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日銀追加金融緩和の決定 4時間以上激論、賛成5人反対4人(J-CASTニュース)
http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/864.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 11 月 29 日 19:45:05: igsppGRN/E9PQ
 

              「追加緩和」めぐり、大もめ


日銀追加金融緩和の決定 4時間以上激論、賛成5人反対4人
http://www.j-cast.com/2014/11/29221858.html?p=all
2014/11/29 14:30 J-CASTニュース


安倍晋三首相が表明した消費税再増税の先送りをめぐり、日銀内で微妙な温度差が生じている。財務省出身の黒田東彦総裁は一貫して予定通りの再増税を主張してきた経緯があり、2014年10月31日の追加金融緩和についても市場では「再増税への布石」との見方が強かった。

しかし、日銀内では「物価上昇率2%」の目標達成に追い風になるとして再増税先送りを歓迎する声もあり、一枚岩とは言えないのが実態だ。日銀内の意見の相違が今後の政策運営に影響する可能性もある。

■黒田総裁は繰り返し再増税の重要性を訴えていた

「追加緩和が間違っていたとか、もっと待つべきだったとはまったく考えていない」。黒田総裁は11月19日の記者会見で、記者から「再増税が延期になるのなら追加緩和しなければよかったと後悔していないか」と問われ、苦笑いを浮かべながらこう答えた。

こうした質問が投げかけられたのは、黒田総裁が以前から安倍首相に対し、予定通り2015年10月に再増税するようメッセージを送っていたからだ。政府の財政再建が進まなければ、日銀の国債の大量購入が市場から「財政赤字の穴埋めをしている」とみなされ、国債価格の急落(金利は急騰)を招く恐れがある。黒田総裁は記者会見や国会答弁で繰り返し「財政への信認が失われる確率は小さいが、生じた場合のリスクは大きく、政策対応は困難」と述べ、再増税の重要性を訴えていた。経済官庁幹部は「追加緩和は物価の下振れが最大の理由だが、予定通りの再増税を促す黒田総裁の意図が込められていたのは間違いない」と解説する。

■岩田規久男副総裁は再増税は先送りすべきとの立場

だが、日銀内の足並みが「再増税に向けた追加緩和」で一致していたわけではない。再増税が予定通り実施されれば、景気が腰折れし、2%の物価上昇という目標到達が遠のくという懸念も一部で根強かった。とりわけ、安倍首相と意見が近いとされる岩田規久男副総裁は、就任前の学習院大教授時代から「デフレを脱却する前に消費増税をすれば、消費が冷え込み税収も減る。大胆な金融緩和で成長率を上げた後に増税すべきだ」と主張。財政再建より2%の物価目標達成を優先する立場を鮮明にしてきた。副総裁就任後は消費増税に関する発言を控えているものの、14年4月の消費増税後に景気が低迷し、物価上昇率が頭打ちとなる中で、「再増税は当然先送りすべきとの立場だった」(関係者)とみられる。

■黒田総裁が追加緩和の議案を提案、反対派を押し切った

再増税に対する考え方は正反対ながら、鈍化した物価上昇ペースを再び加速させるという目的では一致する正副総裁は、10月末の金融政策決定会合で追加緩和への議論を主導した。日銀が11月25日に公表した会合の議事要旨からは、追加緩和を主張する委員らが「ここで政策対応を行わなければ、日銀に対する信認が損なわれる」と迫り、黒田総裁が追加緩和の議案を提案、反対派を押し切った様子が浮かび上がる。日銀幹部は「正副総裁の間で意見の相違が生じないよう入念な事前調整が行われた」と打ち明ける。

一方、議事要旨には、反対派の審議委員らが追加緩和の副作用として、円安による中小企業の負担増や市場に「財政赤字の穴埋め」と受け取られるリスクなどを指摘し、4時間以上にわたって激論が交わされたことも記されている。追加緩和は正副総裁3人を含む賛成5人、反対4人の薄氷の差で決定されたが、審議委員の中でさえ追加緩和への評価が真っ二つに割れていることが白日のもとにさらされた。財政再建や大規模な金融緩和に対する考え方は執行部や審議委員の間で大きな開きがあるのが実態で、黒田総裁の今後のかじ取りは一段と難しくなりそうだ。

 

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コメント
 
01. 2014年11月29日 20:49:11 : TPLsKDu6Pw
経済は素人だが、10月のサラリーマン世帯の実収入は2.1%減少といった状態のなかで、インフレなど起こして、意味があるのだろうか。


インフレを起こせば、物価が上がる前にものをみんなが買おうとするようになり、消費増加、生産増、所得増加という好循環ができるといっているように思えるが、実際にはその反対になっているのではないか?

超金融緩和で円安で輸入物価上昇するが、所得は増えない。生活防衛のため消費を一生懸命控える(10月の1世帯あたりの消費支出が4.0%減少)生産減、所得減少という悪循環になっているとしか見えないのだが。

もしかしたら、円安で輸入物価が上昇するが、輸出がそのうち伸びるので生産増、所得増になる。その効果は、輸入物価上昇によるマイナスよりも大きく、好循環を形成すると考えているのだろうか?

今までの状況を見ると、円安になって輸出が伸びても、消費の中核をなすサラリーマン世帯にはメリットなしで、インフレになればなるほど生活防衛のため消費を一生懸命控えるようになるとしか思えないのだが。あと数年庶民は没落しつつ、歯を食いしばっていれば、昔のような輸出主導型の経済になるかもしれないということまで視野に入れているのだろうか?


