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トヨタ、資生堂…なぜ日本企業は消費者ニーズに“疎い”のか?ブランド戦略が“ない”理由(Business Journal)
http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/892.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 12 月 02 日 08:41:05: igsppGRN/E9PQ
 

トヨタ、資生堂…なぜ日本企業は消費者ニーズに“疎い”のか?ブランド戦略が“ない”理由
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141202-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 12月2日(火)6時0分配信


 日本企業はマーケティングが下手だと、海外市場でいわれることが多い。これは、別に海外市場に限ったことではない。国内市場においてさえ、消費者の心理を洞察した上で、その考え方や感じ方の枠組みを自社のマーケティング活動で変えていこうとする強い意図が感じられないことがよくある。

 しかし、10月に上梓した『合理的なのに愚かな戦略』(日本実業出版社)で考察したとおり、よく考えてみると日本企業が消費者の心理や行動に疎いのは、ある意味で当然のことだろう。なぜなら、驚くべきことに消費財を製造販売している日本の大手企業の中には、「消費者と直に売買交渉をしている」という自覚や経験のない企業が多いからだ。自動車、化粧品、家電、ビールなどのメーカーの中には、戦後いち早く垂直型の流通チャネルを構築するのに成功した結果として、その業界においてトップの地位を築いた企業が多い。卸問屋の特約店化や小売販売店の系列化を進めることで全国各地に進出を果たし、なおかつ競合他社の参入を難しくして競争を排除することで、高度成長時代に繁栄を謳歌したのだ。

 例えば、化粧品でいえば資生堂、ビールにおいてはキリンが長年トップの座にあり続けることができたのは、商品(ブランド)力というよりは、流通チャネルの系列化を競合他社よりも早く確立するのに成功したからだ。その結果、メーカーにとって客は消費者ではなく特約店や系列販売店ということになってしまった。「あの会社だったら一流だし信頼できるから取引してもよい」と卸売業の社長や小売店のオーナーに思ってもらうことが大切であり、必然的に商品ブランドよりは企業ブランドが重要になる。
 
 資生堂では、2001年まで店頭売り上げではなく小売店の仕入れの数字が社としての売り上げとされていた。つまり、消費者がどれだけ買ってくれたかではなく、小売店がどれだけ仕入れてくれたかで売り上げが決められていたのである。そのため、店頭では売れていなくてもノルマを達成するために小売店に「押し売り販売」する習慣があった。つまり、B2C(対消費者販売)をしていたようで実はB2B(対企業販売)だったのだ。

●ブランド戦略などなかった理由

 自動車業界も同じで、1950年代に特約販売店(ディーラー)のネットワーク構築にいち早く着手したトヨタ自動車や日産自動車が市場の50%以上のシェアを占有し、その後も長い間、首位争いをする歴史が続いた。最初は「1県1ディーラー」のシステムをとっていたが、60年代になり個人の自家用車保有が急激に伸びると、これでは対応できなくなる。より幅広い層に訴求してシェアを拡大するために、1県1ディーラーの建前を守りながらも販売チャネルを増やす方策として、次から次へと新ブランドを発売した。

 ブランドが違えば新チャネルをつくっても既存チャネルからの苦情に対処できるし、新しいブランドを既存のモノと差別化するためにも同一のチャネルで販売しないほうがよい。実際のところ、異なるチャネルで販売されるブランド間の違いはあまりなく、極端なケースでは、同一コンセプトの車種をネーミングを変更することで、異なるブランドとして異なるチャネルで販売するようなこともあった。

 つまり、日本の自動車メーカーには販売チャネル戦略はあってもブランド戦略などなかった、そもそもブランドの役割など眼中になかったのだ。

●成功ゆえのツケ

 こういった戦後の垂直型流通チャネル構築で成功した企業は、その成功ゆえに、のちに重いツケを払わされることになる。

 例えば資生堂は、創業以来140年を超す長い歴史の中で、これといったブランドを育てることに成功していない。小売店に「押し売り販売」や「お願い販売」をするということは、ギブ&テイクの関係で小売店の要望も聞かなくてはいけないということになる。小売店側からいえば、常に目新しい新製品が発売されるほうが売り上げは上げやすい。こういった要望に応えるかたちで、資生堂は11年頃まで年間500〜600もの新製品を発売し、08年時点で100以上のブランドがあった。
 
