http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/836.html
Tweet |
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第102回 消費税増税延期と解散総選挙
http://wjn.jp/article/detail/1767155/
週刊実話 2014年12月4日 特大号
2014年11月12日、驚くべきことに、主要紙の一面一斉に〈首相、12月衆院選の意向 消費再増税は1年半延期(産経新聞)〉といった見出しの記事が載り、安倍晋三内閣総理大臣が11月内に衆院を解散し、12月中に総選挙を断行する意向を固めたと報じられた。
この日は総理が外遊中であることから、政権内からのリーク(恐らく菅義偉官房長官筋)がなされたと見るべきだ。すなわち、解散総選挙の可能性は高い、と推測している。
いま一つ理解できないのだが、安倍総理が本気で来年10月の消費税再増税を延期したいのであれば、
「社会保障と税の一体改革法案の附則18条『景気条項』に従い、増税を延期するという判断を下しました」
と、記者会見で明言すれば済む話である。
無論、その後は国会で「消費税再増税」を延期する法案を通さなければならないわけだが、そもそも法律を通すのが国会議員の仕事である。野党が弱体化し、さらに一部の野党が再増税に猛烈に反対している以上、再増税延期法案の障害はない。
必要なのは、手続きと時間だけだ。
それにもかかわらず、なぜ現時点で「解散総選挙」なのだろうか。
しかも、11月10日に報じられた読売新聞の世論調査〈消費税率引き上げ「延期を」46%…読売調査〉によると、
「引き上げは必要だが、時期は遅らせるべきだ」
とする人が46%、
「今の8%から引き上げるべきでない」
が37%と、国民の8割強が消費税再増税の延期もしくは凍結を求めているのだ。
特に、「国民の審判」を仰ぐ必要があるとは思えない。安倍総理が会見し、消費税の再増税を凍結もしくは延期すると発表すれば、普通に支持率は上がるだろう。
だいたい、消費税再増税延期を掲げて総選挙に突入するならば、今年4月の消費税増税が、
「失敗だった」
ことを、政府として認める必要があるはずだ。何しろ、'14年9月の実質消費や実質賃金が、まさに目を覆いたくなるような悲惨な数値になっているのである。
'14年9月の日本の実質賃金(決まって支給する給与)は対前年比でマイナス3.1%、実質消費(2人以上の世帯)はマイナス5.6%であった。
政府の“吹聴”によると、消費税増税の悪影響は4〜6月期で終わり、7〜9月期は所得も消費も「V字回復」するはずだったのではないのか?
現実には、消費増税の悪影響は継続し、国民はひたすら貧困化している。
第二次安倍政権発足後の日本の実質賃金は、'13年4月を唯一の例外に、毎月“着実に”マイナスを積み重ねているのだ。そして、'14年4月の消費税増税という「強制的な物価の引き上げ」により、我が国の実質賃金は対前年比マイナス3%台に叩き落とされた。
この種の言葉を使うのは嫌いだが、安倍政権は4月の消費税増税強行(しかも、デフレ下における消費税増税)を「総括」する必要があるはずだ。
その上で、麻生太郎財務大臣なり、甘利明経済再生担当大臣なりが責任を取って閣僚を辞任し、財務省の財政均衡主義について、
「間違いである」
と認め、元々のデフレ対策、すなわち「金融政策と財政政策のパッケージ」により、速やかにデフレ脱却することを公約に掲げ、総選挙を実施するというならば、まだしも理解できる。もっとも、現実にはそうなるとは思えない。
財務省の異常な財政均衡主義のドグマ(独断的な押し付け教義)や、政府の「失政」については沈黙したまま、「増税を延期するために解散総選挙」では筋が通らない。安倍政権が消費増税で、国民を貧しくさせているというのは、否定できない事実なのだ。
正直、今回の解散報道(実際に解散するかどうかは、本稿執筆時点では不明だが)に接していると、小泉純一郎政権期の郵政選挙の再来を狙い、各種の「構造改革」を実施するために政権基盤を盤石なものとしようとしているのではないか、という疑念をぬぐえないのである。
ところで、消費税再増税問題を巡り、自民党で興味深い動きが出てきている。
自民党の消費増税に慎重な議員が11月11日に会合を開き、来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げについて1年半、先送りするよう求める提言を安倍総理に提出することを明らかにしたのだ。
同派のリーダー的存在である山本幸三・元経済産業副大臣は、
「消費税率を10%に引き上げなくてもアベノミクスの効果で税収は増えており、社会保障の財源は確保できることがわかってきた」
と、語っている。
まさしく、その通り。消費税を引き上げなくても、景気を良くする(=名目GDPを拡大する)ことで、社会保障の財源は“余裕で”確保できる。
逆に言えば、今年4月の消費増税は景気を失速させ、税収を抑制し、社会保障の財源確保を危うくした。
経済成長こそが、すべての解答なのだ。この基本に立ち返り、日本国民を豊かにする「経済成長」を実現するために、解散総選挙を実施するというならばともかく、そうではない場合、筆者は解散総選挙自体に反対せざるを得ない。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。