07. 2014年12月01日 06:35:36
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将来の社長は、日本人である必要はない −日本電産社長 永守重信氏【2】 いる社員、崖っぷち社員 2013年10月23日(Wed) 中途社員はメガバンク、電機、自動車出身者 日本電産社長 永守重信氏 京都企業の先輩である京セラは日本電産より14年早く創業した。その京セラで会長以下の経営幹部がすべてプロパーになったのが数年前。一方、日本電産のプロパー社員は30代以下の若手である。幹部級の人材が育つには、あと10年ほどかかるということになる。
そのため、日本電産は中途の人材を積極的に採用している。事務系ならメガバンクや地方銀行出身者が多く、元支店長クラスだけでも現在70〜80人が活躍中だ。技術畑では総合電機のトップメーカーから26人、重機・造船の最大手から35人、自動車大手から40人など、相当数の人に来てもらっている。 中途採用ではどんな人に来てほしいのか、と聞かれることがある。ここではまず「いらない人」の条件をあげてみよう。 確実にいえるのが「マネーファーストはダメ」ということだ。つまり仕事の中身よりも先に、報酬や休暇の交渉から入る人。外資系企業から来る人はほとんどがこれに当たる。仕事に打ち込み自己実現をし、その後に報酬がついてくる。これが日本社会の常識である。常識を共有できない人とは一緒に働くのが難しい。 単純に報酬の額だけをいうなら、外国企業のほうが好待遇の場合がある。最近採用したエンジニアに聞くと、その人は韓国企業から日本電産の3〜4倍の年収を提示されたという。 では、その人はなぜ日本電産に入社したのか。わけを聞くと「日本の技術を海外に流出させるわけにはいかないと思った」というのである。 あるいは、ドイツ企業に勤めていたが最近になって日本電産へ転じた人がいる。この人は当社へ来たことで年収が半減した。彼も立派な考えの持ち主である。 「ドイツの経営者はドイツのことしか考えていない。たしかに金銭面で不自由はしなかったが、それだけでは自分自身に悔いが残る。最後は日本の国に尽くしたかった」というのだ。 前回(http://president.jp/articles/-/10885)、私は「日本電産は日本発祥のグローバル企業である」と定義した。グローバルに展開し利益を得るが、その富を最後に持って帰る先は日本なのだ。日本の国や社会がよくなるのでなければ、会社だけが栄えても意味はない。 そのことを理解してくれるかどうかが大切である。お金だけで選ぶなら、どうぞ外国企業へ行ってくださいというほかないのである。 「つくられたエリート」も採用しない。たとえば金融機関ならニューヨークやロンドン勤務がエリートコースだが、そのルートに乗ったというだけで実力がともなわない人間は最悪だ。入社させても会社の足を引っ張るだけだろう。 反対に、同じ海外組でもインドや中近東、南米などに赴任した傍流の人のほうがハングリーであり評価が高い。 煎じつめれば、欲しいのは「経験と意欲のある人」に尽きる。即戦力であれば年齢は問わない。年齢をいうなら私もすでに66歳、会社員なら定年である。60代で中途採用された金型技術者がいてもいいと思う。 大組織には派閥争いや年齢、学歴差別によって、本人の意思・能力とは関係なく窓際に置かれているような人が少なくない。 「もっと働いて夢を実現したい」「もう1度花を咲かせたい」という思いがあるなら、こういう人も採用したい。 中国などが先導して、EVの普及は進む いま、全世界が注目しているのは電気自動車(EV)がどこまで、どれだけのスピードで普及するのかということだ。駆動系・制御系を含めEVはモーターの固まりである。その動向は日本電産の将来にも大きく関わりを持っている。 10年後の普及率はどうなるか。極端な人は「半分」と予測するが、自動車メーカーはおしなべて控えめな予想を出している。私は全体では25%程度、小型車に限ると半分くらいはEVになると考える。排気量1000ccクラスなら、ほとんどがEV化してもおかしくはない。 こうした見方は少し大胆かもしれないが、過去の技術革新を振り返ってみれば驚くほどのことではないと思う。たとえばフィルムカメラがデジタルカメラに置き換わったときは、大手フィルムメーカーが10年かかると予測した変化が3年で起きた。ブラウン管テレビから薄型テレビへの移行も同様で、実際には業界予測の3倍速で変化が進んだ。