 これでは、消費者は新商品やブランドの名前を覚えることもできない。実際、1年前に発売されたブランドが、消費者に名前を覚えられる前に新ブランドへ取って代わられることが最近まで続いていた。

 日経BP社が01年から毎年実施しているブランドランキング調査「ブランド・ジャパン」では、資生堂は化粧品最大手でありながら、過去10年に消費者による評価では30位以内に一度も入っていない。一方、ビジネスパーソンによる評価では30位以内に5回入っている。B2Bビジネスをしてきたので、企業ブランドとしてはある程度評価されているということだろう。

●レクサスにもブランド戦略はなかった
 
 自動車業界でも同様の特徴がみられる。トヨタの高級ブランド車「レクサス」は米国市場では成功しているが、ヨーロッパを含めたその他の海外市場では苦戦している。ドイツの高級車ブランド「アウディ」「メルセデスベンツ」「BMW」に差を広げられ、世界での販売台数は、この3社合計の10分の1となっている。トヨタ社長の豊田章男氏はレクサス・ブランドの世界戦略を見直すにあたり、同社には流通チャネル戦略はあったがブランド戦略はなかったということを素直に認めた。

 トヨタのような日本を代表する一流企業ですら、その成功はかつて非関税障壁だと外国勢に非難された垂直型流通チャネル制覇によってもたらされたものだ。つまり、そもそもトヨタはブランド戦略を持つ必要も、それについて学ぶ必要もなかったのだ。

 家電業界でも、旧松下電器産業(現パナソニック)のナショナルショップに代表されるようなチェーンストアがピーク時には全国に2万店舗あり、ビール業界もキリンビール、アサヒビール、サッポロビールの3大メーカーが流通チャネルを独占し、他メーカーの参入を妨げていた。例えば宝酒造は57年にビール市場への参入を図ったが、流通チャネルが確保できず、67年に撤退して焼酎に特化した。サントリーは62年にアサヒの販売ルートにのせてもらうことで、かろうじて参入できた。そして、長い苦節の期間をへて、「プレミアム・モルツ」で高級ビールNo.1の地位を獲得するに至っている。

 幸というか不幸というか迷うところだが、家電業界やビール業界は量販店やスーパーという新しい小売業態が既存の小規模小売店に破壊的ダメージを与えることによって、自動車や化粧品メーカーと比べて比較的早いうちに契約小売店制度という束縛から解き放たれた。つまり、B2Bビジネスではなく、本来のB2Cビジネスに早い段階で舵を切ることができた。とはいえ、家電メーカーはあいかわらずB2C戦略で苦戦している。消費者の心理を洞察できなかったことは、ダイソンやルンバのような外国勢が羽根のない扇風機や掃除ロボットで日本の消費者を魅了するのを、当初は黙って眺めることしかできなかったことからも明らかだ。

 社内外にはびこる束縛をたちきることができず商品ブランドを育成できなかった資生堂は、ついに社外から元コカ・コーラ社長の魚谷雅彦氏を新社長として迎える結果に至っている。 

 過去に流通チャネル戦略で成功した多くの企業のブランディング能力が弱いということは、皮肉な見方をすれば必然的ともいえる。

ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授


 

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コメント
 
01. 2014年12月02日 09:05:52 : vgpIxw0tms
世界の照明を一変させた青色発光ダイオードを自国のブランドにすぐにはできなかった日本の組織体質。

02. 2014年12月02日 19:24:30 : cGVB3XfUBs
政・官の 顔色だけを 窺って
貯めりゃいいのさ 内部留保を

03. 2014年12月02日 22:16:11 : ytIWoEzSFI
今は忘れ去られた用語として、内外価格差と言うのがあった。同じ日本製品なのに、外国で買うと安くて日本国内で買うと高い。この問題が顕著だったのが、1980年代前半。家電製品が特に酷かった。テレビジョン受像機や家庭用ビデオデッキ。ステレオ・コンポーネント。20万円から30万円は、ザラであった。

家電製品の分野で、外国メーカーの日本参入はほとんど成功しなかった。欧州・オセアニアの交流商用電源220ボルト〜240ボルト、60ヘルツと、アメリカの交流商用電源117ボルト、50ヘルツと規格が違っていたこともあるが、これも非関税障壁だ。だが、根本的には家電メーカーが系列小売店を組織化して、囲い込んだのが原因だろう。