もしかしたら単にインフレで国債を目減りさせて、償還の負担を軽減させることが主目的で、あわよくば、ハイパーインフレにでもなってほしいと思っているようにも思えるのだが。

だれか、経済に詳しい人、このあたり解説してください。
よろしくお願いします。


02. 2014年11月29日 21:01:03 : jXbiWWJBCA

働かない上に高額な医療費や介護費用のかかる老人が増える一方で、若者が減り、全体の人口も減っていけば、労働者や企業の負担は当然増えていき、
競合国よりも企業負担が高まれば、国内産業、特に付加価値が高い輸出産業は衰退し、通貨安圧力は高まっていく。

負担を個人レベルではなく、政府が負担するのであれば、当然。増税で賄うか、財政赤字を増やし、それを日銀が財政ファイナンスして国民がさらなるインフレで負担するかの、どちらかしかない。

全体の負担を最小化するには、企業と個人、そして行政が生産や消費、そして規制を効率化する以外には他に手段はない。



03. 2014年11月29日 22:44:28 : OkXopCDtCI
消費税を増税してGDPの減少。その結果税収は減少。対策として補正予算の執行で税金を余計に使う。財政再建とは逆方向に舵を切っている。

極めつけは、消費税を上げたら法人税を減税するという。まるでこの国は漫画みたいな事をやっている。

収入が増えないのに誰が金を使うのか。まずは、先行き暗い世の中になりそうなので生活防衛に走るのは合理的な判断である。

この調子で2017年の春には何が何でも10%に消費税を上げるというのだからこれからは物価高の不況になる。つまり、スタグフレ−ションの到来だろう。

自民党に任せていいんですか。ようく考えよう。


04. ひでしゃん 2014年11月29日 23:39:37 : dsqbUTCLpgzpY : l9iSwseQ8k
日本国からアメリカユダヤ資本に所得と資産の移転工作が巧妙に実施中
金融政策当局は正常な金融政策ではないので
「異次元金融緩和」と称して日本国民を誤魔化し油断させる
当初の異次元金融緩和が失敗したので更に失敗を重ねる愚と厚顔
黒田日銀にアメリカ財務省とFRBから強力な指示命令発令か
日本国からアメリカユダヤ資本に既に数百兆円が掠め取られたようだ
中央銀行としての日銀の信用失墜で日本国債の暴落が始まる
ポンド危機の再来
インフレ目標自体衰退する日本国が目指すべき目標か?
インフレ目標と超低金利を維持することは資金逃避を煽るだけ
日本国債は外国人が二年前から保有していたらドル換算では暴落していることになる
日本株価も日本の実体経済や福島第一原発リスクなどで早晩暴落するだろう
現在隠蔽されている様々な不都合な事実が総選挙後に明らかになる

05. 2014年11月30日 09:51:04 : BMxeq67UWc
>>01. 2014年11月29日 20:49:11 : TPLsKDu6Pw
> 経済は素人だが、10月のサラリーマン世帯の実収入は2.1%減少といった状態のなかで、インフレなど起こして、意味があるのだろうか。

黒田日銀の目的は経済の立て直しであり、インフレを起こすことでは無い。
インフレはやむを得ない副作用である。

> だれか、経済に詳しい人、このあたり解説してください。
よろしくお願いします。

国の経済政策の基礎知識について、中学や高校で教えるべきである。
今は教えていないので、国民は経済政策の何が良く、何が悪いのか全く判断できない。
テレビもマスコミも国家の経済政策に関する基礎知識を説明しようとしない。

国の経済政策の基礎知識とは、次のようであると思う。
国のGDPが500兆円であるとする。
生産性が10%向上して、GDPが550兆円へ増大したとする。
日銀が何もしなければ、増加分の50兆円を国民は消費することは出来ない。
この50兆円分を消費するには、物価を10%下げて見かけ上GDPを500兆円へ減らさねばならない。これがデフレである。

政府が50兆円の国債を発行し日銀が50兆円の紙幣を印刷して国債を買うと、政府は50兆円の消費をすることが可能となり、50兆円分のデフレは無くなる。

つまり、デフレを無くすには日銀が紙幣を印刷して国債を買うことが必要であり、これを行っても誰も損をすることは無い。
企業は増加した商品を従来の値段のまま売ることが出来るのだから。

黒田日銀は今、年に80兆円の国債を買っているが、殆どインフレにはなっておらず、ほぼデフレは解消されている。
つまり、黒田日銀は見かけ上の過剰生産を解消し、企業は赤字から黒字へ転換した、
つまり、アベノミックスは大成功している。

本来、100兆円の予算を実行するには100兆円の税収が必要であるが、今の税収は60兆円しか無い。
政府は残りの40兆円は国債の借金に頼っているが、黒田日銀が80兆円の国債を買っているので、市中の国債は増大するどころか、減少している。

市中にある国債には政府は利息を払わねばならないが、日銀へ払う利息は政府へ返還されるので、利子負担は無い。
もし、全ての国債を日銀が買えば、政府の実質的な国債による借金は消滅する。
つまり、黒田日銀は政府の借金解消に強力に役立っている。

このアベノミックスと黒田総裁に反対するのは、愚かさ以外の何物でも無い。
すなわち、日銀には4人の愚か者が居る。


06. ピッコ 2014年11月30日 11:16:50 : ldyqn.PAmBFfI : 7amGjryvis
05. BMxeq67UWc の説明は正に『机上の経済学』というもの。 現実の経済(世の中で実際に起きていること)を知らない、頭の悪い『お坊ちゃま』経済学者の高橋洋一そっくり。

07. 2014年11月30日 12:37:30 : vVV5uuKk9U
迷路へと入る&返還、沈黙、生活、激論、そして出現するってのか?(追記=Read more)
http://songcatcher.blog.fc2.com/blog-entry-622.html