業界予測が「10年後に10%」だとしたら、実際には30%になってもおかしくはない。普及の鍵はバッテリーの価格だといわれるが、商業ベースに乗ってからの技術革新は思ったより速いのが通例だ。早めにブレークスルーが起きるのではないか。 そうなると、守勢に立たされるのが自動車王国・日本である。日本の自動車大手は屋台骨であるガソリンエンジンを見切ることができず、ハイブリッド技術で延命を図っている。 だが、ガソリン車づくりの伝統を持たない中国は、国家プロジェクトとしてEVに全力を注いでいる。EVの時代に世界一の自動車メーカーを輩出するのは、日本ではなく中国である。中国メーカーなどが先導し、EVの普及は一気に進むだろう。 したがって日本電産は今後、自動車向けの事業を拡大する。次は鉄道だ。そして船舶、飛行機向けのモーターを順番に強化していくつもりである。 もちろん拡大の手段はM&Aだ。われわれが力をつければ、それだけ大きな相手を買収できる。また、海外、とりわけアメリカ企業を相手にする場合、これまでとは違って敵対的買収をためらわなくてもいいという利点がある。彼らにとっては当たり前のやり方だからである。 将来の社長は、日本人である必要はない 日本電産はいま、真のグローバル企業として大きな飛躍を遂げようとしている。売上高も間もなく1兆円を超え、それにつれて組織も巨大化する。 中国、インドに続き、ブラジルにも大型の生産拠点を設けるが、それは製品の需要が大きい成長市場にあるからだ。ブラジルは南米の拠点という位置づけで、ここを中心に周辺諸国をフォローする。 となると、ブラジルには現地にポルトガル語のほかスペイン語のできる人材を投入しなければならない。まずはスペイン子会社から人を出してもらい、徐々に現地スタッフを充実させる計画だ。 私の経営者としてのあり方も変えなければならない。戦線が拡大すれば、これまでのように自分1人で全地域を掌握することは不可能となる。グローバル全体のしっかりしたシステムを組み上げ、それに従い、経営を進めていくしかないのである。 その第一歩となるのが、アメリカ子会社の日本電産モータに南北アメリカのグループ経営を任せることだ。ここにアメリカ人の優秀なCEOを置き、現地の事業を統括してもらう。土地感のない日本人を派遣するより、そのほうが理にかなっていると思うからだ。 では、将来の日本電産の社長はどういうところから出てくるのか。別に日本人である必要はない。仮に今後、アメリカ市場が最大の利益を生むとしたら、そこを統括している人がグローバルのトップに立つこともありえるだろう。 あるいは、現在の稼ぎ頭はパソコン向けハードディスク事業だが、このままいけば自動車向けが中核事業に育つだろう。すると、ハードディスクではなく自動車事業から社長を出すのが自然ということになるかもしれない。 役職者を肩書で呼ぶ習慣を順次見直していこうと考えている。まずは外国人と接する機会の多い部署から変えていく。外国人の上司が赴任してきたら「ブラウン部長」ではなく「ミスター・ブラウン」と呼ぶはずだ。だから日本人同士でも「田中部長」はやめて「田中さん」に統一しようということである。外資系企業のように降格人事も一般化する可能性がある。そのときにもスムーズに受け入れられる素地をつくりたい。 小さなことかもしれないが、社員の意識を変えていくには重要なことだと思っている。 日本電産社長 永守重信 1944年、京都府生まれ。67年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)卒業。73年に日本電産を創業し、現在に至る。 http://president.jp/articles/-/10886
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