これに果敢に挑戦したのが、ダイエーの中内社長。松下電器の意向に反して安売りしたため、松下電器から商品の供給を止められてしまった。このため、人気のある松下電器の商品を販売できず、ダイエーブランドのテレビジョンを販売したりした。

ダイエー・松下戦争
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%BB%E6%9D%BE%E4%B8%8B%E6%88%A6%E4%BA%89

●当時の松下電器の製品カタログを見ると、価格欄に「現金正価」と書かれている。いかにも、消費者を愚弄した表現である。これとは別に月賦で購入した場合の価格も書かれていたが、これが割高であった。このため、多くの消費者は「現金正価」で購入したが、これが今から見ると腹が立つほど高いのである。1980年の当時、気のきいた高級モノラル・ラジオカセットで4万円。ステレオ・ラジオカセットだと、高級機で7万円もした。しかも価格はモデルチェンジごとに毎年あがっていき、1985年に頂点に達した。松下電器のステレオ・ラジオカセットで最高級機が遂に12万円に到達したのである。

これらの高価格設定は、系列小売店を大きく潤したのである。しかし、この頃から家電量販店が成長しつつあり、系列小売店の廃業や業種転換が相次ぐようになった。これにより、価格決定権は家電量販店に移り、これまでの暴利が得られなくなったのである。

アメリカの政府報告書で、日本の家電メーカーについて書かれていたものがある。要旨は、日本の家電メーカーは、家電製品の販売で莫大な利益をあげ、この利益を半導体や新規事業に投資していると。これを打ち砕くことに、彼らは集中したのである。

1980年代中頃の円高ドル安政策によって、日本の家電メーカー工場は次々と中国大陸や東南アジアに移転した。製品価格は大幅に安くなった。だが、価格の安さを武器にしたため、魅力的なアイデアを具現化した全くの新規商品がうまれなくなってしまった。日本では売っていないが、カブトガニみたいなロボット型掃除機を大々的に製造販売しているのは、実はサムソンやLGなどの南朝鮮メーカーである。ここに日本メーカーは挑戦してこない。もう最初から勝ち目がないと思っているのか。

外国に行けば分かるが、日本の家電メーカーの存在感のないこと。メーカー向けもよいが、一般消費者向けに力を入れないと、忘れ去られたブランドになってしまうよ。


04. 2014年12月04日 07:51:37 : jXbiWWJBCA


「徹底予測2015 BCGが注目する4つの産業トレンド」
バラ色の自動車時代、到来への条件

2014年12月4日(木)  古宮 聡

 新興国の失速で世界経済の牽引役が見当たらない中、円安・株高を導き、国内の景気を押し上げてきたアベノミクスにも変調の兆しが見え始めた。国内外で先行きの不透明感が増す中、来る2015年をどう見通せばいいのか。そのために押さえておくべき4つの産業動向を、ボストン コンサルティング グループ(BCG)のパートナーが解説する。今回は、自動車産業の将来を俯瞰する。
 自動車産業は、自動車を運転する「楽しみ」、「利便性」などのメリットと所有コストや社会コストなど 「負のコスト」のバランスを保ちながら成長してきた。しかし、そのバランスは既に崩れ、現状の延長線上に見える未来に明るさは見えない。「バラ色の未来」はどこにあるのか。

自動車の稼働率は3%

 通勤途中に電車の窓から外を見ると、多くの乗用車が駐車場にとまっている。週末は動いたかもしれないが、果たして平日はどうだろうか。

 ボストン コンサルティング グループ(BCG)の試算では、東京における自動車の稼働率は、実に3%程度となっている。意外な数字と思われるかもしれないが、一般家庭の乗用車を例に想像してみれば、それほど違和感はないはずだ。

 まず24時間のうち、夜間10時間の稼働は極めて低い、さらに平日の稼働も近所の買い物と子供の送り迎えが中心。休日に遠出をしても、せいぜい月に2〜3回だろう。この稼働時間を可能稼働時間で割ったものが、自動車の稼働率という考え方だ。

 稼働が下がると何が起こるのか? 単純に言うと、所有コストとのバランスが見合わなくなる。自動車自体の価格も決して安くない上に、駐車場、自動車保険、ガソリン…と費用を足していくと、年間に50万円を超えることとなる 。

