04. 2014年12月02日 07:17:15
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ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦 【第8回】 2014年12月2日 北野幸伯 [国際関係アナリスト] 米中ロ“三角関係”の結末はいかに 〜プーチンとオバマが、習近平の「愛」を奪いあう? ロシアの「クリミア併合」から激化した米ロ対立。両国が争うのを静観し、喜んでいるのが、米国没落後の覇権国家を狙う中国だ。そして、米ロ対立は情けない結果も生んでいる。覇権国家の長・オバマと、剛腕マッチョのプーチンが、習近平に「擦り寄っていく」という状況になっているのだ。今回は、米中ロ三国関係の現状と、今後の見通しを考える。実際の戦闘こそしていないが 米ロは「戦争中」という現実 選挙を控えて忙しい日本人は気づいていないが、世界では「戦争」が行われている。 欧米対「イスラム国」も戦争には違いない。しかし、世界での主な戦いは、米国対ロシアだ。これは、記事を面白くするための誇張ではない。実際、ロシアのメディアでは、「情報戦争」「経済戦争」など、「戦争」という言葉が毎日飛び交っている。どういうことだろう? 1.情報戦 米国は、世界中で「プーチンは悪魔である!」「現代のヒトラーである!」というプロパガンダを展開している。情報戦に弱いロシアは、仕方なく、国内を固めている。ロシアのニュースを見ると、そのほとんどが「米国批判」「親米ウクライナ政権批判」「ウクライナ軍の残虐行為」などで占められている。 それを見てロシア人は、「米国はなんという極悪国家なのだろう」「ウクライナ新政府は、なんと愚かなのだろう」「ウクライナ軍は、なんと残酷なのだろう」などと憤っている。そして、「プーチンがんばれ!」という結論になるのだ。プーチンの支持率は現在、なんと86%だ(!)。 2.経済戦 ご存じのように、欧米は、ロシアに経済制裁を課している(そして、日本もそれにつきあわされている)。経済制裁の結果、そして原油価格暴落の影響もあり、ロシアルーブルは、史上最安値を更新しつづけている。 2013年初の1ドル=30ルーブルから50%下落して、現在は45ルーブルになった。ロシア国民にとって、最大の不満は、ルーブル下落で起こる「インフレ」である。そして、ロシアも、ささやかながら「報復制裁」を実施している。「欧米からの食品輸入制限」がそれだ。この措置は、ロシアへの輸出で潤ってきた、スペイン、ギリシャ、オランダ、バルト三国、フィンランドなどの農業に大きな打撃を与えている。 3.実際の戦闘 米国とロシアは、もちろん実際の戦闘はしていない。しかし、「代理戦争」は行われている。米国の利益を代表するウクライナ・ポロシェンコ政府vsロシアの利益を代表するウクライナ東部「親ロシア派」の戦争(内戦)だ。 ウクライナ政府と親ロシア派は現在、「停戦」状態にある。しかし、ウクライナ軍も親ロシア派も、「新たな戦争」に備えて着々と準備を進めており、いつ大規模な戦闘が再開されてもおかしくない。 このように米国とロシアは、戦っている。そして、戦争に勝つために、いつの時代も重要なのが「仲間を増やすこと」だ。 たとえば、英国とドイツは、第1次大戦、第2次大戦で戦った。第1次大戦で英国は、米国とロシアを味方につけて戦い、ドイツに勝利した。第2次大戦で同国は、またもや米国、そしてソ連を味方にして戦い、ドイツ(そして日本)に勝利した。 日本の例をあげれば、日ロ戦争時、わが国は、(日英同盟による)同盟国で当時覇権国だった英国、そして米国から支援をうけてロシアと戦った。これらの例からわかるように、「どの国を味方につけるか?」は、非常に重要なのだ。 そして、米ロは現在、「中国を味方にしたい!」と熱望しているのだとか。 プーチンとオバマ、習近平の“三角関係” APEC首脳会議の舞台裏 北京で11月10〜11日に開催された、APEC首脳会議。日本では、「安倍総理と握手した習近平が微笑まなかった」「オバマと習は、長時間共に過ごし、米中関係は改善された」などと報道されていた。 では、ロシアで「北京APEC」は、どのように報じられたのだろうか?