08. 2014年11月30日 17:52:04 : yy7D5jhcis
5対4で一応ちゃんと議論してます、というポーズだろ。
すべて出来合い、プロレス並の八百長談合の世界だろう。実態経済に金が流れない金融緩和は安倍政権=財務省のホントのご主人様である投資銀行様=ヘッジファンドへの(これも出来合いで絶対儲かる)投機資金の垂れ流しに過ぎないからだ。

09. 2014年12月01日 11:43:22 : mrnyzMmstI
日銀は1年に80兆円金を印刷してばら撒くと決めた
日銀が追加緩和をしなかったら消費税10%の延期を決めた時点で株が暴落しただろう
安倍にとっては選挙の大きな応援となったし、株が上がることで景気が良いと国民が錯覚する
実際は80兆円金をばら撒くのであるから、成長しない日本経済は円の価値が薄められることになる
つまり国民一人当たり60万円ずつ目減りすることと同じことになる
4人家族ならば240万円も目減りする
こんなことを例えば10年続けたら2400万円となり、ほとんどの日本人はスッテンテンとなる
カネはどこへ消えたのかと言えば、無駄が多い公共投資、株式市場、米国債権、米国株になっていくと言うことだ
馬鹿な国民は安倍と日銀をスッテンテンになるまで支持し、最期は地獄へ突き落とされるいことになる

日本など先進国は成熟社会に入ったのだ
成長は限られている
地球の資源もすでに枯渇してきている
生活を尊重した文化の薫り高い成熟社会を目指すべきなのだ


10. 毛沢山 2014年12月01日 13:21:22 : SehJQjCCtOcsg : mrnyzMmstI
09のつづき

上の例は一次関数としてみた場合の10年後の結果である
しかし過去の実体経済では必ずしも一次関数で変化しない
戦後の日本経済や一次大戦後のドイツなどいくつも実際に起きている
例えば1年間で2倍、2年間で4倍と倍々で増えるとしよう
10年後には何倍になるか
答えは1000倍以上である
時として指数関数的に経済は変化するのだ
これは予測不可能だし、そうなった場合は制御は効かない
安倍と日銀は国民の生活を大きな賭けとして扱い楽しんでいる
今後の日本経済の実態は誰にも予測不可能になってしまったのだ


11. 2014年12月02日 06:57:26 : jXbiWWJBCA



年寄りに無理をさせるとろくなことにならない Jカーブ効果期待も追加緩和も「体力」を無視している

2014年12月2日(火)  上野 泰也


 11月中旬、筆者の自宅からさほど離れていないところに新しいスーパーマーケットの店舗がオープンしたので、さっそく出向いてみた。1階が駐車場と駐輪場、2階が売り場になっている新築の建物で、入ってみてまず驚いたのが、2階に向かうエスカレーターが動く速度のあまりの遅さである。
 おそらく顧客のターゲットが高齢者層なので、転んでケガをしたりしないよう、あえてスピードを遅くしてあるのだろう。ちなみに、旧ソ連圏では地下鉄のエスカレーターがかなりの高速で動いており、高齢者でも普通に乗っている。モスクワとキエフで筆者も実体験したのだが、それに比べると「ウサギとカメ」といったところか。
 売り場は買い物がしやすいように考えられた配置になっていたが、ここでも高齢者向けの配慮が感じられた。たとえば、牛乳の売り場に内容量が少なめの(たとえば1リットルではなく900ミリリットルの)商品のコーナーが設けられている。そうした分量少なめの高齢者対応の商品提供は、パックご飯やお惣菜などでも広がっている。
 一般的には、高齢になると「胃袋が小さくなる」。筆者の身近な例では、父親が昔はお正月にお餅を4つ食べていたのだが、近年はその半分になっている。日本人のコメ消費量が減少基調をたどっている原因として、食生活の変化がまず挙げられることが多いが、実際には高齢化要因もかなりあるのではないか。
どんどん大きくなる新聞の活字
 高齢化対応で売り場の食品の分量が小さくなる一方で、着実に大きくなってきたものが1つある。それは新聞の活字である。
 調べてみると、新聞協会が1950年に1ページ15段の規格を定め、翌51年元旦から日本の新聞は一斉に15段×15文字になった。長く続いたこの規格に変化が生じたのは81年7月。全国紙(朝日)と地方紙(信濃毎日)が1行を14字に変えたのである。
 全国紙(一般紙)のみについてその後の主な動きを追うと、83年1月に毎日が1行を13字に変えて、4月に読売が追随した。89年2月には読売が1行を12字にし、91年2月にかけて毎日、産経、朝日が追随した。
 2000年になると、1ページ15段の制限が緩和されて、全国紙の大文字化が加速した。00年12月に読売が14段制を採用。01年4月には朝日と産経が15段のまま1行を11字に。5月には毎日が14段制を採用した上で、1行を11字に減らした。
 07年12月、毎日が14段から15段に戻しつつ、1行を10字に減らした。一方、08年3月には産経、朝日、読売が12段制を採用。これらの新聞は現在、12段×12字になっている。
 要するに、1951年から30年以上にわたり、新聞1ページの情報量は15段×15字=225字だったものが、現在では12段×12字=144字が標準的だということである。1ページ当たりの情報量の変化は▲81字、率にすると▲36%である<図>。
図:減少が続く新聞1ページの文字数(段組み×1行文字数)

