様相を永遠に変えることになるはずだった。

 しかし、政権与党として、民主党は事態をめちゃくちゃにしたように見えたため、日本の有権者が同党を再び信じるようになるまでは恐らく何年もかかるだろう。

 「これは戦後政治に関する非常に悲しい出来事だ」。コロンビア大学で政治学を教えるジェラルド・カーティス教授はこう言う。「これだけの歳月を経た後に、二大政党制は発達して深く根を下ろすどころか、基本的に崩壊してしまった」

 安倍氏の勢いの2つ目の理由は、アベノミクスに対する国民の熱意の欠如はさておき、アベノミクスを途中で放棄する意欲がそれ以上に小さいことだ。人々は、頭をもたげるインフレが賃金上昇ペースを上回っていることに不満を抱いている。

総選挙での勝利が意味すること

 だが、何はともあれ数字に強い日本の有権者が、物価が上昇すれば自分たちが豊かになった気持ちになると考えたはずがない。労働市場の急激な逼迫からすると、来年の春闘の年次交渉の後に賃金が上昇することは妥当だと考えるのに、何も生まれ変わったアベノミクス信者である必要はない。

 日本国民は、安倍氏を今追い払うよりは、むしろ同氏の政策が実を結ぶことができるかどうか成り行きを見守ることを望んでいるわけだ。

 世論調査を信じるなら、解散総選挙に踏み切ることにした安倍氏の賭けは奏功する。ほんの数週間前には40議席失うリスクがあると見られていたが、連立与党は逆に、議席を若干伸ばす可能性さえある。

 たとえ数議席失ったとしても、与党はなお国会で安定多数を維持し、安倍氏はさらに4年間の任期を獲得することになる。

 「今回の選挙の結果によって、彼は一段と自信を強めることになるだろう」。首相に近いある人物はこう話す。「今回の選挙は野党・民主党が相手というよりは、むしろ自民党の腰の重い党内分子との争いだった」

 つまり、選挙での勝利は、政敵を無力化するだけでなく、党内の不和も取り除くわけだ。そうなれば、安倍氏は、これまでのところ実現できていない構造改革の「第3の矢」を含め、自身の経済政策を自由に追求できるようになる。

 安倍氏にとって、何の障害もないクリアな道筋には、1つだけマイナス面がある。もしアベノミクスが失敗したら、責める相手は自分しかいない、ということだ。

By David Pilling
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42421
 


10. 2014年12月14日 19:38:33 : QR4ozHs47k
この人要するに

「福祉予算を削減する」これだけが言いたいようだ。
もちろん天下りに象徴される官僚の既得権には一切触れない。丸わかり。


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