04. 2014年12月04日 07:04:22
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知らないと損する!医療費の裏ワザと落とし穴 2014年12月4日 早川幸子 [フリーライター] 退職したり、失業したら健康保険はどうなる? 会社員は任意継続被保険者の加入を検討しよう 早いもので、今年も残すところあと1ヵ月となった。 年末や年度末などをひとつの区切りとして、会社を退職したり、転職したりする人も多いだろう。また、このところの急激な円安を受け、厳しい経営を迫られている中小零細企業もあるため、会社が倒産して失業したという人もいるかもしれない。 退職したり、失業したりすると、会社員は同時に健康保険をはじめとする社会保険も失うことになる。健康保険が使えないと、病気やケガをしたときの医療費は全額自己負担だ。 医療費が家計の大きな負担となり、それがきっかけで貧困に陥る可能性もあるため、日本では国民皆保険制度をとって、誰もがなんらかの健康保険に加入することを義務づけている。 そのため、退職や転職、失業をした場合は、忘れずに新しい健康保険の加入手続きをしておきたい。 退職後の健康保険には 3つの方法がある 退職したり、失業したりした会社員は、次の3つのうち、いずれかの健康保険に加入することになっている。 (1)会社員や公務員をしている家族の扶養に入る(被扶養者になる) (2)それまで勤めていた会社の健康保険の任意継続被保険者になる (3)市区町村の国民健康保険に加入する (1)被扶養者になる 会社員や公務員の扶養家族は、保険料の負担なしで健康保険に加入できるので、当面の保険料を節約したいなら(1)の被扶養者になるのがおトクだ。 扶養家族として認められるのは、保険料を負担している加入者と同居している3親等以内の親族だが、一定の年収要件などを満たせば離れて暮らす父母や兄弟姉妹なども扶養に入ることは可能だ。 ただし、扶養家族になれるのは、原則的に年収130万円未満(70歳未満)で、健康保険の主たる加入者の収入の半分未満であることが条件。退職後に雇用保険からもらう失業給付は収入とみなされるので、たとえ失業していても、それなりの収入があると扶養家族になるのは難しいこともある。 結婚して専業主婦になる女性は、この(1)の被扶養者を選択する人が多いが、一家の大黒柱などで収入要件を超える人は、(2)の任意継続被保険者になるか、(3)の国民健康保険に加入するかのいずれかを選択することになる。 (2)任意継続被保険者になる 任意継続被保険者は、退職した会社員が再就職するまでの間の医療費に困らないように、暫定的に元の会社の健康保険に加入できるようにした制度だ。 現在、任意継続被保険者になれるのは、退職した日の前日までに継続して2ヵ月以上(共済組合は1年以上)、会社の健康保険に加入していた人だ。退職後20日以内に手続きをすれば、最長2年間は任意継続被保険者として、それまでの会社の健康保険に加入できる。 任意継続の運営は協会けんぽや健康保険組合で行われているので、会社が倒産しても継続できないということはなく、その点は心配はいらない。 原則的に、任意継続被保険者は、病気やケガで仕事を休んでいる間の休業補償である「傷病手当金」、妊娠・出産した女性が仕事を休んでいる間の休業補償である「出産手当金」といった会社員独自の給付は受けられないが、国民健康保険よりも有利になることもある。 大企業の健保組合のなかには、医療費が高額になった場合に負担を軽減できる「高額療養費」の自己負担限度額が3万円など、法定給付よりも優遇されているところもあるからだ。任意継続でも、社員と同様の給付を行っている健保組合もあるので、こうした充実した保障があるなら、もとの会社の健康保険を継続したほうが有利だ。 また、被保険者本人以外の扶養家族も、保険料の負担なしで加入できるというメリットもある。ただし、任意継続は保険料の支払いが1日でも遅れると、ただちにその資格がなくなってしまうので、その点は注意したい。 問題は保険料。会社員時代は健康保険料が労使折半で、半分を会社側が負担してくれているが、退職後は会社の負担がなくなるので保険料は2倍になる。ただし、上限があり、おもに中小企業の従業員が加入する協会けんぽは、標準報酬月額(平均月収)が28万円の場合の保険料が最高額となる。たとえば、東京都の協会けんぽの場合、2014年度の21等級の保険料は全額負担で2万7916円だ(介護保険料は含まない)。 