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ワタミ、客離れ加速で危機深まる 「質」劣化深刻な居酒屋、事故と苦情多発の介護・宅食
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141208-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 12月8日(月)6時0分配信
ワタミが11月11日に発表した今期(15年3月期)中間連結決算(14年4-9月)の最終損益は41億円の赤字(前年同期は6億円の黒字)となった。営業損益も10億円の赤字(同25億円の黒字)で、中間期の営業赤字は1996年の上場以来初となる。
同日記者会見した桑原豊社長は「会社設立以来、最も厳しい結果」と、危機感を滲ませたが、その原因は主要3事業の総崩れ。特に主力の「国内外食事業(居酒屋事業)」が惨憺たる状況だった。
●居酒屋、客数減に歯止めかからず
同社中間決算発表資料を見ると、まず売上高の43%を占める国内外食事業は、売上高が前期比9.3%減の313億円、営業損益が同24億円の赤字だった。同社は既存店の営業強化を図ったが客離れを止められず、売上高も客数も前年同月割れが続いた。その結果、上期は既存店ベースで売上高、客数ともに前期比7.3%減になった。全店ベースでは売上高が前期比10.2%減、客数が13.0%減だった。
このため同社は今期期初に計画していた60店閉鎖に上期の不採算店42店を追加、今期末までに102店を閉鎖する計画に変更。わずか1年で全店の16.8%を閉鎖する見込みとなった。
同社は既存店の営業不振を客単価アップで挽回しようと、主力業態の「和民」「わたみん家」でメニュー刷新の「リブランディング」(ブランド再構築)を今年3月から全国規模で実施した。その結果、客単価が最大3%上昇したものの逆に客離れの加速要因となり、客数が最大12%も落ち込んでしまった。中間決算発表資料は「リブランディングはお客様の支持を得られなかった」「リブランディング以降価格満足度が低下、想定した結果が得られなかった」としている。
外食業界関係者は、同社の営業不振の理由について次のように指摘する。
「居酒屋はメニューと接客が勝負だが、同社の場合は両方の劣化が激しい。前者の場合、例えばサイコロステーキは今年3月以降値段が変わらないものの量が半分に減り、実質的な値上げとなった。同社は消費者に『メニューを一新した』と説明するが、客離れを起こす要因となっている。また、後者の店員の接客の質も相変わらず改善せず、例えば追加オーダーをすると忙しいせいか露骨に嫌な顔をする店員も多い」
同関係者は「ワタミの居酒屋は、リブランディング以前に肝心なものが欠け落ちている。それを改善しない限り、どんな新しい取り組みをしても業績不振に歯止めをかけられない」と断言する。
●介護、入居者減少加速
次に介護事業は、売上高が177億円で前期比0.6%の微増だったが、営業利益が28.6%減の16億円だった。施設への新規入居者数が前期比14.4%減の614名にとどまり、既存施設の入居率も4.5%低下の82.7%になったのが響いた。開設経過年別入居率では、開設1年以上2年未満が58.0%、2年以上10年未満が86.0%、10年以上が71.4%となっており、新規入居者向けのいわゆる「新築老人ホーム」の不振が際立っている。
同社介護事業「ワタミの介護」のトラブルと紛争の多さは、介護業界で有名だ。例えば12年2月に発生した「レストヴィラ赤塚水死事件」。これはパーキンソン病を患っていた入居者を風呂に入れたまま1時間半放置し、浴槽で水死させた事件だ。同社は家族に「入浴中、10分ほど目を離した隙に倒れ、病死した」と説明した。ところが家族の告発を受けた高島平警察署が捜査したところ、入居者が浴室に入った後、死体が発見されるまでの1時間半、誰も浴室に行っていなかった事実が判明、家族への説明は虚偽だったことが発覚した。死因も病死ではなく水死と判明。同社はこの捜査結果を突きつけられると「ほかにも入浴者がいて、職員の手が回らなかった」と説明を変えている。
