03. 2014年12月05日 21:36:36
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アングル:強まるドルの先高観、「買わない恐怖」が市場を支配 2014年 12月 5日 18:41 JST [東京 5日 ロイター] - ドル/円JPY=EBSの先高観が一段と強まっている。120円の大台に一気に乗せたにもかかわらず、目立った利益確定売りは出ていない。10月には110円に乗せた後に約5円下落する局面があったが、今回は押し目のないまま上値を伸ばす勢いだ。短期調整への警戒感は依然くすぶっているが、止まらない上昇に「買わない恐怖」が市場を支配している。 <肩透かしの大幅調整予想> ドル/円は前日の海外市場で120円に乗せた後、さすがに利益確定売りが出て119円台に下落したが、日本時間5日午後には大台をすぐに回復した。多くの市場関係者が予想していた大台乗せ後の大幅調整は、現時点では起きていない。 「大きな調整を警戒している人もいるが、円を売る材料は見当たらない」──。ある邦銀のトレーダーはこう語る。むしろ2007年6月の高値124.14円までは大きなレジスタンスがないことから「120円を超えたことで頭が軽くなった。124円まではそれほど遠くない」と力を込める。 大台に乗せた後のドル調整売りとしては、10月1日に110円に乗せた直後の下落局面が記憶に新しい。大台に乗せた翌日、エボラ出血熱に関連した報道が出て2円程度下落したあと、再度110円をうかがう展開となった。 だが、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを引き下げたことが伝わるとリスクオフの流れが強まり、15日に5円下落となる105.19円の底を打つまで下落した。 しかし、調整売りの局面があるとしても、衆院選後になると見る向きは多い。大和証券によると、過去14回の解散のケースでは解散日から投開票日までの日経平均は13勝1敗となっている。クレディ・アグリコル銀行、エクゼクティブ・ディレクターの斎藤裕司氏は「海外の投資家は、このアノマリーをみんな知っているため、少なくとも選挙が終わるまではドルが下げれば買ってくる」(斉藤氏)という。 <警戒感凌駕する持たざる恐怖> 先高観が強いとはいえ、急ピッチのドル高・円安への高値警戒感はくすぶっている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト、植野大作氏は「さすがに7年5カ月ぶりに120円の水準となると、高所恐怖症にも高山病にもかからずどんどんドルを買い進んで、上値を追えるプレーヤーはそんなに多くない」と指摘する。 ある邦銀トレーダーは「安いうちからドルロングを仕込んできた人たちは、120円に接近する中である程度、売ってきた」と解説する。今ドルを買っているのは、後追いで買った人たちで、腰の入ったドル買いではないとの見方から「何らかのきっかけで大きな売りが出れば、ロングを手放す動きが、雪だるま式に広がるリスクがある」と警戒感を示す。 だが、調整局面となっても、下落幅は限定的との見方が多い。バークレイズ銀行・為替ストラテジスト、門田真一郎氏は「グローバルにリスクセンチメントを悪化させるような材料がなければ、10月のような大きな調整は基本的には想定していない」と指摘している。 目先の重要イベントとしては、年内だけでも米雇用統計や衆院選、米連邦公開市場委員会(FOMC)などが控えている。「例えばきょうの米雇用統計がやたら弱い数字だったら、調整のきっかけになるかもしれない」(国内証券)との声がある。 ただ、その一方で「雇用統計が悪くてドルが下落しても、その幅は限定的ではないか。まだ先に望みがつながるようなイベントがある。落ちたところが買いだ」(邦銀)との強気の見方も根強い。 市場を支配するのは「買わない恐怖」だ。ドル/円は日銀の追加緩和をきっかけに109円から120円に1カ月強で10円超上昇した。短期調整への警戒感はあるとしても、この上昇相場に乗らなければ、パフォーマンスで負けてしまう。 強気と弱気の間で、どちらか一方に傾いているプレーヤーは少なく、警戒感と恐怖感が混在しているようだ。邦銀のあるトレーダーは、調整の兆しの見えない不気味さを感じながらも「今は買わない恐怖の方が勝っている」と語っていた。 (平田紀之 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0JJ0S320141205
