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金融政策決定会合の議事要旨 - 見解の相違  井上哲也(野村総合研究所 金融ITイノベーション研究部長)
http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/839.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 11 月 28 日 00:42:05: igsppGRN/E9PQ
 

金融政策決定会合の議事要旨 - 見解の相違
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20141127-00010000-nri-nb
NRI研究員の時事解説 2014/11/27 17:49 井上 哲也


はじめに

日銀が予想外の「追加緩和」に踏み切った際の金融政策決定会合の議事要旨が先般公表された。その内容は既に様々に報道されている通りであるが、今後の政策運営を考える上で注目される点を検討しておきたい。

追加緩和の賛否

「追加緩和」が、その規模自体の次に衝撃を与えた点は、票決が5対4と真っ向から割れたことである。その意味で、賛否双方の立場からどのような主張がなされたかが注目された訳である。

このうち、賛成する立場からの意見は、既に黒田総裁が当日の記者会見のほか、最近の講演で詳細に説明した内容と同様である。すなわち、足許でインフレ率が減速してきたことが、インフレ期待の改善を遅らせるリスクが高まったことを、「追加緩和」の理由として述べている。また、「2年で2%」の達成をコミットすることの重要性が指摘されている点も黒田総裁の見解と整合的である。なお、賛成意見に関しては、原油価格が現状程度で推移しても一般物価への影響が来年前半まで残るとの指摘がみられるなど、フォワード・ルッキングな視点も注目される。

これに対し、今回明らかになった反対する立場からの意見は、「追加緩和」のコスト・ベネフィットのバランスに対する疑問が中心であった。つまり、長期金利が既に歴史的低位にある下で国債買入れを増やすことの追加的な効果や、初回は有効であった「期待に働きかける」効果の再現に対する疑問が示されている。同時に、当然に予想されたことではあるが、市場機能や財政ファイナンスといった面でのコストが指摘されている。

こうした議論の上で、「追加緩和」に賛成する立場からは、主として「期待に働きかける」ことを念頭に、大規模な国債買入れを支持する意見が示されている。この間、ETFやJ-REITの買入れも顕著に増加すべきとの意見が見られる一方で、国債買入れの平均残存年限の延長を主張する意見が限定的であったことは、個人的には興味深かった。

「量的・質的金融緩和」に関するコンセンサス

このような票決の相違がみられた一方で、今回の議事要旨からは、委員の間で意外なほどにコンセンサスが維持されていることも示唆される。

第一に、政策委員会では「量的・質的金融緩和」自体に対する支持が引き続き共有されているようだ。なぜなら、「追加緩和」に反対する立場からも、「追加緩和」前の「量的・質的金融緩和」が我が国経済に十分な効果をもち、最終的に物価安定目標の達成を可能にするという考え方が示されているからである。

第二に、少なくとも一部の委員の間では、賛成と反対の考え方の距離は意外に小さいようだ。つまり、「追加緩和」を支持した一人の委員は、「追加緩和」によって物価安定目標の達成が確かになることで、その時点から、「量的・質的金融緩和」の出口に関する議論を始めることができるとの展望を示している。これは、「追加緩和」に反対した委員が予て主張している、金融緩和の短期集中的な実施という考え方と、余り遠くない発想であるようにみえる。

この点はさらに、「追加緩和」に反対する立場から提示された「量的・質的金融緩和」の長期的なコストにも関連している。それは、以前の「ノート」で議論したように、「量的・質的金融緩和」のコスト・ベネフィットのバランスは、時間が経つほどに日銀にとって厄介になる面があることである。この点は、我が国の人口動態や財政状況を考えれば明らかであろう。

第三に、「追加緩和」に賛成の立場と反対の立場はともに、根っこの部分では共通の基盤に立っている。つまり、先にみたように、反対の立場が、「期待に働きかける」効果を十分に再現することが難しいとの考えを示したのに対し、賛成する立場は、物価安定目標の達成に対するコミットメントを維持することで、「量的・質的金融緩和」への信認を維持することの重要性を強調した。興味深いことに、こうした考察の結果として、「追加緩和」に賛成する立場はその規模を可能な限り大きくするとの判断に至っている。実際、「量的・質的量的緩和」の考え方を信ずるのであれば、こうした判断の方が首尾一貫している面がある(ただし、それは長期的な課題を無視できればということではあるが)。