介護業界関係者は「家族がワタミの説明を不審に思わなければ、病死で片づけられていた。『ワタミの介護』には、こうしたずさんな介護と虚偽説明が多すぎる」と批判する。こうした実態が入居率減少要因になっているようだ。
「同社の新規入居者獲得営業は、地域医療機関からの紹介が大半。それが昨年あたりから、地域医療機関に『ワタミの介護への紹介はNG』という空気が広まってきた。ただでさえ忙しいのに、トラブルや紛争の関係者として警察や裁判所に呼び出されるのはたまらない」(同関係者)
実際、中間決算発表資料でも、この紹介入居件数が今期第1四半期をピークに第2四半期は急降下している。
●宅食、低い宅配品質サービス
このほかの事業としては、高齢者向け宅配弁当の「宅食事業」は、売上高が前期比6.1%減の201億円、営業利益は42.6%の激減で10億円だった。配食数も7.7%減の26万食となり、同社は今期通期の配食計画を、期初より20.0%も少ない28万食に下方修正した。
同社宅食事業である「ワタミの宅食」は、13年度第3四半期の29万食をピークに、月別の上下動を繰り返しながらも下降傾向が止まらない。同社はこの下降傾向に歯止めをかけようと、高齢者に人気の高い和食特化メニュー「まごころこばこ」を今年3月から発売したが、これも不発に終わった。
宅配弁当業界関係者は「宅配弁当は一般家庭では出せない味と配達時刻の正確さがウリだが、ワタミの弁当は両方とも欠けている」と、次のように指摘する。
ワタミの弁当は具材が一見多彩でメニューは日替わりだが、味が毎日同じで、配達時刻が毎日バラバラで狂い、誤配も多いという指摘が多い
「ワタミの弁当はいつ来るかわからないとの苦情が多い。賞味期限が当日午後10時なのに、午後7時を過ぎてから配達に来たとの苦情もある」(同関係者)
その原因は、配達員の慢性的な不足にあるようだ。弁当配達員「まごころスタッフ」は主婦が中心で、完全出来高制の業務委託契約。同社の募集広告では「月20日、1日20軒程度で月収7万円」となっているが、同社関係者は「募集説明会で保険、税金など配達車の維持費とガソリン代、万一事故を起こした時の補償金や示談金などが自己負担とわかると、大半の応募者が席を立つ」と打ち明ける。
中間決算発表資料でも、配達員募集単価の上昇と正反対に、応募数が12年9月の90%台をピークに昨年10月以降は50%を割り続けている。この採用難から来る配達員不足が、配達サービス品質の悪さを引き起こしているようだ。
加えて正社員業務も配達員が行っていた偽装請負疑惑や、昨年12月には埼玉県熊谷営業所管内で配達した弁当に芋虫が混入していた事件が発生。他の営業所でも、人毛やビニールなどの異物混入に対するクレームが頻発している。
「ワタミの弁当が事業開始以来昨秋まで食数を伸ばしてきたのは、リピーターではなく新規客の増加によるもの。味が毎日同じで配達がいつになるかわからないのでは、食数が急激に落ち込むのは当然だ。『狩猟型営業』の限界を示している」(同関係者)
中間決算発表資料には「まごころこばこで裾野拡大も食数増にもつながらず」「まごころスタッフ増員に向けた取り組み強化も施策の効果がなく、増員できず」など反省の文言が並んでいる。
経営コンサルタントは「事業理念は立派。桑原社長もいろいろと業務改善策を打ち出している。しかし、事業理念も業務改善策も、現場に一向に浸透しない」と苦言を投げかける。
同社は総崩れした主要3事業を、どのようにして立て直すのか。外食業界関係者の関心は、桑原社長にではなく創業者の渡邉美樹前会長に向かっている。
「渡邉氏は13年5月にワタミの全役職を辞任したとはいえ、今も当社の筆頭株主(14年3月末時点、渡邉氏の資産管理会社アレーテーが全株の25.1%を保有)で実質的なオーナー。当社の経営は、現営陣の一存では何一つ決められない」(同社関係者)
業績不振脱出への道は、まだ遠いようだ。
田沢良彦/経済ジャーナリスト
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