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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第103回 衝撃
http://wjn.jp/article/detail/7573490/
週刊実話 2014年12月11日 特大号
2014年11月17日、そして翌18日。2日続けて、信じがたいほどの「衝撃」が日本を襲った。
まずは、11月17日。内閣府から、'14年7〜9月期の日本のGDP成長率の速報値が発表された。実質GDPが対前期比▲0.4%、年率換算▲1.6%。名目GDPが対前期比▲0.8%、年率換算▲3.0%。
4〜6月期の▲7.1%(年率換算)に続き、二期連続で実質GDPがマイナス成長になってしまったのだ。消費税増税の駆け込み消費の「反動」が発生した4〜6月期と比べてさえ、日本経済の規模は7〜9月期にさらに小さくなってしまったのである。
二期連続のマイナス成長を、何と呼ぶかご存じだろうか。英語でいうところのリセッション、日本語なら「不況」である。
安倍晋三政権が'14年4月に消費税を増税したことで、我が国はものの見事に不況に陥った。今回の不況が「人災」でないなどと言い張る人は、さすがに存在しないだろう。
しかも、「名目GDP」の下落率が、実質GDPの下落率を上回っている。すなわち、GDPデフレーターがマイナス(対前期比▲0.3%)に落ち込んだ。
これは、我が国が、再びデフレ化の道をたどっていることを意味する。
デフレとは名目GDPという「総需要」が縮小することで発生する。前回('97年)の増税期と今回と、名目GDPの状況を比較してみよう。
前回の増税時は、'97年4月の税率アップ(3%→5%)後も、名目GDPは拡大を続けた。名目GDPがマイナス成長になり、総需要の不足が本格化したのは、'98年の1〜3月期からなのである。
それに対し、今回は消費税率を5%から8%に引き上げた4〜6月期に、いきなり名目GDPが縮小した。総需要縮小までの猶予すら、'14年4月増税では与えられなかったわけである。
前回、〈なぜ現時点で「解散総選挙」なのだろうか〉と書いたが、理由が判明した。4〜6月期に引き続き、7〜9月期の成長率がマイナスに落ち込むと、安倍政権の支持率は急落することになる。恐らく、10月の後半時点で、
「7〜9月期のGDP成長率がマイナスになる可能性がある」
という報告を受けた安倍総理が、起死回生の策として解散総選挙を決断したのだろう。
「V字回復」を叫び続けていたにもかかわらず、7〜9月期のGDPが前期と比べてすら減少してしまったのでは、さすがに洒落にならない。
安倍総理は、前回(第一次安倍政権)が短期に終わったこともあり、長期政権を切望していると言われている。
自らの責任で消費税を増税し、二期連続でGDPをマイナス成長に叩き落とし、さらに「デフレ脱却」を標榜して政権を取った事など関係なく、GDPデフレーターをマイナスに引き戻してしまったのだ。本来であれば、内閣総辞職ものの「失政」である。
それでも「長期政権」を目指すとなると、解散総選挙に打って出て「国民に信を問う」以外に手段がない、という話なのだろう。
そして、11月18日、更なる衝撃が襲い掛かってきた。安倍総理が記者会見し、衆議院を11月21日に解散し、総選挙を実施すると表明したのだが、会見時に、
「来年10月の(消費税)引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年(2017年)4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。」
と、発言したのである。
正直、筆者は愕然とした。総理自ら、消費税増税の「判断」に際した景気条項を外し、2017年4月に問答無用で「増税」を実施することを明言したわけだ。
4月に消費税を増税したことで、我が国はデフレ化の道を突き進んでいる。
経済学者の宍戸駿太郎教授のシミュレーションによると、消費税増税の悪影響は2年後、3年後と積み重なる形で大きくなっていく。増税の悪影響は「蓄積」するのだ。
消費や投資が減り、物価が下がり、所得が縮小し、更に消費や投資が減るという悪循環による影響が蓄積されたところで、再度('17年に)消費増税を強行するという話なのである。日本経済は再び国民が貧困化する(今もしているが)長期デフレの中に叩き込まれ、安倍総理は“第二の橋本龍太郎”となるだろう。
結局、政権延命を図り、長期政権を目指す安倍総理の思惑と、消費増税を「確定」させたい財務省の意図が一致したという話なのだ。
財務省にしてみれば、消費税は「大型間接税」の話が持ち上がった頃から、何十年もかけて進めてきたプロジェクトである。ここで一年半“程度”延期になったところで、どうでもいい話であろう。
財務省は、再び勝利した。つまりは、国民経済の成長を目指すデフレ脱却、反緊縮財政、反財政均衡主義路線は、またもや敗北を喫した。
このままでは、総選挙後の「第三次安倍政権」により、国民の更なる貧困化路線が推進されることは必至だ。
ならば、どうしたらいいのだろうか。読者の皆様も、是非とも「真剣に」考えて欲しい。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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