注:全国紙(一般紙)のうちで一番少ないものを表示
(出所)筆者作成
 高齢になると小さい字が読みにくくなる。新聞各社は「字が小さくて読みにくい」という読者からの不満に応じる形で、活字を徐々に大きくしている。すると当然、1ページに収まる情報量は減る。
 少子化が進行し、しかも若者が新聞離れをすると、紙の新聞の読者はますます年齢の高い層に偏っていく。この人々の要望に応える形で、伝える情報量を減らしてでも、字を大きくしようという話になりやすい。
同じスペースから得られる情報は減少
 文庫本の活字も、昔に比べるとかなり大きくなった。自治体や銀行などでは、記入してもらう書類の字を大きくする動きがあるという。高齢化が着実に進んでいく中で、この先、新聞の活字はどこまで大きくなるのだろうか。マーケットエコノミストという商売柄、情報量が減少することは望んでいない筆者としては(自分は老眼があまり進んでいないこともあって)、少々心配である。
 足腰が弱ったり、胃袋が小さくなったり、老眼になって小さな字が読めなくなったりすることへの地道な対応を、企業が講じている。そうした日本の実態と、日経平均株価など日本の主要株価指数が水準を大きく切り上げたこととは、整合的でないように思われる。
 むろん、日本の企業は業種を問わず、海外収益の比率を引き上げる(国内需要への依存度を引き下げる)方向に着実に動いているので、日本の国内経済全体というマクロが悪くても、「ミクロの集合体」とも言うべき株価指数が上向くという逆行現象自体には説明をつけることが可能である。
 それでも、ETF(上場投資信託)の年間買い入れ額3倍増を含む日銀の追加緩和や、国内株式などリスク性資産の比率を大幅に引き上げた公的年金の基本ポートフォリオ見直しをはやしながらの思惑的な株価大幅高にはやはり行き過ぎ感があると、筆者はみている。
 株価は景気・企業業績の先行きを前倒しで織り込んで動こうとする性質があるため、景気の先行指標とされている。
 だが、株価が思惑的に(あるいは半ば人為的に)上昇した場合でも景気が先行き上向く可能性が高いかというと、けっしてそうではない。ミニバブル的に上昇した株価は、実体経済とのかい離が大きくなると、遅かれ早かれ反落するだろう。
 「Jカーブ」という言葉がある。経済・マーケットの世界では、為替(日本で円相場)の下落が進むと一定の時間差を経て輸出が伸びることを示すものだが、最近の日本経済ではこの「Jカーブ効果」がなかなか出てこない。その原因として、自動車メーカーの生産拠点の海外シフトなど、日本経済に生じたいくつかの構造変化を指摘することができる。
 筆者も少し前まで知らなかったのだが、実は「Jカーブ」という言葉には別の意味もある。医学の世界で指摘されている、アルコール摂取量と死亡率の関係がJの字のような曲線になる現象である。
2%のインフレ率はそもそも高望み
 お酒を大量に飲む人は死亡率が非常に高いのだが、まったく飲まない人も少し死亡率が高く、適量を飲む人の死亡率が最も低いという。何事も「ほどほどが肝心」ということなのだろう。
 「アベノミクス」の「第1の矢」である日銀の「量的・質的金融緩和」は、この「ほどほど」からはかけ離れた、大規模で実験的な金融緩和である。日本経済の実力からすればかなり高めの2%に設定された「物価安定の目標」を1日でも早く実現することを金科玉条にしており、この目的達成のためなら手段を選ばない、黒田日銀総裁は「何でもやる」と明言している。
 人口減・少子高齢化で「基礎体力」が弱る一方の日本経済でこうした政策を試すのはかなり危ういのではないかというのが、この緩和が始まった当初から抱き続けている筆者の問題意識である。
 「年寄りに無理をさせるとろくなことにならない」。この当たり前の事実に日銀が気付くのはいったい、いつのことなのだろうか。



上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141201/274496/?ST=print 



12. 2014年12月02日 06:58:44 : jXbiWWJBCA

今週のキーワード 真壁昭夫
【第356回】 2014年12月2日 真壁昭夫 [信州大学教授]
短期勝負の金融政策は魔法の杖ではない
アベノミクスは“日本病”の処方箋になり得るか?
アベノミクスは正しい処方箋だったか?
欧米にも波及する「日本病」の実態

“日本病”とは、一般的に政策当局が経済対策を打ち続けているにもかかわらず、経済活動の低迷が長期化していることを指す。その背景には、需要が不足がちであるため、どうしても供給が需要を上回ってしまうことがある。

 最近、“日本病”は本家であるわが国以外にも、2000年台中盤の大規模な不動産バブル崩壊後、欧州や米国など主要先進国に波及しているように見える。ということは、“日本病”はわが国経済だけが抱える経済現象ではないと言える。

 その“日本病”に対して、政策当局はアベノミクスという政策を処方した。アベノミクスが本格的に動き出し、約2年のときが過ぎた。その間、株価は2012年11月の底値から約2倍に駆け上がった。

 また、多くの企業が苦しめられた円高は終焉し、1ドル=117円台の円安になっている。それらの要素を見ると、短期的には、アベノミクスは“日本病”の正しい処方箋だったと言えるかもしれない。

 一方、アベノミクスの肝である、規制緩和や制度改革などによる成長戦略の進捗が遅れている。それでは、社会全体の効率化や新しい需要の創出が、期待されたほど進まないのは当然と言えるだろう。

 現在のように、日銀の緊急避難的な金融政策に依存し続けると、最悪のケースでは、需要の回復が進まず景気回復しない一方、日銀の信用力が低下し円の価値が急激に低下する、一種のスタグフレーションに落ちこむことも想定される。

 わが国経済の動きを振り返ると、1980年代後半、株式や不動産を中心にした不動産バブルが発生し、未曽有の好景気を謳歌した。1990年代初頭、バブルの崩壊に伴い、わが国経済は多額の不良債権処理と経済活動の低下に苦しむことになる。

 わが国は足かけ十余年の歳月をかけ、2002年3月期に天文学的金額の不良債権の処理に目途を付けることができた。その背景には、わが国の潤沢な個人金融資産の蓄積があった。