景気判断の相違

それでは、「追加緩和」に際しての景気判断はどのように相違していたのだろうか。

議事要旨によれば、我が国経済が緩やかな回復基調にあり、消費税率引き上げの影響も解消しつつある点ではコンセンサスが存在していたようだ。その上でポイントはインフレであり、「追加緩和」に賛成する立場からは、デフレマインドの再現に対する懸念が示された一方、反対する立場からは、帰属家賃を除く消費者物価上昇率が1%台の後半で推移していることなどもあって、インフレ期待は着実に改善しているとの見方が示された。消費税率引き上げの影響も考慮すれば、こうした考え方もむしろ合理的に見える面がある。

この点に関しては、国内の需給バランスのような実体経済要因との関係が乏しい物価の動き−今回の国際原油価格の大幅低下によるインフレ率の下押し−がインフレ期待にそもそもどのような影響を与えるかと言う問題も残る。「追加緩和」に賛成の立場も反対の立場も、ともに前向きな景気循環が続いている点で共通の理解を持っており、かつ、企業や家計のバランスシートが健全であるため、物価下落がdebt deflation といった二次的効果を持つリスクも小さいことを考慮すると、興味深い問題として残る。

おわりに

「追加緩和」に際して、市場機能や財政ファイナンスに関する懸念を理由に反対の立場をとることは、考え方に整合性がないという批判が考えられる。なぜなら、先にみたように、政策委員の総意として「量的・質的金融緩和」自体に対する信認は維持されているし、こうした懸念があるのであれば、そもそも「量的・質的金融緩和」の導入時に表明すべきだったことになるからである。

それでも、今回になってこうした懸念を表明したことに合理性があるとすれば、それは最初から存在したかもしれないこうした懸念がある種のthresholdに近づいたからということになる. 黒田総裁は、インフレの減速がcritical momentに近づいたことを「追加緩和」の理由として強調した訳であるが、「追加緩和」に反対の立場からは、別な意味でのcritical momentが展望されたのだ、ということになる。


井上哲也(野村総合研究所 金融ITイノベーション研究部長)
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この記事は、NRI金融ITソリューションサイトの【井上哲也のReview on Central Banking】(http://fis.nri.co.jp/ja-JP/knowledge/commentary/category/inoue.html)に掲載されたものです。


 

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コメント
 
01. 2014年11月28日 20:32:45 : jXbiWWJBCA


日銀の追加緩和で生保の運用に逆風、外債への投資を検討
2014年 11月 28日 17:56 JST
[東京 28日 ロイター] - 日銀の追加緩和で生保の運用に逆風が吹いている。28日に中間決算を発表した大手・中堅生保の幹部からは低金利の長期化で運用の中心である国内公社債から外債へのシフトを検討せざるを得ないとの声が相次いだ。

「金利がさらに低下している、生保にとっては厳しい運用環境だ」日本生命保険[NPNLI.UL]の児島一裕常務執行役員は同日の決算発表の席上、日銀が10月末に踏み切った追加緩和の影響について聞かれ、こう語った。

児島常務は円金利資産が7割という方針には変わりはないものの、低金利が継続する場合、国内債券への投資を一部抑制して、その分を為替ヘッジ付き外債に振り向けると述べた。

明治安田生命保険[MEIJY.UL]の林秀運用企画部長も下期の運用について、「国内公社債の買い入れは慎重にしたい」とし、為替や国内外の金利状況を見極めながら、為替ヘッジのついていないオープン外債などにも投資したいと語った。また、国内公社債については将来の金利上昇時の価格下落リスクに備え、償還期間の短いもので運用したいとも述べた。