なんと、「中国は、ロシアと米国どっちの味方?」という視点で報道されていたのだ。 ローカルな話で恐縮だが、ロシア「テレビツェントル」で毎週土曜日21時から放送されている「ポスト・スクリプトン」(略してPS)は、クレムリンの本音を知るのにとても役に立つ。 「国際関係、政治経済分析番組」だが、司会のプシコフ氏はロシア下院国際問題委員会の議長。政権にとても近い有力政治家が世界情勢を語るのだから、この番組で流されている情報は、「プーチンの本音」に近いと思われる。その「PS」がどう報じていたか見てみよう。(放送日は、11月15日) 「北京APECで、ロ米中の『三角関係』に動きが見られた」 「ロシアと中国の関係はますます近くなり、中国と米国の関係は、ますます遠くなった。」 日本のメディアは、「米中関係は良好になった」と報じたが、ロシアから見ると、「米中関係は悪くなっている」らしい。ここでプシコフ氏は、米ワシントン・タイムズの記事を読みあげた。 「ロシアと米国は、中国の『主要経済パートナーの座』を争っている。しかし、APECの結果を見るに、ロシアは米国に勝っている」 「ロシアは米国に勝っている」というのは、「中国は、米国よりもロシアを愛している」という意味である。 「APECで習は、プーチンと並んで歩くことを好み、オバマは『脇役』しか与えられなかった」 なにか、キンペイさんという「イケメン」を、プー子とオバ子の二人がとりあっているようなイメージがわいてくる。 「なぜオバマは、北京にナーバスにやってきて、ナーバスに帰国したのか?」 「習近平は、首脳たちとのグループ写真で、中央でプーチンの隣に立ち、オバマを『脇』に立たせた」 「集合写真」を見ると確かに、プーチンと習は、真ん中で二人並んで立っている。オバマは、かなり脇に立っている。「小学生の見栄の張り合いか!?」と突っ込みたくなるが、プシコフ氏にいわせると、「面子を重んじる中国は、こういうところで、関係の『近さ』『遠さ』を見せつける」のだとか。 なぜ中国は、ロシアに近づくのか?「PS」の結論は、「中国は、明らかにロシアの味方であり、米国とは距離をとっている」だった。 プシコフ氏の解説によれば結局、中国がロシアに接近しているのは、ロシアの「石油・ガス」を必要としているからだ。中国は、「いずれ米国と覇権を争うことになる」と自覚している。その際、米国は「ライバル中国に勝つために」、どのような手段をとるだろうか?米中ともに「核兵器大国」であることから、「直接戦争」になることは考えにくい。しかし、米国が今ロシアにしかけているような「情報戦」「経済戦」を展開することは十分想定できる。 「経済戦」でもっとも有効なのはなんだろう? 日本はかつて、米国、英国、中国、オランダによる、「石油禁輸措置」(いわゆるABCD包囲網)によって勝ち目のない戦争に誘導された。米国が中国経済を破壊しようとすれば、この作戦が効果的である。 つまり、中東産油国を脅迫し、中国への原油輸出を止めさせてしまうのだ。そうすれば、中国経済は動かなくなり、米国は勝利することができる。中国は、米国の戦略を見こしているので、陸続きで米国が邪魔できないロシアや中央アジア諸国(カザフスタン、トルクメニスタンなど)との関係を深めている。さらに、中国が南シナ海や東シナ海への野心をむき出しにしているのも、資源確保が目的である(南シナ海は、天然資源の宝庫)。 そして、今年3月、ロシアはウクライナ問題で、欧米とケンカした。欧州はロシアにとって、天然ガスの最大顧客である。その欧州が、「ロシアからの資源輸入はリスクが大きすぎる。輸入元を多角化しなければ」などと言い始めた。 困ったロシアは、「いくらでも買いますよ!」という中国に接近し、結局両国は「天然ガス供給30年契約」を締結した。(2014年5月21日) 日本では、「ロシアと中国は、お互いを信用していないので、決して強固な同盟関係は築けない」という人が多い。確かに、ロシア人のほとんどは、中国を尊敬していないし、しばしば嫌っている。しかし、「実利」に基づいた関係は強いのだ。 なぜ中国は、米国を遠ざけるのか? 習近平が米国を嫌う3つの理由 では、米中関係はどうだろうか? ロシアが今年3月にクリミアを併合した後、中国は「ロシア支持」の立場を明確にした。