 国が国債発行で家計部門から資金を借り、その資金を使って公的に金融機関の不良債権処理を促進した。結果的に、今までのところ国の信用力が大きく毀損する事態は避けられている。 

不良債権処理は終わったものの
経済活動が大きく低下した誤算

 ところが、民間部門がバブルの学習効果もあり、活発な経済活動を控える行動を取ることになってしまった。家計はお金を使わず倹約に勤しみ、企業も専守防衛に努め、新たな事業展開に二の足を踏むようになってしまった。それにもう1つ、少子高齢化の加速というマイナス要素が重なった。

 それとほぼ同じことが欧米諸国でも起きた。2000年台中盤、世界的に大規模な不動産バブルが発生し、経済活動は大きく上昇した。サブプライム問題からリーマンショックへと続く過程で、欧米諸国も多額の不良債権処理に苦慮し、経済活動は大きく低下した。

 米国はようやく不良債権処理に目途が立ち、契機は緩やかに回復基調をたどり始めているものの、ユーロ圏の一部の諸国はいまだに不良債権処理が終了していない。大手銀行のストレステストが、ようやく終了した段階だ。

 それに加えて、ウクライナ問題に伴う経済制裁の影響もあり、ユーロ圏経済は景気低迷とデフレへの懸念に苦慮する状況が続いている。わが国と同様に人口問題を抱える欧州諸国は、“日本病”への入口にさしかかっていると言える。

 そうした“日本病”に対する処方箋として、主要先進国がとった政策手法は緊急避難的な金融緩和策の実施だ。中央銀行が勇敢に通貨を増発して、それを市中に注入したのである。多くの主要国先進国の財政状況を見ると、金融政策に頼るしか短期的に効果を上げられる手法が見当たらなかった。

 問題は、思い切った金融緩和策で経済回復が可能か否かだ。おそらく短期的には「イエス」だろう。世の中でお金がじゃぶじゃぶに余るため、お金を使ってモノを買おうという人は増える。

 余ったお金の一部が株式や不動産などの市場に流れ込み、株価や不動産の価格を押し上げることが考えられる。資産価格が上昇すると、“資産効果”の経路を通して消費を活性化する可能もある。

 金融緩和策によって金利が低下するため、自国通貨が低下して、海外市場向けの輸出が刺激される。また、自国通貨の下落は輸入物価を押し上げる可能性が高く、デフレに悩まされる国にとっては重要なプラス要因になる。

金融政策で景気の足腰は強まるか?
日本とは異なる米国の景気回復経路

 ただし、基本的に金融政策で支えられるのは短期的な条件である。お金が余って株価を押し上げたとしても、企業業績がついて来れなければ、いずれ株価は下落するはずだ。また、いくらお金があっても、欲しいモノがなければ消費の拡大は続かない。

 中長期的に考えると、社会全体の変化や企業のイノベーションによる、今までなかった製品の開発や新しい需要の創出などが、必要になることは言うまでもない。

 米国のケースでは、IT関連などイノベーションが起きやすい社会環境があることに加えて、人口が今でも増え続けていることもあり、徐々に景気回復の道を歩むことが可能になっている。

 一方、社会環境として少子高齢化が進み、イノベーションに対する盛り上がりが見えにくいわが国やユーロ圏諸国では、事情が異なる。ただ金融政策に頼る政策手法では、本当の意味での経済活動の拡大を目指すことは難しい。

 特にわが国のケースでは、人口減少・少子高齢化と地方経済の衰退の問題が絡み合っている。金融政策によってメリットを受けているのは、主に輸出部門や海外展開を行った大企業だ。そうした企業の多くは都市圏に集中している。

 株価上昇の恩恵を受けるのは株式を保有している株主で、株主の多くは都市部在住が多いという。不動産価格が下げ止まりから上昇に転じたのも、東京・名古屋・大阪など一部の都市圏に限られている。多くの地方都市では、不動産の取引すらも減少しているようだ。

金融政策は“魔法の杖”ではない
アベノミクス・リスクの顕在化懸念

 わが国が抱える“日本病”を治すためには、規制緩和などの改革に加えて、少子化対策として子どもを持つことに重要なインセンティブを付与する税制度の改革など、様々な社会政策が必要になる。それは短期間にできるものではない。

 むしろ、金融政策を“魔法の杖”のように誤解することは大きなリスクを伴う。日銀が多額の資金を供給し続けると、いずれ日銀のバランスシートが膨らみすぎて、信用力が低下することは避けられないはずだ。

 そのときには円が信認を失う。為替市場で円が急落し、輸入物価がさらに高騰してインフレが高進するかもしれない。その場合、経済活動が活発化して景気が回復していればよいが、景気の低迷が続く中で物価だけが上昇する、いわゆるスタグフレーションに落ちこむことが最悪のシナリオだ。

 また、お金が余って貨幣価値が下落する場合、株式や不動産の市場でバブルが発生する恐れも出て来る。そうした経済状況に耐えられる人は良いのだが、年金生活者などは耐えるのが難しいだろう。そうなると、多くの人にとって日本は住みにくい国になってしまう。

 そうしたリスクを顕在化させないためにも、金融政策に過度に依存することは避けるべきだ。今のわが国に関して、1つの政策で全てが解決できることはありえない。いくつかの重要な政策の合わせ技で、少しずつ問題を解決するより方法はない。
http://diamond.jp/articles/-/63008


13. 2014年12月03日 06:54:36 : jXbiWWJBCA

【第15回】 2014年12月3日 週刊ダイヤモンド編集部
量的緩和を回避したいECB ドル上昇まで時間を稼げるか「週刊ダイヤモンド」2014年6月28日号より特別再録・公開