標準報酬月額が28万円よりも低い場合は、それまでの保険料を2倍にしたものが任意継続のそれになる。この保険料と市区町村の国民健康保険とを比較して、割安なほうを選ぶという人が多いようだ。 (3)国民健康保険に加入する 国民健康保険は、おもに自営業や無職の人など、職域保険に加入しない人のために1959年(昭和34年)に創設された公的な医療保険だ。 運営は各市区町村で、保険料も自治体によって異なるが、いずれも前年の収入をベースに、保有している資産や家族の人数などによって決められる。会社員の健康保険のように扶養家族という概念はなく、自営業の夫に扶養されている妻や子どもに収入がなくても、「均等割」といって家族の人数に応じて平等に保険料を負担する部分もある。 保険料決定のベースは前年の所得なので、失業中で収入がなくても、保険料が割高になることもあり、任意継続を選んだほうが有利になることが多い。 ただし、2010年4月から、勤務先の倒産、解雇などで、自分の意志に関係なく失業した人(非自発的失業者)に対しては、失業した翌年度末まで、保険料が最大70%軽減してもらえるようになっている。 解雇や雇い止めなどで失業した人は、任意継続の保険料よりも安くなることもあるので、比較してみるといいだろう。 国民健康保険も、滞納すると健康保険が使えなくなり、いざという時に医療を受けられない可能性もある。非自発的失業者への支援策のほかにも、自治体が独自に低所得層向けに保険料減免を行っているところもあるので、保険料の支払いが厳しい場合は、滞納するのではなく、まずは市区町村の国民健康保険課に相談してみよう。 転職先が決まっていて、翌日からすぐに新しい会社の健康保険に加入する場合をのぞいて、いずれの保険に加入するにも手続きが必要だ。運悪く無保険の間に大きな病気やケガをしたりすると、医療費を全額自己負担しなければいけないので、健康保険は切れ目なく加入するようにしたい。 俎上にのせられてきた 任意継続の見直し 以上のように、会社を退職したあとは、3つの健康保険の加入先があるが、 なかでも重要な役割を果たしてきたのが(2)の任意継続被保険者だろう。 だが、保険財政の悪化から、任意継続も見直すべきではないかという声が聞かれるようになっている。 任意継続被保険者は、1926年(大正15年)の健康保険法の制定と同時に作られており、当初、加入できる期間は退職後180日間(約6ヵ月間)だった。その後、保障の充実が図られ、1963年(昭和38年)に1年間に、1976年(昭和51年)に2年間に延長され、退職者の医療を担ってきた。 だが、任意継続は国民皆保険が実現する前に作られた制度で、全国の市区町村に国民健康保険が行き渡った今、その役割を終えたのではないかというのが会社員の健保組合や企業の言い分だ。 たしかに、現状では、退職した人が必ず任意継続を利用しているわけではなく、国民健康保険と比較して、おもに保険料の損得で加入の是非を決めている人が多い。 また、2012年度は、会社員の健康保険の加入者全体に占める任意継続被保険者の割合は1.8%程度。平均利用期間は1年2ヵ月となっているため、任意継続の期間を1年間に短縮してはどうかという意見もある。 現役世代の健康保険は、いずれも高齢者の医療制度への支援金によって、厳しい財政運営を迫られているため、任意継続も見直して、できるだけ負担を抑えたいという言い分も分からないではない。 しかし、いまや労働者の3分の1が非正規雇用という時代だ。企業の利益は労働者の働きによって生み出されているのだから、正規、非正規にかかわらず、企業の健康保険で面倒を見るべきだろう。 ところが、非正規雇用の人の中には、勤務先の社会保険に入りたくても、年収要件や労働時間などのしばりによって加入を阻まれている人もいる。その結果、非正規の多くが国民健康保険に流れ、それが国保財政を悪化させているという側面もある。 2016年10月から、従業員501人以上の企業で働く短時間労働者の社会保険適用の要件が見直され、加入者は増える見込みだが、それ以外の企業で働く非正規雇用の人々の待遇は変わらないままだ。 任意継続被保険者制度が国民皆保険時代に見合わないと主張するのであれば、自社企業で働く労働者の健康保険は、その労使で担うという本来の姿に立ち返って、雇用主の責任も果たしてほしいものだと思う。 http://diamond.jp/articles/-/63154
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