住友生命保険[SMTLI.UL]の古河久人常務執行役員も「追加緩和でさらなる外債のシフトも検討する」と語った。

追加緩和を受け、同日中間決算を発表した大手・中堅6社すべてが、下期の長期金利の見通しを変更した。

中間決算では、日本生命、明治安田生命、富国生命[FKMLI.UL]が円安による外貨建て利息配当金収入の大幅な増加で利差益が前年同期比で増えた。利差益は保険契約者に約束した利回りと運用収益の差で、運用収益が予定利回りを下回ると逆ザヤになる。住友生命、三井生命、朝日生命は逆ザヤだった。

*カテゴリーと写真を追加して再送します。

(浦中大我、和田崇彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0JC0L220141128

 
コラム:アベノミクス成功を織り込む「ドル円」の上値余地=高島修氏
2014年 11月 28日 16:27 JST
高島修 シティグループ証券 チーフFXストラテジスト

[東京 28日] - 海外投資家の間では、安倍首相が決めた消費増税先送り解散について、2005年の小泉首相(当時)による郵政解散のような熱狂を期待する向きもある。だが、各種世論調査を見る限り、日本国民は総じて増税延期には賛意を示しつつも、今回の解散・総選挙に大義はないと考えているようで、9年前のような熱気は感じられない。

一方、経済面では実質国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となり、形式的にはリセッションに陥ったことから、アベノミクスへの懐疑論が国内外で台頭している。だが、そうした中でドル円相場は120円に迫るドル高円安となっている。

強まるアベノミクスへの懐疑論に対して、このドル高円安はむしろ為替市場がアベノミクスの成功を織り込む動きを見せていることを暗示している。なお、アベノミクスの成功の定義にはいろいろあろうが、ここではひとまずデフレ克服と定義したい。

<レーガノミクスとの類似性>

約1年前にもこの場で議論したが、まず指摘したいのが、アベノミクスとレーガノミクスとの類似性(と相違点)である。安倍首相が最終的に目指しているものは、政策ビジョンを示した著書「新しい国へ」でも明記されている通り、経済の回復ではなく、強い安全保障の確立である。経済回復、デフレ克服はアベノミクスの中間目標に過ぎない。

この点は1980年代の米国におけるレーガノミクスとの重要な共通点である。当時、米国はソ連との東西冷戦、軍拡競争に勝利するという安全保障上の課題を持っていたが、それを達成するには経済が弱く、特にインフレの克服が喫緊の課題となっていた。そこで、レーガン大統領(当時)は自ら強い米国、強いドルの復活を掲げる傍ら、金融政策に関しては、ボルカー議長(当時)率いる米連邦準備理事会(FRB)の超金融引き締め策を黙認した。

ボルカー氏は1971年のニクソンショック(金ドル交換停止)を指揮するなど、米通貨政策のトップを務めた経歴を持つ人物である。このボルカー議長の下での超金融引締め策は事実上のドル高政策であり、ドル円相場は当時250円前後に位置していた消費者物価ベースの購買力平価(73年基準)を超えてドル高円安が進んだ。その結果、米国はインフレという慢性疾患を克服し、経済構造改革も達成。東西冷戦にも打ち勝つことができた。

ドル円はその後、米国の経済政策の焦点がインフレ克服から経常赤字縮小に移り、1985年にプラザ合意がなされたこともあって、95年まで急激なドル安円高を経験することになる。80年代後半以降は、当時200円前後に位置していた生産者物価ベースの購買力平価が今日まで上限(レジスタンス)となり、約30年間にわたって、ドル高円安の行く手を阻んできた。

<購買力平価で見たアベノミクスの評価>

現在、生産者物価の購買力平価は100円に位置している。日米政策金利差がゼロ%の金利環境下で、過去30年にわたって上限となってきた、この購買力平価を超えてドル高円安が進むのは、極めて異例の事態である。

こうした異常事態の発生は、恐らく1970年代から続いた長期ドル安円高トレンドが、2011年から12年にドル円が75円台へ下落したところで、長期ドル高円安トレンドに転換したことを暗示している(11年は東日本大震災、12年は団塊の世代の公的年金受給が始まった、日本にとって非常に重要な年である)。