12月5日、ECB(欧州中央銀行)の政策金利を決定する政策理事会が開かれる。日米欧の中央銀行の中でも、いまその去就が最も注目されているのがECBだ。なぜなら、景気と物価の低迷という“W”低迷に悩まされながらも、いまだ唯一「量的緩和(QE)」政策を採用していないからだ。FRB(米連邦準備制度理事会)は、10月29日にQE3(量的緩和第3弾)を終了。一方、日銀は10月末に前代未聞の追加緩和を発表した。QE3終了はユーロ安要因だが、日銀の追加緩和はユーロ高要因。W低迷に悩むECBとしては、ユーロ安が望ましい。11月の理事会では政策金利は引き下げたが、QEには踏み込まなかった。

さて12月はどうか。政策金利ではマイナス金利まで採用しており、残る手段はQEなどに限られている。だが、ECBが対象とするユーロ圏の国々は経済状況も財政状況も異なり、QEに踏み込みにくいという事情がある。それは何か。今年6月に「週刊ダイヤモンド」に掲載した記事「『日本化』するユーロ圏』が、そのあたりの背景と課題を余すところなく伝えている。これからのECBの行動を考える上で、非常に参考となるので、前回に続きDOL上で再掲してお伝えする。
6月5日の追加緩和パッケージで、いよいよ“弾切れ”に陥ったECB。最後に残されたカードは量的緩和(QE)だが、ECBにはこれに踏み込みにくい特殊な事情がある。
ポルトガルの首都リスボンの西に隣接する世界遺産都市シントラ。大西洋が望める山間の町でECB主催のフォーラムが催されたのは、追加緩和前の5月末のことだった。ヴァスコ・ダ・ガマによるインド航路開拓を決定したこの地を初の開催地に選んだのは、これからECBが突入するかもしれない“大航海時代(QEステージ)”を暗示しているからだろうか。 
世界中からここに集まって議論を戦わせた中央銀行関係者や学者、エコノミストらの中で、ECBに対して“大航海”に出るべきだと主張した筆頭は、米プリンストン大学のクルーグマン教授だ。 
「われわれは皆、日本が1990年代に直面したような状況にある」。同教授は、利下げカードの枚数がゼロになった後、停滞する経済をECBが傍観するだけにとどまるのはまずい、と懸念を表明した。 
主催者のドラギ総裁も、傍観が招き得るリスクに理解を示した。「過度の低インフレがあまりにも長く続く状況を許すつもりはない」。日本ではこれが長引いたために人々のデフレマインドが定着し、デフレからの脱却を困難にした──中央銀行家の間では、そう認識されているからだ。 
ただ悩ましいのは、一足先にQEという名の“海図なき航海”に出た米国や日本が、まだ無事に帰還していないこと。勇猛果敢に航海に出たはいいが、経済政策の運営当局である以上、“沈没”すればただの無責任である。 
「QEは後戻りしない」。バイトマン・ドイツ連銀総裁は4月、そう言ってQE導入の期待をけん制していた。中央銀行が大量の金融資産を買い入れることで人為的に、かつ長期にわたって実質金利を抑えるというのは、効果はあるのかもしれないが、結局は出口の際に効果をひっくり返すほどのコスト(金利急騰や財政による損失補填リスク)を支払う可能性がある。 
その本質は、政府の財務状況を悪化させて需要創出を狙うという点で、金融政策の範疇を超えた「財政政策」である。バイトマン総裁が「われわれの責務の限界も考慮しなければならない」と主張しているのもそのためだ。 
もっとも日米とは異なり、ECBにはそもそもQEに踏み込みにくい特殊な事情がある。FRB(米連邦準備制度理事会)や日本銀行に対抗して通貨安を狙うなら「量」が勝負になるが、ことECBに限れば「バランスシート拡大競争に巻き込まれると弱い」(山脇貴史・JPモルガン証券チーフ債券ストラテジスト)のだ。 
ドイツ国債なら
7割の購入が必要
ハードル高いQE
というのもユーロ圏では、量を稼ぐために「何を」「どれだけ」買うかが問題になる。FRBや日銀に本気で対抗するなら、「GDP比で20〜40%規模、金額にして2兆〜4兆ユーロの買い入れが必要になる」(加藤出・東短リサーチ社長)。そうなると民間資産だけでは足りず、国債を買わざるを得ない。 
では、どの国の国債を購入するか。野村総合研究所は、こうしたECBの国債バスケット買いのシミュレーションを早くも始めている(表参照)。まずトータル額については、2000億ユーロ(証券市場プログラム程度)、5000億ユーロ(LTRO1回分程度)、1兆ユーロ(ECB総資産の減少分回復程度)の3パターンを想定している。 
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次に、これを各国にどう割り振るかだ。最近、ECBのプラート理事と面談したある金融関係者によれば、同氏は発行残高(市場規模)に応じて買うことはできる、との認識を示したという。先の表では「ケース1」に当たる。 
これを見ると、トータルで1兆ユーロを購入した場合、ドイツ国債では新規発行額の実に7割強を購入する計算になる。どこかで見たことのある数字だが、これは日銀の異次元緩和に近い比率だ。 
しかしドイツ当局には、ハイパーインフレの教訓が今も根強く残る。「財政ファイナンスに最も懸念を表明しているドイツが、これを許すのか」 (井上哲也・野村総合研究所金融ITイノベーション研究部長)という気がしてくる。
しかも、である。ケース1の発行残高に応じた割り振りだと、「国債を発行したもの勝ち」となる側面がある。それ故エコノミストの間では、ECBへの出資ベースを予想する向きが多い。これが先の表の「ケース2」に当たるが、これだと1兆ユーロ購入する際のドイツ国債購入額は、対発行額でケース1を上回る100%強に膨らむのだ。いずれにせよ、長期金利を押し下げなくてもいいドイツ国債が大量に買われることになる。 
こうしたオペレーション上の制約があるため、ECBは焦点を絞った小規模なQEから始める予定だ。6月の理事会では、資産担保証券(ABS)の購入の準備に入ることを決めた。その目的は、銀行が保有する貸出債権を証券化し、これをECBが買い取ることで貸し出しを増やすことにある。 
欧州の信用仲介は、日本と同様に間接金融が中心。ユーロ圏で深刻なのは銀行貸し出しが出ないことであり、「24カ月連続で前年割れ」(唐鎌氏)という状況にある(図参照)。為替市場に働き掛けるのではなく、まずは伝統的な銀行チャネルを通じた効果波及を狙おうというわけだ。 
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QE導入を左右する
FRBの利上げ動向
ドルは今後上がるか
「恐らく3〜4四半期程度の時間がかかる見通しだ」 
ドラギ総裁は6月の追加緩和パッケージを発表した際、その効果が表れるまでには時間がかかるとの見解を示した。逆に言えば、大規模なQEの導入は、少なくとも9カ月後の2015年3月まではない、とのシグナルとも取れる。 
ただ、その間にも低インフレが続くようなら、ECBが最後の頼みの綱としている「人々のインフレ期待」がじわじわと下がってくる可能性はある(図参照)。今はこれが物価目標の2%を維持しているが、2%を割ってくれば黄信号だ。 
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現在、米国は景気回復とQE縮小という対照的な状況下にある。FRBが利上げに近づくことでドルが順調に上昇していけば、対ドルでユーロは下落していくはずだ。ECBにしてみれば、6月の追加緩和は大規模QE実施のハードルをクリアするまでの、望むらくはドルの上昇によってこれを回避するための「時間稼ぎ」(岸田英樹・野村證券シニアエコノミスト)という位置付けだろう。 
「ECBは他の中銀より出口はずっと容易だ」。昨年末に胸を張ったドラギ総裁だが、QEに踏み切るのか
Photo:REUTERS/アフロ
6月18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で示された利上げ見通しは従来と変わらないものだったが、米経済の回復の足取りはこのところ重い。利上げが先延ばしされれば、ECBのQE導入も現実味が増す。 
かくして先進国が等しく“日本化”していくようなら、各国中銀はQEがもたらす通貨安によって他国の需要を奪い合う。そうした“通貨戦争”は、悲惨な結果を世界にもたらしかねない。今求められているのは、G20の原則強化といった国際協調、“戦争”を「回避するための枠組み」(クーレECB理事)である。 
左からドラギECB総裁、貸出支援策を導入したキングBOE前総裁、白川方明・日銀前総裁
Photo:REUTERS/アフロ
【Column】
“パイオニア”の日銀に追随
ECBも導入した貸出支援策