もちろん「対ロ制裁」にも加わらない。米国は、この中国の態度が不満で、ロシアばかりでなく中国に対しても強気になった。 たとえば、オバマが今年4月に訪日した際発表された「日米共同声明」では、米国が日本を防衛する義務は、「尖閣諸島を含め、日本の施政の下にある全ての領域に及ぶ」と明記され、中国を大いに怒らせた。 では、なぜ今になって、オバマは中国との和解に動いたのか?おそらく、「中間選挙の大敗」が影響しているのだろう。この選挙で、共和党は上下院で過半数を得た。そして、民主党のオバマは、はやくも「レームダック化」し、著しく政治力が衰えた。 これでは、中ロと同時に戦うことはできない。だから、中ロいずれかと和解する必要がでてきた。ロシアは、クリミアを併合した「犯人」なので和解できない。それで、中国との関係を改善したくなったのだろう。 しかし、プシコフ氏によると、「和解」はかなわなかったようだ。「PS」は、その理由について、以下のように解説した。 1.米中の案件は「小さい」 米中は、APEC開催期間中、「CO2排出量削減」「中国人のビザ発給要件緩和」「突発的軍事衝突回避システムの構築」などで合意した。しかし、中ロの「天然ガス供給30年!」という経済、安保大型案件に比べると、米ロの合意はなんとも「小さい」。 2.米国は「うるさい」 米国は中国に対し、「サイバースパイ」「人民元管理」「人権侵害」などで批判をつづけている(日本にとってはありがたいが)。 中国は、これ(批判)についてずっと「苦々しく」思ってきたが、耐えてきた。しかし、十分力を蓄えたので、「そろそろ米国のいうことなど無視してもよくなった」と感じている。 3.習近平は、「香港デモ」の後ろに米国がいると信じている 日本では「陰謀論」に分類される話だが、ロシアでは、「香港デモの黒幕は米国」が「定説」になっている。プシコフ氏によると、習近平も、それを確信しているのだとか(真偽は不明)。 いずれにしても、中国には、米国よりもロシアを大事にしたい理由があるわけだ。 米ロは疲弊し、中国が漁夫の利を得る? もつれた三角関係の行く末 先ほど、英国とドイツの戦いの例をあげた。ところで、当時の覇権国家英国は、ドイツに2回勝利したものの、戦争の過程で疲弊し、没落した。英独戦争で本当に勝利したのは、英国ではなく、その後覇権をつかんだ米国とソ連だったのだ。 その米国は、ロシア(=ソ連)との戦い(=冷戦)に1度勝利した。ところが、ロシアは復活し、またもや米国に立ち向かってきた(第1次大戦で負けたドイツが、再び英国に逆らったように)。 米国は現在、再度ロシアを破滅させようと必死である。ロシアも、「リベンジを果たそう!」と必死。そして、米ロの戦いでもっとも得をしているのは、「何もしないで覇権が転がってくるのを待つ中国」なのだ。米ロは戦い、疲弊し、中国は自動的に浮上していく。あたかも、英独の戦いで、米国が浮上したように。 「米ロが争うのは愚かだ!」と指摘する米国リアリストは多い。ミアシャイマー・シカゴ大学教授、ウォルト・ハーバード大学教授、キッシンジャー元国務長官、ゲーツ元国防長官などが、「ロシアと和解するべきだ」と主張している。彼らは、米国にとって真の脅威は、ロシアでなく中国であることを知っている(ちなみにロシアのGDPは、中国の4.5分の1しかない)。 彼らの声をオバマが聞くことを願うが、可能性は薄い。せめて次の大統領は、「リアリスト」であってほしい。 http://diamond.jp/articles/-/62987 2014年12月2日 週刊ダイヤモンド編集部 ユーロ高で走る激痛 欧州経済のデフレ化懸念 週刊ダイヤモンド アーカイブズ 「週刊ダイヤモンド」2014年6月28日号より特別再録・公開 12月5日、ECB(欧州中央銀行)の政策金利を決定する政策理事会が開かれる。日米欧の中央銀行の中でも、いまその去就が最も注目されているのがECBだ。なぜなら、景気と物価の低迷という“W”低迷に悩まされながらも、いまだ唯一「量的緩和(QE)」政策を採用していないからだ。FRB(米連邦準備制度理事会)は、10月29日にQE3(量的緩和第3弾)を終了。一方、日銀は10月末に前代未聞の追加緩和を発表した。