訂正:アングル:120円台の円安進展、影響めぐって政府・日銀にギャップ 2014年 12月 5日 18:00 JST [東京 5日 ロイター] - 7年ぶりに120円台まで円安が進展する中で、その影響をめぐって政府と日銀にギャップが生じつつある。政府は原油安のメリットが急速な円安で相殺されかねないとの懸念を強めている。一方、日銀は円安が多くの企業でメリットになり、賃上げや国内投資を促す要因になる積極的な評価を維持している。 果たして、市場はどちらの見方に軍配を上げるのか──。 <原油安反映なら増税負担8兆円をカバー> 政府内では「原油安は今の日本にとって最大のチャンス」との声が強まってきた。5年ぶりに1バレル60ドル台まで下落し、経済好循環の実現に向け、追い風が吹いてきたとみている。 ドバイ原油相場は6月以降、3割超の下落。そのまま日本の燃料輸入に反映すれば年間で約8.4兆円の輸入額減少につながる。これは今年4月の消費税3%分の引き上げに伴う国民負担額8兆円に匹敵する規模。 また、輸入価格の下落は国内実質物価を押し上げる方向に働くため、デフレータは上昇する。この結果、名目国内総生産(GDP)がかなり押し上げられ、デフレ脱却に向けて環境が改善していくことにもなる。 政府内には、こうした低水準での原油価格が続けば、来年には原材料価格や電気料金の値下げにつながり、中小企業や非製造業にも恩恵が及ぶとの分析結果が出ている。 その先に賃金上昇が実現すれば、経済の前向き循環につながるとの明るい展望を描いている。実際、ガソリン価格や食料品などの価格低下に寄与すると予想され、原油安のメリットは消費者や企業にとって幅広いメリットを与える要因になる。 <円安が相殺し、効果薄れる> ところが、足元で急速に進む円安という現象が、別の風景を作り出している。貿易統計をみると、原油輸入価格は円建てでさほど下がっていない。また、国内ガソリン価格も夏場以降は6─10%程度しか下落していない。 最近の円安が20%程度進んだことの影響や、ガソリン価格に占める税の比率が高いことも原油安のメリットを薄めている。 こうした状況を踏まえ、政府内には円安が一段と進行すれば、せっかくの原油安によるメリットを相殺しかねないと警戒している。 ドル/円JPY=EBSが130円まで円安方向に振れれば、6月から2割程度の円安となり、原油下落の幅と同程度になり、メリットとデメリットが相殺する構図になる。 <日銀は、円安による賃上げ・国内投資に期待> 一方、日銀の円安評価は、政府内の見方とトーンが異なる。政策委員の間で見解にばらつきがあるものの、急ピッチな円安が一段と進行しない限り、円安効果を重視している声が多数を占めているもようだ。 企業の収益増が、結果として個人の支出増につながる経済の前向きな循環を維持するには、円安進行で企業収益が改善し、賃上げや雇用増へと連鎖する動きが不可欠とみているためだ。 一定の円安水準の定着によって、依然として慎重な企業の国内投資判断を促す効果にも期待する。 もっとも急速に進行する円安を受け、日銀の発信にも変化が表れている。黒田東彦総裁は11月25日、名古屋市内での講演で、出席した財界人から円安の日本経済への影響を問われ、輸出の増加やグローバルに展開する企業の収益改善、株価上昇などのメリットを挙げる一方で「輸入コストの上昇や、その価格転嫁を通じて中小企業や非製造業の収益、家計の実質所得に対する押し下げ圧力に作用する面がある」と、デメリットにも言及した。 経済実態を反映した円安は日本経済にプラスとの認識を示すことが多かった黒田総裁だが、円安の負の側面も意識し、微妙に軌道修正を図ったかたちだ。 <原油安で足元物価見通し下振れも> また、原油価格の下落は、短期的な物価の押し下げ要因に働くことも事実。実質所得の増加などを通じて、中長期的に日本経済や物価のプラス要因との見方が共有されているものの、10月31日には、原油安に伴う足元の物価下落が予想物価上昇率に与えるマイナスの影響を懸念し、追加の金融緩和に踏み切った。 金融市場からは「安倍首相にとり原油安は天佑だが、2%のインフレ目標の早期達成を目指す黒田日銀総裁にとっては頭痛の種であろう」(BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎氏)(訂正)との見方も出ている。 原油安に伴う足元の物価下落が追加緩和の引き金となったことで、市場には早くも追加緩和観測が台頭している。 日銀は来年1月にも、消費税率引き上げ延期を踏まえて展望リポートの見直しを行う予定。一段の原油安を受けて14年度の物価見通しが下方修正となる可能性がある。 原油安のプラス効果や、円安進行に伴う輸入物価の上昇、消費増税先送りの実質所得の増加など、中長期的にみて多様な変数が存在する。2015年度の物価見通し1.7%が維持できるのか、次の追加緩和を占う上で大きな焦点になりそうだ。 日銀は、足元の物価が下落しても、追加緩和で強めた目標達成に向けた日銀への信認が再び揺らぐ懸念が生じない限り、機械的な緩和はしないとの立場。現状では、来年の春闘に向けた賃上げ動向や企業の価格設定行動を含めた期待の推移を見極めていく段階にあるとみている。 もし、再び追加緩和に踏み切れば、一層の円安が進み「インフレ率の低下を抑えることはできるが、それは同時に、原油安による折角の減税効果を削ぐことになる」(河野氏)とも指摘されている。 展望リポートの中間評価における日銀の「立ち位置」が変わるのかどうか、BOJウオッチャーだけでなく、幅広い市場関係者の関心を集めそうだ。 *本文の最後から7段落目の証券会社名を訂正します。 (中川泉 伊藤純夫 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0JJ0LN20141205
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