加藤 出(東短リサーチ社長)

6月5日にECBが発表した追加緩和パッケージ。中でも市場にインパクトを与えたのは「TLTRO」なる貸出支援策だった。その中身を見ると、日銀から学んだ様子が浮かび上がる。 

TLTRO。慣れないと読みにくい頭文字だが、ドラギ総裁も記者会見では発音しにくそうだった。とはいえ、これがデフレ阻止のためにECBが6月5日に採用した追加緩和策の中心ツールだった。 

TLTROとは、ターゲット(目標)を絞ってECBが金融機関に期間4年程度の低利の資金を貸し出す政策である。それにより、金融機関が企業や個人への貸し出しを増やすことが期待されている。 

手始めに今年9月と12月に実施されるTLTROのオペでは、金融機関は4月末時点の貸し出し残高(公的部門向けを除く)に7%を掛けた金額までECBに借り入れを申し込むことができる。その後、2016年6月まで四半期毎に行われるオペでは、金融機関は貸し出しを追加で増加させた額(住宅ローン貸し出しを除く)の3倍まで、資金を借りることができる。 

これは日本の市場関係者にとって、どこかで聞いたような話である。実はTLTROは、日本銀行が白川方明・前総裁時代の10年6月から始めた「貸出支援制度」に基本的構造が酷似しているのだ。実際、ECBの事務方は、日銀の事務方に根掘り葉掘り尋ねながらスキームをつくり上げたようだ。 

ECBはイングランド銀行(BOE)が12年7月に導入した貸出支援策(FLSと呼ばれる)も参考にした。もっとも、BOEのその制度も、日銀の制度から発想を得たとみてよいだろう。 

こうして見ると、日銀は貸出支援策における「先駆者」ということになる。なぜ英欧が追随したのかといえば、結局、中央銀行が金融機関に単純に大量に資金を供給しても、そこから先に資金が流れていかない、という問題に皆が直面したからである。金融機関が厳しい金融規制の下であっても少しでも貸し出しを増やしたくなるように、「ニンジン」を垂らしてみせたのがそれらの貸し出し制度だといえる。 

BOEとECBが近年相次いで採用したフォワードガイダンスも、日銀の時間軸政策の模倣といえる。超低金利の継続を市場に予想させて長期金利を低下させるこの政策を、日銀は1999年から採用していた。金利引き下げ余地がなくなってくると、中央銀行は同ガイダンスを採用したくなる。経済上の悩みが似てくると、先行事例である日本が参考にされるというパターンが繰り返されてきた。 

日銀には、さらにもう一つの「先駆者」の側面がある。超低金利政策で90年代半ばに預金金利がゼロ%近くに下がったとき、高齢者団体が日銀本店前で「金利を上げろー!」とシュプレヒコールを上げていた。BOEも10年頃に世論から「銀行救済のツケを預金者に回すのか」と激しく攻撃された。 

