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何が軽自動車を歪めるのか?理不尽な規制と“飴”が、海外で通用しない車を生み出す
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141129-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 11月29日(土)6時0分配信
日本国内で売れ筋の自動車はといえば、いつの頃からか「ハイブリッドか軽自動車」というのが定番だ。実際、それらは販売台数のデータでも常に上位を占める人気ぶりだ。
中でも、軽自動車の魅力はといえば、まずはなんといっても「維持費の安さ」を挙げる人は多いはず。普通車との格差是正と、2015年10月に廃止予定の自動車取得税の代替財源とすることを目的に、15年4月からの軽自動車税の増税が決まってしまったものの、年間1万800円という新税額は、排気量が1000cc以下の小型車の2万9500円に比べて、それでも約3分の1という水準。「走らなくても掛かる維持費」がこれだけ違うとなれば、軽自動車の人気が高まるのも当然といえよう。
しかし、そうした“飴”が与えられるゆえに大きな声を上げられないでいるのも、実は軽自動車業界の知られざる現状。中でも開発者自身は間違いなく理不尽な思いを抱きつつ、下手をすれば恩恵廃止となることがチラついて、「出る杭にはなるまい」と自らでは主張できないでいるのがエンジン排気量に関する制約だ。
軽自動車として税制面の恩典にあずかるためには、実はボディのサイズとエンジンの排気量に厳しい決まり事がある。前者は3.4m以下という全長と1.48m以下という全幅。後者は660cc以下の排気量。このいずれかを少しでも超えてしまうと軽自動車とはみなされず、自動車税も大きく跳ね上がってしまうのだ。
●理想からは逸脱したエンジン排気量
ここで特に問題となるのはエンジンの排気量。昨今、著しい普通車顔負けの装備の充実ぶりなどで重量が嵩んだモデルでは、優れた燃費と十分な動力性能を両立させるためには、660ccという排気量は「不相応に小さ過ぎる」のが現実。
例えば、両側パワー・スライドドアを備えた4WD仕様車では、今や車両重量が1トンに達するものも少なくない。このレベルの重さに最も効率良いエンジン排気量は実は1リッター程度。それが「燃費でも走りでも最もバランスの優れる排気量」というのは、すべての自動車エンジニアにとっては常識なのだ。
ところがこうした技術的な理想を追えば、今度は軽自動車の枠をはみ出すことになる。それゆえ、メーカーはそれが「理想からは逸脱している」ことを知りつつも、不本意ながら660ccのエンジンを搭載して販売を続けているというわけだ。
確かに、カタログ上の燃費に目をやれば、その向上ぶりは日進月歩の勢い。だが、それはあくまでも「ハンドルも切らなければエアコンも使わず、最高速も時速80km止まり」という、いわば”現実離れ”をした試験モードをなぞった結果の数値にすぎない。それゆえ、30km/リッター走ると謳われるモデルが、実際には20km/リッターもいかないといった現象は多くの人が体験済みであるはず。さらには、事実上の”排気量増大装置”であるターボを備えたモデルでは、アクセルをガンガン踏むとカタログ値の半分も走らないといった事態にもなってくる。
さらに問題なのは、以上のような日本固有の理不尽な決まり事を踏まえて開発されたモデルでは、海外のマーケットではほとんど通用しないという点。
そう、これこそが「軽自動車はガラパゴス商品」と揶揄をされてしまう最大の要因だ。せっかくの小さなクルマづくりの技術を世界にアピールすることもままならず、結局は税制面の恩恵に頼りきった”保護政策”の下に生き続ける軽自動車――そんなクルマに、明るい未来など待っていようはずもないのである。
河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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