06. 2014年11月27日 08:02:33
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ドイツ経済:止まりかけたエンジン 2014年11月27日(Thu) The Economist (英エコノミスト誌 2014年11月22日号)ドイツ経済は、欧州を危機から引っ張り上げられないほど弱くなっているのだろうか? 「世界には欧州の失われた10年を受け入れる余裕はない」とジェイコブ・ルー米財務長官は言う。最新の欧州の統計は、冴えない内容だった。第3四半期にユーロ圏は年率換算で0.6%しか成長しなかった。 この停滞は一義的に、危機によって最も大きな打撃を受けた国々のせいではない。ギリシャ経済はどのユーロ圏諸国よりも速く成長しており、スペインとアイルランドは回復を遂げている。 疲弊した中核国、メルケル首相に批判の声 むしろ、疲弊しているのは中核国だ。そして、欧州最大の経済国であるドイツ以上に疲弊している国はほとんどない。ドイツ経済は第2四半期に0.1%縮小した後、第3四半期に0.1%しか成長しなかった。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、次第に高まる外国からの批判にさらされている。ドイツは内需と投資を刺激するためにもっと多くの手を打つべきだというのが、繰り返される批判の言葉だ。 ドイツがそうした対策を講じれば、フランスやイタリアなどが厳しい構造改革を進める中で、これらの国の助けになるだろう。 輸入の増加はドイツの経常黒字を減らすことにもなる。ドイツの経常黒字は世界最大規模であり、欧州内外の不均衡の原因となっている。また、内需を刺激すれば物価が上昇し、ユーロ圏がデフレに陥るのを防げるかもしれない。ユーロ圏の物価は10月に前年同月比で0.4%上昇し、インフレ率は欧州中央銀行(ECB)が定めた2%の上限を大幅に下回っている。 ドイツ国内にも、そうした要求に同調する向きがある。ジグマール・ガブリエル経済相の顧問を務めるマルセル・フランツシャー氏は、ドイツは自国のために投資を増加させるべきだと言う。同氏いわく、ドイツの最近の成功の大部分は、道路から教育、工場に至るまで、あらゆるものへの過少投資で買った「幻想」だった。 ヴォルフガング・ショイブレ財務相はこれに対し、道路と橋のためにすでに割り当てられている50億ユーロに加え、2016年から3年かけて連邦政府による投資を追加で100億ユーロ増額すると誓った。だが、追加投資はGDP比0.1%程度で、実質的というよりは象徴的な対策だ。 また、これで財政赤字が増えるわけでもない。なぜなら、ショイブレ氏の最優先事項は依然として、2015年から財政を均衡させる「ブラック・ゼロ」だからだ。 ドイツ政府に助言する経済諮問委員会(通称5賢人委員会)のクリストフ・シュミット委員長は、「ブラック・ゼロは崇拝の対象にすべきではない」と述べている。公共投資を増やすべきなのは、ドイツの連邦政府ではなく地方の自治体だという。だが、同氏の考えでは、それより大きな問題は、民間投資が少なすぎることだ。 ドイツ経済のような自由主義経済では、外国よりも国内の投資を増やすよう政府が企業に命じるわけにはいかない。シュミット氏に言わせると、企業が別の道を選んだのだとしたら、それはどんな理由にせよ、ドイツが投資にとって報われない場所だと考えたからに違いない。 「世界一影響力ある女性」はメルケル独首相、4年連続 メルケル政権の経済運営に批判が高まっている〔AFPBB News〕 シュミット氏の率いる5賢人委員会は今月、メルケル政権を叱った。企業は、ドイツの人口高齢化と労働人口縮小に反する公的年金の寛大さについて心配している。 中道左派のドイツ社会民主党(SPD)との連立政権は、母親向けの年金を引き上げており、一定期間以上働いていた場合には、国民が早ければ63歳で引退できるようにしている。 起業家は、時給8.5ユーロという比較的高い水準で1月に発効する予定の新たな最低賃金についても懸念している。最低賃金が内需を押し上げるとの期待に反し、一部の労働者が単に仕事を失うことになるとシュミット氏は言う。さらに、賃金が上昇する人たちは、その時点で福祉の補充が減るため、支出に回す追加所得は大して残らない。 シュミット氏の見るところ、さらなる間違いが、混乱したエネルギー政策だ。太陽光発電と風力発電に補助金を与え、原子力発電を段階的に廃止する政策は、単に企業のエネルギーコストを高める結果になっている。さらにもう1つの過ちが、新しい不動産の建設を妨げるだけに終わる可能性の高い、賃料上昇に上限を設ける法律だ。 外国のエコノミストとドイツ人エコノミストの考え方の違い 刺激策の増加を求める外国のエコノミストと、問題は別のところにあると考えるドイツ人エコノミストの違いは、部分的には異なる哲学を反映している。アングロサクソン系のエコノミストは、欧州とドイツの問題を需要不足の観点から評価する。大半のドイツ人エコノミストはそうしない。 「欧州はケインズ的な危機に見舞われているわけではないから、ケインズ派の対策はうまくいかない」。ミュンヘンにあるIfo経済研究所のハンス・ヴェルナー・ジン所長はこう言う。 