そして、今、ECBがそういった批判の渦中にいる。6月5日の利下げ決定後、ドイツを中心とする預金者から怒りが湧き起こった。「なぜ南欧の銀行のために、こんな低金利になるのか?」。現在、ECBのホームページには、ドラギ総裁の異例の説明ビデオが5カ国語(字幕)で掲載されている。 

とはいえ、日本のようにデフレが長期化すれば、ゼロ%でも実質金利はプラスになり、預金者の怒りは表面的には収まることになる。しかし、それはECBにとっては避けたい展開だろう。 
http://diamond.jp/articles/-/63041 


14. 2014年12月03日 08:08:05 : jXbiWWJBCA

「景気失速の主犯〜アベノミクス再浮上へ「新・3本の矢」」
国も企業もすがった張りぼての神

インフレ期待を本物にする「1%の壁」

2014年12月3日(水)  林 英樹

 「当初は行き過ぎたインフレを心配していましたが、杞憂に終わりましたね」

 全国約300店のスーパーマーケットのPOS(販売時点情報管理)データから店頭価格を毎日算出する「日経・東大日次物価指数」。指数を開発した東京大学の渡辺努教授はこう話し、肩を落とした。

 物価水準を算出する指数では、総務省が毎月発表する全国消費者物価指数(CPI)が有名だ。だが、CPIでは1週間以内に価格を下げて戻すような「特売」のデータは反映されない。さらに、全体量の把握を重視しており、例えばバターから割安なマーガリンに買い替えるような節約も別々の消費者行動として記録される。東大物価指数はこれらの課題を解決し、「リアルな消費」に近い行動を数値化するのに成功した。

 東大物価指数によると、2013年初頭から徐々にマイナス幅が改善し、数値は上昇傾向を続けてきた。2014年4月の8%への消費増税直後には、対象商品の税込み価格が3.5%台を突破。「増税分を非常にうまく価格転嫁できたという印象を持った」という渡辺教授。当時はむしろインフレの過熱を懸念していた。

物価下落のスパイラル

 だが、その動きはすぐに失速した。下のグラフを見てほしい。スーパー売上高の前年同日比増減を見ると、4月上旬から大きく落ち込み、秋ごろまでマイナス傾向が続いている。それに呼応するように、税込み価格もじりじりと下落。商品が売れないので特売や値下げを繰り返し、全体の商品価格が下がるという負のスパイラルに陥った。

税込み物価水準とスーパーの売上高増減(前年同日比)

税込み物価水準とスーパーの売上高増減(前年同日比)
 1997年の5%への引き上げ時と比較すれば、その違いは顕著だ。増税直後に指数は落ちたが、5月には再びプラスに転じた。同年末から再び大きく落ち込んだが、それはアジア通貨危機や金融ショックの影響が波及したためだった。そうした状況を踏まえれば、足元まで物価低迷が続く2014年は、「失策の烙印」を押された1997年よりひどい状況と言えるだろう。

 その原因はどこにあったのか。渡辺教授は「国も企業も消費者のインフレ期待を過信していた」点を指摘する。

 日銀が10月に公表した「生活意識に関するアンケート調査」。現在の物価を1年前と比べると、という質問に対し、9月時点では全体の80%が「かなり上がった」「少し上がった」と答えた。6月は71%、3月には69%だったことを考えれば、表面上は大幅に増えている。こうした情報などを根拠に、国は順調にデフレ解消が進んでいるとの姿勢を崩さなかった。

スーパー・小売りも当初は強気

 だが、一方で物価上昇分を差し引いた実質所得は目減りしている。経済学では通常、インフレ期待が高いと、消費を前倒しすると考えられているが、多くの消費者が「実生活では今までと同じようにデフレが続く」と考えた結果、買い控えに走った。

 企業側も消費者のインフレ期待に過度な期待をかけていた節がある。

 一部のスーパーや小売りでは2〜3月にかけて、多くの商品で増税分を前倒しで価格に転嫁した。前述したように、4月の増税直後には東大物価指数で増税分の3%以上の物価上昇が起きた。いずれも「消費意欲は根強い」という企業の幻想が、強気の姿勢を導き出したと言える。

 では、このままデフレに逆戻りするのだろうか。渡辺教授によると、1997年の場合、約9カ月後の1998年1月にCPIと東大物価指数の差が埋まり、数字が並んだという。日銀の追加緩和と消費税10%引き上げ時期の延長決定が追い風となり、今回も同様のことが起きる可能性がある。

 東大物価指数の税抜き価格が前年同日比で1%改善すれば、CPIと同水準に並ぶ。渡辺氏は「円安や株高も多少は物価にプラスの影響を与えてくれるのではないか」と指摘。数カ月後に2つの指数が並ぶ可能性を示唆した。

 あたかも神のように消費者のインフレ期待を信じ切った国と企業。張りぼてを本物に変えるには、まずはこの「1%の壁」をぶち壊すところから始める必要があるだろう。

このコラムについて
景気失速の主犯〜アベノミクス再浮上へ「新・3本の矢」

高揚する金融市場は実体経済を先取りしているのか、「あだ花」で終わるのか――。日銀の追加金融緩和による株高効果が続く中、安倍晋三首相は消費増税の先送りを決断。国民の信を問うとして、衆院解散・総選挙に踏み切った。期待感をあおり、経済を引き上げるアベノミクスだが、市場と実体の差は一向に埋まらない。街角の景況感は経済指標の数値以上に厳しく、頼みの海外需要は視界不良が続く。円安・株高が民間投資の喚起、そして賃金上昇に結びつかないのはなぜか。景気回復を阻む要因を探る中で、「アベノミクス景気」再浮上のヒントが見えてきた。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141202/274583/?ST=print


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