 若者の自動車離れは顕著だが、経済性のアンバランスは若年層だけでなく、すべての世代での自動車離れの大きな要因になっている。

自動車の社会コストは膨大

 一方、社会全体に目を向けるとどうか。日本を網の目のように覆い尽くす国道や高速道路を思い浮かべてほしい。自動車社会を維持するコストは膨大である。

 直近の数値では、道路建設などへの投資に約5.5兆円。ガソリンの販売額は、ざっくり試算すると8兆円を超える(2011年)。メンテナンスなど自動車整備市場の規模は、約5.4兆円。自動車関連保険の正味収入保険料は、約4.5兆円。

 このほかにも、事故発生時の救急対応費用、排ガス規制コストもかかってくる。税という観点から見ると、自動車関連税収は総税収の9.7%に達しており、その構成比は固定資産税に続いて5番目である。

 この数字を見れば、「稼働率3%の自動車にこんなに金をかけてよいのだろうか?」という疑問がわくのは当然だろう。もっと稼働は上がらないのか? 自動車にまつわる社会コストは下げられないのか?

 バラ色の自動車時代を実現するには、これらの問いに答えを出す必要がある。こうした課題に関連するトレンドを取り上げて考えてみたい。

カーシェアリングは稼働率向上の救世主か

 近年話題となっているカーシェアリングの始まりは古く、1948年にスイスのチューリッヒで市民が共同出資で車を買い、シェアしたのが起源だと言われる。

 カーシェアリング事業は大都市を中心に浸透しつつある。北米ではジップカー(2013年にレンタカー大手のエイビスが買収)が有名だが、自動車各社も様々な事業展開や実証実験を展開する。

 当初は「都市型短時間レンタカー」という単純なモデルが中心であったが、最近は様々なモデルが出現している。例えば、米国では、オーナーが出張や旅行に行っている間、空港に駐車している車をほかの顧客にまた貸しするモデルを展開する企業や、PtoP(ピア・ツー・ピア)という概念に基づき、個人の車をほかの個人に貸すというマッチングサービスモデルでビジネスを展開している企業もある。 

 「車を共有する」という観点でカーシェアリングを考えてみよう。車にまつわる要素は車両そのものと、運転手に分けて考えられる。自家用車は車も運転手も自前である。カーシェアリングやレンタカーは、車両は共有だが、運転手は自前だ。両方とも他者と共有しているのがタクシーということになる。

 これらの観点で稼働率を考えてみると、自家用車の稼働率は3%、カーシェアリングは良くて20〜40%、レンタカーが40〜80%、タクシーは80%(実車率では40%)となる。つまり上手に共有要素を増やせば、稼働率は上げられることになる。

 では、カーシェアリングは低い稼働率を解消する決め手になるのか? 答えはノーだ。

 その理由は大きく2つある。1つは、カーシェアリング事業の収益性だ。残念ながら現状では、このビジネスの収益性は決して魅力的ではない。産業自体が黎明期にあることは確かだが、そもそも「車を買って貸す」という事業の付加価値が限定的である。オペレーションコストもバカにならない。「事故を起こす」「車の中にコーヒーをこぼした」「帰ってくるはずの車が時間に帰ってこない」──などなど、多様なコストが発生する。

 2つ目はその適用範囲だ。逆説的だが、カーシェアリングが経済的に成立するには高い稼働が必要になるので、大都市レベルの人口密度でなければ成り立たない。

 そのため事業を展開できる範囲が限定的で、全国には広がらない。比較的普及しやすい大都市では駐車場代が高く、事業としての収益性にとってはマイナスという面もある。

 もちろん、これらの条件は永遠に変わらないとは限らない。北米で先行するジップカーはオペレーションの自動化を進め、大都市で収益性の改善を達成した。ただし、カーシェアリングの普及が多少進んでも、稼働率向上への貢献は限定的だ。車の時間貸し事業という意味でカーシェアリングに大きく先行するレンタカーでさえ、浸透率は保有台数ベースで1%に満たない。

自動運転はインフラコストを大幅に削減する

 自動運転はどうか。米グーグルの自動運転車プロモーションビデオは斬新だ。そもそも自動車にハンドルが付いていないし、アクセルもない。試乗している人はそのあまりの斬新さに驚くが、同時に非常にリラックスしているように見える。まるで、リビングルームでお茶を飲むような雰囲気の中で移動している。既に実証実験を通じて検証も進みつつある。 