QE3終了はユーロ安要因だが、日銀の追加緩和はユーロ高要因。W低迷に悩むECBとしては、ユーロ安が望ましい。11月の理事会では政策金利は引き下げたが、QEには踏み込まなかった。 さて12月はどうか。政策金利ではマイナス金利まで採用しており、残る手段はQEなどに限られている。だが、ECBが対象とするユーロ圏の国々は経済状況も財政状況も異なり、QEに踏み込みにくいという事情がある。それは何か。今年6月に「週刊ダイヤモンド」に掲載した記事「『日本化』するユーロ圏』が、そのあたりの背景と課題を余すところなく伝えている。これからのECBの行動を考える上で、非常に参考となるので、2回にわたってDOL上で再掲してお伝えする。 ECB(欧州中央銀行)が、長期停滞に陥る“日本化”のイメージ払拭に躍起になっている。バブル崩壊後の日本と同様、通貨高と低インフレの長期化に苦しんでいるのだ。 ◆前哨戦◆ 海を越え、時を越えたユーロ圏で「バブル崩壊後の日本」について質問が出たのは、ECB(欧州中央銀行)がサプライズ利下げに踏み切った2013年11月7日のことだった。 「ユーロ圏の状況は、長いデフレを経験した当時の日本に似ているのでしょうか?」 ドラギECB総裁は、どうやって“日本化”のイメージを払拭しようかと気をもみ始めていた。「いや、日本に似ているとは思っていない(No, I do not think it is similar to Japan)」と否定したが、記者陣の疑念は晴れなかったようだ。以降、毎月の理事会後の総裁記者会見で、同様の応酬がヒートアップしていくことになる。 円高不況を彷彿 最強通貨に躍り出たユーロ 背景にあるのは、“経済の体温”ともいわれる物価の低下とユーロ高である。金融危機が去った後のユーロ圏は、日本型のデフレに陥る可能性が高まっているのだ。 「物価の安定」を使命に掲げる先進国の中央銀行には、日本の経験から「デフレは一度ハマるとなかなか抜け出せない」という恐怖感がある。しかしデフレは日本に特有の事例ではなく、経済の成熟した先進国が避けては通れない“先進国病”なのでは──。今や欧州、そして米国も物価低迷に悩まされているだけに、世界はそうした疑念に包まれつつある。 翌12月。ドラギ総裁は、1990年代末から2000年代初頭までの日本と、現在のユーロ圏の経済状況がいかに違うかを強調。具体的には次の五つの違いがあると、とかく丁寧に説明した。 第一に、ECBは迅速に金融緩和を実施したこと。第二に、大手銀行はECBの包括査定( コラム参照)を踏まえ、不良債権処理の前倒しが期待されること。第三に、民間債務は比較的速いペースで調整されていること。第四に、各国政府は財政を含む構造改革を進めていること。そして第五に、人々のインフレ期待は物価目標の2%で落ち着いている(デフレマインドは定着していない)ことだ、と──。 それでも記者陣からの質問が鳴りやむことはなかった。14年4月までの半年間、必ず「日本化」懸念が俎上に載せられたのである。 ◆奇襲◆ 耐えかねたECBが“奇襲”に打って出たのは、ユーロ圏インフレ率が0.5%(5月)を付けた直後の6月5日のことだ。主要中銀として初の「マイナス金利政策」に踏み切ったのである。 これは、銀行がECBに預けて眠っている超過準備にマイナス金利を課すことで、貸し出しに回させようというのが表向きの目的とされる。金利はゼロが下限のはずなのに、そんなことが可能なのかと一瞬耳を疑うが、要するに銀行に対する“罰金”に他ならない。 実はこのマイナス金利政策、デフレが定着した2000年前後の日本でも真剣に議論されていたが、弊害も多く導入には至っていない。ECB自身も、「貸出金利の引き上げを通じて、銀行がコストを顧客に転嫁する可能性がある」(バイトマン・ドイツ連銀総裁)と、その弊害を認識している。 それでも導入に踏み切ったのは、通貨高対策として「シグナル効果がある」(アスムンセンECB前理事)と考えたからだろう。マイナス金利は、「かつてスイスが導入していた通貨安政策」(高橋祥夫・バークレイズ証券チーフ外債・為替ストラテジスト)を彷彿させる。逆に言えば、そんな心理的効果に頼らざるを得ないほど、ECBにとって耐え難いユーロ水準に至っていたということになる。 ◆想定外の通貨高◆ くしくも“ドラギマジック”でユーロ危機が去った後、歯車は突如狂い始めた。ECBは12年後半以降、新たに通貨高圧力が招く物価の低下に悩まされるようになったのだ。 拡大画像表示 表を見てほしい。これは、主要10通貨の年間騰落率の推移を示したものだ。これを見ると、日本が11年まで円高に苦しめられてきた状況から一変、「13年にはユーロが最強通貨に躍り出ている」(佐々木融・JPモルガン・チェース銀行債券為替調査部長)ことが分かる。為替市場で「ユーロの円化」とささやかれるゆえんである。 通貨高の要因も、これまたかつての円と同じ条件がそろう。すなわち、「世界一の経常黒字とディスインフレ傾向」(唐鎌大輔・みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)である。 このうち経常黒字の拡大は、域内最強国・ドイツの貿易黒字増が主因だ。ドイツ企業が輸出で稼いだ外貨を自国通貨に替えるという、安定した実需フローが招く通貨高とあって、ECBがいかなる策を講じようと(かつての日本銀行がそうであったように)、ユーロはそう簡単には下がりそうにない。 拡大画像表示 ECBもゼロ金利へ 注目はフランスと イタリアの賃金動向 こうしたユーロ圏の日本化を論じる上で、みずほ証券の青山昌シニアマーケットアナリストの分析は興味深い。いわく、ユーロ圏と日本を株価のピークでそろえて比較することが多いが、それよりもボトムでそろえ、「回復過程を比較する方が妥当性は高い」。 というのも、金融危機を経験した点で両者は共通するが、ユーロ圏の場合は市場価格のある国債暴落が原因であり、故に危機の表面化までにかかる時間が比較的短かった。片や日本の場合、相対取引である貸し出しが原因の不良債権問題とあって、表面化するまでに長い時間を要したからだ。 この見解に沿って銀行株のボトムを見ると、日本は98年8月、ユーロ圏は09年1月だ。この2時点をそろえてさまざまな景気指標で比較すると、実質GDP成長率や失業率などの方向性に、驚くほど類似性が見いだせるのだ(図参照)。 拡大画像表示 むろん、これをもってユーロ圏でもデフレが確定的な未来だと言うつもりはないが、気になるのは失業率が12%という過去最悪付近の水準にあること。かくも投資や消費が伸びにくい環境にあるのだ。為替や金利要因を除いたコアインフレ率で見ても物価は低下しており、ユーロ高だけでなく雇用や設備の過剰感が物価低迷を招いていることがうかがえる。 さらに今後、心配なのは「フランスとイタリア」(唐鎌氏)だ。ユーロ圏の平均人件費を超えているのが、この2カ国だからである。彼らにとって今のユーロ水準は耐え難く、日本の経験を踏まえれば、これから輸出競争力確保のために人件費を抑制、これもデフレ圧力になってくると予想される。 ◆弾切れ◆ 5月末の欧州議会選挙で反ユーロを掲げ、大躍進したスペインの新興政党Podemos。共通通貨は揺らいでいる Photo:REUTERS/アフロ 「これで終わりかと問われれば、その答えはノーだ。われわれはまだ終わっていない」 マイナス金利を導入した6月、ドラギ総裁はそう期待を持たせるコメントを残した。しかし同時に利下げも行っており、日米と同じ実質ゼロ金利に到達した。利下げカードの残り枚数はゼロである。 ドラギ総裁は4月のアムステルダム講演で、「われわれの反応関数を一段と単純化している」と述べていた。その反応要素と対応表を示したのが次の図だ。異次元緩和を導入した際の黒田東彦・日銀総裁ではないが、ECBはすでに6月時点で「考え得る政策を総動員」したことが分かる。果たしてQE(量的緩和)以外の策は尽きた。 拡大画像表示 それでもユーロ高、物価の低下が進めば、ECBも日米と同様、国債を大量購入するQEステージに突入するのか──。日本には幸か不幸か大量の国債が存在するが、ユーロ圏では訳が違う。これこそ正しく日本との違いであり、ECBの悩みの種なのだ。次の記事以降、これについて検証しよう。 ※続きは明日12月3日(水)公開予定です。 http://diamond.jp/articles/-/63044
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