ドイツのエコノミストらは、国家の介入を嫌い、20世紀初頭の経済学者、ヴァルター・オイケンにさかのぼる「オルド自由主義」の伝統にしたがい、経済の状態、あるいは「オルド(秩序)」の方を懸念する。 シュミット氏いわく、実際には、こうした意見の二分は誇張されている。ドイツが需要ショックに対応して大規模な刺激策を講じた2009年のように、それが適切な場面では「我々はケインズ主義を否定しない」と同氏は言う。 需要サイドに懐疑的な向きは、最大の急務が危機に見舞われた国における構造改革であるときには「ケインズ主義は解決策にならない」と主張する。 これでは欧州が10年失うだけで済めば幸運? だが、ドイツの低インフレは、弱さの兆候であると同時に、周縁国にとっての苦痛の源泉でもある。 改革の究極の狙いは、ユーロ圏南部諸国の低い生産性を反映させるように、ユーロ圏北部諸国に対する南部の相対的な物価を引き下げることだとジン氏は言う。同氏の考えでは、そのためにはドイツのインフレ率が10年間にわたって5%になるか、南部の同程度のデフレになるか、その両方の何らかの組み合わせが必要になるという。 目標に向けた進展は遅い。労働組合と関係のあるハンス・ベックラー財団の経済シンクタンクは、ドイツの賃金上昇はユーロ圏平均より若干速いだけだと言う。ドイツの単位労働コストは2013年に2.3%、2014年上半期1.7%上昇した。これに対し、ユーロ圏のそれは、それぞれ1.2%、0.7%だった。 カタツムリのように遅いこのペースでは、欧州は10年失うだけで済めば幸運かもしれない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42300 「労働に見合った収入が得られない」 農業の問題を解決する糸口はどこに クラウドファンディングで農業を活性化するためのヒント 2014年11月27日(Thu) 多田 朋孔 農村の現場にいると、クラウドファンディングを活用した取り組みがいろいろ行われているのを目にします。
広がる農業プロジェクトのクラウドファンディング クラウドファンディングのことはご存じの方も多いかと思いますが、インターネット上で様々なプロジェクトに対して共感する方を募り、寄付金として資金を集める手法です。 有名なところでは、先の東京都知事選で家入かずま氏が供託金をクラウドファンディングで集めたのが記憶に新しいです(目標金額500万円に対して744万7500円を集めて達成しています)。 農村地域に関する取り組みの中で個人的に非常にインパクトがあると思うプロジェクトとしては、和歌山県の「いなか伝承社」が行っている「伝統技術を活かして、世界初となる昆虫発酵調味料を作りたい!!」(和歌山に残る「醤油の伝統技術」×未利用資源の「昆虫(イナゴ)」=世界初の「おいしい昆虫発酵調味料イナゴソース」)というものがあります。 クラウドファンディングに使われているイメージ(写真提供:筆者) 著者である私自身も、右の写真のように、十日町市地域おこし実行委員会の「農業後継者育成のための住宅を新潟県魚沼産の棚田米で作りたい!」というプロジェクトでクラウドファンディングを活用しています。
個人や地域の団体のみならず、自治体専門のクラウドファンディングのサイトも2014年9月には開設されています。その名も「ガバメントクラウドファンディングふるさとチョイス」です。このサイトはふるさと納税のポータルサイトを運営するトラストバンクが新たなサービスとして開設しました。 クラウドファンディングを効果的に活用するためのポイント このようにクラウドファンディングが地域活性化に活用されるケースが増えてきているのですが、実際に取り組んでみて効果的に活用するためのポイントがいくつか見えてきましたので、それについてまとめてみたいと思います。 (1)多くの人が共感するビジョンを明記する (2)寄付金をいただいてお礼をするというよりも形を変えた商品販売としてとらえる (3)お礼の品の発送作業は自分たちの商品販売のオペレーションに組み込む (1)多くの人が共感するビジョンを明記する これは言うまでもないことではあるのですが、寄付をいただくには基本的に取り組みに共感してもらわないと無理だと思います。 農村の取り組みで多いのは「自分たちの地域を応援してほしい」というものですが、私はそこを一歩進めて自分たちの地域の取り組みと言うだけでなく、その取り組みが将来の社会を良くしていくことにつながるという点にまで自分の視野を広げたり、時間軸を長く見据えることがとても重要だと思います。 クラウドファンディングとは関係ありませんが、私が会社員を辞めて東京から十日町市へ移り住み、農業を通じた地域おこしの取り組みをするようになっているのは、「食料の問題、環境の問題等に真正面から立ち向かうつもりでやっている」という当団体の代表の言葉を聞いて、自分がうすうす思っていたことがここでの取り組みを通じてやれそうだと思ったからです。 今や「消滅自治体」の衝撃から政府が「地方創生」を掲げる時代になっています。地域の取り組みが日本の将来を良くするためにつながるということは、多くの人にも理解をしてもらいやすい状況にあると思います。 (2)寄付金をいただいてお礼をするというよりも形を変えた商品販売としてとらえる クラウドファンディングという仕組みは寄付金を募るという名目になってはいるのですが、通常寄付金額に応じたお返しをする形になっていることがほとんどであり、見方を変えると形を変えた販路というふうに捉えることもできます。そのように考えると、農業経営にも新たな可能性を見出すことができます。 地方で実際に農業に携わっていると、農業の担い手が少ない、または定着しない根本的な原因はズバリ、「労働に見合った収入が得られない」ということが大きく影響しています。 基本的に農家には人件費の概念を持たない人が多く、公的機関等の提示する作物のモデル収支についても、「これだけの面積で標準的な収量が取れれば売り上げいくら」というのは表記されていますが、その作物を育てて出荷するまでにかかる作業時間については全く触れられていません。 そして作業時間について集計をとっている農家はよほどしっかりとした農業法人以外聞いたことがありません。 同じ田舎でも土建屋さんや大工さんなど他の業種では、料金は作業時間に応じた作業者の日当を積み上げて材料費等と合わせた金額になっていますが、農作物はそうではなく、市場の相場が価格決定に大きく影響しており、人件費を含めたコストに見合った販売価格になっていないことが多く、そのため「労働に見合った収入が取れない」という状況になっています。 そういった中で、このクラウドファンディングの「寄付金に対するお礼」という形をとれば、市場価格との比較が度外視された形で、寄付金と引き換えに農産物を送り届けることができます。 その際に人件費を含めたコストに見合ったお礼の内容を設定すれば(勿論クラウドファンディング運営会社に支払う手数料もコストに含めます)、通常だと不当に安く買いたたかれている農産物を正当な価格で購入してもらうことができるという可能性を持っています。 ただし、クラウドファンディングはプロジェクト支援という形をとっているため、新たに行う取り組み、すなわち新規の投資に充てるための資金集めには向いていると思うのですが、日常業務の運転資金にする性質の資金調達をしようと思うと難しいかもしれません。 それでも、自分が作っている農産物の一部でもクラウドファンディングを新たな販路として販売できれば大いにプラスになると思います。 また、商品販売ととらえることで、寄付をしてくださる方々にとっては、他のプロジェクトに比べてお得感が出ます。 寄付のお礼と捉えると、寄付金に対するお礼の品を金額換算した割合は低くてもよいと思ってしまいがちですが、商品として捉えると寄付金に対するお礼の品の金額換算した割合は高くなり、寄付をしてくださる方の動機づけにもなります。実際、目標達成しているプロジェクトはお礼の品も魅力的であることが多いです。 (3)お礼の品の発送作業は自分たちの商品販売のオペレーションに組み込む 都会の大企業ではこういう発想は当たり前のことだと思いますが、クラウドファンディングに取り組む際には、既に自分たちが取り扱っている商品をお礼の品の軸にするのが効果的に活用するポイントになります。 ある地域活性化のNPO法人の方から、「お礼の品を送るのに、お礼の品を用意して発送する手間が現状取れないのでなかなかクラウドファンディングに挑戦できない」という話を伺ったことがあります。 クラウドファンディングでは新しいプロジェクトに対して支援をしていただくという性質上、お礼の品に関してもどうしても既存のものではなく、プロジェクトに関連した新たなものにしたくなりますのでこういう問題が出てくるのだと思います。 クラウドファンディングの寄付のお礼を普段自分たちが販売しているものを中心にすると、販売のオペレーションの中に組み込んでお礼の品を送ることができるため、新たな手間はそんなに多くありません。 ですが、クラウドファンディングのお礼に通常販売業務で取り扱っていないものが多いと、その準備や発送にかかる手間暇を人件費として換算すると、割に合わないということが発生する可能性があります。 例えば、普段自家用野菜しか作っていない人がクラウドファンディングのお礼に「野菜を送ります」としたとします。 すると、最初は自分で食べきれないほどの自家用野菜を作っているのでお礼も十分できると思っていたものの、実際にやってみるとお返しをする時になって送る野菜が足りなくなり、近所の農家さんからかき集めるのに苦労するという場合も出てきてしまいます。 お礼が自分の商品でない場合は、その商品を仕入れる費用もかかってしまいます。ですので、お礼を自分たちの商品として、商品販売のオペレーションの中に組み込むことが大切だと思います。 私たち十日町市地域おこし実行委員会が取り組んでいるプロジェクトでは、お礼の品はお米を軸にプラスアルファという形にしていますが、お米の直販を通常業務で行っていますので発送作業も効率よく行うことが可能です。 以上、いろいろと書かれたポイントを踏まえて私たち十日町市地域おこし実行委員会のプロジェクトページを作成したつもりですので、クラウドファンディングで地域活性化をするということに関心をお持ちの方は、こちらもご覧いただくと参考になるかもしれません。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42278
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