 自動運転の発展段階を5段階に分けて考えてみよう。

 レベル1は受動的な運転支援。車をバックさせてぶつかりそうになると警告音が鳴るというものだ。

 レベル2もまだ補助的な機能で、最近はやりの自動衝突回避機能が代表例。自動車が危険を察知してブレーキを踏んでくれる。

 レベル3はさらに高度になり、必要な操作を車が代行してくれる。代表例は駐車の際に必要なステアリングを車両が代行してくれる自動パーキングアシストだ。ここまでは既に商業化されている。

 レベル4になると、運転の主体がドライバーから車に移り、ドライバーは本当に必要な時にのみ関与するようになる。

 さらにレベル5になると自動車同士が相互にお互いの位置を確認し、車間距離や速度の調整、事故の回避などを従来人間ができなかったレベルで実施してくれる。要は人間の代行を超えた付加価値をつけてくれることになる。

 では自動運転が浸透するとどのようなインパクトがあるのだろうか?

 北米を例に見てみると、その影響は膨大でかつ広範囲に及ぶ。安全性の向上により事故は90%回避され、事故死は99%削減される。よりスムーズな運転により燃費が40%向上する。柔軟な運転、車間の連携により渋滞が55億時間削減される。道路のより有効な利用により車線キャパシティーが80%削減できる。

 さらに従来運転に使われていた750億時間がほかのことに使えるようになる。これらの経済効果の総和は1.3兆ドル(約152兆円)、北米GDPの8%にも相当する。これらが実現されれば、社会が負って来た負のコストが大きく削減されることになる。

さらなる革新の必要性

 では、自動運転で社会コストが下がればバラ色の自動車業界が到来するのだろうか?

 それほど簡単な話ではない。自動運転が普及するだけで稼働率を高めるのは難しく、社会コストとのバランスは取れない。では、何が起こるべきなのか? 条件は大きく2つある。 

 1つ目は、いくつかのトレンドの融合だ。例えば、カーシェアリングと自動運転が結びつけば、自動車の稼働率を圧倒的に高めることができるだろう。スマートフォンのアプリから無人の車を24時間呼べるようになるし、ミニバンからスポーツカーまでTPOに合わせて、かつ需給に合わせた変動性の価格で使えるようになる可能性もある。

 これによって社会インフラとしての自動車の稼働が高まる。また、通信機能を持つコネクテッド・カーが浸透し、自動運転と結び付けば自動車が移動型オフィス空間となるだろう。移動中の作業が可能になり、様々な業種で営業所が自動車オフィスで置き換えられる可能性もある。このような可能性は多々存在するし、決して非現実的なものではないだろう。

 2つ目の条件は、自動車業界関係者の連携とその前提となる発想転換である。OEM(完成車メーカー)はメーカーとしての利益を超えて、より広い視座で自動運転の浸透と道路投資の削減を連動させる。車単体のコスト削減だけではなく、社会インフラコストまで踏み込んでコスト削減を進めるべきだ。

 関連省庁は、規制の発想を変え、路上駐車規制をカーシェアリング普及に向けて緩和する。また自動運転に関わる法的規制の検討をOEMと共同で加速化させるべきだ。車の所有コストを下げるために車検制度の抜本的な見直しに踏み込むことも必要だ。

 これらに取り組むことで、社会全体に大きなメリットがもたらされる。日本の自動車産業は、後発ながらその圧倒的な「ものづくり力」でグローバルの覇者となった。しかし現状の延長では、日本が「バラ色の自動車社会の覇者」になる可能性は極めて低いだろう。

 残念ながら、自動車業界の次の覇者は、現在の大手自動車メーカーではないかもしれない。グーグルやアップルでもないかもしれない。今までの常識を打ち壊し、自動車業界の高い垣根を取っ払うことでのみ、バラ色の自動車時代が到来するのではないだろうか。

このコラムについて
徹底予測2015 BCGが注目する4つの産業トレンド

新興国の失速で世界経済の牽引役が見当たらない中、円安・株高を導き、国内の景気を押し上げてきたアベノミクスにも変調の兆しが見え始めた。国内外で先行きの不透明感が増す中、来る2015年をどう見通せばいいのか。そのために押さえておくべき4つの産業動向を、ボストン コンサルティング グループ(BCG)のパートナーが解説する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141201/274520/?ST=print


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