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金融庁は地方銀行の再編を促している(撮影:尾形文繁)
肥後銀と鹿児島銀はなぜ統合へ動いたのか 県のトップ地銀が合意、銀行再編は新時代へ
http://toyokeizai.net/articles/-/54165
2014年11月24日 福田 淳:東洋経済 編集局記者
「トップ同士が経営統合に動くとは驚きだ。過去の地方銀行再編より衝撃が大きい」(地銀幹部)
11月10日、熊本県のトップ地銀である肥後銀行(預金量は全地銀105行中28位)と鹿児島県のトップ地銀である鹿児島銀行(同36位)が、経営統合に向け基本合意した。
トップ地銀は地元を代表する名門企業。再編劇の多くは、旧相互銀行から転換した第二地銀が基盤の強化を図るもので、県のトップ地銀は経営危機に陥らないかぎり動かない、というのがこれまでの常識だった。だが、この常識がついに崩れた。トップ地銀同士が再編に動く時代に突入したのだ。4日に明らかになった、横浜銀行(同1位)が第二地銀の東日本銀行(同68位)と組むケースとは、様相が異なる。
なぜ動いたか。肥後銀行の甲斐隆博頭取は会見で「人口減少はこれから加速していく。地方銀行として勝ち残るには経営規模を大きくしないと難しい」と語った。基本合意では、統合で見込まれる効果として営業基盤の広がり、融資ノウハウの相互活用、本部機能の効率化を挙げる。
■九州では福岡銀行の拡張戦略が起爆剤に
背中を押したのが「すでに縄張りを越えた戦いが激化している」(金融当局)ことだ。
熊本県では第二地銀の熊本銀行(旧熊本ファミリー銀行)が2007年にふくおかフィナンシャルグループ(FFG)の傘下に入った。福岡銀行(福岡県トップ、預金量は地銀3位)とのシステム統合や、同行からの商品供給で力をつけ、肥後銀行の地盤を侵食し始めた。「法人融資では、肥後銀行の優位はさほど揺らいでいないが、個人向け金融サービスでは、福岡銀行流を身に付けた熊本銀行が存在感を増している」(九州の地銀幹部)。
鹿児島県にも隣県のトップ地銀である宮崎銀行が攻め込んでいる。同行の14年9月末の鹿児島県での貸出金残高は、約1850億円と1年前に比べ26%強も増えた。鹿児島銀行の上村基宏頭取が「宮崎銀行の影響はまったくない」と会見で発言するなど、両行とも競合について語らないが、仁義なき戦いなのは周知の事実だ。
今回の統合により九州には三つの巨大地銀グループが誕生する。福岡銀行、熊本銀行、親和銀行(長崎県)を傘下に持つFFG(預金量11.4兆円)、長崎銀行を子会社に持つ西日本シティ銀行(同6.7兆円)、そして肥後銀行・鹿児島銀行連合だ。預金量は2行合算で6.8兆円となり、西日本シティ銀行を追い抜く。競争は一段と激化する。
FFGの柴戸隆成社長は決算発表会見で「統合はシナジー効果が発揮できてステークホルダーにメリットがあれば考えていきたい」と述べ、さらなる再編に前向きだ。ほかの九州地銀からも「地域経済に資することが大前提だが、その中でいい話があれば検討したい」(長崎県トップの十八銀行・森拓二郎頭取)、「厳しい経営環境を勝ち抜くための施策を前向きに考えたい」(大分県トップの大分銀行・姫野昌治頭取)といった声が上がる。再編劇は新たなフェーズに入った。
(「週刊東洋経済」11月22日号<11月17日発売>掲載の「核心リポート07」を転載)
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