一方、消費者物価で見た購買力平価は現在125円前後に位置する計算になる。10月末の黒田日銀の追加緩和を受けて120円台に迫るドル高円安は、レーガノミクスの時以来、約30年ぶりにこの消費者物価ベースの購買力平価に達そうとする動きとなっている。

あたかも当時、レーガノミクスが消費者物価ベースの購買力に達するほどのドル高によってインフレを克服したのと同じように、今日のアベノミクスがその購買力平価に達する円安によってデフレという「慢性疾患」(11月5日黒田総裁講演で使われた単語)を克服しようとしているように見える。

奇しくも、アベノミクスのキーマンである日銀の黒田総裁は、財務省で事実上の日本の通貨政策のトップである財務官を経験しており、レーガノミクスのキーマンであったボルカー氏と非常によく似た経歴の持ち主である。

<アベノミクス「第2の矢」は当然の成り行き>

一方、足元では、前述した通り、11月17日に発表されたGDP統計が予想外に2期連続のマイナス成長(テクニカル・リセッション)となったことで、国内外にアベノミクスに批判的・懐疑的な声が強まっている。特に「第3の矢」である成長戦略について中身がないとの批判は根強い。

ただし、1980年代の米国が60年代以降に肥大化した財政赤字という、言わば「政府の失敗」の副産物を克服する必要があったのに対して、アベノミクスが克服を目指しているデフレは、これまで政府の失敗があったことも事実だが、その根本的な原因は80年代後半のバブル形成と崩壊、つまり「市場の失敗」がその底流にある。

レーガノミクスが規制緩和や減税で小さな政府を目指したのに対して、アベノミクスが「第2の矢」で財政刺激策(今回の消費増税先送りを含む)も用いて、拡張色の強い政策を行っているのは、当然の成り行きのようにも思える。レーガノミクスが当時、米国の労働組合を骨抜きにしたのに対して、アベノミクスが政労使会議などで、労働組合を取り込みながら、政府の実体経済への関与を深めようとしているのも興味深い対比である。

<ドル円の下値は最大で110円程度か>

正直なところ、筆者は消費者物価ベースの購買力平価に達するようなドル高円安は2017年までは起こらないのではないかと考えていた。戦勝国である米国が経済政策面でも自由度が大きいのに対して、安全保障面を含めて米国への依存度の高い日本が、円安ドル高を伴うデフレ克服策を遂行するには、そうした政策に対する米国の支持、少なくとも黙認を得ることが必要になるが、対中政策が定まらないオバマ政権の下では明確な対日政策も見えてこないと思っていたからである。

米国が明示的にドル高円安を容認するようになるのは、2017年に誕生するポスト・オバマ政権の誕生を待たねばならないというのが筆者の見解だった。

だが、実際にはドル円はすでに120円に迫るドル高円安となっており、しかも、海外投機筋を含めて市場はまだ相当な円売り余地を残している公算が高い。年内に120円台乗せはおろか、消費者物価ベースの購買力平価水準(125円前後)までドル高円安が進んでもおかしくない状況だ。少なくとも現在100円前後に位置する生産者物価ベースの購買力平価が従来のレジスタンスから長期的なサポートに転換することが期待できる状況になってきている。

今回の消費増税の2017年への先送りで、黒田日銀の金融緩和が早期に打ち切られるリスクは後退し、恐らく18年頃まで継続、場合によっては再度強化される可能性さえ浮上した。FRBの利上げと相まって、これは17年、18年頃まで長期的なドル高円安が進行するとの筆者の相場観を補強するものだ。今回の消費増税先送り、過去数カ月の原油安、追加緩和後の円安はいずれも来年以降の日本の景気下支え要因となる。来年1月の中間評価の際、日銀は従来の経済・インフレ見通しを上方修正することだろう。

今回のドル高円安の流れは、一応はそこまでではないかと思うが、極端なリスク回避相場が発生するような事態が起きなければ、ドル円の下げは最大でも110円程度にとどまることになるだろう。

*高島修氏は、シティグループ証券のチーフFXストラテジスト。1992年に三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行し、2004年以降はチーフアナリスト。2010年シティバンク銀行入行、チーフFXストラテジストに。2013年5月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0JC09G20141128

 


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